1 00:00:00,000 --> 00:00:02,000 マリオ! 2 00:00:03,000 --> 00:00:04,000 きゃあ!助けて! 3 00:00:25,000 --> 00:00:30,000 ビデオゲームにおける女性の表現と役割を探求する ビデオシリーズへようこそ。 4 00:00:30,000 --> 00:00:36,000 このプロジェクトは、ゲーム劇中の女性に関する トロープ、プロット・デバイス、および様式を 5 00:00:36,000 --> 00:00:39,000 全体的な観点から考察していきます。 6 00:00:39,000 --> 00:00:43,000 このシリーズには、皆さんの愛するゲームや キャラクターの批評が含まれます。 7 00:00:43,000 --> 00:00:46,000 ですが、メディアを楽しみながらも、 そのメディアの 8 00:00:46,000 --> 00:00:52,000 問題面や有害面の批評が可能であり、 必要であることを忘れないでください。 9 00:00:52,000 --> 00:00:56,000 それでは、「悲嘆の女性」に突入しましょう。 10 00:00:58,000 --> 00:01:01,000 まずは、誰もプレイできなかったゲームの話から 始めましょうか。 11 00:01:01,000 --> 00:01:08,000 1999年、ゲーム開発者レアはダイナソー・プラネット という N64 向けのオリジナルゲームを開発していました。 12 00:01:08,000 --> 00:01:14,000 ゲームの主人公はクリスタルという16才のヒーロー。 2人のプレイヤーキャラの1人でした。 13 00:01:14,000 --> 00:01:19,000 彼女の仕事は時空を旅し、魔法の杖で古代の化物を倒し 14 00:01:19,000 --> 00:01:24,000 世界を救うことでした。彼女は強く、有能で、 英雄らしかった。 15 00:01:24,000 --> 00:01:27,000 「お前は誰だ、獣の少女よ」 16 00:01:27,000 --> 00:01:28,000 「私は名はクリスタル」 17 00:01:40,000 --> 00:01:41,000 とてもクールでしょう? 18 00:01:41,000 --> 00:01:44,000 しかし、このゲームは発売されなかったのです。 19 00:01:44,000 --> 00:01:49,000 ゲームが完成間近になった頃、 伝説的なゲームデザイナー宮本茂氏は 20 00:01:49,000 --> 00:01:54,000 スターフォックスの3作目にしたらどうかと 冗談で言いました。 21 00:01:54,000 --> 00:01:57,000 そして次の2年間、彼と任天堂は実行に移ったのです。 22 00:01:57,000 --> 00:02:03,000 脚本とゲームデザインをやり直し、ゲームキューブ向けに スターフォックス・アドベンチャーとして 2002年に発売されました。 23 00:02:03,000 --> 00:02:08,000 この改訂版では、主人公だったクリスタルは 「悲嘆の女性」に変身させられており、 24 00:02:08,000 --> 00:02:12,000 ゲームの大半を水晶の檻の中に 閉じ込められたまま過ごし、 25 00:02:12,000 --> 00:02:15,000 新しいヒーロー、フォックス・マクラウドに 救出されるのを待っています。 26 00:02:15,000 --> 00:02:19,000 クリスタルのために作られたゲームの アクションシーンは 27 00:02:19,000 --> 00:02:21,000 フォックスと置き換えられました。 28 00:02:21,000 --> 00:02:25,000 クリスタルは肌を露出した 性的な衣装を与えられました。 29 00:02:26,000 --> 00:02:29,000 「わー、すげえ美人だ!」 30 00:02:35,000 --> 00:02:38,000 「俺は何をしてるんだ?」 31 00:02:38,000 --> 00:02:43,000 はい、そしてわざとらしいサックスの音楽が 重なって 32 00:02:43,000 --> 00:02:47,000 たとえ身動きが取れなくても、彼女が 情欲の対象であることを明確にしています。 33 00:02:47,000 --> 00:02:56,000 さらに侮辱的なのは、フォックスが彼女の魔法の杖を 使って彼女を救出することです。 34 00:02:56,000 --> 00:02:59,000 クリスタルが自分の壮大な冒険の主人公から 35 00:02:59,000 --> 00:03:01,000 他人のゲームの受け身な犠牲者に変化した話は 36 00:03:01,000 --> 00:03:05,000 「悲嘆の女性」トロープがいかに 女性キャラを無力化させ 37 00:03:05,000 --> 00:03:09,000 己の力でヒーローになるチャンスを 奪うか明瞭にしています。 38 00:03:10,000 --> 00:03:14,000 悲嘆の女性 (Damsel in Distress) はフランス語の demoiselle en détresse の訳です。 