1 00:00:15,849 --> 00:00:17,169 なぜ読むか? 2 00:00:17,169 --> 00:00:18,879 デジタルの時代です 3 00:00:18,879 --> 00:00:23,800 私たちは スクリーンやスマホといった つかの間の世界に生きています 4 00:00:23,800 --> 00:00:27,850 なぜ座って紙の本を読むのか? 5 00:00:27,850 --> 00:00:30,929 この レンブラントの母親を描いた有名な絵は 6 00:00:30,929 --> 00:00:37,230 読書が 様々な意味で 吸収する行為だと示しています 7 00:00:37,230 --> 00:00:41,580 読書の概念は 情報の吸収にとどまらず 8 00:00:41,580 --> 00:00:43,580 身体的プロセスでもあるのです 9 00:00:43,580 --> 00:00:46,940 今日の午後にみなさんにお伝えしたいのは 10 00:00:46,940 --> 00:00:50,510 ここに150人いると伺いましたが 11 00:00:50,820 --> 00:00:52,460 みなさん どこにいますか? 12 00:00:52,750 --> 00:00:58,680 吸収するという意味での読書の概念は 読書することの魔法です 13 00:00:58,680 --> 00:01:00,780 書物は 形あるモノであり 14 00:01:00,780 --> 00:01:04,570 幼少期に読書習慣を身につけることで 15 00:01:04,570 --> 00:01:08,870 身体的、視覚的、認知的な 想像力が形成されます 16 00:01:08,870 --> 00:01:14,449 このトークの前の準備のために 「読む男」を検索してみました 17 00:01:14,449 --> 00:01:16,119 すると出てきたのはこれです 18 00:01:16,119 --> 00:01:19,740 出てきたのは 前屈みで本を読む男性です 19 00:01:19,740 --> 00:01:24,570 前屈みになって読書することは 本に吸い込まれるということです 20 00:01:24,570 --> 00:01:27,470 手の身体性がご覧になれます 21 00:01:27,470 --> 00:01:33,339 ロダンの『考える人』のような 顎に置かれた手の動きをご覧ください 22 00:01:33,339 --> 00:01:38,239 目を覆い 日光を遮る 帽子のツバをご覧ください 23 00:01:38,239 --> 00:01:42,579 従来型の(紙の)本を読む行為は 吸収するという行為です 24 00:01:42,579 --> 00:01:46,969 スクリーン上の文字を読む行為は 見物をするという行為であり 25 00:01:46,969 --> 00:01:48,520 観劇のような行為です 26 00:01:48,520 --> 00:01:51,240 これは 1980年代後半の画像です 27 00:01:51,240 --> 00:01:55,399 はっきり覚えていますが スクリーンが初めて出現した時 28 00:01:55,399 --> 00:01:58,350 画面は 見下ろすものではなく 顔を上げて見るものでした 29 00:01:58,350 --> 00:02:01,000 顎に手を当てたりはせず 30 00:02:01,000 --> 00:02:03,700 画面を指差していました 31 00:02:03,700 --> 00:02:05,129 ご覧のように 32 00:02:05,129 --> 00:02:08,769 男性は 女性の背後から身を乗り出して 画面を指差しています 33 00:02:08,769 --> 00:02:12,334 ご覧のように 読書という行為そのものが 34 00:02:12,334 --> 00:02:17,400 これほどまで 読者と文章の 位置関係を変えました 35 00:02:17,400 --> 00:02:21,910 ごく私的な 吸収し関与する関係から 36 00:02:21,910 --> 00:02:26,850 公的なもの 観劇なものを 見物する関係へと変わりました 37 00:02:26,850 --> 00:02:32,710 スクリーンで 私的な読書行為を することはできません 38 00:02:32,710 --> 00:02:36,800 したがって 21世紀初頭に 39 00:02:36,800 --> 00:02:40,280 電子書籍が出現したのは 私が思うに — 40 00:02:40,280 --> 00:02:44,400 私的な読書という体験を 