ビデオゲームの物語が独特なのは プレイヤーの選択があるからだ 例えば、この説教師を 馬鹿にすべきかどうか 「今までに何人の命を救った? ブルクサや、レーシェンから」 「そんなことは関係ない…」 「質問したんだ 何人だ?」 これらの選択には すぐに反応があるかもしれない… 「皆よく考えたほうがいい」 あるいは、その決断をゲームが覚えていて 後で何らかの結果をもたらす場合もある 「リヴィアのゲラルト、ウィッチャー」 「お前は宗教心を侮辱したとして訴えられている 尋問のため連行せよとの命令だ」 さて、この手の選択肢は 歴史的に見ると RPG や、インタラクティブ・フィクションや Telltale 式ゲームと関係が深い 理由の1つはその系譜だと思う その起源は、即興的な卓上ゲームや 『きみならどうする?』の本まで遡る だが単にインターフェイスの 問題でもあると思う こうしたゲームでは、メニューから 選択肢を選ぶのが主な方法だ 会話分岐や 次の行動リストなどだ だから物語を選択することは ごく自然に合うのだ しかし、ゲームに その UI が無かったら? シューティングや、サバイバルホラー アクションゲームの場合はどうなる? プレイヤーに選択させるには どうしたらいい? 1つの方法は『Bioshock』で 見ることができる FPS のゲームだが 邪悪な道徳的選択がある リトルシスターに出会うたび、彼女を救うのか 魔法ジュースのために命を奪うのか決めるのだ この瞬間、ゲームが止まり 通常の操作ができなくなって 画面上の大きなボタン指示を 押すだけになる [X] でハーベスト(搾取)か [Y] でレスキュー(救出)か 「No no! No no!」 これも1つの方法だが、他のゲームから 物語に適した操作システムを借りただけだ ボタン指示や、選択肢のリストや 会話ホイールなど 僕はこれを「明示的な選択システム」と 呼ぶことにする だが別のやり方もある 別のシューターを見てみよう 今度は『Spec Ops:The Line』だ この場面では2人の男が手を縛られていて 狙撃兵が2人を狙っている プレイヤーは決断を迫られる 「なるほど 選べってことか」 だが今度は、ボタン指示も メニューも存在しない 代わりに、どっちの男を撃つのかは 文字通り、ただ撃って決める (銃声) これはかなり異なる手法だ 別ジャンルのシステムに 頼るのではなく―― 『Spec Ops』ではゲームの基本システムで 自分の意思を表現できるのだ これは射撃のゲームなので 選択の方法も射撃なのだ 僕はこれを「見えない選択システム」と 呼んでいる そしてこうした「珍種」には 素晴らしい利点があると思う そこでこの動画では、選択肢を画面から 消すべき4つの理由を紹介しよう 利点その1 「選択肢に解釈の余地が生まれる」 『Bioshock Infinite』では、異人種間のカップルに ボールを投げろと指示されるが 知ってた? 実は代わりに この司会者にも投げられ… おっと…画面に書いてあったな 少しネタバレしたか? これはプレイヤーができる行動を 全て一覧表示したせいで起きてしまう 『Spec Ops』に戻すと、無線の男が どちらか1人を撃てと言ってくる間に 実は2人を吊るしてるロープを 撃つこともできる または選択を一切拒否したり 代わりに狙撃兵を撃ったりもできる 選択肢が見えないので 代替案を隠すことができるのだ それが見つかるのは、意欲的なプレイヤーが 状況やシステムを真剣に考えたときだけだ 『Spec Ops』はこういうのが いっぱいある その後、怒った群衆が押し寄せてきて 彼らを撃つように促されるが 空へ発砲してもいいし 軽く殴って事態を鎮めることもできる また『Far Cry 4』にも 印象的な場面がある パガン・ミンに戻るまで待てと言われ 要塞を脱出するチャンスができる しかし実際に戻るのを待っていると 隠しエンドが発生する これらの選択肢は プレイヤーを賢い気分にさせる またゲーム世界が選択肢だらけの 融通のきかないものではなく より自然で 信じられる世界になる 利点その2 「異なる選択肢を用意できる」 『Bioshock』に話を戻すと、リトルシスターの 救出と搾取に関して言えば 選択はどっちも同じだ もちろん、結果は異なるし 一方は気分が悪くなるだろうが 物理的な行為はまったく同じだ コントローラの [X] を押すか [Y] を押すかだ だが『Undertale』を 考えてみてくれ このゲームではモンスターやボスを 全て殺すか、見逃すか選択できる だが2つは別モノだ そして大抵の場合―― モンスターを単にやっつけるよりも 救う方がずっと難しい つまり良い結末のためには 努力する必要があるのだ また何らかの選択をするときは 単にそれ以外が難しすぎるとか 必要なリソースが多すぎるなどが 理由になるかもしれない 他にも『Deus Ex: Human Revolution』では パイロットのファリダが敵に包囲される 彼女を救出するには、記録的な速さで 敵を全滅させるしかない 彼女の命を選ぶ倫理的選択ではなく 腕前のテストになっている また非道徳で利己的な選択を メニューから選ぶと自己嫌悪になるが もっと強烈なのは、その行為を 物理的にやるしかない場面だ ゆっくりと、手作業で、個人として 『This War of Mine』の老夫婦から盗むと プレイヤーの君は、この残酷な行為に よりいっそう加担してる気分になるのだ あれには参った 利点その3 「キメの細かい選択」 明示的な選択システムと言えば 普通はとても重要な決定事項のことを指す 2人の命を選ぶ場面や 街全体の運命や 朝食のメニューなどだ だが見えない選択を 記録していけば プレイヤーの行動を全て集めた 膨大かつ詳細なデータバンクができるので それを丸ごと利用して 他の部分に工夫できる すると非常に個人的な体験になる 『Shadow of War』のオークは 前回のケンカの内容を正確に覚えてる 『Hades』のキャラは直近の家出について 具体的に喋ってくる 「あー…レッチラウトにひっぱたかれて くたばっちゃった?」 