39 00:03:14,000 --> 00:03:17,000 Demoiselle とは「若い女性」という意味です。 40 00:03:17,000 --> 00:03:23,000 détresse は無力や危険、見捨てられたと感じる 不安または絶望を意味します。 41 00:03:23,000 --> 00:03:27,000 トロープとしての「悲嘆の女性」は、 42 00:03:27,000 --> 00:03:30,000 女性キャラが危険な状況に晒され、 自力で脱出できず 43 00:03:30,000 --> 00:03:34,000 男性キャラに救われなければならない プロット・デバイスで、 44 00:03:34,000 --> 00:03:38,000 主人公に冒険の理由もしくは動機を与えます。 45 00:03:38,000 --> 00:03:42,000 ビデオゲームでは一般的に誘拐によって この目的を達成します。 46 00:03:42,000 --> 00:03:46,000 石化や悪魔の憑依などの形を とることもあります。 47 00:03:46,000 --> 00:03:51,000 伝統的に、悲嘆の女性は主人公の家族か恋人です。 48 00:03:51,000 --> 00:03:56,000 お姫様、妻、ガールフレンド、妹などが この役割によく使われます。 49 00:03:57,000 --> 00:04:01,000 もちろん、悲嘆の女性はビデオゲーム発明の 何千年も前から存在します。 50 00:04:01,000 --> 00:04:06,000 このトロープは古代ギリシャ神話の ペルセウスの物語にさかのぼります。 51 00:04:06,000 --> 00:04:10,000 神話によると、生贄に捧げられた アンドロメダは崖に縛りつけられ、 52 00:04:10,000 --> 00:04:14,000 海獣によって食べられてしまうところでした。 53 00:04:14,000 --> 00:04:18,000 ペルセウスは獣を倒して姫を救い出し、 彼女を妻として獲得します。 54 00:04:18,000 --> 00:04:25,000 中世では、悲嘆の女性はたくさんの歌、伝説、 そしておとぎ話に登場します。 55 00:04:25,000 --> 00:04:28,000 無防備な女性の救出は、当時の 56 00:04:28,000 --> 00:04:33,000 恋愛物語や詩のレゾンデートル—— 存在理由として描かれ、 57 00:04:33,000 --> 00:04:38,000 騎士道、武勇、美徳を証明するために冒険する 放浪の騎士が伴います。 58 00:04:38,000 --> 00:04:42,000 20世紀のはじめ、犠牲にされる若い女性は 初期のアメリカ映画産業によって使い回されました。 59 00:04:43,000 --> 00:04:48,000 銀幕で繰り広げられる安易でセンセーショナルな プロットデバイスだったからです。 60 00:04:48,000 --> 00:04:55,000 初期の有名な例はキーストーン・コップス作、 1913年の短編 Barney Oldfield's Race for a Life です。 61 00:04:55,000 --> 00:05:01,000 悪者の髭男が女性を線路に縛り付ける場面は 今やアイコン的です。 62 00:05:03,000 --> 00:05:07,000 同じ頃、泣き叫ぶ女性を連れ去る巨大な猿のモチーフが 63 00:05:07,000 --> 00:05:11,000 様々なメディアで人気を得ました。 64 00:05:11,000 --> 00:05:15,000 1912年のエドガー・ライス・バローズの パルプ冒険小説「類猿人ターザン」では 65 00:05:15,000 --> 00:05:20,000 ターザンの恋愛対象ジェーンが 獰猛なゴリラに連れ去られます。 66 00:05:20,000 --> 00:05:24,000 ウォルト・ディズニーは1930年に このミームをミッキー・マウスの 67 00:05:24,000 --> 00:05:26,000 「ゴリラ・ミステリー」という アニメで使いました。 68 00:05:28,000 --> 00:05:34,000 また、このイメージは第一次世界大戦中、 米軍の志願兵募集ポスターにも利用されました。 69 00:05:34,000 --> 00:05:38,000 しかし、1933年に二つのことが起きます。 これらの出来事が、50年後に「悲嘆の女性」を 70 00:05:38,000 --> 00:05:45,000 ビデオゲーム・メディアの基本要素になる お膳立てになりました。 71 00:05:45,000 --> 00:05:51,000 まず、パラマウント・ピクチャーがアニメシリーズ 「ポパイ」を映画観客に公開しました。 72 00:05:51,000 --> 00:05:58,000 殆どの短編はお決まりのパターンで、 ポパイが誘拐されたオリーブ・オイルを救出する話です。 73 00:05:58,000 --> 00:06:05,000 次に、同年の3月、RKO ピクチャーズが 空前のヒット映画「キングコング」を公開しました。 74 00:06:05,000 --> 00:06:11,000 巨大なゴリラが若い女性を誘拐し、 彼女を所有しようとして殺される話です。 