0:00:06.909,0:00:10.328
マリ・キュリーの[br]手稿を見たければ

0:00:10.328,0:00:12.559
権利放棄証書にサインした上で

0:00:12.559,0:00:16.718
放射能汚染から身を守る防護服を[br]身に付ける必要があります

0:00:16.718,0:00:21.187
キュリー夫人の遺体も同様で [br]収められている棺は鉛で裏打ちされていて

0:00:21.187,0:00:23.142
彼女の研究の中心であり

0:00:23.142,0:00:27.578
彼女の死因ともなった放射線を[br]閉じ込めています

0:00:27.578,0:00:31.858
帝政ロシア支配下にあったポーランドの[br]ワルシャワで育ったマリは

0:00:31.858,0:00:34.671
元々の名をマリア・[br]スクウォドフスカといい

0:00:34.671,0:00:38.868
優れた学生でしたが [br]大きな障害に直面しました

0:00:38.868,0:00:42.498
女性だったために[br]高等教育を受けられず

0:00:42.498,0:00:44.519
これに抵抗して

0:00:44.519,0:00:47.359
「さまよえる大学」に参加しました

0:00:47.359,0:00:52.629
ポーランドの若者に密かに[br]教育を行っていた秘密の組織です

0:00:52.629,0:00:55.679
家庭教師として働いてお金を貯め

0:00:55.679,0:01:00.549
やがてパリに移り住むことができました[br]有名なソルボンヌ大学で学ぶためです

0:01:00.549,0:01:03.660
そこでマリは物理学と[br]数学の学位を取りました

0:01:03.660,0:01:05.940
ほとんどパンと紅茶だけで[br]暮らしていて

0:01:05.940,0:01:08.870
時々 飢えのために[br]気を失うことがありました

0:01:08.870,0:01:11.840
パリでマリは物理学者の[br]ピエール・キュリーに出会い

0:01:11.840,0:01:14.819
彼は実験室と真心を[br]彼女に捧げました

0:01:14.819,0:01:17.620
それでもマリはポーランドに[br]帰ることを切望していました

0:01:17.620,0:01:19.489
しかしワルシャワに帰ってみると

0:01:19.489,0:01:21.109
女性が大学の職を得るのは

0:01:21.109,0:01:23.280
相変わらず困難であることが[br]分かりました

0:01:23.280,0:01:25.020
道がなくなった[br]わけではありません

0:01:25.020,0:01:27.591
パリに戻ると 恋い焦がれる[br]ピエールが待っていました

0:01:27.591,0:01:31.141
２人は間もなく結婚し [br]ものすごい研究チームができあがりました

0:01:31.141,0:01:34.809
ある物理学者の研究が[br]マリ・キュリーの興味を掻き立てました

0:01:34.809,0:01:42.641
1896年に アンリ・ベクレルが[br]ウランはX線のような謎の放射線を発していて

0:01:42.641,0:01:47.070
それが写真乾板を露光させることを[br]発見したのです

0:01:47.070,0:01:52.251
キュリーはすぐに別の元素トリウムもまた[br]同様の放射線を発することを見つけました

0:01:52.251,0:01:53.721
特に重要だったのは

0:01:53.721,0:01:57.262
この放射線の強さは[br]元素の量だけに依存し

0:01:57.262,0:02:00.781
物理的・化学的な変化には[br]影響されないということでした

0:02:00.781,0:02:02.592
このことから彼女は

0:02:02.592,0:02:07.311
放射線は原子内部の何か根源的な[br]ところから来ていると結論付けました

0:02:07.311,0:02:08.823
この考えは革新的なもので

0:02:08.823,0:02:13.911
原子は分割不能だとする [br]長く信じられてきたモデルを覆しました

0:02:13.911,0:02:18.572
続いて放射性がとても強い鉱石である[br]瀝青ウラン鉱に注目したキュリー夫妻は

0:02:18.572,0:02:23.464
その放射線がウランだけでは[br]説明できないことに気付きました

