WEBVTT 00:00:11.667 --> 00:00:14.001 この質問から始めてみましょう 00:00:14.583 --> 00:00:18.731 あなたは新しいTシャツを買いに 00:00:18.732 --> 00:00:21.737 お気に入りの店に車で向かいます 00:00:21.738 --> 00:00:23.524 店の品物を見比べ 00:00:23.525 --> 00:00:25.998 選択肢を2つのTシャツに絞り込みます 00:00:25.999 --> 00:00:28.298 どちらも同じ位 クールです 00:00:28.299 --> 00:00:30.247 両方とも手に取ってみます 00:00:30.248 --> 00:00:32.610 あなたは知っています 00:00:32.610 --> 00:00:37.674 片方は健全な労働環境の企業によって 製造されている事 00:00:37.675 --> 00:00:40.698 児童労働も無く 適正賃金が支払われいて 00:00:40.699 --> 00:00:44.380 有毒な化学染料も使われておらず 00:00:44.381 --> 00:00:47.055 オーガニックコットンで作られています 00:00:47.056 --> 00:00:48.797 もう片方のTシャツは 00:00:48.798 --> 00:00:52.126 1週間前の報道によると 00:00:52.127 --> 00:00:53.778 いわゆる「搾取工場」的 00:00:53.779 --> 00:00:56.086 劣悪な労働環境で知られる ブランドのものです 00:00:56.087 --> 00:00:57.876 児童労働が横行しているでしょうし 00:00:57.877 --> 00:00:59.746 もちろん適正賃金は支払われておらず 00:00:59.747 --> 00:01:03.304 有毒な化学物質にまみれていて オーガニックではありません 00:01:04.529 --> 00:01:08.130 あなたはどちらのTシャツも 同じくらい気に入っているのですが 00:01:08.131 --> 00:01:11.249 この状況で 皆さんの中で 00:01:11.250 --> 00:01:13.186 より「責任ある」Tシャツを選ぶ方は 00:01:13.187 --> 00:01:15.236 手を挙げて下さい 00:01:18.027 --> 00:01:19.228 OK 00:01:21.218 --> 00:01:22.628 大半の方ですね 00:01:23.688 --> 00:01:28.139 では 一番最近Tシャツを 買った時の事を思い出して下さい 00:01:29.352 --> 00:01:31.605 その時あなたは 購入の決断による 00:01:31.606 --> 00:01:36.256 社会・環境的影響について 考えたでしょうか? 00:01:36.257 --> 00:01:38.639 そのTシャツのブランドの 00:01:38.640 --> 00:01:42.604 社会・環境的な振る舞いについて 考えましたか? 00:01:43.113 --> 00:01:46.678 コンピューターやスマートフォンを 買った時はどうだったでしょう? 00:01:47.186 --> 00:01:50.274 それら商品が生産される過程の 人権環境を 00:01:50.287 --> 00:01:52.730 確認しましたか? 00:01:54.792 --> 00:01:56.209 おそらくしなかったでしょう 00:01:58.884 --> 00:02:03.813 これは「意図と行動の乖離」と言い 00:02:05.093 --> 00:02:07.362 私たちに最善の意図があっても 00:02:07.363 --> 00:02:10.458 実際の意思決定となると 00:02:11.396 --> 00:02:12.957 それを忘れてしまいますし 00:02:12.958 --> 00:02:17.737 色々 言い訳をして 意図を行動に移せません 00:02:17.738 --> 00:02:19.247 何がこの乖離を 00:02:19.248 --> 00:02:20.660 引き起こすのでしょう? 00:02:20.661 --> 00:02:23.751 サステナビリティになると 何故 私たちはこんなにも理想とは違った 00:02:23.752 --> 00:02:25.621 行動に甘んじてしまうのでしょう? 