75 00:06:13,000 --> 00:06:16,000 そして、1981年へ早送り。 日本の任天堂という会社が 76 00:06:16,000 --> 00:06:20,000 宮本茂という若いデザイナーに 77 00:06:20,000 --> 00:06:23,000 米市場向けの新しいアーケードゲームの 開発を託しました。 78 00:06:23,000 --> 00:06:28,000 このプロジェクトは主人公に ポパイを迎えるはずでしたが 79 00:06:28,000 --> 00:06:30,000 任天堂は権利を得ることができず 80 00:06:30,000 --> 00:06:36,000 宮本氏は映画「キングコング」の影響を受けた オリジナルキャラクターを作りました。 81 00:06:39,000 --> 00:06:44,000 ゲームの主人公ジャンプマンは、レディという 若い女性を救出しなければなりません。 82 00:06:44,000 --> 00:06:47,000 巨大な猿に連れ去られてしまったからです。 83 00:06:47,000 --> 00:06:50,000 後の続編で、彼女はポリーンと名付けられました。 84 00:06:51,000 --> 00:06:56,000 ドンキーコングは初期のアーケードゲームで おそらく最も有名な「悲嘆の女性」の例ですが 85 00:06:56,000 --> 00:06:59,000 宮本氏がこのトロープを用いたのは これが初めてではありません。 86 00:06:59,000 --> 00:07:04,000 2年前の1979年、彼はシェリフという アーケードゲームの開発に関わっていました。 87 00:07:04,000 --> 00:07:07,000 このゲームでは、「美女」と呼ばれる 女性の形をしたピクセルの集合体を 88 00:07:07,000 --> 00:07:12,000 盗賊の手から救い出さなければなりません。 89 00:07:12,000 --> 00:07:17,000 ヒーローは、ゲームの終わりに勇気を称えられ、 「勝利のキス」を与えられます。 90 00:07:17,000 --> 00:07:21,000 数年後、宮本氏はドンキーコングの キャラデザインを再利用しました。 91 00:07:21,000 --> 00:07:25,000 ポリーンはキノコ姫という新しい 女性キャラの雛形になり、 92 00:07:25,000 --> 00:07:28,000 ジャンプ男はある有名な配管工になりました。 93 00:07:39,000 --> 00:07:45,000 ピーチ姫はあらゆる意味で「悲嘆な女性」の もっとも典型的なキャラクターです。 94 00:07:45,000 --> 00:07:50,000 悲運の姫は14本のスーパーマリオブラザースの ゲームに登場します。 95 00:07:50,000 --> 00:07:53,000 そのうち13本で彼女は誘拐されます。 96 00:08:01,000 --> 00:08:05,000 北米で1988年に発売された スーパーマリオ2でのみ 97 00:08:05,000 --> 00:08:09,000 ピーチ姫は誘拐されません。 98 00:08:09,000 --> 00:08:12,000 また、彼女をプレイヤーキャラとして使える 唯一のゲームです。 99 00:08:12,000 --> 00:08:16,000 ただしこのゲーム、 元はマリオゲームではなかったのです。 100 00:08:16,000 --> 00:08:20,000 日本ではまったく違うタイトルで発売された ゲームだったのです。 101 00:08:20,000 --> 00:08:22,000 そのタイトルは夢工場ドキドキパニック。 102 00:08:22,000 --> 00:08:27,000 英語に訳すと Dream Factory: Heart Pounding Panic。 103 00:08:38,000 --> 00:08:45,000 ニンテンドー・オブ・アメリカは 日本語版スーパーマリオブラザーズ2の 難易度が高すぎ、前作に似すぎていると判断し、 104 00:08:45,000 --> 00:08:51,000 ドキドキパニックを作り直し、 主人公にマリオとルイージを迎えました。 105 00:08:51,000 --> 00:08:54,000 しかし、日本語版ではすで4人の プレイヤーキャラがいました。 106 00:08:59,000 --> 00:09:04,000 ですから、ゲームデザイナーはキノピオとピーチ姫を 残り2人のプレイヤーキャラに起用しました。 107 00:09:04,000 --> 00:09:07,000 こうして既存のキャラモデルを上書きしたのです。 108 00:09:07,000 --> 00:09:12,000 ですから、ピーチ姫がプレイヤーキャラに なったのは事故とも言えます。 109 00:09:12,000 --> 00:09:15,000 でも、短距離を飛べる素晴らしい能力を 持っていました。 110 00:09:15,000 --> 00:09:19,000 特に氷のレベルでとても便利でした。 111 00:09:19,000 --> 00:09:23,000 悲しいことに、ピーチ姫がマリオゲームの 中枢シリーズでプレイヤーキャラになることは 2度とありませんでした。 