0:00:15.849,0:00:17.169
なぜ読むか？

0:00:17.169,0:00:18.879
デジタルの時代です

0:00:18.879,0:00:23.800
私たちは スクリーンやスマホといった[br]つかの間の世界に生きています

0:00:23.800,0:00:27.850
なぜ座って紙の本を読むのか？

0:00:27.850,0:00:30.929
この レンブラントの母親を描いた有名な絵は

0:00:30.929,0:00:37.230
読書が 様々な意味で[br]吸収する行為だと示しています

0:00:37.230,0:00:41.580
読書の概念は[br]情報の吸収にとどまらず

0:00:41.580,0:00:43.580
身体的プロセスでもあるのです

0:00:43.580,0:00:46.940
今日の午後にみなさんにお伝えしたいのは

0:00:46.940,0:00:50.510
ここに150人いると伺いましたが

0:00:50.820,0:00:52.460
みなさん どこにいますか？

0:00:52.750,0:00:58.680
吸収するという意味での読書の概念は[br]読書することの魔法です

0:00:58.680,0:01:00.780
書物は 形あるモノであり

0:01:00.780,0:01:04.570
幼少期に読書習慣を身につけることで

0:01:04.570,0:01:08.870
身体的、視覚的、認知的な[br]想像力が形成されます

0:01:08.870,0:01:14.449
このトークの前の準備のために[br]「読む男」を検索してみました

0:01:14.449,0:01:16.119
すると出てきたのはこれです

0:01:16.119,0:01:19.740
出てきたのは[br]前屈みで本を読む男性です

0:01:19.740,0:01:24.570
前屈みになって読書することは[br]本に吸い込まれるということです

0:01:24.570,0:01:27.470
手の身体性がご覧になれます

0:01:27.470,0:01:33.339
ロダンの『考える人』のような[br]顎に置かれた手の動きをご覧ください

0:01:33.339,0:01:38.239
目を覆い 日光を遮る[br]帽子のツバをご覧ください

0:01:38.239,0:01:42.579
従来型の（紙の）本を読む行為は[br]吸収するという行為です

0:01:42.579,0:01:46.969
スクリーン上の文字を読む行為は[br]見物をするという行為であり

0:01:46.969,0:01:48.520
観劇のような行為です

0:01:48.520,0:01:51.240
これは 1980年代後半の画像です

0:01:51.240,0:01:55.399
はっきり覚えていますが[br]スクリーンが初めて出現した時

0:01:55.399,0:01:58.350
画面は 見下ろすものではなく[br]顔を上げて見るものでした

0:01:58.350,0:02:01.000
顎に手を当てたりはせず

0:02:01.000,0:02:03.700
画面を指差していました

0:02:03.700,0:02:05.129
ご覧のように

0:02:05.129,0:02:08.769
男性は 女性の背後から身を乗り出して[br]画面を指差しています

0:02:08.769,0:02:12.334
ご覧のように[br]読書という行為そのものが

0:02:12.334,0:02:17.400
これほどまで 読者と文章の[br]位置関係を変えました

0:02:17.400,0:02:21.910
ごく私的な[br]吸収し関与する関係から

0:02:21.910,0:02:26.850
公的なもの 観劇なものを[br]見物する関係へと変わりました

0:02:26.850,0:02:32.710
スクリーンで 私的な読書行為を[br]することはできません

0:02:32.710,0:02:36.800
したがって 21世紀初頭に

0:02:36.800,0:02:40.280
電子書籍が出現したのは[br]私が思うに —

0:02:40.280,0:02:44.400
私的な読書という体験を

0:02:44.400,0:02:48.180
デジタルで復活させる方策でした

0:02:48.180,0:02:50.850
でも 電子書籍は 紙の本ではありません

0:02:50.850,0:02:54.980
電子書籍は 似て非なる本です

0:02:54.980,0:02:59.660
電子書籍は 紙の本を[br]電子的なものに置き換えます

0:02:59.660,0:03:06.210
電子書籍と 紙の本の関係は[br]電子タバコと 本物のタバコのようなものです

0:03:06.610,0:03:08.450
あれが好きですか？

0:03:08.450,0:03:09.790
すごく変だと思いませんか？

0:03:09.790,0:03:12.085
次回は 皆さんにも一緒にきてもらって

0:03:12.085,0:03:14.827
最前列に座って[br]他の人と一緒に大笑いしてもらいますよ

0:03:14.827,0:03:16.390
（笑）

0:03:16.390,0:03:19.160
この客席に 成人の方は[br]何人おられるでしょうか？

