WEBVTT

00:00:00.238 --> 00:00:01.595
"米国で最も危険な人物のうちの一人"

00:00:01.595 --> 00:00:03.575
そう批評家たちに
あだ名を付けられる何年も前

00:00:03.575 --> 00:00:05.170
エマ・ゴールドマンという若い女性は

00:00:05.170 --> 00:00:06.800
ダンスを踊っていました

00:00:06.910 --> 00:00:08.385
政治活動家として

00:00:08.385 --> 00:00:10.505
支持集めのために
参加したイベントでしたが

00:00:10.505 --> 00:00:12.534
彼女は大のダンス好きで

00:00:12.534 --> 00:00:14.854
仲間の一人から呼び出され

00:00:14.854 --> 00:00:17.933
浮ついていて威厳かない
と注意されるほどでした

00:00:17.933 --> 00:00:19.595
真面目な活動家が

00:00:19.595 --> 00:00:21.633
そんなに楽しそうにしているころを
人に見られていいのでしょうか?

00:00:21.633 --> 00:00:23.016
邪魔をされて
腹を立てたゴールドマンは

00:00:23.016 --> 00:00:24.066
その若い男性に

00:00:24.066 --> 00:00:25.571
余計な口出しはしないよう
言い渡しました

00:00:25.571 --> 00:00:27.192
なぜなら彼女が闘った自由とは

00:00:27.192 --> 00:00:29.554
"人生と喜びを否定"
するものでなはかったからです

00:00:29.554 --> 00:00:30.423
彼女はこう言っています

00:00:30.423 --> 00:00:31.461
"私は自由が欲しい

00:00:31.461 --> 00:00:33.331
自己表現できる権利が

00:00:33.331 --> 00:00:35.985
誰もが美しく輝くものを
手にする権利が"

00:00:35.985 --> 00:00:38.691
ゴールドマンにとって
ダンス抜きの革命など

00:00:38.691 --> 00:00:41.063
価値のないものでした

00:00:43.963 --> 00:00:46.416
彼女は1869年にロシア帝国で

00:00:46.416 --> 00:00:47.936
ユダヤ人の両親のもとに生まれ

00:00:47.936 --> 00:00:50.266
冷淡な母親と
暴力的な父親に育てられ

00:00:50.266 --> 00:00:52.668
15歳のときに
結婚させられそうになりました

00:00:52.668 --> 00:00:54.401
彼女が拒否すると

00:00:54.401 --> 00:00:55.851
父親は仏語の文法書を
火に投げ入れ こう言いました

00:00:55.851 --> 00:00:57.664
"女子に学問は必要ない!

00:00:57.664 --> 00:00:58.937
ユダヤ人の娘に必要なのは

00:00:58.937 --> 00:01:00.726
魚の調理法と

00:01:00.726 --> 00:01:02.788
麺を細く切ることと

00:01:02.788 --> 00:01:04.085
たくさん子を産むことだ"