112 00:09:23,000 --> 00:09:29,000 4人のキャラを使える スーパマリオブラザーズ Wii や WiiU でも 113 00:09:29,000 --> 00:09:32,000 ピーチ姫はゲームプレイから除外されています。 114 00:09:32,000 --> 00:09:34,000 代わりにもう一人のキノピオが追加され、 115 00:09:34,000 --> 00:09:39,000 ピーチ姫は「悲嘆の女性」に戻されてしまいました。 116 00:09:39,000 --> 00:09:42,000 ピーチ姫は数多くのスピンオフに登場します。 117 00:09:42,000 --> 00:09:45,000 マリオパーティ、マリオスポーツ、マリオカート などのシリーズに登場するほか、 118 00:09:45,000 --> 00:09:50,000 他シリーズの任天堂キャラが登場する格闘ゲーム スマッシュブラザーズにも出演しています。 119 00:09:50,000 --> 00:09:55,000 しかし、これらのスピンオフは中枢の スーパーマリオシリーズとは別の世界です。 120 00:09:55,000 --> 00:10:00,000 ピーチ姫はたった一つのゲームで主人公を務めました。 これについてはまた後で話しましょう。 121 00:10:00,000 --> 00:10:05,000 「悲嘆の女性」に当たるキャラクターは、 主体と客体として考えることができます。 122 00:10:05,000 --> 00:10:09,000 簡単に言えば、主体は行動を起こし、 客体は行動の受け皿となる。 123 00:10:09,000 --> 00:10:13,000 主体は主人公です。 物語の中心であり、 124 00:10:13,000 --> 00:10:15,000 殆どの行動を起こす人物です。 125 00:10:15,000 --> 00:10:18,000 ビデオゲームでは、大半の場合が 主人公のプレイヤーキャラに該当し、 126 00:10:18,000 --> 00:10:21,000 話もこのキャラの視点で進みます。 127 00:10:21,000 --> 00:10:25,000 「悲嘆の女性」は、 男性を物語が主体であり、 128 00:10:25,000 --> 00:10:27,000 女性は所有物の役割に 左遷されるトロープです。 129 00:10:27,000 --> 00:10:32,000 これは擬物化の一種です。 客体である悲嘆の女性は受身になり、 130 00:10:32,000 --> 00:10:39,000 勝ち取られる景品、発見を待つ宝物、 達成するべき目的として品物のように扱われるからです。 131 00:10:39,000 --> 00:10:43,000 数多くのアーケードゲームの イントロムービーでは 132 00:10:43,000 --> 00:10:47,000 主人公から奪われる所有物としての 女性が強調されています。 133 00:11:07,000 --> 00:11:14,000 盗まれた所有物を取り戻すための戦いが、 ゲームプレイの怠惰な根拠となるわけです。 134 00:11:14,000 --> 00:11:17,000 核心を突くと、「悲嘆の女性」トロープでは、 女性は物語に無関係なのです。 135 00:11:17,000 --> 00:11:21,000 彼女は男性が競い合うための物に過ぎないのです。 136 00:11:21,000 --> 00:11:23,000 少なくともこれまでの伝統的な例では。 137 00:11:23,000 --> 00:11:28,000 父権制のゲームでは、 女性が相手のチームではなく 138 00:11:28,000 --> 00:11:29,000 ボールであると言われます。 139 00:11:29,000 --> 00:11:33,000 例えば、スーパーマリオは マリオとバウザーが繰り広げるゲームであり、 140 00:11:33,000 --> 00:11:38,000 ピーチ姫の役割は、彼らのゲームの ボールに過ぎないと言えるでしょう。 141 00:11:42,000 --> 00:11:45,000 二人の男性はシリーズを通して 何度も彼女を投げ合い、 142 00:11:45,000 --> 00:11:48,000 「悲嘆の女性」のボールを所有しようとします。 143 00:11:55,000 --> 00:11:58,000 「悲嘆の女性」は任天堂が 発明したものではありませんが、 144 00:11:58,000 --> 00:12:03,000 彼らの「姫を救出する話」の人気により、 業界の基準となってしまいました。 145 00:12:03,000 --> 00:12:07,000 このトロープは、行動の根拠を与える 手軽な方法として使われました。 146 00:12:07,000 --> 00:12:11,000 若い男性の幻想に取り入り、 147 00:12:11,000 --> 00:12:15,000 たくさんのゲームを若いヘテロセクシャルの 少年や男性に売るためです。 