WEBVTT 00:00:06.915 --> 00:00:08.025 1956年 00:00:08.025 --> 00:00:10.185 建築家フランク・ロイド・ライトが 00:00:10.185 --> 00:00:13.545 高さ1マイル(約1.6キロメートル)の 超高層ビルの建造を計画しました 00:00:13.545 --> 00:00:15.845 世界一高いビルになるはずでした 00:00:15.845 --> 00:00:17.025 飛び抜けて高く 00:00:17.025 --> 00:00:20.325 エッフェル塔の5倍の高さです 00:00:20.325 --> 00:00:22.885 でも 多くの批評家が ライトを嘲笑しました 00:00:22.885 --> 00:00:26.215 何時間もエレベーターを待つことになるし 00:00:26.215 --> 00:00:30.575 もっと悪いことに ビルの自重で 潰れることもあるのでは と言ったのです 00:00:30.575 --> 00:00:32.126 技術者もそう考えたので 00:00:32.126 --> 00:00:34.506 有名な計画ではあったものの 00:00:34.506 --> 00:00:37.756 巨大なビルはついに建てられませんでした NOTE Paragraph 00:00:37.756 --> 00:00:38.576 けれども現在では 00:00:38.576 --> 00:00:41.956 世界中で次々とより高いビルが 建てられています 00:00:41.956 --> 00:00:46.246 高さ1キロメートルを超える 超高層ビルの建設さえ 企業が計画中で 00:00:46.246 --> 00:00:48.516 サウジアラビアのジッダ・タワーは 00:00:48.516 --> 00:00:51.806 エッフェル塔3つを重ねた高さです 00:00:51.806 --> 00:00:52.716 もうすぐ 00:00:52.716 --> 00:00:56.376 ライトが夢見た1マイルビルも 実現するかもしれません NOTE Paragraph 00:00:56.376 --> 00:00:58.046 ではいったいなぜ 00:00:58.046 --> 00:01:01.436 こうしたマンモスビルを70年前に 建てられなかったのか 00:01:01.436 --> 00:01:05.346 そして 現在では 高さ1マイルのビルを どうやって建てているのでしょう? NOTE Paragraph 00:01:05.346 --> 00:01:06.956 どんなビルの建設でも 00:01:06.956 --> 00:01:11.616 どの階も それより上の階を 支えなければなりません 00:01:11.616 --> 00:01:12.726 ビルを高くするほど 00:01:12.726 --> 00:01:17.556 下の階がより上層の階から 受ける重みは大きくなります 00:01:17.556 --> 00:01:20.753 建物の形は長い間 この原理の制約を受けてきたため 00:01:20.753 --> 00:01:24.186 古代の建築家は ピラミッド型を好みました 00:01:24.186 --> 00:01:27.146 広い底部が より軽い上部を支える形です 00:01:27.146 --> 00:01:30.966 でもこの方法は 都市の高層デザインには不向きです 00:01:30.966 --> 00:01:34.746 これほど高いピラミッドの底は 幅がおよそ1.5マイルとなり 00:01:34.746 --> 00:01:37.526 都市の中心部ではスペースが足りません NOTE Paragraph 00:01:37.526 --> 00:01:42.846 幸いにも コンクリートなど強度の高い 材料のおかげで 非実用的な形を回避できます 00:01:42.846 --> 00:01:47.951 鉄筋と共に用いられる現代のコンクリートは 強化されており 00:01:47.951 --> 00:01:51.781 しかも 吸水ポリマーが ひび割れを防いでくれます 00:01:51.781 --> 00:01:56.333 ドバイにある世界一高いビル ブルジュ・ハリファのコンクリートは 00:01:56.333 --> 00:02:00.673 1平方メートルあたり 8,000トンもの重さに耐えることができます 00:02:00.673 --> 00:02:05.540 アフリカゾウ1,200頭分の重さです NOTE Paragraph 00:02:05.540 --> 00:02:07.990 もちろんビルが 自重を支えられたとしても 00:02:07.990 --> 00:02:10.410 地盤がこれを支える必要があります 00:02:10.410 --> 00:02:11.650 基礎工事をしなければ 00:02:11.650 --> 00:02:15.650 ビルはその重さで沈んだり 傾いたりしてしまいます 00:02:15.650 --> 