1 00:00:00,000 --> 00:00:01,477 日本語版字幕担当: ミシガン大学所属 − 瀬川恵、矢嶋彩香 ボランティア − 東梅ひろみ, M.D. 2 00:00:01,477 --> 00:00:02,999 手と手首の筋骨格系検査法(完全版) ミシガン大学 家庭医療学科 タラ・マスターハンター, M.D. マイケル・マクカートニー, M.D. 3 00:00:02,999 --> 00:00:08,289 完全な評価を確実に行うために、手と手首の筋骨格系検査は 系統立った方法で行うのが賢明です。 4 00:00:08,289 --> 00:00:15,872 次のビデオは手と手首の損傷を診断する際に用いられる 一般的な検査法を多数取り入れている推奨された診察手順です。 5 00:00:15,872 --> 00:00:18,456 手と手首の診察はまず視診から始めます。 6 00:00:18,456 --> 00:00:25,924 腕を回外させた状態で左右の非対称性、 母指球と小指球の筋肉の萎縮や皮膚の変化を観察します。 7 00:00:25,924 --> 00:00:34,001 指の回転異常の形跡がないか調べます。 これは、変位を伴う手根骨骨折の際に見られます。 8 00:00:34,001 --> 00:00:40,614 手を回内させた状態で左右の非対称性、 筋肉の萎縮、皮膚の変化を観察します。 9 00:00:40,614 --> 00:00:42,676 次に能動的可動域を調べます。 10 00:00:42,676 --> 00:00:47,198 痛みや可動域に制限がある場合は 他動的に同じ動きを繰り返してください。 11 00:00:47,198 --> 00:00:50,031 以下を確認してください: 手首の屈曲、 12 00:00:50,031 --> 00:00:52,947 手首の伸展、 13 00:00:52,947 --> 00:00:54,987 橈屈、 14 00:00:54,987 --> 00:00:57,365 尺屈、 15 00:00:57,365 --> 00:01:00,024 母指伸展、 16 00:01:00,024 --> 00:01:02,199 母指屈曲、 17 00:01:02,199 --> 00:01:04,864 母指外転、 18 00:01:04,864 --> 00:01:07,614 母指内転、 19 00:01:07,614 --> 00:01:12,300 母指対立、 20 00:01:12,300 --> 00:01:20,574 各指のMCP関節、PIP関節、DIP関節 における屈曲と伸展、 21 00:01:20,574 --> 00:01:25,770 また、指の外転と内転も調べます。 22 00:01:25,770 --> 00:01:28,246 次に負荷をかけた状態での強度を調べます。 23 00:01:28,246 --> 00:01:31,103 手首の屈曲、 24 00:01:31,103 --> 00:01:35,795 手首の伸展、 25 00:01:35,795 --> 00:01:39,328 橈屈、 26 00:01:39,328 --> 00:01:44,188 尺屈、 27 00:01:44,188 --> 00:01:49,602 さらに、負荷をかけた状態での母指の伸展、 28 00:01:49,602 --> 00:01:52,605 母指の屈曲、 29 00:01:52,605 --> 00:01:57,310 母指の外転、 30 00:01:57,310 --> 00:02:01,355 母指の内転、 31 00:02:01,355 --> 00:02:07,605 負荷をかけた状態での母指対立、 32 00:02:07,605 --> 00:02:12,395 MCP関節での屈曲、 33 00:02:12,395 --> 00:02:17,380 MCP関節 での伸展、 34 00:02:17,380 --> 00:02:20,234 PIP関節での屈曲、 35 00:02:20,234 --> 00:02:24,514 PIP関節での伸展、 36 00:02:24,514 --> 00:02:26,882 DIP関節での屈曲、 37 00:02:26,882 --> 00:02:29,885 DIP関節での伸展、 38 00:02:29,885 --> 00:02:39,328 さらに各指の外転と内転も評価します。 39 00:02:39,328 --> 00:02:41,264 次に解剖学的ランドマークを触診します。 