41 00:02:44,400 --> 00:02:48,180 デジタルで復活させる方策でした 42 00:02:48,180 --> 00:02:50,850 でも 電子書籍は 紙の本ではありません 43 00:02:50,850 --> 00:02:54,980 電子書籍は 似て非なる本です 44 00:02:54,980 --> 00:02:59,660 電子書籍は 紙の本を 電子的なものに置き換えます 45 00:02:59,660 --> 00:03:06,210 電子書籍と 紙の本の関係は 電子タバコと 本物のタバコのようなものです 46 00:03:06,610 --> 00:03:08,450 あれが好きですか? 47 00:03:08,450 --> 00:03:09,790 すごく変だと思いませんか? 48 00:03:09,790 --> 00:03:12,085 次回は 皆さんにも一緒にきてもらって 49 00:03:12,085 --> 00:03:14,827 最前列に座って 他の人と一緒に大笑いしてもらいますよ 50 00:03:14,827 --> 00:03:16,390 (笑) 51 00:03:16,390 --> 00:03:19,160 この客席に 成人の方は 何人おられるでしょうか? 52 00:03:19,160 --> 00:03:22,720 私の人生でずっと デジタル文化について講義しています 53 00:03:22,720 --> 00:03:23,735 私の年代で 54 00:03:23,735 --> 00:03:26,887 デジタル(指を使った)という言葉に続くのは 「診察」だけです 55 00:03:26,887 --> 00:03:27,970 (笑) 56 00:03:27,970 --> 00:03:30,540 成人向けのジョークです 57 00:03:31,160 --> 00:03:33,920 皆さんの中で 何人が 電子タバコを吸われますか? 58 00:03:34,460 --> 00:03:36,880 皆さんの中で 何人が 本物のタバコを吸われますか? 59 00:03:37,100 --> 00:03:40,520 皆さんの中で 私の話を 気にも留めない人は何人いますか? 60 00:03:41,060 --> 00:03:42,610 電子タバコは 61 00:03:42,610 --> 00:03:44,555 電子書籍に似ています 62 00:03:44,555 --> 00:03:48,700 両方とも 技術的 機械的な手段で 63 00:03:48,700 --> 00:03:50,650 元は 紙媒体でだった楽しみを 64 00:03:50,650 --> 00:03:53,800 与えるものです 65 00:03:53,800 --> 00:03:57,940 両者とも 似て非なる体験です 66 00:03:57,940 --> 00:04:00,770 私が強く思うに 67 00:04:00,770 --> 00:04:05,720 タブレットで読むにせよ スクリーンで読むにせよ 68 00:04:05,720 --> 00:04:08,640 紙の本に立ち返る必要があるということです 69 00:04:08,640 --> 00:04:10,840 皆さんは気づかなければなりません 70 00:04:10,840 --> 00:04:14,380 読み書きの能力が有る限り 71 00:04:14,380 --> 00:04:17,290 紙の本や 挿絵つきの本は 72 00:04:17,290 --> 00:04:22,210 子供や人間性の形成の 要だということです 73 00:04:22,210 --> 00:04:26,200 こちらは 3世紀の パピルスの手稿です 74 00:04:26,200 --> 00:04:29,070 描かれているのは 『ヘラクレスの12の功業』です 75 00:04:29,070 --> 00:04:34,760 これは 現存する最も初期の 挿絵つきの児童書です 76 00:04:34,760 --> 00:04:38,970 なぜ『ヘラクレスの12の功業』が 児童書として読まれるのか? 77 00:04:38,970 --> 00:04:44,860 それは 学校では全ての子供が ヘラクレスのような思いをするからです 78 00:04:44,860 --> 00:04:46,930 「どうしたら 試験に受かるだろう? 79 00:04:46,930 --> 00:04:49,170 ネメアの獅子退治に行くような挑戦だ」 80 00:04:49,170 --> 00:04:52,110 「どうしたら 宿題を 終えることができるだろう? 