00:02:26.677 --> 00:02:29.748 情報不足から生じる問題と 考えられるかもしれません 00:02:31.129 --> 00:02:34.083 これらの事柄に関する知識があれば 00:02:34.084 --> 00:02:36.293 より良い決断が出来るだろうと 00:02:36.294 --> 00:02:40.228 知識があればそれだけ消費者としての 責任ある決断につながるだろうと 00:02:41.263 --> 00:02:44.121 2013年4月に起きた事件を 思い出してください 00:02:45.247 --> 00:02:49.096 バングラデシュのダッカで ある縫製工場が倒壊しました 00:02:49.781 --> 00:02:52.355 ニュースで事故現場の画像を 目にしたでしょう 00:02:52.832 --> 00:02:55.831 幾つかのブランドの名前を 覚えているかもしれません 00:02:56.195 --> 00:02:57.756 そこで生産されていた製品のね 00:02:57.757 --> 00:03:01.046 この事件の前後にそのブランドの 商品を買ったかも知れません 00:03:01.589 --> 00:03:03.458 その1年前 00:03:03.459 --> 00:03:08.210 フォックスコンの労働者たちの話を 聞いたことがあるはずです 00:03:08.214 --> 00:03:12.026 スマートフォンやコンピューターを 生産する工場で 00:03:12.027 --> 00:03:14.096 屋根からの投身自殺が相次ぎました 00:03:14.097 --> 00:03:17.565 そこの労働者たちが 劣悪な労働環境に苛まれた結果です 00:03:18.825 --> 00:03:22.111 ご存知の通り 私たちはマグロを 口にできる最後の世代かも知れません 00:03:22.959 --> 00:03:26.209 児童労働や奴隷労働が 00:03:26.210 --> 00:03:31.334 チョコレートや砂糖、金、コルタン等の あらゆる産地で起こっています 00:03:32.706 --> 00:03:34.870 このような事を 聞いたことがないという方は 00:03:34.871 --> 00:03:37.618 過去20年を ロビンソン・クルーソーのように 00:03:37.619 --> 00:03:39.399 孤島で暮らしてでもいたのでしょう 00:03:39.417 --> 00:03:43.858 ですから問題は 情報量ではないのです 00:03:43.859 --> 00:03:46.648 私たちは責任を転嫁することだとか 00:03:46.667 --> 00:03:50.666 自分たちの持続不可能な選択を 正当化することに長けています 00:03:50.667 --> 00:03:57.251 企業に責任を押し付け 生産方法の問題だと言います 00:03:57.251 --> 00:03:59.695 そして 生産側の問題だという 言い方をして 00:03:59.696 --> 00:04:02.347 企業にその行動を改めるように求めます 00:04:02.348 --> 00:04:04.469 これにも一縷の真実はありますが 00:04:04.470 --> 00:04:06.254 物語の一部でしかありません 00:04:06.255 --> 00:04:09.678 何故なら基本的に 私たちがこんにち直面する 00:04:09.679 --> 00:04:13.770 サステナビリティの問題は 私たちの生活様式の問題だからです 00:04:15.227 --> 00:04:16.750 私たちはもっとモノが欲しい 00:04:16.750 --> 00:04:20.834 もっと速く もっとも安く 00:04:21.382 --> 00:04:23.103 つまり私たちは 問題に加担しているのです 00:04:23.104 --> 00:04:27.446 現在の生産方式をとりまく環境を 改善すれば良いというだけでは無く 00:04:27.447 --> 00:04:30.895 我々の消費文化を 変容することも必要なのです 00:04:31.918 --> 00:04:33.784 情報の欠除が問題なのではありません 00:04:34.334 --> 00:04:38.960 では「意図と行動の乖離」は 何故起こるのでしょう? 00:04:40.454 --> 00:04:43.835 ほとんどの場合 私たちが消費者として決断する時 00:04:43.836 --> 00:04:48.541 無意識に まるで自動操縦のように 行動しています 00:04:48.542 --> 00:04:52.293 深く考えることなく いつもの慣れで決断をします 00:04:52.324 --> 00:04:56.792 今まで続けてきた 当たり前のような習慣が 00:04:56.793 --> 00:04:58.861 私たちの行動を左右します 00:04:58.862 --> 00:05:01.063 最後にスマートフォンで 00:05:01.064 --> 00:05:05.105 しばらくメールのチェックを止めようと 決断した時を思い出してください 00:05:05.817 --> 00:05:07.393 多分長くは続かなかったでしょう 00:05:08.474 --> 00:05:11.158 習慣は理性よりも 強力なことがあります 00:05:11.877 --> 00:05:15.603 もっとサステナブルな消費をしたければ 00:05:15.604 --> 00:05:18.494 習慣をプログラムし直す必要があるのです 00:05:19.113 --> 00:05:21.502 習慣は氷山のようなものだと考えてください 00:05:21.503 --> 00:05:25.018 表面に見える部分が「行動」です 00:05:25.667 --> 00:05:30.320 水面下にあり見えないのは 「価値観」や「信念」 