WEBVTT 00:00:00.000 --> 00:00:02.463 私が育ったのはビクトリア州の 00:00:02.463 --> 00:00:03.763 とても小さな田舎町です 00:00:03.763 --> 00:00:08.180 ごく普通に 地味に育てられました 00:00:08.180 --> 00:00:11.580 学校に通って 友達と遊んで 00:00:11.580 --> 00:00:13.966 妹たちと喧嘩しました 00:00:13.966 --> 00:00:15.755 まるっきり普通でした 00:00:15.755 --> 00:00:19.927 私が15才の時 地元コミュニティの役員から 00:00:19.927 --> 00:00:21.347 両親に連絡がありました 00:00:21.347 --> 00:00:22.740 コミュニティの功績賞に 00:00:22.740 --> 00:00:25.860 私をノミネートしたいと言うのです 00:00:25.860 --> 00:00:29.103 両親は「うーん ありがたいですけど 00:00:29.103 --> 00:00:32.320 一つだけ 大変な間違いがあります 00:00:32.320 --> 00:00:37.254 彼女には 何の功績もありませんよ」と (笑) NOTE Paragraph 00:00:37.254 --> 00:00:38.849 両親の言うとおりだったんですよ 00:00:38.849 --> 00:00:41.835 私は学校に通い 良い成績もおさめました 00:00:41.835 --> 00:00:44.283 とても地味なアルバイトもしました 00:00:44.283 --> 00:00:46.065 母の美容院でです 00:00:46.065 --> 00:00:47.863 そして ひたすら観ていたのは 00:00:47.863 --> 00:00:50.994 『バフィー 恋する十字架』と 『ドーソンズ・クリーク』です 00:00:50.994 --> 00:00:55.037 そう ジャンルが正反対です 00:00:55.037 --> 00:00:56.377 でも両親は正しかったんです 00:00:56.377 --> 00:00:58.930 並外れたことなんて 00:00:58.930 --> 00:01:00.611 何もしていなかった 00:01:00.611 --> 00:01:03.554 障害を考慮に入れなければ 00:01:03.554 --> 00:01:07.156 功績と呼べるようなものは 何も ありませんでした 00:01:07.156 --> 00:01:11.022 何年もが過ぎ 私がメルボルンの高校で 00:01:11.022 --> 00:01:12.758 教師2年目だった時のことです 00:01:12.758 --> 00:01:17.709 2年生の法学の授業を始めて 20分ほど経ったところで 00:01:17.709 --> 00:01:19.488 男子学生が手を挙げて 00:01:19.488 --> 00:01:23.732 「先生 スピーチはまだかよ?」と 言いました 00:01:23.732 --> 00:01:25.709 私は「スピーチ?」と返しました 00:01:25.709 --> 00:01:27.013 だって長々と20分も 00:01:27.013 --> 00:01:29.909 名誉きそん法の講義をしていたんですよ 00:01:29.909 --> 00:01:31.580 この生徒は「あれだよ 00:01:31.580 --> 00:01:33.900 やる気を起こさせるスピーチ 00:01:33.900 --> 00:01:35.890 車椅子の人達が学校に来ると 00:01:35.890 --> 00:01:40.813 だいたい感動的な話をするだろ?」 00:01:40.813 --> 00:01:42.259 (笑) 00:01:42.259 --> 00:01:46.557 「いつもなら会場は大講堂だけど」と NOTE Paragraph 00:01:46.557 --> 00:01:48.770 これが私の最初の気づきでした 00:01:48.770 --> 00:01:52.041 この子は障害者を感動の対象としか 00:01:52.041 --> 00:01:55.699 見たことがないんだ と 00:01:55.699 --> 00:01:57.560 この子にとって― もちろん 00:01:57.560 --> 00:01:58.861 彼のせいでもなく 00:01:58.861 --> 00:02:00.672 多くの人が そんな風に考えています 00:02:00.672 --> 00:02:04.418 大多数の人が 障害者を教師や 00:02:04.418 --> 00:02:07.477 医者やネイリストとは 見ないものです 00:02:07.477 --> 00:02:12.846 障害者は人として扱ってもらえません 感動を与えるための存在です 00:02:12.846 --> 00:02:16.352 事実 私はこの会場に座って― 00:02:16.352 --> 00:02:19.434 