WEBVTT 00:00:07.875 --> 00:00:13.561 1953年1月に 高潮が北海を襲いました 00:00:13.561 --> 00:00:16.602 巨大な波が押し寄せた オランダの海岸線付近で 00:00:16.602 --> 00:00:19.425 2000人近くが命を落としました 00:00:19.425 --> 00:00:23.491 54年後 同じような嵐が この地域を脅かしました 00:00:23.491 --> 00:00:26.451 しかし 今回 オランダは準備ができていました 00:00:26.451 --> 00:00:27.801 海水面が上昇するにつれて 00:00:27.801 --> 00:00:32.469 最新のコンピューターセンサーが 緊急プロトコルを発動しました 00:00:32.469 --> 00:00:34.099 30分かけて 00:00:34.099 --> 00:00:40.832 前方の水路を守るための 240メートルの鋼鉄のアームが閉じました 00:00:40.832 --> 00:00:43.692 680トンのボールジョイントを使用し 00:00:43.692 --> 00:00:47.886 変動する風や波に合わせて 防潮堤が動きます 00:00:47.886 --> 00:00:51.527 朝までには 嵐は過ぎ去り 浸水は最小限にとどまりました 00:00:51.527 --> 00:00:54.997 マースラントケリングの 現地での始動は 00:00:54.997 --> 00:00:57.197 大成功を収めました NOTE Paragraph 00:00:57.197 --> 00:01:00.111 世界最大の可動式構造物の一つとして 00:01:00.111 --> 00:01:04.111 この防潮堤は 人類が生み出した工学の驚異です 00:01:04.111 --> 00:01:07.382 しかし マースラントケリングは デルタ計画という 00:01:07.382 --> 00:01:12.478 大規模な連動型の治水システムの ほんの一部に過ぎません 00:01:12.478 --> 00:01:17.281 世界で最も洗練された 水防プロジェクトなのです NOTE Paragraph 00:01:17.281 --> 00:01:20.411 オランダは水の管理において 長い歴史があります 00:01:20.411 --> 00:01:24.598 この国はヨーロッパの 3大河川のデルタ地帯に位置し 00:01:24.598 --> 00:01:28.656 領土の4分の1近くが 海抜0メートル地帯にあります 00:01:28.656 --> 00:01:32.728 このような地理的条件から この地域は 非常に洪水に見舞われやすくなっています 00:01:32.728 --> 00:01:36.498 そのため オランダの昔の統治機関が 00:01:36.498 --> 00:01:41.599 非公式の「水管理委員会」として 水防プロジェクトを運営管理していました 00:01:41.599 --> 00:01:47.010 しかし 1953年の嵐の後 オランダ政府は公式な施策を打ちました 00:01:47.010 --> 00:01:49.560 デルタ委員会を設立し 00:01:49.560 --> 00:01:54.039 南西部全域を守ることを 任務としました 00:01:54.039 --> 00:01:56.349 人口密度の高い都市に焦点を当て 00:01:56.349 --> 00:02:01.973 年間の洪水の発生確率を 1万分の1以下にすることを目標としました 00:02:01.973 --> 00:02:06.303 これは一般的な沿岸都市の 約100倍の安全を意味しています NOTE Paragraph 00:02:06.303 --> 00:02:10.742 このような高い目標を達成するために 南西海岸沿いにおける 00:02:10.742 --> 00:02:12.612 様々なインフラ整備計画が 求められました 00:02:12.612 --> 00:02:17.564 1つ目の防衛線はこの地域の水害を受けやすい 河口部を堰き止めることでした 00:02:17.564 --> 00:02:22.300 この大きな入り江を通じて オランダの多くの川は北海へ流れ 00:02:22.300 --> 00:02:26.606 暴風雨の時には洪水による水の流れが 陸側へと押し寄せていました 00:02:26.606 --> 00:02:31.093 デルタ委員会は一連のダムを利用して これらの河口を 00:02:31.093 --> 00:02:35.909 