00:01:04.085 --> 00:01:06.400
当時 エマ・ゴールドマンほど

00:01:06.400 --> 00:01:07.944
女性らしさの概念に反発した女性は

00:01:07.944 --> 00:01:09.425
ほとんどいませんでした

00:01:09.425 --> 00:01:10.893
16歳のとき
彼女は父親の元を逃げ出し

00:01:10.893 --> 00:01:12.399
米国へ移住して

00:01:12.399 --> 00:01:14.441
人生の真の目的を見つけました

00:01:14.441 --> 00:01:17.420
政治的反逆者になり
生涯にわたって革命を叫ぶ

00:01:17.420 --> 00:01:19.672
熱血的な演説家になることです

00:01:19.672 --> 00:01:21.287
彼女はシカゴで処刑された

00:01:21.287 --> 00:01:23.703
労働運動家たちの
悲劇的な話を聞いて戦慄し

00:01:23.703 --> 00:01:25.669
労働運動に惹かれ

00:01:25.669 --> 00:01:27.945
後にアナキズムにも
魅せられました

00:01:27.945 --> 00:01:30.541
アナキズム（無政府主義）
という語感とは裏腹に

00:01:30.541 --> 00:01:32.204
ゴールドマンの信条は

00:01:32.204 --> 00:01:33.665
無秩序でも混沌でも
ありませんでした

00:01:33.665 --> 00:01:34.969
彼女は個人の自由を重視し

00:01:34.969 --> 00:01:36.979
政府や宗教 戦争

00:01:36.979 --> 00:01:38.109
ビジネス上の利害関係

00:01:38.109 --> 00:01:39.499
結婚といった

00:01:39.499 --> 00:01:40.807
抑圧的な制度を

00:01:40.807 --> 00:01:41.939
拒絶しました

00:01:42.529 --> 00:01:44.041
便宜上 もしくは
市民権を得るために

00:01:44.041 --> 00:01:46.241
彼女は何度か
婚姻関係を結びましたが

00:01:46.241 --> 00:01:48.530
伝統的な結婚の概念は拒絶し

00:01:48.530 --> 00:01:50.848
子どもは持たない決断をしました

00:01:50.848 --> 00:01:52.401
ゴールドマンはあっという間に

00:01:52.401 --> 00:01:54.617
米国で最も有名な
急進論者の一人となり

00:01:54.617 --> 00:01:55.910
その演説力の高さは

00:01:55.910 --> 00:01:57.852
"大ハンマー"
と呼ばれたりもしました

00:01:57.852 --> 00:01:59.205
彼女は情熱的に演説しながら

00:01:59.205 --> 00:02:01.420
全国を旅して回り

00:02:01.420 --> 00:02:01.849
有名記者のネリー・ブライは

00:02:01.849 --> 00:02:03.577
"小さなジャンヌ・ダルク"
とあだ名を付けました

00:02:03.577 --> 00:02:05.606
ゴールドマンは
その思想ゆえに

00:02:05.606 --> 00:02:07.441
何度か刑務所に
入れられたこともありました

00:02:07.441 --> 00:02:09.340
避妊を奨励したときや

00:02:09.340 --> 00:02:10.931
男性が兵役に登録するのを

00:02:10.931 --> 00:02:12.566
阻止しようとしたとき

00:02:12.566 --> 00:02:14.422
そして失業者たちに向かって

00:02:14.422 --> 00:02:16.040
職と食を失ったら

00:02:16.040 --> 00:02:17.769
金持ちからパンを奪え
と言った時にです

00:02:17.769 --> 00:02:19.714
ゴールドマンは
女性の自立を支持していましたが

00:02:19.714 --> 00:02:21.781
婦人参政権論者とは
あまり相いれず

00:02:21.781 --> 00:02:24.051
抑圧的な制度のなかで
女性が参政権を得ることよりも

00:02:24.051 --> 00:02:25.732
その制度自体を
取り除くことの方が

00:02:25.732 --> 00:02:27.418
重要だと考えました

00:02:27.418 --> 00:02:30.436
彼女はこう言っています
"参政権や平等は市民権は

00:02:30.436 --> 00:02:33.157
良い要求ではあるが
真の解放が始まるのは

00:02:33.157 --> 00:02:35.372
投票所でも裁判所でもない

00:02:35.372 --> 00:02:38.528
それは女性の魂から始まる"

