0:00:06.707,0:00:11.628 不思議の王国 アスガルドには[br]北欧の神々が住んでいました 0:00:11.628,0:00:16.446 オーディンの荘厳な館であるヴァルハラは[br]山々の上空にそびえたち 0:00:16.446,0:00:20.276 虹の橋であるビフレストで[br]結ばれていました 0:00:20.276,0:00:22.410 彼らの世界は素晴らしかったのですが 0:00:22.410,0:00:26.812 ヨトゥンヘイムの巨人と妖精トロールに対し[br]無防備にそびえていました 0:00:26.812,0:00:29.992 彼らは神々を見くびっていて[br]神々を滅ぼそうとしていました 0:00:29.992,0:00:34.385 ある日 最強である神 トールが[br]よその地で敵と戦っていたとき 0:00:34.385,0:00:38.717 力強い灰色の馬に乗る[br]見知らぬ者が現れました 0:00:38.717,0:00:41.988 その訪問者は[br]驚くべき提案をしました 0:00:41.988,0:00:44.929 今までに見たこともないような[br]見事な壁を建てるというのです 0:00:44.929,0:00:50.080 どんな巨人でも登れないほど高く[br]どんなトロールでも壊せないほど頑丈な壁です 0:00:50.080,0:00:55.020 見返りとして[br]美しい女神フレイヤとの結婚と 0:00:55.020,0:00:59.130 空にある太陽と月を要求しました 0:00:59.130,0:01:02.834 神々はこの要求に難色を示し[br]彼を追い払おうとしました 0:01:02.834,0:01:06.808 しかし ぺてん師でもあるロキは[br]よこしまな計画を仕組みました 0:01:06.808,0:01:09.930 彼は 神々が見知らぬ者の[br]申し出を受け入れて 0:01:09.930,0:01:15.506 時間以内に壁を完成させられないような[br]厳しい条件を提示すべきだと言いました 0:01:15.506,0:01:20.576 そうすれば 失うものはない上 壁の殆どを[br]タダで建設できると言うのです 0:01:20.579,0:01:23.299 フレイヤはこの提案を[br]全く気に入りませんでしたが 0:01:23.299,0:01:25.866 オーデンと他の神々は納得させられました 0:01:25.866,0:01:28.026 そして この大工と話がついたのです 0:01:28.026,0:01:31.029 壁を完成させるには[br]ひと冬の期間しかありませんでした 0:01:31.029,0:01:34.420 もし夏の始まりの日までに[br]一部分でも未完成ならば 0:01:34.420,0:01:36.358 彼は対価を受けとれません 0:01:36.358,0:01:39.946 しかも他の者たちの手助けを[br]得てはなりませんでした 0:01:39.946,0:01:42.633 神々は固い誓いのもと[br]契約を結びました 0:01:42.633,0:01:47.179 アスガルドを傷つけないと[br]その石工に誓わせました 0:01:47.179,0:01:52.441 午前中に見知らぬ者は驚くべき速さで[br]土台になるものを掘り始めました 0:01:52.441,0:01:57.004 そして夕方には山に向かい[br]石材を取りに行きました 0:01:57.004,0:02:00.334 しかし 翌日の朝 [br]彼が戻ってくる姿を神々が見かけた時に 0:02:00.334,0:02:02.014 神々は心配し始めました 0:02:02.014,0:02:05.406 契約通り 石工を手伝うものは[br]誰もいませんでした 0:02:05.406,0:02:09.923 しかし彼の馬スヴァジルファリが[br]地面に深い溝を残すほど 0:02:09.923,0:02:13.333 大量の石を引きずっていたのです 0:02:13.333,0:02:15.064 冬が過ぎ去り 0:02:15.064,0:02:18.515 見知らぬ者は建築を続け[br]スヴァジルファリは引き続けました 0:02:18.515,0:02:22.150 雪でも 雨でも[br]彼らの仕事の進度は遅くなりませんでした 0:02:22.150,0:02:27.295 夏までわずか3日残すのみでしたが[br]壁は高く 頑丈に立っており 0:02:27.295,0:02:30.065 あとは門を建てれば完成です 0:02:30.065,0:02:33.310 神々たちは愕然としました 0:02:33.310,0:02:35.477 肥沃の女神を永遠に失うだけでなく 0:02:35.477,0:02:40.577 太陽と月なしでは世界は永遠に[br]暗闇に包まれることに気付いたのです 0:02:40.577,0:02:43.737 彼らはなぜこんなバカげた賭けを[br]したのかと 思いめぐらしてみると 0:02:43.737,0:02:47.897 ロキと 彼のひどい助言を思い出しました 0:02:47.897,0:02:50.946 ロキは 突然[br]自分が愚かだったことに気付きました 0:02:50.946,0:02:55.294 大工への対価の支払いを回避する方法を[br]見つけなければ 0:02:55.294,0:02:59.603 想像を絶するほどの苦痛を伴う死に[br]至らしめてやると 神々はロキを脅しました 0:02:59.603,0:03:03.969 するとロキは事態の収拾を図ることを約束し[br]走ってその場を離れました 0:03:03.969,0:03:05.589 外では 夜が更け 0:03:05.589,0:03:09.950 大工が最後の石材を回収するため[br]出発の準備をしていました 0:03:09.950,0:03:14.375 スヴァジルファリを呼び寄せようとしたとき[br]雌馬が野原から現れました 0:03:14.375,0:03:17.922 スヴァジルファリは[br]飼い主を無視するほど美しく 0:03:17.922,0:03:19.958 手綱を外し逃げ出してしまいました 0:03:19.958,0:03:21.679 石工は捕まえようとしましたが 0:03:21.679,0:03:26.176 雌馬が森林の奥に走っていくと[br]スヴァジルファリも後を追ってしまいました 0:03:26.176,0:03:27.906 見知らぬ者は激怒しました 0:03:27.906,0:03:31.176 黒幕の背後に神々が控えていると知っており[br]大胆にも神々に立ち向かいました 0:03:31.176,0:03:33.124 彼はもはや温厚な石工ではなく 0:03:33.124,0:03:37.551 真の姿である[br]恐ろしい山の巨人となりました 0:03:37.551,0:03:39.367 これはひどく過った行為でした 0:03:39.367,0:03:41.819 トールがアスガルドに[br]戻ってきたばかりのところで 0:03:41.819,0:03:44.738 しかも 神々は 巨人の仕業と知ると 0:03:44.738,0:03:46.855 誓約を無視しました 0:03:46.855,0:03:49.173 大工が受け取った唯一の対価で[br]かつ 0:03:49.173,0:03:51.494 最後に見たものは 0:03:51.494,0:03:55.373 トールが持っていたミョルニルという[br]力強い鎚の一振りでした 0:03:55.373,0:03:59.980 最後の石材を壁にのせたとき[br]神々は自分たちの勝利を祝いました 0:03:59.980,0:04:01.960 しかし その中にロキはいませんでした 0:04:01.960,0:04:05.032 数か月経って[br]ようやくロキが帰ってきたとき 0:04:05.032,0:04:08.621 彼は八本脚がある美しい灰色の子馬を[br]連れていました 0:04:08.621,0:04:12.801 その子馬はスレイプニルという[br]素晴らしい馬に成長し 0:04:12.801,0:04:17.651 やがてオーディンが乗り[br]風を追い抜くほどの馬になったのです 0:04:17.651,0:04:23.333 しかし 彼が一体どこからやって来たのかは[br]ロキは話したがりませんでした