148 00:12:15,000 --> 00:12:16,000 「助けて!」 149 00:12:16,000 --> 00:12:18,000 「助けて!」 150 00:12:18,000 --> 00:12:19,000 「助けて!」 151 00:12:19,000 --> 00:12:20,000 「助けて!」 152 00:12:20,000 --> 00:12:21,000 「私を救い出して!」 153 00:12:21,000 --> 00:12:22,000 「助けて!」 154 00:12:22,000 --> 00:12:25,000 「お願い、助けて。ブレード!」 155 00:12:25,000 --> 00:12:27,000 80年代と90年代ではこのトロープが 広く流行したため、 156 00:12:27,000 --> 00:12:30,000 すべての例を挙げるのは無理です。 157 00:12:30,000 --> 00:12:33,000 何百もの例がプラットフォームゲーム、 158 00:12:33,000 --> 00:12:35,000 サイドスクロールの格闘ゲーム、 159 00:12:35,000 --> 00:12:36,000 FPS、 160 00:12:36,000 --> 00:12:38,000 そして RPG に現れます。 161 00:12:45,000 --> 00:12:49,000 ここで、このトロープにありがちな 誤解を解きましょう。 162 00:12:49,000 --> 00:12:53,000 プロットデバイスとしての「悲嘆の女性」は、 他のトロープと一括にされることがあります。 163 00:12:53,000 --> 00:12:58,000 「指名の犠牲者」「英雄的な救出」 「勝利のキス」などのトロープです。 164 00:12:58,000 --> 00:13:01,000 しかし、これらのトロープに 「悲嘆の女性」との関連性はあれども、 165 00:13:01,000 --> 00:13:05,000 必ずしも「悲嘆の女性」トロープの 一部ではないと覚えていてください。 166 00:13:05,000 --> 00:13:09,000 問題の女性は、ゲームまたはシリーズを通して 犠牲者であったり、なかったりします。 167 00:13:09,000 --> 00:13:14,000 ヒーローも、彼女を救出できる場合もあれば、 できない場合もあります。 168 00:13:16,000 --> 00:13:19,000 「悲嘆の女性」トロープの条件を満たすには、 169 00:13:19,000 --> 00:13:23,000 ヒーローの物語の進行のために 女性キャラが無力な状態に貶められ、 170 00:13:23,000 --> 00:13:28,000 (大抵の場合は男性の) ヒーローに 救出されなければならない ということのみです。 171 00:13:29,000 --> 00:13:32,000 それではもう一人の有名な 任天堂のお姫様について話しましょう。 172 00:13:32,000 --> 00:13:36,000 1986年、宮本茂氏は再び 「悲嘆の女性」を使った 173 00:13:36,000 --> 00:13:39,000 NES 版「ゼルダの伝説」を発表しました。 174 00:13:39,000 --> 00:13:45,000 ゲーム史上もっとも愛されている アクションゲームシリーズの第一作でした。 175 00:13:45,000 --> 00:13:46,000 「ゼルダ!」 176 00:13:46,000 --> 00:13:48,000 「ゼルダの伝説は続く」 177 00:13:48,000 --> 00:13:49,000 「ゼルダ!」 178 00:13:49,000 --> 00:13:52,000 「クリスタルを見つけ、姫を救出せよ」 179 00:13:52,000 --> 00:13:53,000 「ゼルダ!」「ゼルダ!」 180 00:13:53,000 --> 00:13:55,000 「ゼルダII:リンクの冒険」 181 00:13:55,000 --> 00:13:58,000 「任天堂!パワーで遊べ!」 182 00:13:58,000 --> 00:14:02,000 25年間に渡り12本以上の ゼルダゲームが発売されましたが、 183 00:14:02,000 --> 00:14:07,000 これらすべてでゼルダ姫は誘拐されるか、 呪われるか、憑依されるか、石化されるか、 184 00:14:07,000 --> 00:14:10,000 または違った形で無力化されます。 185 00:14:31,000 --> 00:14:37,000 ゼルダ姫が自分の冒険の主人公になることも、 主要シリーズでプレイヤーキャラになることもありません。 186 00:14:37,000 --> 00:14:40,000 しかし、すべての「悲嘆の女性」が 平等に作られているわけではありません。 187 00:14:40,000 --> 00:14:46,000 ゼルダ姫はキノコ王国の姫より活発で 不可欠な役割を与えられています。 188 00:14:46,000 --> 00:14:51,000 ピーチ姫と違い、ゼルダ姫の役割はガノンドロフの 誘拐の犠牲者だけではありません。 189 00:14:51,000 --> 00:14:56,000 後のゲームでは、「悲嘆の女性」と 「相棒」の間の存在になります。 