00:02:38.528 --> 00:02:40.334
女性は社会や政府の
性差別的な規則を拒絶し

00:02:40.334 --> 00:02:42.585
自分の人生や
身体に関する権利を


00:02:42.585 --> 00:02:43.918
主張する必要があると

00:02:43.918 --> 00:02:46.418
ゴールドマンは信じていました

00:02:46.418 --> 00:02:48.057
そうすることだけが
真に女性を解放すると

00:02:48.057 --> 00:02:49.841
ゴールドマンは言いました

00:02:49.841 --> 00:02:50.897
彼女は異性愛者でしたが

00:02:50.897 --> 00:02:52.433
米国人同性愛者の権利を
支持した

00:02:52.433 --> 00:02:53.789
先駆者の一人であり

00:02:53.819 --> 00:02:55.613
避妊と女性の性的解放を

00:02:55.613 --> 00:02:57.528
支持した先駆者の一人
でもありました

00:02:57.528 --> 00:02:59.138
"私は女性の自立を求める

00:02:59.358 --> 00:03:01.235
女性が自活できる権利を

00:03:01.235 --> 00:03:02.525
自身のために生きる権利を

00:03:02.525 --> 00:03:04.115
相手が誰でも 何人でも

00:03:04.115 --> 00:03:06.698
自分で選んだ相手を
愛することができる権利を

00:03:06.698 --> 00:03:08.500
私は男女両方の自由を求める

00:03:08.500 --> 00:03:10.984
行動する自由 愛する自由
そして母親になる自由を求める"

