0:00:15.433,0:00:17.994 「 ま だ 」 という力 0:00:18.408,0:00:20.793 シカゴの ある高校では 卒業に 0:00:20.793,0:00:24.892 一定の単位修得が 必要なのですが [br]試験に合格できない場合 0:00:24.892,0:00:29.481 生徒は 「未合格」 という [br]成績を手にすると 耳にしたんです 0:00:30.516,0:00:33.091 なんて素晴らしい!と思いました 0:00:33.091,0:00:36.562 「不合格」なら 自分は「ダメだ」 [br]「もう どうしようもない」 と思います 0:00:36.562,0:00:39.630 ですが 手にした成績が [br]「未合格」 だったら 0:00:39.630,0:00:43.175 自分は 学習曲線上にいる [br]とわかりますよね 0:00:43.175,0:00:46.278 未来 ( 未だ 来ず )へ続く [br]この先の道を 与えてくれます 0:00:46.278,0:00:52.439 また 「未合格」は 私の研究初期に起きた [br]決定的な 転機となった程の 0:00:54.825,0:00:56.839 閃きも 与えてくれたのです 0:00:57.885,0:00:59.593 私は 子供たちの 0:00:59.593,0:01:03.805 「挑戦」と「困難」への [br]対処方法を検証しようと 0:01:04.626,0:01:07.500 10歳の子供たちに [br]彼らにとって 0:01:07.639,0:01:11.805 「ちょっと大変」すぎる [br]困難課題を 与えました 0:01:12.848,0:01:17.383 その中で 驚く程 前向きな [br]反応を示した子達がいました 0:01:20.100,0:01:23.102 こんなことを言ったんです [br]「挑戦 大好き!」 0:01:24.214,0:01:28.427 「解ることが 何か増えたら[br]良いなって思ったんだよ!」 0:01:29.624,0:01:34.795 彼らには 「能力」は 開発できる!と [br]解っていたのです 0:01:35.806,0:01:39.034 私が 「成長型マインドセット」 [br]と呼ぶものを 持っていたんです 0:01:39.034,0:01:44.151 一方 他の生徒達は 「惨め」 [br]「最悪だ」 という気分を 味わいました 0:01:44.428,0:01:48.012 彼らの より「停滞した」 [br]マインドセットに依れば 0:01:48.446,0:01:53.833 知能は 評価の対象であり [br]自ら “ 失敗 ”の 烙印を押したのです 0:01:57.710,0:02:02.058 「まだ」の力に [br]委ねる代わりに 0:02:02.531,0:02:06.091 「今」現在の状態に [br]囚われてしまったのです 0:02:07.809,0:02:09.968 その生徒達は 次にどうするのか 0:02:09.968,0:02:12.191 ご報告しますね[br]ある研究調査で 0:02:12.191,0:02:17.793 停滞型の 生徒達は 「テストで1回失敗したら―」 [br]もっと勉強する代わりに 0:02:17.793,0:02:21.792 「今度はたぶん…カンニングする」 [br]と話しました 0:02:22.762,0:02:25.587 別の研究では [br]一度の失敗の後 0:02:25.587,0:02:29.464 自分たちより出来が悪かった [br]「誰か」を探しました 0:02:29.464,0:02:32.854 自分自身が 「よくできた!」 [br]と安心するために 0:02:33.756,0:02:38.560 そして いずれの研究でも[br]難しい問題を 避けて通りました 0:02:40.046,0:02:44.342 科学者達が 脳に生じる [br]電気的活動を 測定しました 0:02:45.525,0:02:48.424 生徒達がエラー(間違い)に [br]直面した際の結果です 0:02:49.210,0:02:53.073 左側は 停滞型マインドセットの [br]生徒達です 0:02:53.518,0:02:56.187 殆ど 活動しません 0:02:56.187,0:02:58.364 エラーから 逃げるのです 0:02:58.364,0:03:00.868 何も 対処しません 0:03:00.868,0:03:04.452 対する右側 [br]成長型マインドセット― 0:03:04.452,0:03:08.296 「様々な能力は 開発されうる」 [br]という発想の 生徒達です 0:03:08.459,0:03:10.460 彼らは 極めて真剣に [br]取り組みます 0:03:10.460,0:03:13.175 「まだ」 を仲間にして [br]脳が 燃え盛っていますね 0:03:13.385,0:03:15.724 成長型の子は [br]じっくり 取り組みます 0:03:15.863,0:03:17.940 この子達は [br]エラー処理を しているのです 0:03:17.940,0:03:21.646 彼らは 間違いから学習し [br]それを 修正します 0:03:24.901,0:03:27.675 さて 私達は [br]どのように 子供を 育てているでしょう 