こんな感じで車椅子に乗っていたら 00:02:19.434 --> 00:02:22.367 皆さんが私に それとなく期待しているのは 00:02:22.367 --> 00:02:27.147 「感動」ですよね? (笑) 00:02:27.147 --> 00:02:29.990 そうなんです NOTE Paragraph 00:02:29.990 --> 00:02:32.004 ご来場の皆さま 残念ですが 00:02:32.004 --> 00:02:34.861 皆さんを非常に がっかりさせてしまいます 00:02:34.861 --> 00:02:37.030 私は「感動」させに来たんじゃ ありません 00:02:37.030 --> 00:02:39.607 私がここに来たのは 私たちが障害に関して 00:02:39.607 --> 00:02:41.574 騙されていたとお伝えするためです 00:02:41.574 --> 00:02:43.681 そう 私たちは嘘を教え込まれています 00:02:43.681 --> 00:02:48.886 障害は完璧に悪いことで 疑いの余地なしという嘘です 00:02:48.886 --> 00:02:51.827 障害は悪いこと だから 障害を持って生活するのは 00:02:51.827 --> 00:02:53.973 立派な人だということになります 00:02:53.973 --> 00:02:56.888 障害は悪いことではないんです だから 00:02:56.888 --> 00:02:59.517 立派ということもありません NOTE Paragraph 00:02:59.517 --> 00:03:01.252 過去数年間で 私たちは この嘘を 00:03:01.252 --> 00:03:03.875 さらに広めることに成功しました 00:03:03.875 --> 00:03:06.149 ソーシャルメディアを通じてです 00:03:06.149 --> 00:03:08.382 こんな画像を見たことがあるでしょう 00:03:08.382 --> 00:03:11.985 「人生における唯一の障害は ネガティブな姿勢である」 00:03:12.975 --> 00:03:17.326 または こちら「言い訳は通じません」 確かにね 00:03:17.326 --> 00:03:23.686 または これ「諦める前にトライしよう!」 00:03:23.686 --> 00:03:25.342 ご紹介したのは ほんの数例ですが 00:03:25.342 --> 00:03:27.311 このようなイメージが 氾濫しているのです 00:03:27.311 --> 00:03:28.940 ご覧になったかもしれません 00:03:28.940 --> 00:03:30.689 手が無い 小さな女の子が 00:03:30.689 --> 00:03:34.400 口にペンをくわえて 絵を描く姿 00:03:34.400 --> 00:03:36.120 カーボン・ファイバーの 00:03:36.120 --> 00:03:38.993 義肢で走る子供 00:03:38.993 --> 00:03:40.344 こんなイメージが 00:03:40.344 --> 00:03:41.970 実に沢山あります 00:03:41.970 --> 00:03:45.884 私たちは これを 「感動ポルノ」と名付けました 00:03:45.884 --> 00:03:48.110 (笑) 00:03:48.110 --> 00:03:50.328 あえて「ポルノ」と言っているのは 00:03:50.328 --> 00:03:53.477 ある特定の人たちを モノ扱いして 00:03:53.477 --> 00:03:56.288 他の人が得するようになっているからです 00:03:56.288 --> 00:03:59.167 ですから この場合 障害者を 00:03:59.167 --> 00:04:01.824 健常者のために利用しているのです 00:04:01.824 --> 00:04:03.952 これらのイメージの目的は 00:04:03.952 --> 00:04:07.763 皆さんを感動させ やる気を起こさせることです 00:04:07.763 --> 00:04:09.838 ですから 皆さんがこれを見ると 00:04:09.838 --> 00:04:12.927 「自分の人生は最悪だけど 00:04:12.927 --> 00:04:14.958 下には下がいる 00:04:14.958 --> 00:04:18.286 彼らよりはマシだ」と NOTE Paragraph 00:04:18.286 --> 00:04:21.662 でも もし皆さんが 「彼ら」だったらどうしますか? 