WEBVTT

00:00:12.071 --> 00:00:16.040
岩の上でひなたぼっこしたり
浜辺でヨタヨタ歩くアシカを見ると

00:00:16.040 --> 00:00:20.031
動かないこの哺乳類が
「アシカ」ではなく

00:00:20.031 --> 00:00:22.478
「海の飼い猫」に見えるでしょう

00:00:22.478 --> 00:00:25.002
しかし浜辺でのアシカの姿に
騙されてはいけません

00:00:25.002 --> 00:00:29.284
波の下に行くと
アシカはとても辛抱強く狩りをします

00:00:29.284 --> 00:00:32.840
時速６キロから30キロの速さで突進し

00:00:32.840 --> 00:00:35.706
１回に30時間も狩りを
続けることができます

00:00:35.706 --> 00:00:39.011
この堂々たる哺乳類はまさに
「海のライオン」ともいえるでしょう

00:00:39.011 --> 00:00:41.963
身体が適応し

00:00:41.963 --> 00:00:47.235
百万年もかけて調整しながら
臨機応変なハンターになったのです

NOTE Paragraph

00:00:47.235 --> 00:00:48.900
お気に入りの食物を得るため

00:00:48.900 --> 00:00:53.542
アシカは他の半水生の動物よりも
ずっと深くまで潜って狩りをします

00:00:53.542 --> 00:00:57.000
400メートル近くまで
潜るいくつかの種と同様に

00:00:57.000 --> 00:00:59.307
上昇する水圧に対し
柔軟な肋骨を折りたたんで

00:00:59.307 --> 00:01:04.379
弾力のある一対の肺を
圧縮することで対応できます

00:01:04.379 --> 00:01:07.151
酸素が肺から出ていく時に

00:01:07.151 --> 00:01:11.298
リング状の軟骨がしぼんでいき
空気が狭い気管へと押し出され

00:01:11.298 --> 00:01:14.296
そして 上部にあるより広い気管に
空気が貯まります

00:01:14.296 --> 00:01:18.514
水面に上がる際にこの空気は
肺を再び膨くらますために用いられますが

00:01:18.514 --> 00:01:22.825
それまでは酸素を保存するため
拍動がゆっくりになります

00:01:22.825 --> 00:01:26.657
血流は最も大切な臓器だけに
行先を変えます

00:01:26.657 --> 00:01:29.109
心臓、肺や脳など

00:01:29.109 --> 00:01:33.316
血液や筋肉に蓄えられた
酸素に依存している臓器のことです

NOTE Paragraph

00:01:33.316 --> 00:01:35.424
狩り場に到着すると

00:01:35.424 --> 00:01:39.649
アシカは獲物を探すのに
優れた視力を使います

00:01:39.649 --> 00:01:42.531
ほとんどの哺乳類の目には
水晶体という構造があり

00:01:42.531 --> 00:01:47.351
透明で凸面になっており
光が屈折することで ものが見えます

00:01:47.351 --> 00:01:52.295
人間の場合 水晶体は空気中を通ってきた
光を捉えるように湾曲しています

00:01:52.295 --> 00:01:56.833
しかしアシカは 数百メートルもの水深で
可能な限りの視力を得なければなりません

00:01:56.833 --> 00:02:01.773
これを実現するため 目には
水中の光を屈折させるより丸い水晶体と

00:02:01.773 --> 00:02:03.851
元の大きさの25倍にまで開く

00:02:03.851 --> 00:02:07.380
涙型の瞳孔があります

00:02:07.380 --> 00:02:09.593
これによって
可能なかぎりの光を取り込み

00:02:09.593 --> 00:02:14.330
非常に薄暗い環境でも
獲物を正確に定めます

NOTE Paragraph

00:02:14.330 --> 00:02:15.892
しかし全く見えなくなったら

00:02:15.892 --> 00:02:21.352
第六感のようなもので
獲物を捕らえるのです

00:02:21.352 --> 00:02:24.003
アシカのヒゲ 別名で 洞毛は

00:02:24.003 --> 00:02:27.202
ケラチンでできており
神経線維が詰まっていて

00:02:27.202 --> 00:02:31.223
線維は顔の結合組織にまで
つながっています

00:02:31.223 --> 00:02:34.956
アシカはヒゲの向きを
自由にコントロールでき

00:02:34.956 --> 00:02:39.509
顔に沿って横たわらせたり、
直角にピンと立てることもできます

00:02:39.509 --> 00:02:40.812
しっかりと調整されると

00:02:40.812 --> 00:02:45.792
ヒゲは魚が動いたときの水の微動を
認識することが出来ます

00:02:45.792 --> 00:02:49.128
その正確さは
視界を失ったアシカが

00:02:49.128 --> 00:02:54.318
２センチ以下の差しかない物の
違いを感じられるほどです

NOTE Paragraph

00:02:54.318 --> 00:02:58.525
このような仕組みにより
健康なアシカは漁に出るたびに

00:02:58.525 --> 00:03:02.476
イワシ、サバ、イカなどの魚を
大量に捕まえることができます

00:03:02.476 --> 00:03:06.363
そしてとても並はずれた記憶力で
複数の狩場を記憶できます

00:03:06.363 --> 00:03:09.143
何十年も訪れていなかった
狩り場も覚えているのです

00:03:09.143 --> 00:03:13.307
繁殖のための縄張りや
子を産む場所も記憶し

00:03:13.307 --> 00:03:16.787
近所のどのアシカが
仲間か敵かも覚えています

00:03:16.787 --> 00:03:20.779
しかも10年行っていない作業を
覚えていて

00:03:20.779 --> 00:03:24.220
それによって
昔たむろしていた場所に

00:03:24.220 --> 00:03:27.972
簡単に行くことができるという
証拠さえあります

NOTE Paragraph

00:03:27.972 --> 00:03:30.379
このような驚くべき
適応能力をもっても

00:03:30.379 --> 00:03:32.966
アシカが対応できないような
急激な環境変化が

00:03:32.966 --> 00:03:35.799
生息の場に起きているので

00:03:35.799 --> 00:03:40.944
気候変化による海の温暖化に伴い
ある有毒藻類が繁茂しています

00:03:40.944 --> 00:03:43.804
この藻類を直接食す魚には無害ですが

00:03:43.804 --> 00:03:46.235
その魚を食べるアシカにとっては

00:03:46.235 --> 00:03:50.517
藻類のドウモイ酸が
発作や脳損傷を引き起こします

00:03:50.517 --> 00:03:53.918
海の環境変化により
この藻類が一年中生え

00:03:53.918 --> 00:03:58.364
さらに多くのアシカが
砂浜に打ち上げられています

NOTE Paragraph

00:03:58.364 --> 00:04:01.322
この悲しい発見は

00:04:01.322 --> 00:04:04.089
水生動物群の健康を知ることによって
我々の海への

00:04:04.089 --> 00:04:06.529
理解をより深めるための
数ある方法のひとつに過ぎません

00:04:06.529 --> 00:04:08.680
このような危険信号は
我々自身や

00:04:08.680 --> 00:04:11.800
他の海生哺乳類を
保護するための行動を取るのに役立ちます

00:04:11.800 --> 00:04:15.564
そしてアシカが生息する
海の変化について学べば学ぶほど

00:04:15.564 --> 00:04:20.264
我々がこれらの賢い動物たちの繁殖を
助ける手段をより多く得ることができるのです