40 00:02:41,264 --> 00:02:45,468 母指球、 41 00:02:45,468 --> 00:02:49,931 舟状骨結節、 42 00:02:49,931 --> 00:02:54,264 小指球、 43 00:02:54,264 --> 00:02:57,648 豆状骨、 44 00:02:57,648 --> 00:03:04,385 有鉤骨(ゆうこうこつ)。 45 00:03:04,385 --> 00:03:08,264 次に以下を触診します:橈骨茎状突起、 46 00:03:08,264 --> 00:03:11,560 リスター結節、 47 00:03:11,560 --> 00:03:16,851 解剖学的嗅ぎタバコ窩、 48 00:03:16,851 --> 00:03:23,349 第三中手骨底近位の舟状骨と月状骨の接合部靭帯、 49 00:03:23,349 --> 00:03:26,541 尺骨茎状突起、 50 00:03:26,541 --> 00:03:33,140 三角線維軟骨複合体、 51 00:03:33,140 --> 00:03:40,017 中手骨沿い、 52 00:03:40,017 --> 00:03:43,514 そして各指の触診も行います。 53 00:03:43,514 --> 00:03:51,013 手首と手の損傷を評価する特異検査には次のようなものが ありますが、検査の種類はこれだけに限りません。 54 00:03:51,013 --> 00:03:57,138 手根管症候群の評価に一般的に使われている 検査法は複数あります。 55 00:03:57,138 --> 00:04:00,162 手根骨圧迫テストを使って手根管症候群の評価をします。 56 00:04:00,162 --> 00:04:05,617 手首の付け根のあたりの手根管を最長30秒間、 直接圧迫してください。 57 00:04:05,617 --> 00:04:09,200 痛み、無感覚、しびれが生じた場合、検査は陽性です。 58 00:04:09,200 --> 00:04:11,858 手根管のうえを軽くたたいてチネルテストを行います。 59 00:04:11,858 --> 00:04:15,610 痛み、無感覚、しびれが生じた場合検査は陽性です。 60 00:04:15,610 --> 00:04:18,799 ファレンテストで手根管症候群の評価をします。 61 00:04:18,799 --> 00:04:22,617 手首を完全に屈曲させて両手の甲を合わせます。 62 00:04:22,617 --> 00:04:29,156 痛み、無感覚、しびれが生じた場合検査は陽性です。 63 00:04:29,156 --> 00:04:32,968 尺骨管圧迫テストを使って ギヨン管症候群(尺骨神経管症候群)の評価をします。 64 00:04:32,968 --> 00:04:39,435 最長30秒間、小指球の深部にある 尺骨管あるいはギヨン管を直接圧迫してください。 65 00:04:39,435 --> 00:04:42,436 痛みやしびれが生じた場合検査は陽性です。 66 00:04:42,436 --> 00:04:45,708 次に尺骨管上を軽くたたいてチネルテストを行います。 67 00:04:45,708 --> 00:04:49,799 痛みが生じた場合検査は陽性です。 68 00:04:49,799 --> 00:04:54,425 尺骨神経に損傷がある患者は人差し指と中指を交差させたり、 69 00:04:54,425 --> 00:04:59,137 親指と人差し指で挟んだ紙を引っ張られると 紙を挟んだままでいる事ができません。 70 00:04:59,137 --> 00:05:01,668 これはフローマンサインとして知られています。 71 00:05:01,668 --> 00:05:07,477 前骨間神経に損傷がある患者は親指と人差し指で オーケーサインを作る事ができません。 72 00:05:07,477 --> 00:05:10,914 検査結果に異常がある場合はこのような状態になります。 73 00:05:10,914 --> 00:05:15,117 舟状月状骨間の不安定性の評価に よく使われる検査は二種類あります。 74 00:05:15,117 --> 00:05:18,288 シュックテストは舟状月状骨間の 不安定性を評価する検査です。 75 00:05:18,288 --> 00:05:22,226 手首を屈曲させた状態で検査者が指の伸展に抵抗します。 76 00:05:22,226 --> 00:05:27,230 手首の甲に痛みがあれば陽性の検査とみなします。 77 00:05:27,230 --> 00:05:31,067 ワトソンテストは舟状月状骨間の 不安定性を評価する検査です。 