00:04:21.662 --> 00:04:23.750 知らない人が近寄ってきて 00:04:23.750 --> 00:04:26.218 私のことを勇敢だとか 感銘を受けたとか 00:04:26.218 --> 00:04:29.123 言ってこられた経験が 00:04:29.123 --> 00:04:30.880 数え切れないほどあります 00:04:30.880 --> 00:04:32.539 しかも まだ有名になる 00:04:32.539 --> 00:04:34.593 ずっと前の話です 00:04:34.593 --> 00:04:36.295 あの人達は まるで私が朝起きて 00:04:36.295 --> 00:04:38.001 自分の名前を覚えていたら 00:04:38.001 --> 00:04:42.009 賞賛するぐらいの勢いです (笑) 00:04:42.009 --> 00:04:44.547 モノ扱いですよね 00:04:44.547 --> 00:04:46.640 ご覧いただいた画像 このようなイメージは 00:04:46.640 --> 00:04:48.571 障害者を 00:04:48.571 --> 00:04:51.496 健常者のための物として 利用しているのです 00:04:51.496 --> 00:04:54.110 障害者を見て 健常者が 00:04:54.110 --> 00:04:56.813 自分は まだまだ恵まれているんだと 00:04:56.813 --> 00:05:00.960 自分の不安を客観視できるような 存在なのです NOTE Paragraph 00:05:00.960 --> 00:05:03.881 障害者としての人生とは 00:05:03.881 --> 00:05:05.965 事実 厳しいものです 00:05:05.965 --> 00:05:08.071 乗り越えることが必要な部分はあります 00:05:08.071 --> 00:05:10.283 ただし私たち障害者が乗り越えるのは 00:05:10.283 --> 00:05:12.900 皆さんが思っているようなことでは ありません 00:05:12.900 --> 00:05:15.507 身体に関わるものではないのです 00:05:15.507 --> 00:05:17.885 私はあえて「障害者」 という言葉を使います 00:05:17.885 --> 00:05:22.083 なぜなら私は 障害の社会モデルを支持しているからです 00:05:22.083 --> 00:05:24.381 私たちが住む社会からもたらされる 障害は 00:05:24.381 --> 00:05:28.295 身体や病状よりもひどいという 00:05:28.295 --> 00:05:31.178 考え方です NOTE Paragraph 00:05:31.178 --> 00:05:35.086 私は自分の身体と ずっと付き合ってきました 00:05:35.086 --> 00:05:37.349 かなり気に入っています 00:05:37.349 --> 00:05:40.402 私が必要なことを やってくれるんです 00:05:40.402 --> 00:05:43.695 自分の身体の可能性を最大限 発揮しています 00:05:43.695 --> 00:05:44.829 皆さんと同じです 00:05:44.829 --> 00:05:47.853 あの画像の子供達も同じです 00:05:47.853 --> 00:05:51.132 特別なことなんて 何もしていません 00:05:51.132 --> 00:05:53.481 あの子達は 自分たちの身体能力を 00:05:53.481 --> 00:05:55.790 最大限に引き出しているだけです 00:05:55.790 --> 00:05:59.293 では私たちがやっているように 彼らをモノ扱いして 00:05:59.293 --> 00:06:01.016 画像をシェアするのは 00:06:01.016 --> 00:06:03.118 本当に正しいことなのでしょうか? 00:06:03.118 --> 00:06:07.641 周りの人達が 「あなたは感動的だ」と言う時 00:06:07.641 --> 00:06:10.926 もちろん賞賛しているのでしょう 00:06:10.926 --> 00:06:12.292 そんなことが起きるのも 00:06:12.292 --> 00:06:14.564 嘘のせいです 私たちは障害を持つことで 00:06:14.564 --> 00:06:18.778 特別な存在になると 思い込まされています 00:06:18.778 --> 00:06:20.612 本当に違うんです NOTE Paragraph 00:06:20.612 --> 00:06:21.971 こう お考えでしょう 00:06:21.971 --> 00:06:24.720 私がここで「感動」に やたら反論しているので 00:06:24.720 --> 00:06:26.639 きっと皆さんは 「おいおいステラ 00:06:26.639 --> 00:06:30.756 あなただって何かに 感動したことあるでしょう?」