00:05:30.321 --> 00:05:33.194 行動に影響するものです 00:05:34.375 --> 00:05:37.126 だから 誰かの習慣を変えたい場合— 00:05:37.162 --> 00:05:38.289 これは難しいことですが 00:05:38.290 --> 00:05:42.220 直接その行動を ターゲットすることもできます 00:05:42.221 --> 00:05:46.263 禁煙を促進したいなら 00:05:46.264 --> 00:05:50.294 公共の場での喫煙を 違法にすればいい 00:05:50.919 --> 00:05:53.474 こうして行動自体をターゲットにします 00:05:53.475 --> 00:05:58.417 あるいは そもそもその根底にあり 行動を引き起こしている 00:05:58.418 --> 00:06:01.245 価値観や信念も ターゲットにできます 00:06:01.247 --> 00:06:02.958 これはより難しいのですが 00:06:02.959 --> 00:06:06.300 もっと根本的な変化を引き起こします 00:06:07.723 --> 00:06:11.779 では普段 私たちは価値観や信念に どう働きかけているのでしょう? 00:06:11.780 --> 00:06:16.655 私たちは 社会に存在する価値観や信念に 「物語」を通して語りかけます 00:06:18.235 --> 00:06:24.218 物語は習慣を形作り、強化し、断ちます 00:06:24.959 --> 00:06:29.751 子供達がおとぎ話を 好きなのを思い出してください 00:06:30.312 --> 00:06:34.024 そしておとぎ話を通じて 価値観や信念が伝えられることを 00:06:34.288 --> 00:06:38.380 古代ギリシャやローマの社会が 強力な神話により導かれていたことを 00:06:38.381 --> 00:06:41.630 思い出してみてください 00:06:42.353 --> 00:06:46.746 高度に複雑な物語の数々は 人々の毎日の生活での行動を導いていました 00:06:48.100 --> 00:06:51.539 禁煙の話に立ち戻れば 00:06:51.540 --> 00:06:54.272 公共の場での喫煙を 違法にしてもいいし 00:06:54.273 --> 00:06:57.740 喫煙を促す価値観や信念を 00:06:57.750 --> 00:07:00.167 再プログラムしてもいいのです 00:07:00.915 --> 00:07:04.785 タバコ業界はこうした物語を 作り上げることに長けています 00:07:04.786 --> 00:07:06.367 ティーンエイジャーたちには 00:07:06.368 --> 00:07:10.337 カッコ良さ、リスク、大人の世界の物語 00:07:10.338 --> 00:07:12.054 正にティーンたちが求めるものです 00:07:12.055 --> 00:07:15.628 彼らはそれがカッコ良くて 大人に近づけると思う限り 00:07:15.629 --> 00:07:18.109 喫煙を続けます 00:07:18.110 --> 00:07:23.508 女性には解放とセクシーさの物語を提供し 00:07:24.129 --> 00:07:25.678 アフリカの貧しい人々には 00:07:25.679 --> 00:07:28.988 ヨーロッパの繁栄の 物語を提供しました 00:07:28.989 --> 00:07:32.724 「タバコを吸えば 西欧の繁栄に少し近づけますよ」 00:07:32.725 --> 00:07:35.638 もし習慣を変えさせたければ 00:07:35.645 --> 00:07:39.244 そもそもその習慣を促している物語よりも もっと強力な物語を 00:07:39.245 --> 00:07:42.140 見つけなければなりません 00:07:42.141 --> 00:07:45.895 サステナビリティ運動の問題は 00:07:45.896 --> 00:07:49.086 語るべき物語が無いということです 00:07:49.745 --> 00:07:54.321 そもそも私たちの消費習慣を 促している物語よりも 00:07:54.322 --> 00:07:57.237 力強くそれを打ち消す物語が 欠落しているということです 00:07:57.237 --> 00:07:59.008 では 消費習慣を促すのは どんな物語でしょう? 