0:03:27.675,0:03:31.823 「まだ これから」よりも [br]「今 この時」の為に 育てているのでしょうか 0:03:33.085,0:03:37.531 私達は 「通知表で“5”を並べるのに[br]頭がいっぱいな子」 を育てているのでしょうか 0:03:37.744,0:03:42.245 「大きい夢の描き方がわからない子達」 [br]を育てているのでしょうか 0:03:43.374,0:03:48.277 子供の「最も大きなゴール」は 次回の“5”や [br]次のテストの点数 なんでしょうか 0:03:52.147,0:03:57.895 この絶え間ない 短期的 [br]承認欲求(賞賛獲得欲求)を 0:03:58.607,0:04:00.692 将来の生活まで [br]抱え続けるのでしょうか 0:04:00.692,0:04:04.638 雇い主の方達が [br]私に教えて下さるでしょう 0:04:04.638,0:04:08.165 私達がもう [br]「 ちゃ・ん・と 」育てあげたことを 0:04:08.165,0:04:12.450 賞与というご褒美(長期的報酬) [br]がない日は 働く気力が出ない 0:04:12.450,0:04:14.798 若い世代を 0:04:15.806,0:04:19.348 さぁ 私達に 何ができるでしょう 0:04:20.766,0:04:23.989 どうすれば [br]「まだ」と 結び付けられるのか 0:04:25.095,0:04:27.064 「私達がやれる事」を [br]幾つか お示しします 0:04:27.195,0:04:30.173 まず なにより [br]賢く褒める事 0:04:31.074,0:04:34.537 褒めるのは [br]知能や才能ではありませんよ 0:04:35.031,0:04:36.998 それは失敗でした 0:04:36.998,0:04:38.697 もうやらないで 0:04:38.697,0:04:42.216 そうではなく 取り組んでいる [br]プロセスを 褒めるんです 0:04:43.107,0:04:47.278 彼らの 努力 やり方 [br]集中力 忍耐力 0:04:47.278,0:04:49.262 進歩 0:04:49.262,0:04:50.929 このプロセスの賞賛が 0:04:50.929,0:04:54.747 強くて 「 しなる 」子供を [br]創るのです 0:04:56.732,0:04:59.647 「まだ」を「報酬」にする方法は [br]他にも 色々あります 0:05:00.060,0:05:03.794 最近 ワシントン大学の [br]ゲーム・サイエンティストと 0:05:04.136,0:05:06.369 チームを組んで 0:05:06.369,0:05:10.852 「まだ」 を報酬とした [br]オンライン数学ゲームを 開発しました 0:05:11.962,0:05:17.548 このゲームでは 「努力 解き方 進度」 [br]によって 生徒が報酬を得ます 0:05:18.330,0:05:20.611 通常の数学ゲームは 0:05:20.611,0:05:24.609 「今すぐ!正しく!」[br]答えることで 点数を得ますが 0:05:25.132,0:05:28.077 このゲームでは [br]プロセスに 得点を与えたのです 0:05:28.194,0:05:30.716 その結果 [br]「努力」 0:05:30.716,0:05:32.782 「解法」 「取組み時間」 0:05:33.048,0:05:37.204 「忍耐力」が とてもとても [br]難しい問題にぶつかった時ほど 0:05:37.269,0:05:41.709 増加する という成果を得ました 0:05:44.919,0:05:48.832 我々研究者は 発見し続けています [br]「まだ」 や「未合格」 という言葉だけで 0:05:48.832,0:05:52.050 子供たちが [br]「大いなる自信」を 身につけることを 0:05:52.228,0:05:58.422 「やり抜く力」の源である [br]未来へ続く道が 開けることを 0:06:01.705,0:06:05.600 さらに 生徒自身の マインドセットを [br]変えることも 可能です! 0:06:06.763,0:06:09.596 ある研究調査で 我々は [br]生徒に こう教えました 0:06:09.596,0:06:13.415 何か新しいことや [br]難しいことを学習しようと 0:06:14.289,0:06:17.449 コンフォートゾーン(脳が慣れ親しんだ現状 ) [br]を押しのける度に 0:06:17.449,0:06:22.674 脳内のニューロンが 新しく強い結合を作れる 0:06:23.033,0:06:26.255 そうすると 段々 [br]君達の頭が もっと良くなっていくよ 0:06:27.071,0:06:29.598 何がおきたでしょう [br]この研究で 0:06:29.598,0:06:33.599 この成長型マインドセットを [br]教えられなかった 生徒達は 0:06:33.599,0:06:38.689 中学進級で勉強が難しくなると[br]学校の成績が 低下し続けました 0:06:39.584,0:06:45.605 ですが 事前に 「脳のしくみ」を[br]教えられた生徒達は 急激に 