「じゃあ今度からは叩かれる前に 叩いてやれば?」 また「どこへ行った」とかの 些細なことにも言及できる それが理由で『Deus Ex』の JC デントンは 女子トイレに入ると叱られる 「かかった時間」も活用できる 『Mass Effect 2』で仲間の救出に 時間をかけすぎると ノルマンディー号の乗組員が ドロドロに溶けてしまう こうすることで、大きく明確な選択だけでなく 全ての行動の影響を考えるようになる 例えば『Dishonored』では 敵を殺すたびにカオス度が上昇して 物語の結末が変わったり、周囲の態度が 変化したり、ネズミが増えたりする 全ての戦闘が 未来を変える機会になるので 慎重によく考えて プレイするようになる 『MGS V』でも同じように 敵がプレイヤーの遊び方に適応して ヘルメットをかぶったり 投光器を増やしたりする 最後に、利点その4 「驚くような結果」 明示的な選択の最大の問題は プレイヤーが決めているということが明白になることだ あと完全に明白になってない場合に備えて 画面に通知を出して知らせよう つまり自分が決めたことの結末で 驚かせるのはかなり難しいのだ だが見えない選択システムでは 密かに黙ったまま 気付かれずに行動を 記録できるので あとからその結果で 驚かせることができる 例えば『MGS』には、読心能力の変態 サイコ・マンティスが登場する 「随分と慎重な性格だな」 「石橋を叩いて渡るタイプだな」 「戦闘は苦手なようだ」 仕組みを説明すると、ゲームは最初からずっと 密かに記録していたのだ セーブの頻度や トラップで死んだ回数や PS1 メモリーカードの 中身までも そしてサイコ・マンティスが 適切な台詞を言う この演出は小島のお家芸だが 見えない選択でプレイヤーを驚かした見事な例だ 他にも牢獄からビヨールを救い出すと つらぬきの騎士戦で助けに来てくれたり 『クロノトリガー』では、冒頭の行動で 裁判にかけられたりする 他にも、明示的な選択システムが とても目立っているせいで プレイヤーは当然、その選択が物語にも 同じくらい大きく影響すると期待するはずだが 普通はそうならないので がっかりする だが見えない選択システムなら たとえ小さな結果であっても 印象的で記憶に残るものになる 利点を挙げるなら、見えない選択を 実装する難しさにも触れとくべきだろう 1つは、全ての選択を 尊重する難しさだ 『Firewatch』には、全裸の少女に 対処する場面があり ゲームは様々な行動に反応する 例えば、ラジカセを湖に投げたりできる だがプログラマは全ての行動に対応するために 複雑で妥協のないシステムを作るハメになった 概要欄に見えない選択の実装に役立つリンクを 貼っといたから、興味があれば見てくれ それにどんな種類の選択でも 機能するわけではない ゲームでやれることが銃撃しかない場合 微妙な判断には使えない だが二者択一ではない 『Firewatch』の話に戻すと 拾うなどの行動も記録しながら 同時にトランシーバーの 会話システムも用意している 2種類の異なる方法で 自分を表現できるのだ もう1つの問題は 選択肢がハッキリ表示されないと プレイヤーはその選択肢の存在すら知らず 知ったときに騙されたと感じるかもしれない 僕は『Bioshock』の フォート・フロリックの動画で サンダー・コーエンを殺さずに 立ち去る方法を説明した だがコメント欄によれば、立ち去るのが 有効だと知らない人が多かったようだ だから他の選択肢もあると 教える必要があるかもしれない 最後に、プレイヤーは過去の行動の結果を見ても それに気付かないかもしれない 明示的な選択システムの良いところは―― 自分の選択の影響力が 露骨に分かることだ だが見えない選択は 簡単に見落とされてしまう 『Dishonred』のプレイテスト時 とても直線的なゲームだと感じたテスターもいたが これは自分が選択したことにすら 気付かなかったのが原因だ 選択が繊細で自然すぎたのだ 同様に『Silent Hill 2』で最後まで行っても カットシーンが意味不明なことがあるが これはカットシーンがプレイヤーの 漠然とした行動の産物だからだ 重要なのは、見えない選択を使うときは 会話シーンをかなり強引に見せて これは過去の行動の結果なのだと 露骨に示すことだ 「小さな合唱のように彼はいつも ♪ 死んで戻ってくるって分かった ♪ 」 薄味すぎると 努力は全て無駄になる 説明は以上だ アクションゲームは RPG や テキストアドベンチャーになってまで プレイヤーの選択を 反応、記憶、反映する必要はない これらのゲームにある 既存のシステムでも—— プレイヤーは意思、価値観、決断 倫理観を表現できる 見えない選択を実装することで、プレイヤーは 通常プレイと同じ行動で自分を表現できる すると、選択肢が曖昧になる 一方の選択を 他より難しくできる プレイヤーの些細な行動を たくさん記録できる そして選択の結果で もっと驚かすことができる 結局「行動は言葉より雄弁」だし 僕はもっと多くのゲームが これを実現するべきだと思う ご視聴ありがとう (字幕翻訳:Nekofloor) やあ! 明けましておめでとう! Patreon の GMTK 支援者は 月刊の読書リストにアクセスできる 僕がお勧めする 20 の記事と動画集だ 1月のリストから 1つ紹介しよう 「スーパーヒーローのジャンルが 西部劇に匹敵しない理由」 Patreon なら全リストが読める リンクは概要欄だ ご支援ありがとう