00:07:59.008 --> 00:08:04.159 これは20世紀の消費社会の物語で 00:08:05.725 --> 00:08:09.790 数十年間にわたり成長し その存在は強固になりました 00:08:09.791 --> 00:08:14.204 最初は明るい未来を思わせるトーンで始まり 00:08:14.205 --> 00:08:17.032 私たちは輝かしい未来を信じます 00:08:17.033 --> 00:08:19.164 テクノロジーがそこへ導いてくれるのだと 00:08:19.165 --> 00:08:21.032 人類は月に到達し 00:08:21.892 --> 00:08:25.733 テクノロジーは生産システムを 更に効率化し 00:08:25.734 --> 00:08:30.051 製品はより迅速に低コストで 生産されるようになります 00:08:30.459 --> 00:08:36.082 私たちは商品を買う事で 何者かになり どこかに所属している 00:08:36.082 --> 00:08:41.207 という充足感を感じるので その製品を買います 00:08:41.219 --> 00:08:43.710 つまり私たちの行動を突き動かす物語は 00:08:43.711 --> 00:08:47.709 テクノロジーの進化と 経済的効率、成長、消費 — 00:08:48.911 --> 00:08:53.288 そして幸福感を結びつける物語なのです 00:08:53.731 --> 00:08:57.651 例えば あなたがTシャツを買う時 00:08:57.661 --> 00:09:00.841 すぐに満足して 幸せを感じます 00:09:01.959 --> 00:09:03.958 近年 00:09:03.959 --> 00:09:07.460 これに競合する物語が 00:09:07.479 --> 00:09:09.934 徐々に現れて来ました 00:09:09.935 --> 00:09:13.893 平たく言うと この物語の 副作用にまつわる物語です 00:09:13.894 --> 00:09:16.394 消費をすればするほど 00:09:18.601 --> 00:09:22.257 ある程度まで幸せを感じることが できますが それから先は 00:09:22.258 --> 00:09:23.834 幸福感を感じられなくなるのです 00:09:24.546 --> 00:09:26.604 これは逆さまの「U」の形をしています 00:09:26.724 --> 00:09:28.668 これは逆さまの「U」の形をしています 00:09:28.709 --> 00:09:33.834 喫煙はガンにつながり 大食は糖尿病につながります 00:09:34.647 --> 00:09:39.616 私たちはモノを常に購入しますが 満たされず 鬱になったりします 00:09:39.617 --> 00:09:41.767 社会への影響の観点では 00:09:41.780 --> 00:09:44.936 全ての消費決断は 00:09:44.937 --> 00:09:47.271 大規模な環境問題へ繋がっていると学びます 00:09:47.834 --> 00:09:51.543 森林は消えて行き 氷山は溶けて行き 00:09:51.572 --> 00:09:55.694 数十年経つと マンハッタンは海面下に沈むかも知れません 00:09:55.695 --> 00:09:59.785 民族移動が増え 貧困や戦争が増え 水資源は減ります 00:09:59.786 --> 00:10:05.410 これが未来の予測なのです 00:10:05.417 --> 00:10:10.376 世界の終末的な ディストピアの未来です 00:10:10.730 --> 00:10:13.551 地球崩壊の物語です 00:10:15.174 --> 00:10:16.781 これらの2種類の物語があるのです 00:10:16.782 --> 00:10:19.235 あなたの幸せについてのユートピア的物語と 00:10:19.236 --> 00:10:22.954 世界の終わりのディストピアの物語 00:10:22.955 --> 00:10:25.350 次回 店に行ってTシャツを買う時 00:10:25.351 --> 00:10:28.295 2つの声が聞こえるでしょう 00:10:28.296 --> 00:10:31.576 片方の声はこう言います 「両方買ってしまいなさい」 00:10:31.577 --> 00:10:33.077 (笑) 00:10:33.078 --> 00:10:34.933 「2倍幸せになりますよ」 00:10:34.934 --> 00:10:36.110 (笑) 00:10:36.111 --> 00:10:39.900 しかし あなたはその真偽を 疑い始めるかも知れませんね 00:10:40.756 --> 00:10:42.722 また別の物語は 00:10:43.308 --> 00:10:45.581 「本当にTシャツが必要だろうか?」 00:10:45.582 --> 00:10:50.192 もし必要ならオーガニックで フェアトレードの方を買ってください 00:10:50.193 --> 00:10:51.942 ・・・会場へはバスで来ましたか? 00:10:51.943 --> 00:10:53.318 (笑) 00:10:53.319 --> 00:10:56.043 家を出るとき 電気は消してきましたか? 00:10:57.010 --> 00:11:00.652 こうしたことを全てやったら 地球を救えるかもしれません 00:11:01.829 --> 00:11:04.755 電気を消したら 地球を救えるですって? 