WEBVTT 00:00:14.004 --> 00:00:16.183 科学の最も偉大な点の1つは 00:00:16.207 --> 00:00:18.745 科学者が何かを発見した時 00:00:18.769 --> 00:00:21.275 それが必ずしも 既定の方法にはよっていないことです 00:00:21.299 --> 00:00:24.419 つまり どこかの研究室で 厳格なやり方に基づき 00:00:24.443 --> 00:00:25.864 白衣をまとった科学者が 00:00:25.888 --> 00:00:29.608 すごい装置のボタンを押すと 結果が「ビー」と出てくるとは限りません 00:00:29.715 --> 00:00:31.033 現実には 00:00:31.057 --> 00:00:32.486 多くの有名な科学的発見の 00:00:32.510 --> 00:00:34.879 きっかけとなった出来事や人々は 00:00:34.903 --> 00:00:37.292 奇抜で多様性に富んでいます NOTE Paragraph 00:00:37.645 --> 00:00:39.226 良い例を紹介します 00:00:39.250 --> 00:00:41.929 「細胞説の風変わりな歴史」 00:00:42.633 --> 00:00:44.762 細胞説は3つの主張からなります 00:00:44.786 --> 00:00:48.909 (その1)すべての生物は1つ または複数の細胞で構成される 00:00:48.909 --> 00:00:51.337 (その2)細胞は生物を構成する 基本単位である 00:00:51.337 --> 00:00:53.337 (その2)細胞は生物を構成する 基本単位である 00:00:53.361 --> 00:00:57.484 (その3)全ての細胞は 既存の細胞から作られる 00:00:57.508 --> 00:01:01.548 正直なところ どの主張も まったくつまらないと思うかもしれません 00:01:01.572 --> 00:01:03.307 そこで微生物の世界や 00:01:03.331 --> 00:01:05.976 この細胞説の成り立ちについて 00:01:06.000 --> 00:01:08.014 紐解いてみましょう NOTE Paragraph 00:01:08.038 --> 00:01:11.049 1600年代初期のオランダから すべては始まりました 00:01:11.073 --> 00:01:13.736 サハリアス・ヤンセンという名の 眼鏡職人が 00:01:13.760 --> 00:01:17.260 最初の望遠鏡と共に 最初の複式顕微鏡を 00:01:17.284 --> 00:01:19.034 発明したと言われます 00:01:19.058 --> 00:01:20.871 この主張は両方ともよく議論になりますが 00:01:20.895 --> 00:01:23.285 それは 大量のガラスレンズを 作り続けることに 00:01:23.309 --> 00:01:26.290 飽き飽きしていたのは その当時 彼だけでなかったのは明らかですから 00:01:26.314 --> 00:01:27.465 ともかく 00:01:27.489 --> 00:01:29.852 顕微鏡は博物学者や科学者なら 誰しも使いたがる 00:01:29.876 --> 00:01:33.304 今でいえばiPadのような存在の 00:01:33.328 --> 00:01:36.195 流行りのアイテムになりました 00:01:36.219 --> 00:01:37.752 そんな学者の1人 00:01:37.776 --> 00:01:41.280 アントニ・ファン・レーウェンフック という名前のオランダ人が 00:01:41.304 --> 00:01:43.566 顕微鏡とかいう器具の事を聞きつけ 00:01:43.590 --> 00:01:45.874 それを店に行って購入するのではなく 00:01:45.898 --> 00:01:47.729 自分で作ろうと決めたのです 00:01:47.753 --> 00:01:50.494 実に奇妙な仕掛けのある 小型の器具で 00:01:50.518 --> 00:01:54.485 サングラスのレンズと同じ大きさの 小型のヘラのような外観でした 00:01:54.509 --> 00:01:56.044 2つのヘラ状の部品を一緒にしたら 00:01:56.068 --> 00:01:58.847 ほとんど何も見ることのできない いたずらに作ったような 00:01:58.871 --> 00:02:01.844 サングラスができたかもしれません NOTE Paragraph 00:02:01.868 --> 00:02:04.756 とにかくレーウェンフックは 自分の顕微鏡が完成すると 00:02:04.780 --> 00:02:05.935 夢中になって 00:02:05.959 --> 00:02:08.493 