00:02:19.260 約50万トンのこのビルが沈まないように 00:02:19.260 --> 00:02:25.050 深さ50メートル以上にまで打ち込まれた コンクリートと鉄でできた支持物である 00:02:25.050 --> 00:02:27.050 192本の杭が支えています 00:02:27.050 --> 00:02:32.580 杭と地盤のあいだの摩擦力で 大きなビルが支えられているのです NOTE Paragraph 00:02:32.588 --> 00:02:35.778 高層ビルは 沈めようとする重力のほか 00:02:35.778 --> 00:02:41.923 横に倒そうとする 風の力にも耐えなければなりません 00:02:41.923 --> 00:02:43.343 普通の日でも 00:02:43.343 --> 00:02:49.263 風はビルの壁に1平方メートルあたり 最大8キログラムの力を及ぼすことがあります 00:02:49.263 --> 00:02:52.200 これはボウリングボールの重さに 相当します 00:02:52.200 --> 00:02:54.710 中国にあるスリムな 上海タワーのように 00:02:54.710 --> 00:02:57.090 空気力学的な設計にすると 00:02:57.090 --> 00:02:59.740 この力を最大で4分の1まで 減らせます 00:02:59.740 --> 00:03:03.460 ビルの内側と外側の耐風設計によって 00:03:03.460 --> 00:03:05.620 残りの風力を吸収します 00:03:05.620 --> 00:03:08.470 ソウルのロッテワールドタワーが その例です NOTE Paragraph 00:03:08.470 --> 00:03:10.540 これほど手を尽くしても 00:03:10.540 --> 00:03:13.560 台風のとき最上階にいると 00:03:13.560 --> 00:03:17.420 1メートル以上 前後に揺れる 経験をすることがあります 00:03:17.420 --> 00:03:20.260 風による揺れを防ぐため 00:03:20.260 --> 00:03:24.690 高層ビルの多くには 何百トンという重さの 00:03:24.690 --> 00:03:28.127 TMD(制振装置)と呼ばれる 重りが設置されています 00:03:28.127 --> 00:03:30.151 例えば台北101では 00:03:30.151 --> 00:03:34.811 ビルの87階の上に 巨大な金属の球をつるしてあります 00:03:34.811 --> 00:03:38.774 風が吹くとこの球が揺れはじめて 00:03:38.774 --> 00:03:41.634 ビルの揺れを吸収します 00:03:41.634 --> 00:03:43.794 球がビルの揺れに合わせて動くと 00:03:43.794 --> 00:03:46.794 球とビルの間の水圧シリンダーが 00:03:46.794 --> 00:03:49.484 運動エネルギーを熱にかえ 00:03:49.484 --> 00:03:52.384 ビルを安定させます NOTE Paragraph 00:03:52.386 --> 00:03:54.656 こうした技術の結集により 00:03:54.656 --> 00:03:58.226 巨大なビルが安定して 立っていられるのです 00:03:58.226 --> 00:04:02.816 でもこれほど大きなビルの中を すばやく移動するのも大変です 00:04:02.816 --> 00:04:03.994 ライトの時代には 00:04:03.994 --> 00:04:08.394 どんなに早いエレベーターでも 時速はたった22キロメートルでした 00:04:08.394 --> 00:04:13.849 ありがたいことに今ではもっと早く 時速70キロメートル以上です 00:04:13.849 --> 00:04:17.694 今後は摩擦のない磁石を ガイドレールとして使うことで 00:04:17.694 --> 00:04:19.274 さらに速くなりそうです 00:04:19.274 --> 00:04:23.314 また運行を制御するアルゴリズムが 必要に応じて 00:04:23.314 --> 00:04:27.914 乗客や空のリフトを行先別に グループ化します NOTE Paragraph 00:04:27.914 --> 00:04:32.728 ライトが1マイルビルを計画して以来 高層ビルは大きく進化してきました NOTE Paragraph 00:04:32.728 --> 00:04:35.426 昔は無理だと思われたアイデアが 00:04:35.426 --> 00:04:38.076 実行可能な建築技術となったのです 00:04:38.076 --> 00:04:40.356 今となっては 高さ2マイルのビルさえも 00:04:40.356 --> 00:04:44.356 時間の問題かもしれません