00:11:05.555 --> 00:11:08.440 2日前 ロンドンを歩いていると 00:11:08.441 --> 00:11:10.557 印刷屋があり 00:11:10.578 --> 00:11:13.323 何らかの環境に優しい技術を 使っていたようでした 00:11:13.324 --> 00:11:15.269 何故ならその窓には 00:11:15.270 --> 00:11:18.560 「一緒に地球を救おう」 と書いてあったからです 00:11:19.430 --> 00:11:23.777 ロンドンの印刷屋が地球を 救えるのかどうかは知りませんが 00:11:23.778 --> 00:11:27.498 私が思うのは こうした宣伝文句が 00:11:27.499 --> 00:11:30.494 私たちの心や知性への侮辱だということです 00:11:30.495 --> 00:11:31.884 そんなことは信じられませんよ 00:11:31.885 --> 00:11:35.533 この妙な因果関係が 00:11:35.534 --> 00:11:40.256 こんな些細な決断が 破滅的な未来を救えるなんて 00:11:40.257 --> 00:11:42.028 こうした物語は信頼できません 00:11:42.029 --> 00:11:43.966 私たちの心に届きません 00:11:43.967 --> 00:11:49.822 ネガティブな物語が語られる場合 私たちに未来は無く 地球は全滅です 00:11:51.491 --> 00:11:53.351 こういう物語は 私たちの恐怖に訴え 00:11:53.352 --> 00:11:57.843 希望も与えないため 私たちの心には響きません 00:11:57.844 --> 00:12:01.383 恐怖が私たちの行動を促すのは 危機が目前に迫った時のみです 00:12:02.616 --> 00:12:06.403 マンハッタンが水に沈むのは 私の死後でしょう 00:12:06.404 --> 00:12:07.931 皆さんもこの世にはいないでしょう 00:12:08.944 --> 00:12:10.797 だから私の行動を変容するには至りません 00:12:10.798 --> 00:12:12.653 この物語は 00:12:12.654 --> 00:12:16.032 両方のTシャツを買ったら得られる 目前の幸せを諦めさせるほど 00:12:16.033 --> 00:12:18.738 強力ではありません 00:12:19.301 --> 00:12:20.573 私たちには別の物語が必要なのです 00:12:20.574 --> 00:12:23.619 私たち自身が登場するような 00:12:23.620 --> 00:12:28.143 これらは私たちの幸せが 健全な地球環境につながっているという 00:12:28.144 --> 00:12:30.085 未来の物語が必要です 00:12:30.086 --> 00:12:33.096 そこでは私たちが意思決定をしたり 変化を求める 00:12:33.097 --> 00:12:34.725 主体なのです 00:12:35.695 --> 00:12:37.035 やや抽象的でしたね 00:12:37.036 --> 00:12:40.292 もう少し具体的にお話ししましょう 00:12:40.822 --> 00:12:42.835 あなたの家の近所に 00:12:42.836 --> 00:12:47.171 ファストフード店が開店すると聞いたら どう思うでしょう 00:12:47.716 --> 00:12:49.848 気にも留めないかも知れません 00:12:49.849 --> 00:12:53.451 ところが ある男性は 心底怒りを覚えました 00:12:53.452 --> 00:12:57.048 彼は マクドナルドの新店舗が ローマのスペイン広場に 00:12:57.049 --> 00:12:59.566 開店すると聞いたのです 00:12:59.567 --> 00:13:04.598 イタリアの文化遺産の中心地 ローマのスペイン広場に 00:13:05.460 --> 00:13:10.481 この国が誇るイタリア料理の 対極にあるファストフード店が 00:13:10.482 --> 00:13:11.719 できることへの怒りです 00:13:12.417 --> 00:13:14.126 カルロ・ペトリーニ氏は 00:13:14.153 --> 00:13:16.029 この怒りをもとに 00:13:16.040 --> 00:13:18.979 スローフード運動を始めました 00:13:19.404 --> 00:13:23.061 この運動は 00:13:23.062 --> 00:13:25.264 モンサントからマクドナルドまで 00:13:25.265 --> 00:13:30.159 産業化された機械的な食品生産や 00:13:30.160 --> 00:13:33.446 配慮無い 不健康な食品の消費の背後にある 00:13:33.459 --> 00:13:36.293 幅広い構造に切り込むものです 00:13:38.292 --> 00:13:40.918 カルロ・ペトリーニが この運動を創立した理由は 00:13:40.924 --> 00:13:44.353 私たちの食のあり方を変えるべきだ という信念でした 00:13:45.501 --> 00:13:50.141 地産の ヘルシーな食材を食べるのです 