190 00:14:56,000 --> 00:15:00,000 プロットデバイスとしての「悲嘆の女性」は、 女性キャラの身に何かが起きることであり、 191 00:15:00,000 --> 00:15:04,000 そのキャラが最初から最後まで ]犠牲者の役割に縛られるわけではないのです。 192 00:15:04,000 --> 00:15:08,000 時折、もっと活動的な役割を与えられる こともあります。 193 00:15:08,000 --> 00:15:13,000 ヒーローのために扉を開けたり、 ヒントやパワーアップなどのアイテムを与え、 194 00:15:13,000 --> 00:15:15,000 冒険の手助けをします。 195 00:15:15,000 --> 00:15:18,000 私はこのバリエーションを 「お手伝いする悲嘆の女性」と読んでいます。 196 00:15:18,000 --> 00:15:24,000 ゼルダ姫は「時のオカリナ」でシークの姿で活躍し、 「風のタクト」でテトラという名前で活躍します。 197 00:15:24,000 --> 00:15:29,000 「時のオカリナ」では、ゼルダ姫はゲームの3/4の間 誘拐を免れます。 198 00:15:29,000 --> 00:15:33,000 シークの姿で身を隠した彼女は 活発で役に立つ冒険の仲間であり、 199 00:15:33,000 --> 00:15:36,000 有能なキャラクターです。 200 00:15:37,000 --> 00:15:43,000 しかし、いわば女性らしい姿のゼルダ姫に戻るなり 201 00:15:43,000 --> 00:15:45,000 たった3分の間に捕獲されてしまいます。 202 00:15:45,000 --> 00:15:49,000 きっちり3分です。 時計で計りました。 203 00:15:52,000 --> 00:15:55,000 彼女の救出がリンクの冒険の終わりへの 目的になるわけです。 204 00:15:55,000 --> 00:16:00,000 同じく、「風のタクト」でテトラは威勢のいい 若い海賊キャプテンです。 205 00:16:00,000 --> 00:16:06,000 しかし、彼女の正体がばれると、 いわば女性らしい姿に戻され、 206 00:16:06,000 --> 00:16:10,000 リンクの冒険に同伴することを 禁止されてしまいます。 207 00:16:10,000 --> 00:16:13,000 急に冒険が危険だと言われるのです。 208 00:16:13,000 --> 00:16:15,000 彼女は城で待つように命令され、 209 00:16:15,000 --> 00:16:20,000 従順に命令に従い、 誘拐されるまで城に留まります。 210 00:16:22,000 --> 00:16:25,000 注目すべきは、 最後のボス戦のステージで、 211 00:16:25,000 --> 00:16:30,000 ゼルダ姫が数分ほどリンクに加勢し、 ガノンドルフと戦います。新鮮な変化です。 212 00:16:31,000 --> 00:16:36,000 しかし、テトラが2007年の「夢幻の砂時計」で 再登場したとき 213 00:16:36,000 --> 00:16:38,000 彼女はイントロで誘拐されてしまいます。 214 00:16:38,000 --> 00:16:42,000 その後、石化されて再び誘拐されます。 215 00:16:42,000 --> 00:16:46,000 たとえ英雄的なことをしても、ゼルダ姫が 悲嘆の女性にされるのは残念です。 216 00:16:46,000 --> 00:16:48,000 彼女は活劇から切り離され、左遷され、 217 00:16:48,000 --> 00:16:51,000 どのゲームでも最低1回は無力になります。 218 00:17:10,000 --> 00:17:15,000 ゼルダ姫は、このトロープにおける女性の描写が なぜ問題で有害なのか、核心を突いています。 219 00:17:15,000 --> 00:17:18,000 悲嘆の女性は「弱々しい」の同義語だけではなく、 220 00:17:18,000 --> 00:17:24,000 役立つ女性キャラや能力のある女性キャラから 力を奪うのです。 221 00:17:24,000 --> 00:17:28,000 どんなに彼女たちの魔法能力や技術、 力について聞かされても 222 00:17:28,000 --> 00:17:34,000 結局は捕われるか、他の方法で無力化され、 救出を待つはめになるのです。 223 00:17:34,000 --> 00:17:39,000 さらに簡潔に言えば、 女性キャラの無力にすることで 224 00:17:39,000 --> 00:17:42,000 男性キャラに力を与えて機能する プロットデバイスです。 225 00:17:50,000 --> 00:17:53,000 悲嘆の女性を典型的な英雄神話と比べてみましょう。 226 00:17:53,000 --> 00:17:57,000 大抵の場合は男性のキャラが 冒険中に怪我をしたり、 227 00:17:57,000 --> 00:18:02,000 無力になったり、 捕獲されたりすることがあります。 