自然保護区や地域の公園としての 役割をはたす広大な湖に変えました 00:02:35.909 --> 00:02:40.054 しかし この戦略は ニーウェ・ワーテルウェフには通用しません 00:02:40.054 --> 00:02:43.004 地元の海運業の生命線として 00:02:43.004 --> 00:02:46.764 この水路は安全な時に開かれ 00:02:46.764 --> 00:02:49.554 高潮時には堤防として機能する 必要がありました 00:02:49.554 --> 00:02:52.714 1998年にマースラントケリングが 完成すると 00:02:52.714 --> 00:02:56.053 必要とされていた 柔軟性の高い防御装置になりました NOTE Paragraph 00:02:56.053 --> 00:03:00.986 草の生えた土手や コンクリートの防波堤などに加え 00:03:00.986 --> 00:03:05.158 これらの堤防は デルタ計画の大部分を占め 00:03:05.158 --> 00:03:09.158 海から押し寄せる嵐の影響を防ぐことに 重点が置かれていました 00:03:09.158 --> 00:03:12.748 しかし その後の数十年には オランダはデルタ計画を補完して 00:03:12.748 --> 00:03:17.310 洪水から より内陸部を守るための 追加策が追及されました 00:03:17.310 --> 00:03:19.870 「Room for the River (河川のための空間)」計画で 00:03:19.870 --> 00:03:23.570 農場や土手が 海岸から離れた所に移設されました 00:03:23.570 --> 00:03:27.666 これにより 低地の氾濫原に 水をたたえる場所ができ 00:03:27.666 --> 00:03:31.784 貯水池や地元の野生生物の 生息地ができました 00:03:31.784 --> 00:03:35.854 この戦略的な陸地の後退で 洪水のリスクが減っただけではなく 00:03:35.854 --> 00:03:38.038 再開発された居住地に 00:03:38.038 --> 00:03:40.938 より高密度で持続性のある建築が できるようになりました NOTE Paragraph 00:03:40.938 --> 00:03:46.252 街のほとんどが海抜0メートル地帯にあって 繁栄しているロッテルダムほど 00:03:46.252 --> 00:03:51.679 オランダの多面的な水管理を 具現化している都市は おそらくありません 00:03:51.679 --> 00:03:53.229 嵐の脅威にさらされると 00:03:53.229 --> 00:03:58.146 人口密度の高い古い地区は 昔ながらの土手によって守られています 00:03:58.146 --> 00:04:02.278 一方 新しい地区は 人工的に地盤を高くしていて 00:04:02.278 --> 00:04:05.808 建物の屋上が 雨水を蓄えられる 緑のあるスポーツ施設も多くあります 00:04:05.808 --> 00:04:10.227 市内の数多くの建造物では 駐車場や広場などが 00:04:10.227 --> 00:04:13.077 貯水施設に変わります 00:04:13.077 --> 00:04:16.757 これらの建造物は 普段 劇場や競技場として使われているものです 00:04:16.757 --> 00:04:21.407 一方 港では 水位に応じて上下する 浮体式パビリオンが浮かんでいます 00:04:21.407 --> 00:04:25.007 これらは初期に計画された 水陸両用の構造物で 00:04:25.007 --> 00:04:30.026 その一部は水質浄化システムと 太陽光パネルを備えています NOTE Paragraph 00:04:30.026 --> 00:04:33.526 この取り組みは オランダを水管理の最先端に導いた 00:04:33.526 --> 00:04:37.526 技術と政策の一部に過ぎません 00:04:37.526 --> 00:04:41.446 この国は 自然災害に より強い都市をつくるため 00:04:41.446 --> 00:04:43.046 新たな方法を模索し続けています 00:04:43.046 --> 00:04:46.025 気候変動による海面上昇が 00:04:46.025 --> 00:04:48.855 世界中の低地にある都市を 脅かしている中 00:04:48.855 --> 00:04:53.936 オランダは 流れに乗る方法の すぐれた実例を示しています