81 00:04:52,110 --> 00:04:55,290 アウゲイアスの家畜小屋掃除を するような苦行だ」 82 00:04:55,290 --> 00:04:59,280 「どうしたら 朝9時半に 授業に出られるだろうか? 83 00:04:59,280 --> 00:05:02,820 ヒュドラの頭を切り落としに 行くような冒険だ」 84 00:05:02,820 --> 00:05:06,920 ライオンと戦うヘラクレスのイメージは 85 00:05:06,920 --> 00:05:13,580 英雄的な苦役としての 読書や学習の象徴となります 86 00:05:13,580 --> 00:05:16,480 それは 献身的な行為でもあります 87 00:05:16,480 --> 00:05:21,100 この美しい挿絵のついた アングロサクソン時代の写本は 88 00:05:21,100 --> 00:05:25,760 旧約聖書の『詩篇』の研究において 89 00:05:25,760 --> 00:05:30,140 いかに 書籍の目的が 子供の 注意を引くことだったかを示しています 90 00:05:30,140 --> 00:05:34,790 アルフレッド大王は 西暦890年代の アングロサクソン時代の王でしたが 91 00:05:34,790 --> 00:05:37,665 彼は 子供の時に 母君より 92 00:05:37,665 --> 00:05:42,330 美しい挿絵の描かれた本を 見せてもらったと書き伝えています 93 00:05:42,330 --> 00:05:43,600 そして彼の使う言葉は — 94 00:05:43,600 --> 00:05:47,530 因みに 王がラテン語で 話し書き物をした 古い時代です — 95 00:05:47,530 --> 00:05:51,330 彼は それを 「pulchritude」 すなわち「花のかんばせ」と言いました 96 00:05:51,330 --> 00:05:53,040 彼は 選ばれし人であり 97 00:05:53,040 --> 00:05:58,760 「pulchritude」や女性的な美しさに 惹かれ 誘惑されます 98 00:05:58,760 --> 00:06:02,670 読書は 誘惑の一形式でしょうか? 99 00:06:02,670 --> 00:06:06,060 確かに読書は この テレンティウスの劇作では 100 00:06:06,060 --> 00:06:09,000 誘惑の一形式であり 101 00:06:09,000 --> 00:06:12,480 男子修道院の教養のために 考案されたものです 102 00:06:12,480 --> 00:06:16,920 そこでは 子供たちが 役者たちの上演を目にし 103 00:06:16,920 --> 00:06:19,765 子供たちが視覚的に捉えたのは 104 00:06:19,765 --> 00:06:25,450 自分たちの読む物語が 心象に映る様でした 105 00:06:25,450 --> 00:06:27,720 ヨーロッパに印刷技術がもたらされた時 106 00:06:27,720 --> 00:06:32,135 真っ先に印刷された中に 『イソップ寓話』がありました 107 00:06:32,135 --> 00:06:36,052 言葉を話す動物の出てくる 子供向けの物語集で 108 00:06:36,052 --> 00:06:41,560 うさぎ、狐、狼、山羊たちは 109 00:06:41,560 --> 00:06:44,810 全て 1つの道徳的な資質を纏っています 110 00:06:44,810 --> 00:06:47,330 ご覧いただいているのは イソップの肖像と 111 00:06:47,330 --> 00:06:49,270 動物たちです 112 00:06:49,270 --> 00:06:50,790 皆さんは誘惑されますか? 113 00:06:50,790 --> 00:06:52,240 魅力を感じますか? 114 00:06:52,240 --> 00:06:55,520 書物の中のビジュアルな画像に ワクワクしますか? 