228 00:18:05,000 --> 00:18:12,000 これらの状況で、英雄は自分の知恵や技術を使って 脱出します。 229 00:18:12,000 --> 00:18:13,000 「よし、いいぞ」 230 00:18:17,000 --> 00:18:20,000 牢屋に穴を開けて脱出することもできます。 231 00:18:20,000 --> 00:18:24,000 要は、彼らは自力で自由を取り戻せるわけです。 232 00:18:24,000 --> 00:18:26,000 また、困難に打ち勝つ経験は 233 00:18:26,000 --> 00:18:31,000 主人公がより英雄らしく変身するための 大切なステップなのです。 234 00:18:31,000 --> 00:18:35,000 逆に、悲嘆の女性は自力で 窮地を切り抜けることができず 235 00:18:35,000 --> 00:18:39,000 救助者の助けを待つ姿を待つ羽目になります。 236 00:18:39,000 --> 00:18:41,000 苦難は悲嘆の女性のものではなく、 237 00:18:41,000 --> 00:18:45,000 英雄が乗り越えなければならない 至難として描かれてているのです。 238 00:18:45,000 --> 00:18:51,000 結果、このトロープは、危険に晒された女性が 自ら脱出を謀る機会を奪い、 239 00:18:51,000 --> 00:18:55,000 彼女たちが典型的な英雄になれないように しています。 240 00:18:55,000 --> 00:19:01,000 現在、昔ながらの悲嘆の女性ゲームが プラットフォームサービスや モバイル向けに蘇っています。 241 00:19:01,000 --> 00:19:05,000 ゲーム出版社がゲーマーの懐古趣味に 取り入り、稼ごうとしているため、 242 00:19:05,000 --> 00:19:08,000 馴染みのあるキャラクターを 掘り返しているのです。 243 00:19:08,000 --> 00:19:14,000 例えば、エイミー・ローズという悲嘆の女性が 登場する1993年のプラットフォーマー 244 00:19:14,000 --> 00:19:19,000 「ソニック・ザ・ヘッジホッグCD」は 数多くのゲーム機にダウンロードできます。 245 00:19:19,000 --> 00:19:22,000 ジョーダン・メシュナーの有名な「カラテカ」と 「プリンス・オブ・ペルシャ」シリーズは 246 00:19:22,000 --> 00:19:26,000 1980年代にアップル II 家庭機向けに 発売され、 247 00:19:26,000 --> 00:19:29,000 どちらも HD でリメイクされています。 248 00:19:36,000 --> 00:19:40,000 そして1983年のレーザーディスクゲーム 「ドラゴンズ・レア」。 249 00:19:40,000 --> 00:19:45,000 オバカなダフネ姫が登場するこのゲームは、 ほぼ全てのゲームシステムにポートされています。 250 00:19:45,000 --> 00:19:47,000 「助けて!」 251 00:19:47,000 --> 00:19:50,000 「檻には鍵がかかっているわ」 252 00:19:50,000 --> 00:19:53,000 「鍵はドラゴンが首にかけているの」 253 00:19:53,000 --> 00:19:57,000 「ドラゴンを倒すには、魔法の剣を使うのよ」 254 00:19:58,000 --> 00:20:02,000 ポーリーンを覚えていますか? ドンキーコングの女性キャラです。 255 00:20:02,000 --> 00:20:04,000 彼女も蘇りました。 256 00:20:04,000 --> 00:20:07,000 まずは1994年、ゲームボーイ向けの 「ドンキーコング」で。 257 00:20:07,000 --> 00:20:11,000 そして、ニンテンドーDS の 「マリオ VS ドンキーコング」シリーズで。 258 00:20:11,000 --> 00:20:14,000 どちらのゲームもオープニングで ポーリーンが巨大な猿に連れ去られるという 259 00:20:14,000 --> 00:20:19,000 使い古されたプロットを 蒸し返しています。 260 00:20:19,000 --> 00:20:23,000 「マリオ、助けて!」 261 00:20:23,000 --> 00:20:28,000 1987年の格闘アーケードゲーム 「ダブルドラゴン」の 有名なオープニングシーンでは 262 00:20:28,000 --> 00:20:33,000 マリアンが腹にパンチを食らい、 暴漢に担がれ、連れ去られます。 263 00:20:33,000 --> 00:20:37,000 いくつかのバージョンでは、 誘拐される彼女の下着がはっきり見えます。 264 00:20:38,000 --> 00:20:43,000 このゲームは25年の間に 何度もリメイクされ、 数多くのゲームシステムにポートされ、 265 00:20:43,000 --> 00:20:48,000 マリアンが暴行され、悲嘆の女性にされるところを 新しい世代が楽しめるように 発売されてきました。 