と 00:06:30.756 --> 00:06:32.850 もちろんあります 00:06:32.850 --> 00:06:35.888 他の障害者の方々からは いつも学んでいます 00:06:35.888 --> 00:06:40.827 でも彼らより恵まれているとか そんなことではありません 00:06:40.827 --> 00:06:43.982 私が学んでいるのは 00:06:43.982 --> 00:06:45.403 天才的なアイデアです 00:06:45.403 --> 00:06:51.160 落とした物を拾うのに トングを使うとかね (笑) 00:06:51.160 --> 00:06:53.681 他には車椅子のバッテリーで 00:06:53.681 --> 00:06:58.266 携帯の充電をする 粋なアイデア 00:06:58.266 --> 00:06:59.480 天才でしょ 00:06:59.480 --> 00:07:02.061 私たちはお互いの強みや 忍耐力から学びます 00:07:02.061 --> 00:07:04.702 闘う相手は 自分たちの身体や病名ではなく 00:07:04.702 --> 00:07:07.506 私たちを特別視し 物として扱う 00:07:07.506 --> 00:07:09.963 世界です NOTE Paragraph 00:07:09.963 --> 00:07:12.598 私が痛感しているのは 障害についての嘘は 00:07:12.598 --> 00:07:16.821 許し難い不公平だということです 00:07:16.821 --> 00:07:20.956 私たちの生活を厄介にしています 00:07:20.956 --> 00:07:24.829 「人生における唯一の障害は 00:07:24.829 --> 00:07:26.827 ネガティブな姿勢である」が 00:07:26.827 --> 00:07:29.954 くだらないのは 00:07:29.954 --> 00:07:31.575 真実ではないからです 00:07:31.575 --> 00:07:34.237 障害の社会モデルそのものだからです 00:07:34.237 --> 00:07:38.402 階段の昇降に苦労している時に どんなに微笑んでも 00:07:38.402 --> 00:07:43.348 階段がスロープに変身したりしません 00:07:43.348 --> 00:07:49.930 絶対に (笑)(拍手) 00:07:49.930 --> 00:07:51.810 テレビ画面に微笑んでも 00:07:51.810 --> 00:07:53.641 耳が不自由な方のために 00:07:53.641 --> 00:07:55.374 字幕が現れたりしません 00:07:55.374 --> 00:07:57.836 本屋の中で どんなに感じ良く 00:07:57.836 --> 00:07:59.606 立っていたところで 00:07:59.606 --> 00:08:02.305 すべての本が 点字に変わったりしません 00:08:02.305 --> 00:08:06.509 そんなの ありえませんよね NOTE Paragraph 00:08:06.509 --> 00:08:09.236 私が住みたいのは 00:08:09.236 --> 00:08:12.900 障害が特別視されるのではなく 普通だと思われる世界です 00:08:12.900 --> 00:08:15.096 私が住みたい世界は 15才の女の子が 00:08:15.096 --> 00:08:16.830 自分の部屋に座って 00:08:16.830 --> 00:08:19.007 『バフィー 恋する十字架』を 00:08:19.007 --> 00:08:21.545 観ることが偉業なんかじゃない世界 00:08:21.545 --> 00:08:23.811 ただ座って観ているだけなのですから 00:08:23.811 --> 00:08:25.236 私が住みたい世界は 00:08:25.236 --> 00:08:28.361 障害者の人達に そんな低い期待を 00:08:28.361 --> 00:08:29.910 持たない世界 00:08:29.910 --> 00:08:32.236 朝ベッドから起きて 自分の名前を覚えている 00:08:32.236 --> 00:08:35.033 そんなことで賞賛されない世界です 00:08:35.033 --> 00:08:38.454 私が住みたい世界は 我々障害者が 00:08:38.454 --> 00:08:40.217 真の成果で評価される世界 00:08:40.217 --> 00:08:41.824 私が住みたい世界は 00:08:41.824 --> 00:08:45.236 メルボルンの高校2年生が 00:08:45.236 --> 00:08:47.589 新しく来た教師が 車椅子に乗っていても 00:08:47.589 --> 00:08:50.747 微塵も動じない世界です NOTE Paragraph 00:08:50.747 --> 00:08:53.790 人を特別にするのは障害ではなく 00:08:53.790 --> 00:08:57.243 障害に関する自分の知識に 疑いを持つことです NOTE Paragraph 00:08:57.243 --> 00:08:58.510 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:08:58.510 --> 00:08:59.469 (拍手)