0:03:19.160,0:03:22.720
私の人生でずっと[br]デジタル文化について講義しています

0:03:22.720,0:03:23.735
私の年代で

0:03:23.735,0:03:26.887
デジタル（指を使った）という言葉に続くのは[br]「診察」だけです

0:03:26.887,0:03:27.970
（笑）

0:03:27.970,0:03:30.540
成人向けのジョークです

0:03:31.160,0:03:33.920
皆さんの中で 何人が[br]電子タバコを吸われますか？

0:03:34.460,0:03:36.880
皆さんの中で 何人が[br]本物のタバコを吸われますか？

0:03:37.100,0:03:40.520
皆さんの中で 私の話を[br]気にも留めない人は何人いますか？

0:03:41.060,0:03:42.610
電子タバコは

0:03:42.610,0:03:44.555
電子書籍に似ています

0:03:44.555,0:03:48.700
両方とも 技術的 機械的な手段で

0:03:48.700,0:03:50.650
元は 紙媒体でだった楽しみを

0:03:50.650,0:03:53.800
与えるものです

0:03:53.800,0:03:57.940
両者とも 似て非なる体験です

0:03:57.940,0:04:00.770
私が強く思うに

0:04:00.770,0:04:05.720
タブレットで読むにせよ[br]スクリーンで読むにせよ

0:04:05.720,0:04:08.640
紙の本に立ち返る必要があるということです

0:04:08.640,0:04:10.840
皆さんは気づかなければなりません

0:04:10.840,0:04:14.380
読み書きの能力が有る限り

0:04:14.380,0:04:17.290
紙の本や 挿絵つきの本は

0:04:17.290,0:04:22.210
子供や人間性の形成の[br]要だということです

0:04:22.210,0:04:26.200
こちらは ３世紀の[br]パピルスの手稿です

0:04:26.200,0:04:29.070
描かれているのは[br]『ヘラクレスの12の功業』です

0:04:29.070,0:04:34.760
これは 現存する最も初期の[br]挿絵つきの児童書です

0:04:34.760,0:04:38.970
なぜ『ヘラクレスの12の功業』が[br]児童書として読まれるのか？

0:04:38.970,0:04:44.860
それは 学校では全ての子供が[br]ヘラクレスのような思いをするからです

0:04:44.860,0:04:46.930
「どうしたら 試験に受かるだろう？

0:04:46.930,0:04:49.170
ネメアの獅子退治に行くような挑戦だ」

0:04:49.170,0:04:52.110
「どうしたら 宿題を[br]終えることができるだろう？

0:04:52.110,0:04:55.290
アウゲイアスの家畜小屋掃除を[br]するような苦行だ」

0:04:55.290,0:04:59.280
「どうしたら 朝９時半に[br]授業に出られるだろうか？

0:04:59.280,0:05:02.820
ヒュドラの頭を切り落としに[br]行くような冒険だ」

0:05:02.820,0:05:06.920
ライオンと戦うヘラクレスのイメージは

0:05:06.920,0:05:13.580
英雄的な苦役としての[br]読書や学習の象徴となります

0:05:13.580,0:05:16.480
それは 献身的な行為でもあります

0:05:16.480,0:05:21.100
この美しい挿絵のついた[br]アングロサクソン時代の写本は

0:05:21.100,0:05:25.760
旧約聖書の『詩篇』の研究において

0:05:25.760,0:05:30.140
いかに 書籍の目的が 子供の[br]注意を引くことだったかを示しています

0:05:30.140,0:05:34.790
アルフレッド大王は 西暦890年代の[br]アングロサクソン時代の王でしたが

0:05:34.790,0:05:37.665
彼は 子供の時に 母君より

0:05:37.665,0:05:42.330
美しい挿絵の描かれた本を[br]見せてもらったと書き伝えています

0:05:42.330,0:05:43.600
そして彼の使う言葉は —

0:05:43.600,0:05:47.530
因みに 王がラテン語で[br]話し書き物をした 古い時代です —

0:05:47.530,0:05:51.330
彼は それを 「pulchritude」[br]すなわち「花のかんばせ」と言いました

0:05:51.330,0:05:53.040
彼は 選ばれし人であり

0:05:53.040,0:05:58.760
「pulchritude」や女性的な美しさに[br]惹かれ 誘惑されます

0:05:58.760,0:06:02.670
読書は 誘惑の一形式でしょうか？

0:06:02.670,0:06:06.060
確かに読書は この[br]テレンティウスの劇作では

0:06:06.060,0:06:09.000
誘惑の一形式であり

0:06:09.000,0:06:12.480
男子修道院の教養のために[br]考案されたものです

0:06:12.480,0:06:16.920