266 00:20:48,000 --> 00:20:55,000 2012年の新作「ダブルドラゴン・ネオン」では、 この逆進的なシーンを新しいゲーマーに紹介しました。 267 00:20:55,000 --> 00:20:56,000 今度は高画質で。 268 00:21:00,000 --> 00:21:06,000 女性が根本的に弱く、無力でなにもできないと 繰り返し描写されるのは 269 00:21:06,000 --> 00:21:11,000 ゲーム内のキャラや彼女たちが存在する ゲーム世界の外にも影響があります。 270 00:21:11,000 --> 00:21:14,000 これらのゲームは現実から切り離された 世界に存在しているわけではないのです。 271 00:21:14,000 --> 00:21:20,000 ゲームはますます影響力を増しており、 社会と文化のエコシステムの大切な一部です。 272 00:21:20,000 --> 00:21:23,000 実際に、逆進的で性差別的な考えがはびこる 現実世界のコンテキストで 273 00:21:23,000 --> 00:21:26,000 このトロープは使われているのです。 274 00:21:26,000 --> 00:21:31,000 悲しいことに、世界中の人口の大半が、 女性は男性によって守られなければならないという 275 00:21:31,000 --> 00:21:36,000 性差別的な考えにしがみついていることです。 276 00:21:36,000 --> 00:21:40,000 女性が弱い性別であるという確信は 277 00:21:40,000 --> 00:21:45,000 深くしみ込んだ、社会的につくられた神話で、 完全に誤っており、 278 00:21:45,000 --> 00:21:50,000 女性がか弱く、傷つきやすい生き物として 描写され続ければ、 279 00:21:50,000 --> 00:21:53,000 この考えは補強され、浸透し続けます。 280 00:21:53,000 --> 00:21:57,000 念のため言っておきますが、悲嘆の女性を プロットデバイスとして使用したすべてのゲームが 281 00:21:57,000 --> 00:22:00,000 自動的に性差別的で価値がないと 言っているわけではありません。 282 00:22:00,000 --> 00:22:04,000 しかし、ポップ文化は私たちの生活に 多大な影響を与えるものであり、 283 00:22:04,000 --> 00:22:12,000 悲嘆の女性トロープが利用され続けるのは、 女性にとって有害な 家父長主義を助長するにすぎません。 284 00:22:13,000 --> 00:22:18,000 私は任天堂で育ちました。人生を通して マリオとゼルダシリーズのファンで、 285 00:22:18,000 --> 00:22:23,000 私にとって特別なゲームであり続けるでしょう。 たくさんのゲーマーにも同じことが言えると思います。 286 00:22:23,000 --> 00:22:28,000 しかし、これらゲームの持つ問題面を認識し、 批評することも大切です。 287 00:22:28,000 --> 00:22:31,000 特に、これらのゲームシリーズの多くは 今や多大な人気を誇り、 288 00:22:31,000 --> 00:22:34,000 キャラが世界的な人気者ですから 尚更です。 289 00:22:34,000 --> 00:22:38,000 しかし、ゲーム開発者が性別の表現に 関する考え方を変え、 290 00:22:38,000 --> 00:22:41,000 女性が英雄のゲームを作ることは すぐにでも可能なのです。 291 00:22:41,000 --> 00:22:47,000 ゼルダ姫、シークやテトラが 主人公のゲームができたら素晴らしいでしょう。 292 00:22:47,000 --> 00:22:51,000 DS ゲームに限らず、据置機のゲームもです。 293 00:22:52,000 --> 00:22:58,000 今回は、「悲嘆の女性」がビデオゲームの歴史において 最も使い古された決まり事で、 294 00:22:58,000 --> 00:23:02,000 ゲームの大衆化と開発の中核であると 確立しました。 295 00:23:02,000 --> 00:23:06,000 では近年のゲームはどうでしょうか。 過去10年に何か変化はあったのでしょうか? 296 00:23:06,000 --> 00:23:12,000 パート2では近年の悲嘆の女性を 見ていきます。お楽しみに。 297 00:23:12,000 --> 00:23:17,000 このお約束が今日に至るまで どのように悪用されてきたか 見ていきましょう。 298 00:23:17,000 --> 00:23:22,000 次に、ゲーム開発者がどのように 悲嘆の女性を逆しようとしたか見ていきます。 299 00:23:23,000 --> 00:23:27,000 Kickstarter をサポートしてくれた 後援者の皆さんの支援のお陰で 300 00:23:27,000 --> 00:23:31,000 このビデオシリーズを実現できました。 ありがとうございました。