0:02:23.464,0:02:27.764
原因となる放射性元素が[br]他にもあるのか？

0:02:27.764,0:02:32.265
1898年に夫妻は２つの[br]新元素を発表しました

0:02:32.265,0:02:35.407
マリの故国ポーランドに[br]ちなんで名付けられたポロニウムと

0:02:35.407,0:02:38.353
ラテン語で「光」を意味する[br]ラジウムです

0:02:38.353,0:02:42.384
彼らはまた「放射能」という[br]言葉も作りました

0:02:42.384,0:02:48.715
1902年にキュリー夫妻は 0.1 グラムの[br]純粋な塩化ラジウムの抽出に成功しました

0:02:48.715,0:02:51.187
数トンの瀝青ウラン鉱から[br]取り出したもので

0:02:51.187,0:02:53.396
当時においては[br]ものすごい偉業でした

0:02:53.396,0:02:56.476
その年 ピエール・キュリーと[br]アンリ・ベクレルが

0:02:56.476,0:02:59.096
ノーベル物理学賞に[br]ノミネートされましたが

0:02:59.096,0:03:01.105
マリは入っていませんでした

0:03:01.105,0:03:04.767
ピエールが立ち上がり [br]妻の貢献が認められるよう尽力しました

0:03:04.767,0:03:11.226
そしてキュリー夫妻とベクレルが揃って[br]1903年のノーベル物理学賞を受賞し

0:03:11.226,0:03:16.116
マリ・キュリーは史上初の[br]女性ノーベル賞受賞者となりました

0:03:16.116,0:03:20.047
十分な資金と尊敬を勝ち得て [br]キュリー夫妻は順風満帆でした

0:03:20.047,0:03:22.486
しかし1906年に悲劇が訪れます

0:03:22.486,0:03:26.887
ピエールが交通の激しい交差点で[br]馬車に轢かれ亡くなったのです

0:03:26.887,0:03:29.677
打ちのめされたマリは[br]研究に没頭し

0:03:29.677,0:03:32.666
ピエールが教えていた[br]ソルボンヌの教職を引き継いで

0:03:32.666,0:03:35.707
ソルボンヌ初の[br]女性教授になりました

0:03:35.707,0:03:38.516
彼女が単独で行った研究もまた[br]実り多いものでした

0:03:38.516,0:03:42.018
1911年に再びノーベル賞を[br]今度は化学で受賞しました

0:03:42.018,0:03:44.587
ラジウムとポロニウムの発見と

0:03:44.587,0:03:49.348
純粋なラジウムやその化合物の[br]抽出と分析をした功績のためです

0:03:49.348,0:03:52.467
これにより彼女は初の [br]そして今日においても唯一の

0:03:52.467,0:03:56.368
２つの異なる科学分野で[br]ノーベル賞を受賞した人物となりました

0:03:56.368,0:03:58.959
キュリー教授は[br]自分の発見を応用し

0:03:58.959,0:04:02.128
医学研究と医療の様相を変えました

0:04:02.128,0:04:05.747
第一次世界大戦中には[br]放射線診断のための移動部隊を組織し

0:04:05.747,0:04:08.629
また放射線の腫瘍への[br]影響を調べました

0:04:08.629,0:04:12.928
しかしこの人類への貢献のために [br]彼女は個人的に高いツケを払うことになりました

0:04:12.928,0:04:15.979
キュリー夫人は1934年に[br]骨髄疾患で亡くなりましたが

0:04:15.979,0:04:19.678
これは放射線に曝されたことが[br]原因と考えられています

0:04:19.678,0:04:22.764
マリ・キュリーの画期的な研究は

0:04:22.764,0:04:26.106
物理学と化学の理解の基礎を築き

0:04:26.106,0:04:30.159
腫瘍学 科学技術 医学 [br]原子核物理学をはじめとする

0:04:30.159,0:04:33.423
様々な領域に[br]輝かしい軌跡を残しました

0:04:33.423,0:04:37.334
良くも悪くも 放射線についての[br]彼女の発見は新時代を開き

0:04:37.334,0:04:41.070
科学の大いなる秘密を[br]解明することになったのです