78 00:05:31,067 --> 00:05:36,875 検査者は親指を患者の舟状骨結節にあて、 手背に対して圧迫を加えます。 79 00:05:36,875 --> 00:05:40,975 手首を尺屈させてから撓屈させます。 80 00:05:40,975 --> 00:05:46,785 痛みを伴い音がする場合は陽性の検査となります。 81 00:05:46,785 --> 00:05:50,602 フィンケルシュタインテストは ドケルバン腱鞘炎を評価する検査です。 82 00:05:50,602 --> 00:05:52,607 患者は母指を手のひらにおき、他の指で母指を包む様にします。 83 00:05:54,612 --> 00:05:56,617 その後検査者が受動的に手首を尺屈させます。 84 00:05:56,617 --> 00:06:00,047 痛みが生じた場合検査は陽性です。 85 00:06:00,047 --> 00:06:06,193 母指CM関節における変形性関節症の検査には グラインドテストを用います。 86 00:06:06,193 --> 00:06:10,963 検査者が母指を握って 長軸方向(手首の方向)に力を加え母指を回します。 87 00:06:10,963 --> 00:06:14,828 痛みが生じた場合検査は陽性です。 88 00:06:14,828 --> 00:06:21,300 母指の内側側副靭帯の検査でゲームキーパー母指、 またはスキーヤー母指にみられる不安定性を評価します。 89 00:06:21,300 --> 00:06:28,378 第一中手骨を固定し中手指節関節(MCP関節)で 母指に外反力をかけます。 90 00:06:28,378 --> 00:06:33,186 弛緩は内側側副靭帯が一部あるいは完全に 断裂していることを示唆します。 91 00:06:33,186 --> 00:06:37,867 指の痛みは複数の検査で評価することができます。 92 00:06:37,867 --> 00:06:40,614 負傷した指の屈曲を調べます。 93 00:06:40,614 --> 00:06:44,415 1本だけ孤立させた指を中手指節関節で曲げる事ができない場合は、 94 00:06:44,415 --> 00:06:51,832 浅指屈筋腱が一部または完全に断裂している可能性があります。 95 00:06:51,832 --> 00:06:58,450 深指屈筋腱テスト(Boyesテスト)を行う際は、1本の指の 遠位指節間関節を診察台の端にのせ、この関節の屈曲状態を調べます。 96 00:06:58,450 --> 00:07:04,021 遠位指節間関節(DIP)で指を曲げる事ができない場合は、 深指屈筋腱が一部あるいは完全に断裂していることが考えられます。 97 00:07:04,021 --> 00:07:06,457 これはジャージー指として知られています。 98 00:07:06,457 --> 00:07:10,200 エルソンテストは指伸筋の 一部または完全な断裂の評価に用います。 99 00:07:10,200 --> 00:07:16,367 1本の指の近位指節間関節を診察台の端にのせ、 指の伸展に逆らって力をかけます。 100 00:07:16,367 --> 00:07:21,063 近位指節間関節(PIP)で伸展できない場合は 陽性の結果です。 101 00:07:21,063 --> 00:07:27,285 内側側副靭帯の安定性は0度と30度の屈曲位で 指に外反力をかけて調べます。 102 00:07:27,285 --> 00:07:33,989 外側側副靭帯の安定性は0度と30度の屈曲位で 指に内反力をかけて調べます。 103 00:07:33,989 --> 00:07:38,025 弛緩は靭帯が一部あるいは完全に 断裂していることを示唆します。 104 00:07:38,025 --> 00:07:42,810 手首の検査を終える前に神経血管系の検査 について記録しておく事が重要です。 105 00:07:42,810 --> 00:07:45,701 その際は橈骨動脈拍動および 毛細血管再充満テストをおこないます。 106 00:07:45,701 --> 00:07:48,599 患者の既往歴に応じて更に神経血管系の検査 が必要になる場合もあります。 107 00:07:48,599 --> 00:07:49,469 謝辞:本ビデオの翻訳は、静岡県の支援の下、 地域医療再生基金を用いた「静岡-ミシガン大学家庭医療後期研修、 教育及び研究」(SMARTER FM)プロジェクトの一部として行われました。