WEBVTT 00:00:15.313 --> 00:00:17.631 こんにちは 00:00:17.631 --> 00:00:20.538 これ 何だと思いますか? 00:00:20.538 --> 00:00:23.467 ゲームの中の秘宝じゃありません 00:00:23.467 --> 00:00:25.582 日よけです 00:00:25.582 --> 00:00:29.495 こんなに穴だらけで 日よけになるのかと思うかもしれませんが 00:00:29.495 --> 00:00:33.117 夏のお昼時には ちゃんと日陰になるんです 00:00:33.117 --> 00:00:37.811 太陽が動くと 光がちょっと 漏れてくるんですが 00:00:37.811 --> 00:00:41.095 木陰みたいな感じで気持ちが良いんです 00:00:41.095 --> 00:00:46.489 今日はこんなものを なんで 僕が作ろうと思ったかっていう話です 00:00:46.489 --> 00:00:49.072 この日よけの研究は僕の人生の中で 00:00:49.072 --> 00:00:51.932 目茶苦茶面白かった研究なんですが 00:00:51.932 --> 00:00:55.090 最初からこんなものを作ろうと 思っていたわけではありません 00:00:55.090 --> 00:00:58.447 最初は 都会は何で暑いのか? 00:00:58.447 --> 00:01:01.237 ということを考えていたんです 00:01:01.237 --> 00:01:06.669 都会が周囲の郊外よりも暑くなる現象を 00:01:06.669 --> 00:01:08.939 ヒートアイランドといいます 00:01:08.939 --> 00:01:10.734 ヒートアイランドというと 00:01:10.734 --> 00:01:15.221 みなさんは夏の暑い昼間の気温を 思い浮かべると思います 00:01:15.221 --> 00:01:20.636 ですが 実際には 昼間の気温は 00:01:20.636 --> 00:01:26.036 田舎も都会もほとんど変わりません 00:01:26.036 --> 00:01:30.712 ヒートアイランドが顕著に見えるのは 夜なんです 00:01:30.712 --> 00:01:33.248 でも実際問題として 00:01:33.248 --> 00:01:37.458 夏暑いときに都会にいると 暑く感じますよね 00:01:37.458 --> 00:01:39.769 そういうデータもあります 00:01:39.769 --> 00:01:44.223 [街の地表面は熱い] これは京都の地表面温度です 00:01:44.223 --> 00:01:47.618 衛星写真で衛星から撮った 地表面温度です 00:01:47.618 --> 00:01:49.190 昼間の温度です 00:01:49.190 --> 00:01:54.867 これを見るとやっぱり 都会が暑いということが分かります 00:01:54.867 --> 00:01:58.022 地面が熱いと何が起こるかというと 00:01:58.022 --> 00:02:01.318 熱い地面から赤外線がやってきます 00:02:01.318 --> 00:02:03.884 その赤外線は熱い路面に立っている人間に 00:02:03.884 --> 00:02:07.602 大体100Wくらいの熱を熱を余計に与えます 00:02:07.602 --> 00:02:12.337 100Wというと どのくらい熱いか ちょっと想像つかないかもしれませんけど 00:02:12.337 --> 00:02:16.642 大体この使い捨てカイロ1枚1Wです 00:02:16.642 --> 00:02:18.733 100Wで これ100枚分です 00:02:18.733 --> 00:02:21.183 これで暑くないわけないですよね? 00:02:21.183 --> 00:02:26.557 ですから 実は 街の昼間 暑いのは 00:02:26.557 --> 00:02:28.810 気温が高いからではなくて 00:02:28.810 --> 00:02:32.565 暑い路面からの赤外線が強いからなんです 00:02:32.565 --> 00:02:36.521 じゃあ街は何故そんなに地表面が 熱くなっちゃうんでしょうか? 