成績が伸びました 0:06:46.367,0:06:51.858 我々は 今お示ししたような 成長を [br]何千人もの 子供たちと共に 0:06:52.707,0:06:58.370 実証してきました [br]特に 成績が悪かった生徒達と 0:06:59.467,0:07:02.442 さて 「平等」について お話しましょうか 0:07:03.745,0:07:07.450 米国では 慢性的に [br]学力不足である 0:07:08.062,0:07:10.701 生徒のグループが 存在します 0:07:10.701,0:07:13.832 例えば 都心部や 0:07:13.832,0:07:17.307 アメリカ先住民居留区の 子供たちです [br]あまりにも 長きに渡り 0:07:17.307,0:07:23.296 「不足」のまま だったので 殆どの人が [br]「抜け出せない」 と 諦めていました 0:07:25.473,0:07:32.089 しかし 教育者が “ 「まだ」づくし ” の [br]成長型マインドセット授業 を施すと 0:07:33.199,0:07:35.755 「平等」が 出現します 0:07:36.774,0:07:39.688 ほんの数例 ご紹介しますね 0:07:42.237,0:07:46.712 1年で ニューヨーク市ハーレム地区の [br]キンダークラス (5歳からの義務教育)が 0:07:49.664,0:07:56.290 全米学力テスト 上位5%の得点 0:07:59.186,0:08:04.649 学校にあがった時 ほとんどの子供が [br]鉛筆すら 握れませんでした 0:08:06.368,0:08:08.405 1年で 0:08:09.937,0:08:14.184 サウス・ブロンクス地区の [br]かなり遅れを取っていた 4年生の子達が 0:08:14.688,0:08:19.283 算数のテストで [br]ニューヨーク州で1番!の 0:08:21.568,0:08:23.910 4年生クラスに 0:08:24.663,0:08:27.744 1年から 1年半かけて 0:08:29.240,0:08:33.702 アメリカ先住民居留区内 [br]にある学校の生徒が 0:08:34.987,0:08:39.520 学区内の [br]最下位からトップへ! 0:08:42.142,0:08:46.761 なんと その区域には シアトルの [br]裕福な地区も 含まれていました 0:08:47.821,0:08:53.952 つまり 先住民の子供たちが [br]マイクロソフト・キッズを 超越したのです 0:08:58.188,0:09:01.037 「努力」や「困難」[br]に対する捉え方が 0:09:01.037,0:09:04.363 転換されたが故に [br]こんなことが 起きたのです 0:09:05.503,0:09:08.957 以前は [br]努力や困難課題は 0:09:08.983,0:09:13.451 「頭が悪い...」という思いや 「無理だ」という [br]諦めの気持ちを 生むものでした 0:09:14.743,0:09:17.777 でも 今や 努力と困難こそ 0:09:17.841,0:09:22.157 ニューロンが 新たな連結を [br]より強い結合を 0:09:22.157,0:09:23.901 [br]生み出している時間 0:09:23.901,0:09:26.506 彼らが 正に [br]「賢くなっていく時」 なのです 0:09:31.630,0:09:35.708 先日 13歳の男の子から [br]手紙をもらいました 0:09:37.373,0:09:40.366 彼曰く [br]“ ドゥエック教授へ― 0:09:41.747,0:09:46.577 僕は 貴方の著書が 確固たる科学的研究に[br]基づいていることを 感謝してます 0:09:48.716,0:09:52.899 そして だからこそ[br]実践してみよう! と決めたんです 0:09:54.532,0:09:57.326 僕は 学校のことを [br]もっと 頑張るようにしました 0:09:58.507,0:10:01.495 それに 家族との関係 0:10:01.495,0:10:04.844 そして 学校の みんなとのことも [br]そしたら― 0:10:05.497,0:10:10.449 それぞれ 全部で [br]めざましい進歩を 体験できました! 0:10:12.828,0:10:16.481 僕は 人生のほとんどを [br]無駄に生きてきたって 今ならわかります ” 0:10:20.885,0:10:24.640 もう いかなる人生も [br]無駄にするのは やめましょう! 0:10:26.328,0:10:29.132 様々な 「能力」が ― 0:10:29.815,0:10:33.117 開発・育成できるもの [br]だとわかった以上 0:10:36.388,0:10:41.504 これは 子供たちの [br]「全ての!」子供たちの 「基本的人権」なのです 0:10:43.031,0:10:47.066 真に 成長可能な「場」 [br]に生きることが 0:10:48.891,0:10:52.564 「まだ」に 満ち溢れた世界に [br]生きることが 0:10:56.981,0:10:58.971 ありがとうございました 0:10:58.971,0:11:01.540 (拍手)