そこでは 子供たちが[br]役者たちの上演を目にし

0:06:16.920,0:06:19.765
子供たちが視覚的に捉えたのは

0:06:19.765,0:06:25.450
自分たちの読む物語が[br]心象に映る様でした

0:06:25.450,0:06:27.720
ヨーロッパに印刷技術がもたらされた時

0:06:27.720,0:06:32.135
真っ先に印刷された中に[br]『イソップ寓話』がありました

0:06:32.135,0:06:36.052
言葉を話す動物の出てくる[br]子供向けの物語集で

0:06:36.052,0:06:41.560
うさぎ、狐、狼、山羊たちは

0:06:41.560,0:06:44.810
全て １つの道徳的な資質を纏っています

0:06:44.810,0:06:47.330
ご覧いただいているのは[br]イソップの肖像と

0:06:47.330,0:06:49.270
動物たちです

0:06:49.270,0:06:50.790
皆さんは誘惑されますか？

0:06:50.790,0:06:52.240
魅力を感じますか？

0:06:52.240,0:06:55.520
書物の中のビジュアルな画像に[br]ワクワクしますか？

0:06:55.520,0:06:59.640
私が子供の時に[br]夢中になった本は

0:06:59.650,0:07:01.880
挿絵のついた子供向けの本

0:07:01.880,0:07:04.610
ロバート・マックロスキーによる[br]絵と本文です

0:07:04.610,0:07:05.910
『海べのあさ』

0:07:05.910,0:07:07.330
『サリーのこけももつみ』

0:07:07.330,0:07:09.180
『かもさんおとおり』

0:07:09.180,0:07:11.350
『すばらしいとき』などです

0:07:11.350,0:07:15.530
これらの本が 子供達に示したのは

0:07:15.530,0:07:21.100
想像上のものだけではなく[br]美しい命の可能性でした

0:07:21.100,0:07:23.240
生命は美しいものでした

0:07:23.240,0:07:24.925
読書の役目は

0:07:24.925,0:07:28.060
作家やイラストレーターが[br]表現するままに

0:07:28.060,0:07:32.980
作品世界に描かれた[br]美しさを体験することでした

0:07:32.980,0:07:35.320
『すばらしいとき』という物語は

0:07:35.320,0:07:41.190
1957年 私が２才の時に出版されました

0:07:41.190,0:07:46.380
この本を家族で読み始め[br]1950年代と60年代を過ごしました

0:07:46.380,0:07:51.485
本書の中で メイン州の海岸に[br]一家が住んでいるということに

0:07:51.485,0:07:54.790
私たちは すっかり魅せられました

0:07:54.950,0:07:57.640
ブルックリンに住む子供の私にとって

0:07:57.640,0:08:00.320
メイン州は 異国のような存在でした

0:08:00.320,0:08:01.670
エキゾティックでした

0:08:01.670,0:08:04.510
見たこともない海岸線から —

0:08:04.510,0:08:07.220
私たちが見るのは

0:08:07.220,0:08:11.880
詩的で 情熱的で 魔法的で 奇跡的なものが

0:08:11.880,0:08:16.040
海の嵐に運ばれてくるのを[br]見ることができるのです

0:08:16.040,0:08:20.660
美しいイラストと[br]そこに添えられた詩的な文章が

0:08:20.660,0:08:22.142
描き出すのは

0:08:22.142,0:08:25.225
荒れる波間を逃れる機会を伺いながら

0:08:25.225,0:08:30.030
漁船が 大波にもまれながら[br]避難場所を探す様です

0:08:30.030,0:08:32.129
頭韻を踏んだ文章に —

0:08:32.129,0:08:34.329
その中のリズムの中に —

0:08:34.329,0:08:38.960
聞こえてくるのは[br]海岸に打ち寄せる水の詩です

0:08:38.960,0:08:43.849
そして 本の途中で[br]嵐がやってきます

0:08:44.500,0:08:46.885
嵐が吹きすさび

0:08:46.885,0:08:50.010
応接間を吹き抜け

0:08:50.010,0:08:52.280
リビングルームを破壊します

0:08:52.280,0:08:57.060
ボードゲームが床中に転がり

0:08:57.060,0:08:58.680
書籍が飛ばされてしまいます

0:08:58.680,0:09:00.730
お母さんが子供達を引き寄せます

0:09:00.730,0:09:02.600
ランプの火が消え

0:09:02.600,0:09:07.490
家中が大きな痛手を[br]受けたかのようなありさまです

0:09:07.490,0:09:09.640
嵐がやむと

0:09:09.640,0:09:11.250
すべてが静かです[br]