00:02:36.521 --> 00:02:39.251 [建物や道路は大きい] [葉っぱは小さい] 00:02:39.251 --> 00:02:44.536 街の表面と田舎の表面と 地表面を見比べてみると 00:02:44.536 --> 00:02:47.372 田舎の方は 小さい葉っぱで覆われています 00:02:47.372 --> 00:02:51.590 それに対して 都会は 大きなビルであるとか 道路 00:02:51.590 --> 00:02:54.350 大きな面で覆われています 00:02:54.350 --> 00:02:59.630 そんなのは温度と関係ないと思うかも しれませんが これ 大ありなんです 00:03:00.350 --> 00:03:04.862 夏の炎天下に 車を置いておくと とても熱くなってしまうことは 00:03:04.862 --> 00:03:06.966 皆さんよくご存知ですが 00:03:06.966 --> 00:03:10.433 このミニカーは熱くなりません 00:03:10.433 --> 00:03:13.049 小さいものは 空気に熱を逃す効率が良いので 00:03:13.049 --> 00:03:15.599 熱くならないんです 00:03:15.599 --> 00:03:20.127 よく見ると 葉っぱって これくらいの大きさですよね 00:03:20.127 --> 00:03:22.053 本当にこんなことが 起こるのか?というのを 00:03:22.053 --> 00:03:24.978 さっきの衛星画像で見てみましょう 00:03:24.978 --> 00:03:28.429 左下の方に白いところ つまり熱いところがあります 00:03:28.429 --> 00:03:30.499 これは何かというと 00:03:30.499 --> 00:03:33.390 自衛隊の駐屯地です 00:03:33.390 --> 00:03:38.681 大きな屋根のある大きな建物があります 00:03:38.681 --> 00:03:42.606 別に中で爆弾作っている訳ではないんです (笑) 00:03:42.606 --> 00:03:44.907 もっと北の方にやっぱり熱いところがあります 00:03:44.907 --> 00:03:49.527 これは何かというと 自動車工場です 00:03:49.527 --> 00:03:52.494 大きな屋根を持つ 巨大な建物が並んでます 00:03:52.494 --> 00:03:55.926 やっぱり大きな面は熱くなっちゃう ってことがわかります 00:03:55.926 --> 00:03:56.950 もう一つ見てみましょう 00:03:56.950 --> 00:03:58.663 今度は右下の方です 00:03:58.663 --> 00:04:00.826 これは山の中なんですが 00:04:00.826 --> 00:04:04.777 これは何かって言うと ゴルフ場です 00:04:04.777 --> 00:04:07.880 ゴルフ場の芝が熱いんです 00:04:07.880 --> 00:04:10.584 芝の葉っぱって 小さいですよね 00:04:10.584 --> 00:04:14.820 今 小さなものは熱くならないって 言ったばかりなんですが 00:04:14.820 --> 00:04:18.707 熱は空気に逃がしますから 風通しが必要なんです 00:04:18.707 --> 00:04:20.888 芝は地面に密生していいて 風が通らないので 00:04:20.888 --> 00:04:24.128 熱くなっちゃうんです 00:04:24.128 --> 00:04:26.726 こういう大きな木はというと 00:04:26.726 --> 00:04:29.414 小さな葉が三次元的にばらまかれていて 00:04:29.414 --> 00:04:32.484 風通しが良いので熱くならないんです 00:04:32.484 --> 00:04:36.536 こういう風通しの良さを実現するには どういう構造になっていたらいいか? 00:04:36.536 --> 00:04:40.101 というので登場するのが このシェルピンスキー四面体です 00:04:40.101 --> 00:04:43.354 このシェルピンスキー四面体は 00:04:43.354 --> 00:04:48.891 面積はあるんだけど体積はないという 不思議な性質を持っています 00:04:48.891 --> 00:04:52.298 紙のように面積がありますから 光を遮ることができます 00:04:52.298 --> 00:04:56.949 でも体積がありませんから スカスカで風がよく通ります 00:04:56.949 --> 00:04:58.848 なんか良く分からなく なってきたと思いますから 00:04:58.848 --> 00:05:01.427 フラクタルの説明をしたいと思います 00:05:01.427 --> 00:05:04.043 いまミニーマウスの写真がここにあります 00:05:04.043 --> 00:05:09.100 50%縮小した写真を3枚撮ります 00:05:09.100 --> 00:05:12.468 1枚の面積は4分の1ですから 3枚で4分の3です 00:05:12.468 --> 00:05:14.066 ちょっと小さくなりました 00:05:14.066 --> 00:05:17.186 これ 全体をまた同じようにコピーを取ります 00:05:17.186 --> 00:05:20.454 4分の3の4分の3で また小さくなります 00:05:20.454 --> 00:05:22.391 これをどんどん繰り返します 00:05:22.391 --> 00:05:25.695 どんどんどんどん繰り返して 無限回繰り返すと 00:05:25.695 --> 00:05:27.993 面積がゼロになっちゃいます 00:05:27.993 --> 00:05:32.451 これ 100年くらい前の シェルピンスキーという数学者が考えたもので 00:05:32.451 --> 00:05:34.806 シェルピンスキーのガスケット といわれています 00:05:34.806 --> 00:05:40.077 でもこれは当時の数学者でも なんだかよく分からなかったので 00:05:40.077 --> 00:05:42.804 悪魔図形と言われたそうです 00:05:42.804 --> 00:05:46.738 でも実はこの悪魔 皆さんの周りにいっぱいあります 00:05:46.738 --> 00:05:49.215 はい 今度は山際(やまぎわ)先生 (笑) 00:05:49.215 --> 00:05:53.281 山際先生のコピーを取りたいと思いますが 4枚取ります 00:05:53.281 --> 00:05:55.858 ちょっとこれとコピーの取り方を変えます 00:05:55.858 --> 00:06:01.388 4枚ですが 一番下は なぜか非常にやせ細っちゃった山際先生です 00:06:01.388 --> 00:06:05.459 これ全体をまた同じように コピーを取っていきます 00:06:05.459 --> 00:06:13.518 いま 山際先生が4人 山際先生が16人 山際先生が64人 00:06:13.518 --> 00:06:17.820 えー 256人 1024人 どんどんいきます どんどんどんどんいって 00:06:17.820 --> 00:06:22.776 山際先生がどんどん小さくなります 00:06:22.776 --> 00:06:25.320 (笑) 00:06:25.320 --> 00:06:26.839 さあ これ 何でしょう? 00:06:26.839 --> 00:06:30.132 葉っぱですよね 00:06:30.132 --> 00:06:34.977 これは世界人口を超える山際先生から成る 葉っぱなんですが 00:06:34.977 --> 00:06:36.232 (笑) 00:06:36.232 --> 00:06:38.749 本物より本物っぽい 00:06:38.749 --> 00:06:41.754 さっきのシェルピンスキーのガスケットは 悪魔と呼ばれましたが 00:06:41.754 --> 00:06:44.931 これは悪魔どころじゃなくて もう実に自然な図形です 00:06:44.931 --> 00:06:47.373 でもこれはコピーの取り方を ちょっと変えただけで 00:06:47.373 --> 00:06:50.658 この2つは同じ図形の仲間なんです 00:06:50.658 --> 00:06:54.529 この木と このシェルピンスキー四面体 00:06:54.529 --> 00:06:56.779 同じようなものに見えてきたでしょうか? 00:06:56.779 --> 00:07:01.065 一見して全然違う形に見えるかもしれませんが 共通点があるんです 00:07:01.065 --> 00:07:05.104 それで もしかしたら このシェルピンスキー四面体が 00:07:05.104 --> 00:07:08.614 木の代わりになるかもしれない と思って実験してみました 00:07:08.614 --> 00:07:11.304 まずは平らなトタン屋根 00:07:11.304 --> 00:07:13.621 炎天下で屋根が熱くなっちゃいますから 00:07:13.621 --> 00:07:17.700 そこから赤外線が出て その下で昼寝していても暑いです 00:07:17.700 --> 00:07:20.782 で フラクタル日よけです 00:07:20.782 --> 00:07:23.187 日よけの温度全然上がりません 00:07:23.187 --> 00:07:26.819 ですから赤外線がこなくて 風が通りますから 00:07:26.819 --> 00:07:30.311 気持ちよく昼寝ができます 00:07:30.311 --> 00:07:35.908 こういう日よけで街を覆ってしまえば 00:07:35.908 --> 00:07:37.962 街が森のようになって 00:07:37.962 --> 00:07:40.478 暑くならないんじゃないか と思って作ってみたのが 00:07:40.478 --> 00:07:46.219 この一番最初にお見せした このフラクタル日よけなんです 00:07:46.219 --> 00:07:50.822 これは口で説明しても なかなか わかっていただけないんですが 00:07:50.822 --> 00:07:55.736 実際にここへ行くと ちょっと涼しくて気持ちが良いんです 00:07:55.736 --> 00:07:59.886 学会でも最初は全く相手にされませんでした 00:07:59.886 --> 00:08:04.914 でも最近は少しずつ拡がりつつあります 00:08:04.914 --> 00:08:08.308 このフラクタル日よけの話をすると 00:08:08.308 --> 00:08:12.800 なんでこんなことを思いついたんですか? とよく言われます 00:08:12.800 --> 00:08:16.701 実は私がこんなことを思いついたのは 00:08:16.701 --> 00:08:19.586 素人だったからです 00:08:19.586 --> 00:08:23.981 私の専門は建築学でも数学でもありません 00:08:23.981 --> 00:08:26.003 太陽物理学です 00:08:26.003 --> 00:08:28.305 全然関係ないです 00:08:28.305 --> 00:08:32.405 いろいろ事情があって 専門とは違うことをやることになり 00:08:32.405 --> 00:08:35.742 そのときに自分の手で観測して 00:08:35.742 --> 00:08:38.742 自分の手で実験をして なんか測ってみるまでは 00:08:38.742 --> 00:08:41.995 勉強をしないでおこうと 決めたんです 00:08:41.995 --> 00:08:46.258 だって研究って 人がやらないことをやることです 00:08:46.258 --> 00:08:48.707 自分がやってみる前に勉強しちゃったら 00:08:48.707 --> 00:08:53.898 人と同じ発想しか 出なくなっちゃうじゃないですか? 00:08:53.898 --> 00:08:55.322 新しいことをやるときに 00:08:55.322 --> 00:08:57.560 知らないことっていうのは 知らないということは 00:08:57.560 --> 00:09:00.141 非常に強い武器なんです 00:09:00.141 --> 00:09:03.198 それも一生に一回しか使えない武器です 00:09:03.198 --> 00:09:04.579 こんな貴重な武器を 00:09:04.579 --> 00:09:07.669 使う前に捨てちゃうっていうのは もったいないでしょう? 00:09:07.669 --> 00:09:11.695 素人ですから 00:09:11.695 --> 00:09:13.845 研究の設備もありませんでした 00:09:13.845 --> 00:09:16.111 お金もありませんでした 00:09:16.111 --> 00:09:18.656 ではどうするか? 00:09:18.656 --> 00:09:20.806 もうほとんど全部手作りです 00:09:20.806 --> 00:09:23.721 例えばこれ 00:09:23.721 --> 00:09:26.779 気温を測るときにに使う 百葉箱みたいなものですが 00:09:26.779 --> 00:09:28.678 これを買うと結構高いです 00:09:28.678 --> 00:09:31.464 ですが プラスチックの板を買ってきて 00:09:31.464 --> 00:09:34.676 ホットプレートで温めて 柔らかくして 00:09:34.676 --> 00:09:37.295 ビールの缶で形を作ると(笑) 00:09:37.295 --> 00:09:40.761 300円くらいでできちゃいます 00:09:40.761 --> 00:09:43.400 自分で作ると 教科書で勉強するよりも 00:09:43.400 --> 00:09:47.124 はるかに沢山のことが 非常によくわかります 00:09:47.124 --> 00:09:49.034 当然ですが 00:09:49.034 --> 00:09:52.804 このフラクタル日よけも全部手作りです 00:09:52.804 --> 00:09:55.001 というか こんなもの 売ってませんから 00:09:55.001 --> 00:09:58.038 作るしかないんです 00:09:58.038 --> 00:10:02.281 材料と工具は 全部ホームセンターで買ってきました 00:10:02.281 --> 00:10:06.106 そもそも研究とは 人がやらないことをやることです 00:10:06.106 --> 00:10:09.859 必要なものはお金で 買えるわけないじゃないですか 00:10:09.859 --> 00:10:11.361 研究にとって一番大事なのは 00:10:11.361 --> 00:10:12.532 お金じゃないんです 00:10:12.532 --> 00:10:15.215 暇です(笑) 00:10:15.215 --> 00:10:20.186 その暇をふんだんに使って 綿密に計画を立てたのかというと 00:10:20.186 --> 00:10:22.543 全然そんなことありません 00:10:22.543 --> 00:10:26.483 計画なんてほとんどありませんでした 00:10:26.483 --> 