顕微鏡で ありとあらゆる物を観察しました 00:02:08.517 --> 00:02:10.378 それには自分の歯垢すら含まれました 00:02:10.775 --> 00:02:13.028 その通り 聞き間違いではありません 00:02:13.052 --> 00:02:15.100 彼こそが歯垢を観察して 00:02:15.124 --> 00:02:17.577 バクテリアを発見した張本人で 00:02:17.601 --> 00:02:19.267 その当時は 00:02:19.291 --> 00:02:23.644 人々は歯磨きをしたとしても 少ししか磨いていなかったので 00:02:23.668 --> 00:02:27.185 彼は喜ばしいほど多くの バクテリアを観察したはずです 00:02:27.594 --> 00:02:29.285 彼がこの発見を論文にする時に 00:02:29.309 --> 00:02:32.061 今使われている言葉 バクテリアとは呼びませんでした 00:02:32.085 --> 00:02:34.246 「微小動物」と呼びました 00:02:34.270 --> 00:02:36.857 彼には小さな動物のように 見えたのでしょう NOTE Paragraph 00:02:36.881 --> 00:02:39.200 レーウェンフックは 自分の歯垢を観察している時期に 00:02:39.224 --> 00:02:42.320 ロバート・フックという 英国の研究者仲間に 00:02:42.344 --> 00:02:44.244 手紙を送っていました 00:02:44.268 --> 00:02:48.774 フックは科学全般を愛した人物で 00:02:48.798 --> 00:02:51.838 物理学、化学、生物学などに 00:02:51.862 --> 00:02:53.365 手を付けていました 00:02:53.776 --> 00:02:57.440 そしてフックがコルクを 顕微鏡で観察したことで 00:02:57.464 --> 00:03:00.675 細胞という用語が 使われるようになりました 00:03:00.699 --> 00:03:04.973 観察した時に見えた 仕切られた空間が小部屋や 00:03:04.997 --> 00:03:08.682 修道院の寝室を連想させたのです 00:03:09.158 --> 00:03:10.698 テレビもパソコンもなく 00:03:10.722 --> 00:03:14.359 話しかけてくるルームメイトさえもいない 学生寮の部屋を考えて見てください NOTE Paragraph 00:03:14.836 --> 00:03:17.349 その当時のフックはある意味で 過少評価されていた科学者でした 00:03:17.349 --> 00:03:18.524 その当時のフックはある意味で 過少評価されていた科学者でした 00:03:18.548 --> 00:03:20.187 でもそれは自分の播いた種でした 00:03:20.211 --> 00:03:22.085 史上最も有名な科学者の1人 00:03:22.109 --> 00:03:25.032 アイザック・ニュートン卿と 衝突するという過ちを犯したのです 00:03:25.056 --> 00:03:27.887 フックは様々な分野に 関わった事を思い出して下さい 00:03:27.911 --> 00:03:30.293 ニュートンが惑星が 重力に従って動くことを示した 00:03:30.317 --> 00:03:32.668 革新的な書籍を出版すると 00:03:32.692 --> 00:03:33.844 フックはニュートンが 00:03:33.868 --> 00:03:37.542 フックの物理学研究に影響を受けたと 主張したのです 00:03:37.889 --> 00:03:41.275 ニュートンは 控えめに言っても このことを好ましく思っていませんでした 00:03:41.299 --> 00:03:43.634 フックの主張は 2人の間の緊張を引き起こし 00:03:43.658 --> 00:03:45.961 フックの死後にも引きずるものでした 00:03:45.985 --> 00:03:49.978 ニュートンによってフックの肖像画が 引きずり降ろされただけでなく 00:03:50.002 --> 00:03:52.674 非常に多くの研究成果も 無視されることとなりました 00:03:52.698 --> 00:03:56.027 幸いにも研究成果の多くは ニュートンの時代以降に再認識されたましたが 00:03:56.051 --> 00:03:57.313 肖像画は見つからず 00:03:57.337 --> 00:04:00.123 残念なことにロバート・フックの風貌を 知る人はいません NOTE Paragraph 00:04:00.776 --> 00:04:02.553 1800年代まで時を進めます 00:04:02.577 --> 