0:09:11.250,0:09:12.530
この絵を見てください

0:09:12.530,0:09:18.010
そこで お母さんと子供達は[br]自分たちの喜びを讃美歌に乗せて歌い

0:09:18.010,0:09:24.160
書籍は 再び テーブルの上に[br]開いたり閉じたりした状態で置かれます

0:09:24.160,0:09:25.455
そして父親

0:09:25.455,0:09:27.920
思い出してください[br]時は 1950年代です

0:09:27.920,0:09:31.980
1950年代の父親は何でもできました

0:09:31.980,0:09:33.530
私は50年代に育ち

0:09:33.530,0:09:36.120
90年代に父親になった時

0:09:36.120,0:09:39.115
父親は何もできないと気づきました

0:09:39.345,0:09:42.170
でも 50年代 父親は何でもしました

0:09:42.170,0:09:44.045
この絵を見てください

0:09:44.045,0:09:46.910
父親が ふきんを手にとって

0:09:46.910,0:09:52.920
割れた窓ガラスの最後の１つに[br]覆いをかけています

0:09:52.920,0:09:56.755
窓枠の中でガラスが壊れ

0:09:56.755,0:10:03.110
まるで あたり一面が[br]開いて散らかった本のようになっています

0:10:03.250,0:10:06.245
一つひとつの窓枠や 窓が

0:10:06.245,0:10:08.332
本の側面のように見え

0:10:08.332,0:10:13.330
その気になれば[br]まるで テーブルに開いて置かれた本とが

0:10:13.330,0:10:16.710
視覚的な韻を踏んだように[br]対をなしているかのように見えます

0:10:17.690,0:10:20.335
私が子供だった1950年代

0:10:20.335,0:10:23.790
想像の世界は[br]書物の世界でした

0:10:23.790,0:10:27.130
でも メイン州の夕立は[br]ブルックリンにはありません

0:10:27.130,0:10:30.260
想像の 詩はありませんでした

0:10:30.260,0:10:33.290
あったのは 核攻撃への恐怖でした

0:10:33.290,0:10:37.640
違いを比べてください —[br]この絵の一家と

0:10:37.640,0:10:39.860
この絵の一家を

0:10:39.860,0:10:42.640
これもまた 1950年代のもので

0:10:42.640,0:10:44.045
核シェルターの絵で

0:10:44.045,0:10:48.510
母親と父親と子供達が[br]文章の周りに座っています

0:10:48.510,0:10:52.760
でもそれは 想像の物語ではなく[br]取扱説明書です

0:10:52.760,0:10:55.460
この絵の中で見えるただ一つの言葉は

0:10:55.460,0:11:00.310
「缶詰食料」です

0:11:00.310,0:11:03.600
黙示録的なこの瞬間に

0:11:03.600,0:11:07.160
想像力を働かせられる言葉は[br]私たちに残されてはいません

0:11:07.160,0:11:10.810
ですから 私が成長し 親になった時

0:11:10.810,0:11:16.840
自分の息子に授けたいと考えたのは[br]私が体験した魔法の感覚 —

0:11:16.840,0:11:21.580
書物は 読者を別世界に[br]連れて行けるという発想 —

0:11:21.580,0:11:24.730
読書は 一種の魔法だという発想でした

0:11:24.730,0:11:27.305
そして 私にとって幸運なことに

0:11:27.305,0:11:30.000
そしておそらく皆さんの[br]多くにとっても幸運なことに

0:11:30.000,0:11:32.530
『ハリー・ポッター』が登場しました

0:11:32.530,0:11:34.990
皆さんの多くはこう考えます[br]『ハリー・ポッター』は

0:11:34.990,0:11:41.710
魔法と魔法使いと想像力ための物語だと