00:10:30.801 そもそも 研究って 分からないことをやるんですね 00:10:30.801 --> 00:10:33.885 明日自分が何を思いつくか 分かんないじゃないですか 00:10:33.885 --> 00:10:36.097 新しいことを思いついちゃったら 00:10:36.097 --> 00:10:39.086 今まで考えたことが 無意味になっちゃうかもしれません 00:10:39.086 --> 00:10:42.055 だから思いついたことを 片っぱしから やりました 00:10:42.055 --> 00:10:44.604 半年後に自分が何をやっているか 00:10:44.604 --> 00:10:47.087 自分でも全く想像がつきませんでした 00:10:47.087 --> 00:10:49.952 完全に行き当たりばったりなんですが 00:10:49.952 --> 00:10:52.885 めちゃくちゃ面白かったです 00:10:52.885 --> 00:10:56.848 ではお金がなくて 計画もなくて 00:10:56.848 --> 00:10:58.942 どうするのか?と 00:10:58.942 --> 00:11:01.551 もう 偶然です(笑) 00:11:01.551 --> 00:11:05.445 全く他力本願に聞こえるかもしれませんが 00:11:05.445 --> 00:11:08.742 そもそも研究って分からないことを 分からないから やるんですよね 00:11:08.742 --> 00:11:11.669 どこに答えがあるか分からないんです 00:11:11.669 --> 00:11:15.634 だから答えも思わぬところから やってきます 00:11:15.634 --> 00:11:21.298 実は このミニカーが 熱くならないということも 00:11:21.298 --> 00:11:25.393 とんでもないところから やってきました 00:11:25.393 --> 00:11:27.235 あるとき [労働安全衛生法による免許証] 00:11:27.235 --> 00:11:29.386 こういう資格を取らなきゃならなくなりました 00:11:29.386 --> 00:11:32.856 30年ぶりに受験勉強をしました 00:11:32.856 --> 00:11:34.550 この受験勉強をしているときに 00:11:34.550 --> 00:11:38.027 このミニカーが熱くならない ということに気がついたんです 00:11:38.027 --> 00:11:42.340 気象学の勉強でも 都市工学の勉強でもありません 00:11:42.340 --> 00:11:47.156 しかも この事実は実は古い教科書に ちゃんと書いてありました 00:11:47.156 --> 00:11:51.066 僕が見つけたものではないです 00:11:53.826 --> 00:11:55.586 このシェルピンスキー四面体 00:11:55.586 --> 00:11:59.577 これを日よけに使うことを思いついたのも 00:11:59.577 --> 00:12:02.124 まったくの偶然からでした 00:12:02.124 --> 00:12:03.723 ある数学の先生が 00:12:03.723 --> 00:12:08.210 このシェルピンスキー四面体に 時計台の写真を貼り付けて 00:12:08.210 --> 00:12:12.327 真正面から見ると 時計台がちゃんと見えるんですが 00:12:12.327 --> 00:12:15.789 角度をかえると ばらばらになっちゃってよくわからない 00:12:15.789 --> 00:12:18.996 面白いでしょう?って 00:12:18.996 --> 00:12:22.364 正直言って意味がわかりませんでした(笑) 00:12:22.364 --> 00:12:26.176 あの 数学者って暇ですねー って言っちゃいました(笑) 00:12:26.176 --> 00:12:31.268 でもうちに帰って夜 布団に入って 00:12:31.268 --> 00:12:34.954 ひょっとして 木ってこんなもんじゃないの? 00:12:34.954 --> 00:12:37.192 と思いついたんです 00:12:37.192 --> 00:12:43.870 お金がないことも 計画がないことも 00:12:43.870 --> 00:12:47.273 偶然のチャンスに 出会う確率を上げてくれます 00:12:47.273 --> 00:12:52.714 でも 問題はその偶然のチャンスを いかに確実に掴むかっていうことです 00:12:52.714 --> 00:12:54.801 こういうのを セレンディピティっていうんですが 00:12:54.801 --> 00:12:57.773 これが結構 難しい 00:12:57.773 --> 00:13:00.832 心に余裕がないとできません 00:13:00.832 --> 00:13:05.140 常に自然体の構えが必要なんです 