00:04:05.088 2人のドイツの科学者が 00:04:05.112 --> 00:04:07.776 今では明らかと思われる あることを発見しました 00:04:07.800 --> 00:04:11.243 「細胞説」として知られる 一連の学説の提唱に寄与したのです 00:04:11.267 --> 00:04:13.819 1人目の科学者は マティアス・シュライデン 00:04:13.843 --> 00:04:16.775 植物の顕微鏡観察を好んだ 植物学者でした 00:04:17.299 --> 00:04:19.912 彼が様々な植物種を研究したことによって 00:04:19.936 --> 00:04:21.245 観察した植物がすべてが 00:04:21.269 --> 00:04:23.740 細胞でできている事を 00:04:23.764 --> 00:04:26.462 理解するに至りました NOTE Paragraph 00:04:26.866 --> 00:04:28.051 時を同じくして 00:04:28.075 --> 00:04:30.841 ドイツの反対側に居た テオドール・シュワンは 00:04:30.865 --> 00:04:33.835 動物の細胞を載せた プレパラートを顕微鏡で 00:04:33.859 --> 00:04:35.077 観察しただけではなく 00:04:35.101 --> 00:04:38.230 彼の名に因んで名づけられることになる 特殊な神経細胞を発見しました 00:04:38.254 --> 00:04:40.947 彼は消防士のための空気呼吸器の発明や 00:04:40.971 --> 00:04:43.282 跳ね上がったもみあげでも 知られています 00:04:43.306 --> 00:04:45.321 しばらく動物細胞を研究したのち 00:04:45.345 --> 00:04:47.232 全ての動物は細胞からなることを 00:04:47.256 --> 00:04:49.423 結論として導きました 00:04:49.447 --> 00:04:52.276 ツイッターがまだ発明されていない当時 00:04:52.300 --> 00:04:54.486 シュライデンと同じ分野に 取り組む他の科学者に 00:04:54.510 --> 00:04:57.655 郵便書状で連絡を取り 00:04:57.679 --> 00:04:58.840 返信があった科学者や 00:04:58.864 --> 00:05:01.928 この2人は 細胞説の創始期に 共同研究を始めました NOTE Paragraph 00:05:01.952 --> 00:05:03.885 2人の間に ある論点が持ち上がりました 00:05:03.909 --> 00:05:06.048 細胞説の最後の主張である 00:05:06.072 --> 00:05:08.680 「細胞は既存の細胞から作られる」 に対しては 00:05:08.704 --> 00:05:11.133 シュライデンは必ずしも 同意してはいませんでした 00:05:11.157 --> 00:05:14.726 なぜなら彼は細胞の無いところから 00:05:14.750 --> 00:05:18.611 自然発生的に結晶化されるようにして 生まれるのだと断言していたからです 00:05:19.009 --> 00:05:21.937 ちょうど もう1人の科学者 ルドルフ・フィルヒョウが 00:05:21.961 --> 00:05:25.570 細胞は他の細胞から形成されるという 研究成果を持って参入しました 00:05:25.594 --> 00:05:28.239 その研究は実際は …何というか… 00:05:28.263 --> 00:05:30.030 「許諾なき借用」であり 00:05:30.054 --> 00:05:33.131 元はユダヤ人科学者の ロベルト・レーマクが行ったものでした 00:05:33.155 --> 00:05:36.038 このことは 更に2人の科学者の反目を招きました NOTE Paragraph 00:05:36.062 --> 00:05:39.195 このように 歯垢から ニュートンの怒り 00:05:39.219 --> 00:05:41.593 結晶化の議論 シュワン細胞などを通して 00:05:41.617 --> 00:05:44.921 細胞説は現代の生物学の 重要な要素となりました 00:05:45.301 --> 00:05:49.515 既に知っている科学的な知識は つまらないと見えるかもしれません 00:05:49.539 --> 00:05:53.198 でも理論が確立されるまでの道のりは とても興味深いものなのです 00:05:53.222 --> 00:05:54.976 何かつまらない事があったら 00:05:55.000 --> 00:05:56.462 掘り下げてみて下さい 00:05:56.486 --> 00:06:00.291 信じられないような物語が 背後にあるかも知れません