115 00:06:55,520 --> 00:06:59,640 私が子供の時に 夢中になった本は 116 00:06:59,650 --> 00:07:01,880 挿絵のついた子供向けの本 117 00:07:01,880 --> 00:07:04,610 ロバート・マックロスキーによる 絵と本文です 118 00:07:04,610 --> 00:07:05,910 『海べのあさ』 119 00:07:05,910 --> 00:07:07,330 『サリーのこけももつみ』 120 00:07:07,330 --> 00:07:09,180 『かもさんおとおり』 121 00:07:09,180 --> 00:07:11,350 『すばらしいとき』などです 122 00:07:11,350 --> 00:07:15,530 これらの本が 子供達に示したのは 123 00:07:15,530 --> 00:07:21,100 想像上のものだけではなく 美しい命の可能性でした 124 00:07:21,100 --> 00:07:23,240 生命は美しいものでした 125 00:07:23,240 --> 00:07:24,925 読書の役目は 126 00:07:24,925 --> 00:07:28,060 作家やイラストレーターが 表現するままに 127 00:07:28,060 --> 00:07:32,980 作品世界に描かれた 美しさを体験することでした 128 00:07:32,980 --> 00:07:35,320 『すばらしいとき』という物語は 129 00:07:35,320 --> 00:07:41,190 1957年 私が2才の時に出版されました 130 00:07:41,190 --> 00:07:46,380 この本を家族で読み始め 1950年代と60年代を過ごしました 131 00:07:46,380 --> 00:07:51,485 本書の中で メイン州の海岸に 一家が住んでいるということに 132 00:07:51,485 --> 00:07:54,790 私たちは すっかり魅せられました 133 00:07:54,950 --> 00:07:57,640 ブルックリンに住む子供の私にとって 134 00:07:57,640 --> 00:08:00,320 メイン州は 異国のような存在でした 135 00:08:00,320 --> 00:08:01,670 エキゾティックでした 136 00:08:01,670 --> 00:08:04,510 見たこともない海岸線から — 137 00:08:04,510 --> 00:08:07,220 私たちが見るのは 138 00:08:07,220 --> 00:08:11,880 詩的で 情熱的で 魔法的で 奇跡的なものが 139 00:08:11,880 --> 00:08:16,040 海の嵐に運ばれてくるのを 見ることができるのです 140 00:08:16,040 --> 00:08:20,660 美しいイラストと そこに添えられた詩的な文章が 141 00:08:20,660 --> 00:08:22,142 描き出すのは 142 00:08:22,142 --> 00:08:25,225 荒れる波間を逃れる機会を伺いながら 143 00:08:25,225 --> 00:08:30,030 漁船が 大波にもまれながら 避難場所を探す様です 144 00:08:30,030 --> 00:08:32,129 頭韻を踏んだ文章に — 145 00:08:32,129 --> 00:08:34,329 その中のリズムの中に — 146 00:08:34,329 --> 00:08:38,960 聞こえてくるのは 海岸に打ち寄せる水の詩です 147 00:08:38,960 --> 00:08:43,849 そして 本の途中で 嵐がやってきます 148 00:08:44,500 --> 00:08:46,885 嵐が吹きすさび 149 00:08:46,885 --> 00:08:50,010 応接間を吹き抜け 150 00:08:50,010 --> 00:08:52,280 リビングルームを破壊します 151 00:08:52,280 --> 00:08:57,060 ボードゲームが床中に転がり 152 00:08:57,060 --> 00:08:58,680 書籍が飛ばされてしまいます 153 00:08:58,680 --> 00:09:00,730 お母さんが子供達を引き寄せます 154 00:09:00,730 --> 00:09:02,600 ランプの火が消え 155 00:09:02,600 --> 00:09:07,490 家中が大きな痛手を 受けたかのようなありさまです 156 00:09:07,490 --> 00:09:09,640 嵐がやむと 157 00:09:09,640 --> 00:09:11,250 すべてが静かです 158 00:09:11,250 --> 00:09:12,530 この絵を見てください 159 00:09:12,530 --> 00:09:18,010 そこで お母さんと子供達は 自分たちの喜びを讃美歌に乗せて歌い 160 00:09:18,010 --> 00:09:24,160 書籍は 再び テーブルの上に 開いたり閉じたりした状態で置かれます 161 00:09:24,160 --> 00:09:25,455 そして父親 162 00:09:25,455 --> 00:09:27,920 思い出してください 時は 