細胞膜の構造は矛盾しています 脂質でできた膜は クモの糸の何百分の1の薄さにもかかわらず 十分な強さで 生命を構成する 繊細な内容物を守っています 水分を多く含む細胞質や 遺伝子物質、細胞内小器官 その他生命維持に必要な あらゆる分子たちです 細胞膜はどのように働き その強さはどこから来ているのでしょう? 細胞膜は風船の素材のように ピンと張ったものを想像しがちですが 細胞膜は風船の素材のように ピンと張ったものを想像しがちですが 実はもっと複雑な構造をしています 実際はそれは常に変化し続け いろいろな成分を膜を使って出し入れして 細胞が食べものを取り込んだり 老廃物を排出したり 特定の分子を出し入れしたり 他の細胞と会話したり 環境の情報を集めたり 自分を修復したりしています 細胞膜の強靭性や柔軟性 そして機能性は 膜に浮かんだ様々な要素の組み合わせで 得られるものです 生物学で流動モザイクと呼ばれる構造です 流動モザイクの主な構成要素は リン脂質という単純な分子です リン脂質の 電荷を帯びた親水性の頭部は 水を引きつけ 疎水性の尾部は水を遠ざけます 尾部どうしがペアになって 5〜10ナノメートルの厚さの二重層を構成し それらがびっしりと細胞を覆っています その頭部は細胞質と 細胞外部の水性溶液へと向いていて 脂質の尾部が その間に挟まれた形になっています 二重層は体温では 植物油のような柔らかさで そこに他の種類の分子が散らばっています タンパク質や 炭水化物 コレステロールなどです コレステロールは細胞膜を 適切な流動性のある状態に保ち また 細胞間のコミュニケーションを助けます 時折 細胞たちは会話します 化学物質やタンパク質を放出したり 受け取ったりして タンパク質の放出は簡単です でもそれを受け取るのはもっと複雑で エンドサイトーシスという過程を経ます 膜の1部が物質を包み込み それらを細胞内に小胞として運びます 1度その内容物が放出されると 小胞はリサイクルされ細胞膜に戻ります 流動モザイク中の最も複雑な物質は タンパク質です それらの主要な役割の一つは 正しい分子が細胞を出入りするのを 見届けることです 酸素や二酸化炭素 そしていくつかのビタミンのような 無極性分子は リン脂質二重層を簡単に通過します でも極性分子は内側の脂質層を 通過できません 膜貫通型タンパク質は 二重層を貫いてチャネルを形成し ナトリウムイオンやカリウムイオンなどの 特定の分子を通過させます 細胞膜裏打ちタンパク質は二重層の すぐ内側にあって 細胞膜を細胞内部の枠組みへと 固定する役割をします 細胞膜中の他のタンパク質は 二つの二重層を融合することができ それは例えば精子が卵子を 受精させるときなどには便利ですが ウイルスが細胞内に侵入するときなどは 不利に働きます 流動モザイク中のいくつかのタンパク質は 集合して特定の仕事をする 複合体を作り上げます 例えば ある複合体は 免疫系中の細胞を活性化し 目的を遂げるとまたバラバラになります 細胞膜では常にヒトと病原体との 戦いが起こっています 事実 最も毒素の強い物質のいくつかは 感染力のあるバクテリアが作る 細胞膜を破壊するタンパク質です これら毒素は細胞膜に大きな穴を開け 細胞の内容物が漏れ出します 科学者たちはその対策を研究開発しています 細胞膜を傷める毒素を吸収して細胞を救う ナノ・スポンジのようなものなどです 流動モザイクはすべての生命機能を 成立させる仕組みです 細胞膜が無ければ 細胞も存在せず 細胞が無ければバクテリアも存在せず 寄生虫もおらず 真菌類も 動物も 私たちも存在しません