0:00:01.490,0:00:06.420 これは ジョンソン・エンド・ジョンソンの[br]1回接種で済む 新しいコロナワクチンです 0:00:06.420,0:00:09.246 3月初旬 6千回分あまりのワクチンが 0:00:09.246,0:00:13.120 ミシガン州デトロイトに供給されるはずでした 0:00:13.120,0:00:15.379 しかし 同市市長はこれを拒否したのです 0:00:15.379,0:00:18.199 「モデルナとファイザーのワクチンが一番です 0:00:18.199,0:00:20.284 ですから あらゆる手を尽くして 0:00:20.284,0:00:24.369 デトロイト市民が一番良いワクチンを[br]受けられるようにします」 0:00:24.369,0:00:29.259 市長が引き合いにしたのはこの数字[br]つまり ワクチンの「有効性」です 0:00:29.259,0:00:31.757 ファイザー・ビオンテックと[br]モデルナのワクチンは 0:00:31.757,0:00:34.213 有効性が非常に高く 0:00:34.213,0:00:37.250 95%と94%と謳っています 0:00:37.250,0:00:39.004 ジョンソン・エンド・ジョンソンは? 0:00:39.004,0:00:41.184 わずか66%です 0:00:41.184,0:00:45.789 数字を見ただけでは こちらのワクチンが 0:00:45.789,0:00:48.037 こちらと比べて劣ると考えて当然です 0:00:48.037,0:00:50.459 けれども これは間違った仮説です 0:00:50.459,0:00:53.808 この有効性の数字は[br]ワクチンの効果を評価する上で 0:00:53.808,0:00:56.895 一番重要な評価基準ですらないと[br]言っても過言ではありません 0:00:56.895,0:00:58.388 もっとよく理解するためには 0:00:58.388,0:01:02.267 まず ワクチンの働きを[br]理解する必要があります 0:01:06.355,0:01:10.627 ワクチンの有効性は[br]大規模な臨床試験(治験)を実施して 0:01:10.627,0:01:14.759 何万人もの被験者を対象に[br]試験を行い算出されます 0:01:14.759,0:01:17.322 被験者は2つのグループに分けられ 0:01:17.322,0:01:21.056 半分にはワクチンを[br]もう半分にはプラセボ(偽薬)を投与して 0:01:21.056,0:01:23.151 被験者は通常の生活に戻ります 0:01:23.151,0:01:28.279 その間数ヶ月に渡り 科学者が[br]被験者の発症状況を観察します 0:01:28.279,0:01:34.065 例えば ファイザー・ビオンテックの場合[br]4万3千人が治験に参加しました 0:01:34.065,0:01:38.553 その結果 被験者のうち170人が[br]コロナを発症しました 0:01:38.553,0:01:41.776 どちらのグループの被験者が発症したかが 0:01:41.776,0:01:45.000 ワクチンの有効性を決定します 0:01:45.000,0:01:47.833 170人が各グループに均等に分かれるのなら 0:01:47.833,0:01:51.038 ワクチンを接種した場合も しない場合も 0:01:51.038,0:01:52.403 発症する確率は一緒です 0:01:52.403,0:01:56.093 つまり 有効性は0%になります 0:01:56.093,0:02:01.829 170人全員がプラセボ接種グループで[br]ワクチン摂取グループの発症者がゼロなら 0:02:01.829,0:02:05.898 有効性は100%となります 0:02:05.898,0:02:10.041 ファイザーの治験における発症者では[br]162人がプラセボ接種グループで 0:02:10.041,0:02:12.253 ワクチン接種グループの発症者は[br]8人のみでした 0:02:12.253,0:02:18.230 つまり ワクチンを接種者すると[br]発症を95%抑えられるということです 0:02:18.230,0:02:22.179 有効性は95%となります 0:02:23.336,0:02:28.693 さてこれは 100人がワクチンを接種したら[br]5人が発症するといっているのではありません 0:02:28.693,0:02:33.573 そうではなく 95%という数字を[br]個人に当てはめるのです 0:02:33.573,0:02:35.430 ワクチン接種を受けた個人は 0:02:35.430,0:02:40.667 未接種の人と比べ[br]コロナウイルスにさらされた際に 0:02:40.667,0:02:43.884 感染症を発症する確率が95%少なくなります 0:02:43.884,0:02:49.120 ワクチンの有効性はすべて[br]同様の方法で算出されます 0:02:49.120,0:02:55.050 けれども それぞれの治験が行われるのは[br]大きく異なる環境のもとであるかもしれません 0:02:55.050,0:02:57.750 これらの数字を見る時に考慮に入れたい 0:02:57.750,0:02:59.250 一番の重要要素というのが 0:02:59.250,0:03:03.340 治験が行われた時期です 0:03:03.340,0:03:08.588 これは パンデミック宣言以降の[br]米国のコロナ感染者数の推移です 0:03:08.588,0:03:13.913 モデルナの治験は[br]夏に 米国のみで行われました 0:03:13.913,0:03:17.316 ファイザー・ビオンテックの治験も[br]米国を中心に 0:03:17.316,0:03:20.340 ほぼ同時期に行われました 0:03:20.340,0:03:24.721 一方で ジョンソンエンドジョンソンが[br]米国で治験を行った時期は 0:03:24.721,0:03:26.358 被験者を取り巻く環境が 