00:03:10.984 --> 00:03:12.827
彼女はそう書いています

00:03:12.827 --> 00:03:15.616
ジェンダー 性 セクシュアリティに関する
彼女の思想の多くは

00:03:15.616 --> 00:03:17.658
今ですら賛否両論と言えるでしょうが

00:03:17.658 --> 00:03:18.658
1800年当時は

00:03:18.658 --> 00:03:20.693
非常にショッキングなものとして
受け止められました

00:03:20.693 --> 00:03:22.252
ゴールドマンは長年
米国の権力者たちにとって

00:03:22.252 --> 00:03:24.254
目の上のこぶでした

00:03:24.254 --> 00:03:25.864
1919年にはとうとう

00:03:25.864 --> 00:03:27.739
彼女の米国市民権が
無効とされ

00:03:27.739 --> 00:03:28.909
ロシアへ強制送還されました

00:03:28.909 --> 00:03:30.258
当時ロシアでは

00:03:30.258 --> 00:03:32.278
人民による革命が
起きたばかりでした

00:03:32.278 --> 00:03:33.278
しかし そこで彼女が目にしたのは

00:03:33.278 --> 00:03:34.865
夢見たような楽園などではなく

00:03:34.865 --> 00:03:36.819
市民の権利を奪おうとする

00:03:36.819 --> 00:03:39.249
抑圧的な新体制だったのです

00:03:39.249 --> 00:03:41.236
レーニン本人と会見したあと

00:03:41.236 --> 00:03:42.819
ゴールドマンは
新たな共産主義政権に対し

00:03:42.819 --> 00:03:44.772
心底幻滅しました

00:03:44.772 --> 00:03:46.740
そのため彼女は海外を旅し

00:03:46.740 --> 00:03:48.339
ソビエトの威圧的な態度について
演説しましたが

00:03:48.339 --> 00:03:49.909
多くの仲間たちからは
異端視され

00:03:49.909 --> 00:03:51.289
スウェーデンとドイツから

00:03:51.289 --> 00:03:52.731
入国拒否されてしまいました

00:03:52.731 --> 00:03:55.558
1934年に

00:03:55.558 --> 00:03:55.988
ルーズベルト政権から

00:03:55.988 --> 00:03:57.220
許可を得て

00:03:57.220 --> 00:03:59.773
やっと米国へ戻ったときには

00:03:59.773 --> 00:04:02.216
ゴールドマンは60代の
おばあちゃんのような存在でしたが

00:04:02.216 --> 00:04:03.456
頑固さと辛口の発言は

00:04:03.456 --> 00:04:05.378
若い頃とまったく
遜色ありませんでした

00:04:05.378 --> 00:04:06.486
米国での
最後の演説巡業で

00:04:06.486 --> 00:04:08.420
彼女はヒトラー政権下の

00:04:08.425 --> 00:04:10.470
ドイツのファシズムや

00:04:10.470 --> 00:04:13.130
スターリン政権下の
ロシアの共産主義を批判し

00:04:13.130 --> 00:04:14.253
右派と左派
両方の怒りを買いました

00:04:14.253 --> 00:04:16.055
年齢を重ねて

00:04:16.055 --> 00:04:18.205
彼女の革命精神が
衰えることはなく

00:04:18.205 --> 00:04:19.122
67歳の時には
バルセロナへ行き

00:04:19.122 --> 00:04:21.206
スペイン市民戦争で

00:04:21.206 --> 00:04:22.761
ファシズムに対抗して闘った

00:04:22.761 --> 00:04:24.154
労働者やアナキストたちを
支持しました

00:04:24.154 --> 00:04:25.154
ゴールドマンは彼らを

00:04:25.154 --> 00:04:27.629
全世界にとっての
"輝かしい例"と呼び

00:04:27.629 --> 00:04:30.818
一万人の聴衆に向かって
こう言いました

00:04:30.818 --> 00:04:32.914
"あなた方の理想は
私の45年間の理想でもあり

00:04:32.914 --> 00:04:34.023
それは死ぬまで
変わらないでしょう"

00:04:34.023 --> 00:04:35.497
人生の終盤で

00:04:35.497 --> 00:04:36.907
自分の目標が
かつてないほど

00:04:36.907 --> 00:04:38.623
人気がなく

00:04:38.623 --> 00:04:40.630
現実から遠く
離れていると感じたときでも

00:04:40.630 --> 00:04:42.482
ゴールドマンの考えが
ぶれることはありませんでした

00:04:42.482 --> 00:04:44.518
強制送還や暴力の脅し

00:04:44.518 --> 00:04:47.091
刑務所入りのリスクがあってもです

00:04:47.091 --> 00:04:48.940
彼女は未来の世代のために

00:04:48.940 --> 00:04:50.911
道を照らしたいと思いました

00:04:50.911 --> 00:04:52.719
彼女は亡くなる何年か前に

00:04:52.719 --> 00:04:55.301
友人で元恋人だった人物に
こう書いています

00:04:55.301 --> 00:04:57.830
"いつか 私たちが亡くなって
何年も経ってから

00:04:57.830 --> 00:04:59.629
自由はその誇り高き首を
再びもたげるだろう

00:04:59.629 --> 00:05:01.248
その道を照らすのは
私たち次第だ

00:05:01.248 --> 00:05:03.268
今日その光が
いかに薄暗く見えても

00:05:03.268 --> 00:05:05.440
炎であることにかわりはない"

00:05:05.440 --> 00:05:07.403
生涯にわたってゴールドマンは

00:05:07.403 --> 00:05:09.113
仲間と敵の両方を激怒させる
才覚がありましたが

00:05:09.113 --> 00:05:11.730
どちらか一方を喜ばせるために

00:05:11.730 --> 00:05:13.676
自身の信条や生き方をかえることは
決してありませんでした

00:05:13.676 --> 00:05:14.661
ある歴史家はこう書き残しています

00:05:14.661 --> 00:05:16.759
"ゴールドマンは
人生を暴走し

00:05:16.759 --> 00:05:18.740
火を焚いた跡を残していった"

00:05:18.740 --> 00:05:20.130
そして実際ゴールドマンは
真実の名の下に

00:05:20.130 --> 00:05:21.137
ほとんどどんな橋も
燃やしてしまう勢いでした

00:05:21.137 --> 00:05:23.247
かつて若い男性にダンスを邪魔された時に

00:05:23.247 --> 00:05:25.049
彼女が言ったように

00:05:25.049 --> 00:05:26.431
自由がすべての人にとって

00:05:26.431 --> 00:05:27.811
生まれながらの権利となり

00:05:27.811 --> 00:05:29.198
女性が自由に生き
愛し 踊る

00:05:29.198 --> 00:05:30.614
そんな世界を実現するために

00:05:30.614 --> 00:05:32.150
彼女は生涯闘い続けたのです