00:13:50.142 --> 00:13:51.848 地域で生産し 00:13:51.849 --> 00:13:55.702 生物多様性を守り 文化遺産を守るのです 00:13:55.703 --> 00:13:58.149 かつて生産者と消費者の間にあった 00:13:58.150 --> 00:14:00.746 失われた繋がりを作り直すのです 00:14:00.747 --> 00:14:05.559 消費者と生産者には 習慣を変えるように教育するのです 00:14:07.125 --> 00:14:12.167 この話はイタリアで起きた 小さな運動から始まり 00:14:12.167 --> 00:14:14.001 巨大な世界的ムーブメントに育ち 00:14:14.002 --> 00:14:18.546 今では150カ国に散らばる 10万人の参加者がいます 00:14:19.795 --> 00:14:22.278 この物語がこれほどまでに強力だった理由は? 00:14:24.665 --> 00:14:28.733 それはこの物語が私たち皆が 共感できるものだったからです 00:14:30.114 --> 00:14:33.200 お子さんの健康が心配だ 00:14:33.201 --> 00:14:34.854 共感できます 00:14:36.770 --> 00:14:41.194 多国籍企業が食生活に及ぼす影響が嫌い 00:14:41.473 --> 00:14:42.898 それも共感できます 00:14:44.290 --> 00:14:47.587 地域の伝統を普及したい 00:14:48.159 --> 00:14:49.686 それも共感できます 00:14:51.322 --> 00:14:53.820 生物多様性を維持したい 00:14:53.821 --> 00:14:55.589 それも共感できます 00:14:55.590 --> 00:14:58.868 生産システムにおける サプライチェーンの末端にいる 00:14:59.359 --> 00:15:02.963 南米の貧しい農家を助けたいと思っている 00:15:02.976 --> 00:15:04.738 それも共感できます 00:15:04.739 --> 00:15:07.441 私たちは皆何かしら これらの物語に 00:15:07.442 --> 00:15:12.104 その瞬間 信念や価値観を通じて共感できます 00:15:13.020 --> 00:15:16.122 イタリアで起きた小さな出来事から 始まった運動は 00:15:17.083 --> 00:15:20.208 文化を横断した 大きなムーブメントとなりました 00:15:20.211 --> 00:15:24.503 なぜならこの運動は あらゆる人々に 語りかける力を持った物語だからです 00:15:27.129 --> 00:15:32.359 今度お子さんと サステナビリティについて話すとき 00:15:32.360 --> 00:15:36.408 「どんな物語を話せばいいだろう?」 と自問してみてください 00:15:37.194 --> 00:15:38.549 大事な点は その物語は 00:15:38.550 --> 00:15:42.445 自分自身や子供たちの物語であり 自分たちの未来の物語であることです 00:15:43.135 --> 00:15:45.349 もしあなたが製品担当者なら こう考えてみてください 00:15:45.350 --> 00:15:48.662 「顧客とサステナビリティについて どう話したらいいんだろう?」 00:15:49.962 --> 00:15:51.833 おそらくあなたは過去に 00:15:51.834 --> 00:15:54.513 会社の環境への真摯な取り組みや 00:15:54.514 --> 00:15:56.288 優れた商品の話はしたことでしょう 00:15:56.289 --> 00:15:59.733 ところがその程度の話では 世界を変えることができないのです 00:15:59.734 --> 00:16:02.440 必要なのは様々な産業にわたり 様々な状況において 00:16:02.441 --> 00:16:05.182 人々が共感できる インパクトの強い物語なのです 00:16:06.061 --> 00:16:10.085 あなたが教師ならこう考えてください 「生徒たちを奮い立たせるには?」 00:16:10.918 --> 00:16:16.293 ジャーナリストなら 相手は読者 政治家なら 市民です 00:16:17.392 --> 00:16:20.344 確かに 必要なのは 優れたテクノロジーが もっと生まれ 00:16:20.345 --> 00:16:22.313 世の状況が改善することです 00:16:22.314 --> 00:16:25.410 でも今まで 物語の持つ ソフトパワーの持つ驚くべき力を 00:16:25.818 --> 00:16:29.120 見過ごして来ていたのです 00:16:29.125 --> 00:16:33.412 間違った物語が語られて来ました それを変えて行きましょう 00:16:33.413 --> 00:16:34.673 ありがとうございました 00:16:34.674 --> 00:16:36.190 (拍手)