1950年代です 163 00:09:27,920 --> 00:09:31,980 1950年代の父親は何でもできました 164 00:09:31,980 --> 00:09:33,530 私は50年代に育ち 165 00:09:33,530 --> 00:09:36,120 90年代に父親になった時 166 00:09:36,120 --> 00:09:39,115 父親は何もできないと気づきました 167 00:09:39,345 --> 00:09:42,170 でも 50年代 父親は何でもしました 168 00:09:42,170 --> 00:09:44,045 この絵を見てください 169 00:09:44,045 --> 00:09:46,910 父親が ふきんを手にとって 170 00:09:46,910 --> 00:09:52,920 割れた窓ガラスの最後の1つに 覆いをかけています 171 00:09:52,920 --> 00:09:56,755 窓枠の中でガラスが壊れ 172 00:09:56,755 --> 00:10:03,110 まるで あたり一面が 開いて散らかった本のようになっています 173 00:10:03,250 --> 00:10:06,245 一つひとつの窓枠や 窓が 174 00:10:06,245 --> 00:10:08,332 本の側面のように見え 175 00:10:08,332 --> 00:10:13,330 その気になれば まるで テーブルに開いて置かれた本とが 176 00:10:13,330 --> 00:10:16,710 視覚的な韻を踏んだように 対をなしているかのように見えます 177 00:10:17,690 --> 00:10:20,335 私が子供だった1950年代 178 00:10:20,335 --> 00:10:23,790 想像の世界は 書物の世界でした 179 00:10:23,790 --> 00:10:27,130 でも メイン州の夕立は ブルックリンにはありません 180 00:10:27,130 --> 00:10:30,260 想像の 詩はありませんでした 181 00:10:30,260 --> 00:10:33,290 あったのは 核攻撃への恐怖でした 182 00:10:33,290 --> 00:10:37,640 違いを比べてください — この絵の一家と 183 00:10:37,640 --> 00:10:39,860 この絵の一家を 184 00:10:39,860 --> 00:10:42,640 これもまた 1950年代のもので 185 00:10:42,640 --> 00:10:44,045 核シェルターの絵で 186 00:10:44,045 --> 00:10:48,510 母親と父親と子供達が 文章の周りに座っています 187 00:10:48,510 --> 00:10:52,760 でもそれは 想像の物語ではなく 取扱説明書です 188 00:10:52,760 --> 00:10:55,460 この絵の中で見えるただ一つの言葉は 189 00:10:55,460 --> 00:11:00,310 「缶詰食料」です 190 00:11:00,310 --> 00:11:03,600 黙示録的なこの瞬間に 191 00:11:03,600 --> 00:11:07,160 想像力を働かせられる言葉は 私たちに残されてはいません 192 00:11:07,160 --> 00:11:10,810 ですから 私が成長し 親になった時 193 00:11:10,810 --> 00:11:16,840 自分の息子に授けたいと考えたのは 私が体験した魔法の感覚 — 194 00:11:16,840 --> 00:11:21,580 書物は 読者を別世界に 連れて行けるという発想 — 195 00:11:21,580 --> 00:11:24,730 読書は 一種の魔法だという発想でした 196 00:11:24,730 --> 00:11:27,305 そして 私にとって幸運なことに 197 00:11:27,305 --> 00:11:30,000 そしておそらく皆さんの 多くにとっても幸運なことに 198 00:11:30,000 --> 00:11:32,530 『ハリー・ポッター』が登場しました 199 00:11:32,530 --> 00:11:34,990 皆さんの多くはこう考えます 『ハリー・ポッター』は 200 00:11:34,990 --> 00:11:41,710 魔法と魔法使いと想像力ための物語だと 201 00:11:41,710 --> 00:11:46,940 私は 『ハリー・ポッター』は 読書についての本だと言いたい — 202 00:11:46,940 --> 00:11:49,000 『ハリー・ポッター』に出てくる魔法は 