00:13:05.140 --> 00:13:09.316 フラクタル日よけを見ていると つくづく思うことがあります 00:13:09.316 --> 00:13:13.878 それは 自然は完璧を目指さないっていうことです 00:13:13.878 --> 00:13:17.375 フラクタル日よけって実に中途半端な存在で 00:13:17.375 --> 00:13:21.294 日よけって言いながら なんと光が漏れちゃうんです 00:13:21.294 --> 00:13:23.338 雨も風も防げません 00:13:23.338 --> 00:13:25.598 なんか 間抜けなんです 00:13:25.598 --> 00:13:29.188 でも 自然は多分そういう不完全なところを 00:13:29.188 --> 00:13:31.218 逆に利用してるんだと思います 00:13:31.218 --> 00:13:34.374 多分これが自然のありようなんだと思います 00:13:34.374 --> 00:13:39.476 人間はこういう不完全さとか間抜けさに 00:13:39.476 --> 00:13:43.917 なんとなく本能的に 心地良さを感じてないでしょうか? 00:13:43.917 --> 00:13:45.609 多分そういうとき 00:13:45.609 --> 00:13:49.891 偶然の中から なんかチャンスを見つけるセンサーが 00:13:49.891 --> 00:13:53.229 凄く感度が 高くなってる気がするんです 00:13:53.229 --> 00:13:55.060 我々は 00:13:57.720 --> 00:14:01.580 完璧を目指しすぎていないでしょうか? 00:14:01.580 --> 00:14:04.317 ちゃんと勉強して 00:14:04.317 --> 00:14:05.704 立派な計画を立てて 00:14:05.704 --> 00:14:07.236 真面目に仕事すれば 00:14:07.236 --> 00:14:10.594 イノベーションが起こると 思ってないでしょうか? 00:14:10.594 --> 00:14:12.938 人間も自然の中に生きてますから 00:14:12.938 --> 00:14:14.730 そう簡単にはいきません 00:14:14.730 --> 00:14:15.858 イノベーションというのは 00:14:15.858 --> 00:14:18.368 真面目の外にあるもんだと思います 00:14:18.368 --> 00:14:19.285 フラクタル日よけって 00:14:19.285 --> 00:14:22.326 そんなことを教えてくれる ような気がするんです 00:14:22.326 --> 00:14:25.766 フラクタル日よけって 中途半端で 適当なんですが 00:14:25.766 --> 00:14:28.442 なんとなく自然で気持ちが良い 00:14:28.442 --> 00:14:30.556 これを見ていると 00:14:30.556 --> 00:14:33.239 細かいことを考えるのが バカバカしくなって 00:14:33.239 --> 00:14:38.153 「まいいか」という気になってきます 00:14:38.153 --> 00:14:40.998 私はこのフラクタル日よけが 世の中に広がって 00:14:40.998 --> 00:14:44.084 都市が少しでも快適に 暮らせるようになったら 00:14:44.084 --> 00:14:45.730 嬉しいと思うんですが 00:14:45.730 --> 00:14:50.857 それと一緒に この不完全で 中途半端で 適当でも 00:14:50.857 --> 00:14:54.796 「ま いいか」っていう気分が 広がってくれたらと思います 00:14:54.796 --> 00:14:59.998 そうすると この堅苦しい世の中が 00:14:59.998 --> 00:15:02.311 ちょっと楽になるんじゃないかと思います 00:15:02.311 --> 00:15:05.587 そして偶然の中から 00:15:05.587 --> 00:15:08.940 チャンスを見つけるセンサーが働き出します 00:15:08.940 --> 00:15:11.772 みなさんも もし このフラクタル日よけを見つけたら 00:15:11.772 --> 00:15:13.150 その下へ行って 00:15:13.150 --> 00:15:15.181 思いっきり肩の力を抜いて 00:15:15.181 --> 00:15:17.730 「ま いいか」って呟いてみてください 00:15:17.730 --> 00:15:21.317 そうしたら気分が楽になって 00:15:21.317 --> 00:15:23.157 なんか思いつくかもしれません 00:15:23.157 --> 00:15:25.165 ありがとうございました 00:15:25.165 --> 00:15:27.975 (拍手)