0:11:41.710,0:11:46.940
私は 『ハリー・ポッター』は[br]読書についての本だと言いたい —

0:11:46.940,0:11:49.000
『ハリー・ポッター』に出てくる魔法は

0:11:49.000,0:11:54.780
至高の文学形態以上の[br]何ものでもありません

0:11:55.230,0:12:00.110
『ハリー・ポッター』における[br]読書は 本当の意味の魔法です

0:12:00.110,0:12:05.600
魔法の薬、呪文、本物の冒険が

0:12:05.600,0:12:08.370
物語の中で次々と出てきます

0:12:08.370,0:12:12.390
それは クィディッチ場ではなく[br]魔法の森の中ではなく

0:12:12.390,0:12:14.290
書物庫の中で起こります

0:12:14.290,0:12:17.110
ハーマイオニー、ロン、ハリーの３人は

0:12:17.110,0:12:20.429
シリーズ映画のうちの１つに出てくる

0:12:20.429,0:12:22.069
１枚の画像に見られるように

0:12:22.069,0:12:26.770
魔法とミステリーに満ちた本の中の住人です

0:12:26.770,0:12:30.499
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』では

0:12:30.499,0:12:35.700
ハリーは 古びた薬草学の本に[br]行きあたります

0:12:35.700,0:12:40.910
余白に書かれてあったのは[br]本の 修正です

0:12:40.910,0:12:45.579
その本は「催眠豆」を[br]ナイフの背の部分で潰して

0:12:45.579,0:12:48.650
中の汁を出す方法が書いてあります

0:12:48.650,0:12:53.740
この本から ハリーは効果的に[br]課題を完遂する方法を学びます

0:12:53.740,0:12:57.740
『薬草学』の本の余白部分に

0:12:57.740,0:13:00.690
ハリーは 本当の意味での[br]読書の魔法を見出します

0:13:00.690,0:13:04.470
ハリーはまだ知りませんが[br]すぐ後になって私たちが知ることになるのは

0:13:04.470,0:13:09.010
「謎のプリンス」の正体が[br]スネイプ本人だということです

0:13:09.010,0:13:11.450
ハリーがその本を図書館に持ち込むと

0:13:11.450,0:13:13.835
図書館の司書は ハリーが

0:13:13.835,0:13:17.760
その本を強奪し冒涜したといって[br]恐れおののきます

0:13:17.760,0:13:20.940
皆さんの中で 図書館司書に[br]会ったことのある人は？

0:13:21.340,0:13:25.190
図書館司書の仕事は[br]ものを清潔に保ち

0:13:25.190,0:13:26.950
ものを整頓しておくことです

0:13:26.950,0:13:31.360
図書館は 規則の場であり[br]想像の場ではありません

0:13:31.360,0:13:35.895
図書館司書の仕事は[br]利用者の手を清潔に保ち

0:13:35.895,0:13:37.490
利用者を静かにさせ

0:13:37.490,0:13:42.675
返却遅延者に対して[br]確実に罰金を課すことです

0:13:42.675,0:13:48.250
これらは 社会と市民生活の仕組みです

0:13:48.250,0:13:51.780
ハリー・ポッターにとって[br]幅広の余白は

0:13:51.780,0:13:55.600
ほぼ「躁状態の」余白の書き込みは —

0:13:55.600,0:13:57.055
ああ これ面白い表現 —

0:13:57.055,0:13:59.870
ほぼ「躁状態の」余白の書き込みは —

0:13:59.870,0:14:01.270
皆さん ノートしました？

0:14:01.270,0:14:05.680
ほぼ「躁状態の」余白の書き込みは —

0:14:05.680,0:14:08.760
皆さん この言葉使い[br]書きとめますか？よろしい —