203 00:11:49,000 --> 00:11:54,780 至高の文学形態以上の 何ものでもありません 204 00:11:55,230 --> 00:12:00,110 『ハリー・ポッター』における 読書は 本当の意味の魔法です 205 00:12:00,110 --> 00:12:05,600 魔法の薬、呪文、本物の冒険が 206 00:12:05,600 --> 00:12:08,370 物語の中で次々と出てきます 207 00:12:08,370 --> 00:12:12,390 それは クィディッチ場ではなく 魔法の森の中ではなく 208 00:12:12,390 --> 00:12:14,290 書物庫の中で起こります 209 00:12:14,290 --> 00:12:17,110 ハーマイオニー、ロン、ハリーの3人は 210 00:12:17,110 --> 00:12:20,429 シリーズ映画のうちの1つに出てくる 211 00:12:20,429 --> 00:12:22,069 1枚の画像に見られるように 212 00:12:22,069 --> 00:12:26,770 魔法とミステリーに満ちた本の中の住人です 213 00:12:26,770 --> 00:12:30,499 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』では 214 00:12:30,499 --> 00:12:35,700 ハリーは 古びた薬草学の本に 行きあたります 215 00:12:35,700 --> 00:12:40,910 余白に書かれてあったのは 本の 修正です 216 00:12:40,910 --> 00:12:45,579 その本は「催眠豆」を ナイフの背の部分で潰して 217 00:12:45,579 --> 00:12:48,650 中の汁を出す方法が書いてあります 218 00:12:48,650 --> 00:12:53,740 この本から ハリーは効果的に 課題を完遂する方法を学びます 219 00:12:53,740 --> 00:12:57,740 『薬草学』の本の余白部分に 220 00:12:57,740 --> 00:13:00,690 ハリーは 本当の意味での 読書の魔法を見出します 221 00:13:00,690 --> 00:13:04,470 ハリーはまだ知りませんが すぐ後になって私たちが知ることになるのは 222 00:13:04,470 --> 00:13:09,010 「謎のプリンス」の正体が スネイプ本人だということです 223 00:13:09,010 --> 00:13:11,450 ハリーがその本を図書館に持ち込むと 224 00:13:11,450 --> 00:13:13,835 図書館の司書は ハリーが 225 00:13:13,835 --> 00:13:17,760 その本を強奪し冒涜したといって 恐れおののきます 226 00:13:17,760 --> 00:13:20,940 皆さんの中で 図書館司書に 会ったことのある人は? 227 00:13:21,340 --> 00:13:25,190 図書館司書の仕事は ものを清潔に保ち 228 00:13:25,190 --> 00:13:26,950 ものを整頓しておくことです 229 00:13:26,950 --> 00:13:31,360 図書館は 規則の場であり 想像の場ではありません 230 00:13:31,360 --> 00:13:35,895 図書館司書の仕事は 利用者の手を清潔に保ち 231 00:13:35,895 --> 00:13:37,490 利用者を静かにさせ 232 00:13:37,490 --> 00:13:42,675 返却遅延者に対して 確実に罰金を課すことです 233 00:13:42,675 --> 00:13:48,250 これらは 社会と市民生活の仕組みです 234 00:13:48,250 --> 00:13:51,780 ハリー・ポッターにとって 幅広の余白は 235 00:13:51,780 --> 00:13:55,600 ほぼ「躁状態の」余白の書き込みは — 236 00:13:55,600 --> 00:13:57,055 ああ これ面白い表現 — 237 00:13:57,055 --> 00:13:59,870 ほぼ「躁状態の」余白の書き込みは — 238 00:13:59,870 --> 00:14:01,270 皆さん ノートしました? 239 00:14:01,270 --> 00:14:05,680 ほぼ「躁状態の」余白の書き込みは — 240 00:14:05,680 --> 00:14:08,760 皆さん この言葉使い 書きとめますか?