0:03:26.358,0:03:29.747 より高い感染リスクにさらされていました 0:03:29.747,0:03:32.683 また 治験の大部分は米国以外で行われ 0:03:32.683,0:03:36.269 南アフリカとブラジルが中心でした 0:03:36.269,0:03:39.638 さらに これらの国では[br]感染者数が高かったばかりでなく 0:03:39.638,0:03:43.259 ウイルスのタイプ自体も異なるものでした 0:03:43.259,0:03:47.001 治験が行われた時期は[br]変異型ウイルスが出現しはじめ 0:03:47.001,0:03:50.345 これらの国における感染者数の[br]優勢を占めていた頃でした 0:03:50.345,0:03:54.293 被験者の発症リスクをより高くする[br]変異株です 0:03:54.293,0:03:59.380 ジョンソン・エンド・ジョンソンの治験の中で[br]南アフリカでの発症事例の大方は 0:03:59.380,0:04:03.357 夏に米国でまん延した従来型とは異なる[br]変異株によるものでした 0:04:03.357,0:04:08.757 それでもなお[br]ワクチンは感染を大幅に抑えたのです 0:04:08.757,0:04:12.300 「それぞれのワクチンを[br]同一条件で比較しようというなら 0:04:12.300,0:04:16.310 同じ1回の治験を[br]同一の試験対象患者基準を適用して 0:04:16.310,0:04:19.082 同一地域で 同時期に行うべきだったのです」 0:04:19.082,0:04:21.819 「ファイザーとモデルナの[br]ワクチンの治験を 0:04:21.819,0:04:27.483 ジョンソン・エンド・ジョンソンと同時期に[br]もう一度行っていたなら 0:04:27.483,0:04:30.665 有効性としてはじき出された数値は[br]全く違っていたかもしれません 0:04:30.665,0:04:35.864 有効性の数値というのはただ[br]治験を行った時の結果の表れに他ならず 0:04:35.864,0:04:38.900 必ずしも現実世界で[br]その通りになるというわけではありません 0:04:38.900,0:04:44.509 多くの専門家が ワクチン評価の数字としては[br]有効性は最適ではないと論じています 0:04:44.509,0:04:49.330 感染予防は[br]ワクチンの真の目的ではないからです 0:04:49.330,0:04:54.128 「“ゼロコロナ”を目指すことが[br]必ずしもワクチン接種の目標ではなく 0:04:54.128,0:04:56.505 ウイルスを弱めて打ち負かし 0:04:56.505,0:05:00.727 感染の重症化や入院者や死亡者を出す[br]力を失わせることが目標です」 0:05:00.727,0:05:05.681 コロナウイルスにさらされた場合の[br]シナリオを想定すればわかりやすいでしょう 0:05:05.681,0:05:09.070 最良のケースでは 感染しません 0:05:09.070,0:05:11.632 最悪のケースでは死に至ります 0:05:11.632,0:05:15.384 その中間にあるのが[br]中等症や重症で入院するか 0:05:15.384,0:05:17.736 感染しても無症状というケースです 0:05:17.736,0:05:23.819 一番良いのが このレベルに至るまで[br]予防ができることです 0:05:23.819,0:05:29.979 しかし 感染予防は現実には [br]ワクチン接種の主要目標ではありません 0:05:29.979,0:05:35.360 本当の目的は 先に挙げたシナリオから[br]皆さんの体を守れるようにすることです」 0:05:35.360,0:05:38.796 つまり 感染した場合にも[br]ただの風邪程度の症状に抑え 0:05:38.796,0:05:42.155 入院するほど重症化させないようにするのです 0:05:42.155,0:05:47.397 どのコロナワクチンも[br]このことについては優秀です 0:05:47.397,0:05:51.803 すべての治験において[br]プラセボ接種グループの被験者には 入院者や 0:05:51.803,0:05:54.349 死亡者さえ出たのに対し 0:05:54.349,0:05:58.525 所定回数ワクチンを受けた被験者においては 0:05:58.525,0:06:01.816 入院や死亡の事例はゼロでした 0:06:01.816,0:06:04.300 「デトロイト市長にご理解いただきたいのは 0:06:04.300,0:06:10.560 どのワクチンも 命を救うという点では[br]100%の有効性を持つことです」 0:06:10.560,0:06:15.789 デトロイト市長は先の発言を撤回し[br]ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは 0:06:15.789,0:06:21.000 「一番の心配事に対し高い有効性を持つ」とし[br]ワクチン受け入れを始めるといいました 0:06:21.000,0:06:25.027 有効性は重要ですが[br]最重要事項ではありません 0:06:25.027,0:06:29.849 問うべきは 「どのワクチンが[br]感染予防効果があるか」ではなく 0:06:29.849,0:06:31.900 「どのワクチンが命を救うのか」や 0:06:31.900,0:06:33.919 「入院回避に効果があるか」です 0:06:33.919,0:06:36.400 パンデミック終息に貢献するのは[br]どのワクチンか? 0:06:36.400,0:06:38.165 答えは すべてのワクチンです 0:06:38.165,0:06:41.702 「必要な時に提供されるものが[br]皆さんにとり一番良いワクチンです」 0:06:41.702,0:06:46.450 「誰かの腕に注射が打たれる度に[br]パンデミック終息に一歩近づきます」