0:14:09.430,0:14:10.960
余白の書き込みが[br]

0:14:10.960,0:14:17.240
私たちに与えてくれる感覚は[br]本当の想像とは 書かれた行の中ではなく

0:14:17.240,0:14:20.100
行間や行外で見つかるのだということです

0:14:20.100,0:14:24.260
「レビコーパス 身体浮上」

0:14:24.260,0:14:30.130
これは 謎のプリンスが書いた[br]余白の書き込みで

0:14:30.130,0:14:34.480
ハリー・ポッターが学ぶ[br]呪文の一つです

0:14:34.480,0:14:39.110
ハリーは この呪文を覚えて[br]寮の部屋に戻ります

0:14:39.110,0:14:45.355
そこで ハリーは[br]部屋の屋根から吊り下げたヒモで

0:14:45.355,0:14:48.820
吊るすようにロンを宙づりにします

0:14:48.820,0:14:52.610
レビコーパス 身体浮上

0:14:52.610,0:14:56.860
西洋のキリスト文化の中で育てば

0:14:56.860,0:15:01.320
「レビコーパス 身体浮上」が

0:15:01.320,0:15:06.810
キリスト教信仰の中核をなす[br]イデオムだとわかるはずです

0:15:06.810,0:15:10.150
復活は 身体の復活であり

0:15:10.150,0:15:14.820
レビコーパスは 身体の浮上でもあるのです

0:15:14.820,0:15:17.860
私が今日皆さんに[br]示唆しようとしているのは

0:15:17.860,0:15:21.770
デジタルの想像に満ちた

0:15:21.770,0:15:24.010
仮想現実に満ちた

0:15:24.010,0:15:26.370
職業的専門分野に満ちた

0:15:26.370,0:15:30.325
説明書と 成功と前進に満ちた[br]今日という日の終わりに言いたいのは

0:15:30.325,0:15:35.680
本当の意味での読書の魔法は[br]レビコーパスの中にあるのだということです

0:15:35.680,0:15:40.390
なぜなら 本物の書物の為せる技は[br]我々の身体を浮上させること

0:15:40.390,0:15:45.550
すなわち 読者を虚構の幻想の中に[br]宙づりにすることだからです

0:15:45.550,0:15:47.575
本の魔法とは

0:15:47.575,0:15:52.950
デジタルの読み書きにせよ[br]伝統的な読み書きにせよ

0:15:52.950,0:15:56.510
読み書きによる[br]想像の為せる魔法です

0:15:56.510,0:15:59.250
そして今日私が示唆しようとしてきたのは

0:15:59.250,0:16:02.120
書物の歴史について[br]思いを馳せることで

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自分自身の体験について[br]思いを馳せることで

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皆さんはこう自問するかもしれないということ

0:16:07.405,0:16:09.210
「私はロンか？」

0:16:09.210,0:16:10.825
「私はハーマイオニーか？」

0:16:10.825,0:16:13.070
「私はヘラクレスか？」

0:16:13.070,0:16:18.500
今 ヘラクレス的想像力の学び舎で[br]自分自身に思いを馳せてみてください

0:16:18.500,0:16:22.860
そして 次に 教室やTEDトークに[br]出会った時に

0:16:22.860,0:16:29.000
自問してください「レビコーパス[br]あの先生は私の身体を浮上させたか？

0:16:29.020,0:16:30.800
この本の中で

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私は 想像によって[br]宙吊り（サスペンス）されているか？」と

0:16:33.944,0:16:35.426
どうもありがとうございました

0:16:35.426,0:16:37.005
（拍手）