よろしい — 241 00:14:09,430 --> 00:14:10,960 余白の書き込みが 242 00:14:10,960 --> 00:14:17,240 私たちに与えてくれる感覚は 本当の想像とは 書かれた行の中ではなく 243 00:14:17,240 --> 00:14:20,100 行間や行外で見つかるのだということです 244 00:14:20,100 --> 00:14:24,260 「レビコーパス 身体浮上」 245 00:14:24,260 --> 00:14:30,130 これは 謎のプリンスが書いた 余白の書き込みで 246 00:14:30,130 --> 00:14:34,480 ハリー・ポッターが学ぶ 呪文の一つです 247 00:14:34,480 --> 00:14:39,110 ハリーは この呪文を覚えて 寮の部屋に戻ります 248 00:14:39,110 --> 00:14:45,355 そこで ハリーは 部屋の屋根から吊り下げたヒモで 249 00:14:45,355 --> 00:14:48,820 吊るすようにロンを宙づりにします 250 00:14:48,820 --> 00:14:52,610 レビコーパス 身体浮上 251 00:14:52,610 --> 00:14:56,860 西洋のキリスト文化の中で育てば 252 00:14:56,860 --> 00:15:01,320 「レビコーパス 身体浮上」が 253 00:15:01,320 --> 00:15:06,810 キリスト教信仰の中核をなす イデオムだとわかるはずです 254 00:15:06,810 --> 00:15:10,150 復活は 身体の復活であり 255 00:15:10,150 --> 00:15:14,820 レビコーパスは 身体の浮上でもあるのです 256 00:15:14,820 --> 00:15:17,860 私が今日皆さんに 示唆しようとしているのは 257 00:15:17,860 --> 00:15:21,770 デジタルの想像に満ちた 258 00:15:21,770 --> 00:15:24,010 仮想現実に満ちた 259 00:15:24,010 --> 00:15:26,370 職業的専門分野に満ちた 260 00:15:26,370 --> 00:15:30,325 説明書と 成功と前進に満ちた 今日という日の終わりに言いたいのは 261 00:15:30,325 --> 00:15:35,680 本当の意味での読書の魔法は レビコーパスの中にあるのだということです 262 00:15:35,680 --> 00:15:40,390 なぜなら 本物の書物の為せる技は 我々の身体を浮上させること 263 00:15:40,390 --> 00:15:45,550 すなわち 読者を虚構の幻想の中に 宙づりにすることだからです 264 00:15:45,550 --> 00:15:47,575 本の魔法とは 265 00:15:47,575 --> 00:15:52,950 デジタルの読み書きにせよ 伝統的な読み書きにせよ 266 00:15:52,950 --> 00:15:56,510 読み書きによる 想像の為せる魔法です 267 00:15:56,510 --> 00:15:59,250 そして今日私が示唆しようとしてきたのは 268 00:15:59,250 --> 00:16:02,120 書物の歴史について 思いを馳せることで 269 00:16:02,120 --> 00:16:05,160 自分自身の体験について 思いを馳せることで 270 00:16:05,160 --> 00:16:07,405 皆さんはこう自問するかもしれないということ 271 00:16:07,405 --> 00:16:09,210 「私はロンか?」 272 00:16:09,210 --> 00:16:10,825 「私はハーマイオニーか?」 273 00:16:10,825 --> 00:16:13,070 「私はヘラクレスか?」 274 00:16:13,070 --> 00:16:18,500 今 ヘラクレス的想像力の学び舎で 自分自身に思いを馳せてみてください 275 00:16:18,500 --> 00:16:22,860 そして 次に 教室やTEDトークに 出会った時に 276 00:16:22,860 --> 00:16:29,000 自問してください「レビコーパス あの先生は私の身体を浮上させたか? 277 00:16:29,020 --> 00:16:30,800 この本の中で 278 00:16:30,800 --> 00:16:33,944 私は 想像によって 宙吊り(サスペンス)されているか?」と 279 00:16:33,944 --> 00:16:35,426 どうもありがとうございました 280 00:16:35,426 --> 00:16:37,005 (拍手)