WEBVTT 00:00:00.000 --> 00:00:02.000 どうも 00:00:02.000 --> 00:00:04.000 お招きいただいて光栄です 00:00:04.000 --> 00:00:06.000 私が以前 00:00:06.000 --> 00:00:10.000 この場で講演したのは 7年前のことで 00:00:10.000 --> 00:00:13.000 スパゲティソースの話をしました 00:00:13.000 --> 00:00:16.000 多くの人がそのビデオを見てくれたようで 00:00:16.000 --> 00:00:18.000 それ以来 会う人会う人に 00:00:18.000 --> 00:00:20.000 スパゲティソースについて聞かれるようになりました 00:00:20.000 --> 00:00:23.000 一時のこととしては結構なんですが・・・ 00:00:23.000 --> 00:00:25.000 (笑) 00:00:25.000 --> 00:00:27.000 7年ともなると 00:00:27.000 --> 00:00:29.000 必ずしも好ましくありません 00:00:29.000 --> 00:00:31.000 それでスパゲティの話はお終いにしようと 00:00:31.000 --> 00:00:34.000 ここへ来ることにしました NOTE Paragraph 00:00:34.000 --> 00:00:36.000 (笑) NOTE Paragraph 00:00:36.000 --> 00:00:39.000 今朝のセッションのテーマは「我々が作るもの」です 00:00:39.000 --> 00:00:41.000 それで その当時としては 00:00:41.000 --> 00:00:43.000 最も貴重なあるものを 00:00:43.000 --> 00:00:45.000 作った人について 00:00:45.000 --> 00:00:47.000 話をしようと思いました 00:00:47.000 --> 00:00:50.000 その人の名はカール・ノルデン 00:00:50.000 --> 00:00:52.000 1880年生まれの 00:00:52.000 --> 00:00:54.000 スイス人です 00:00:54.000 --> 00:00:56.000 スイス人というのは大まかに 00:00:56.000 --> 00:00:58.000 2種類に分けられます 00:00:58.000 --> 00:01:00.000 小さく精巧で高価なものを 00:01:00.000 --> 00:01:02.000 作る人々と 00:01:02.000 --> 00:01:04.000 小さく精巧で高価なものを 00:01:04.000 --> 00:01:07.000 買う人たちのお金を 00:01:07.000 --> 00:01:09.000 扱う人々です 00:01:09.000 --> 00:01:12.000 ノルデンは明らかに前者に属していました 00:01:12.000 --> 00:01:14.000 彼は技術者であり 00:01:14.000 --> 00:01:17.000 チューリッヒ工科大学に行きました 00:01:17.000 --> 00:01:20.000 クラスメートだったレーニンという若者は 00:01:20.000 --> 00:01:22.000 後に 00:01:22.000 --> 00:01:26.000 小さく精巧で高価なものを破壊する活動をすることになります NOTE Paragraph 00:01:26.000 --> 00:01:29.000 ノルデンはどこからどう見ても 00:01:29.000 --> 00:01:32.000 スイス人技術者でした 00:01:32.000 --> 00:01:34.000 三つ揃いのスーツを着て 00:01:34.000 --> 00:01:39.000 厳めしい小さな口ひげを生やし 00:01:39.000 --> 00:01:41.000 傲慢で 00:01:41.000 --> 00:01:43.000 自己中心的で 00:01:43.000 --> 00:01:45.000 活力的な 00:01:45.000 --> 00:01:47.000 エゴの塊でした 00:01:47.000 --> 00:01:50.000 そして日に16時間仕事し 00:01:50.000 --> 00:01:53.000 交流に強い思いを持っていて 00:01:53.000 --> 00:01:57.000 日焼けなど精神の弱さを示すものだと見なし 00:01:57.000 --> 00:01:59.000 コーヒーを山ほど飲み 00:01:59.000 --> 00:02:01.000 そしてチューリッヒにある 00:02:01.000 --> 00:02:03.000 母親のキッチンで 何時間も 00:02:03.000 --> 00:02:05.000 静寂の中 計算尺だけを頼りに 00:02:05.000 --> 00:02:07.000 最高の仕事をしたのです NOTE Paragraph 00:02:07.000 --> 00:02:09.000 何にせよ 00:02:09.000 --> 00:02:12.000 ノルデンは第一次世界大戦の直前に 00:02:12.000 --> 00:02:14.000 アメリカに移住し 00:02:14.000 --> 00:02:16.000 マンハッタンのダウンタウンにある 00:02:16.000 --> 00:02:18.000 ラファイエット通りに工場を開きました 00:02:18.000 --> 00:02:20.000 そして飛行機から爆弾を 00:02:20.000 --> 00:02:23.000 どう落とすかという問題に取り付かれるようになりました 00:02:23.000 --> 00:02:25.000 考えてください 00:02:25.000 --> 00:02:28.000 GPSもレーダーもない時代のことです 00:02:28.000 --> 00:02:30.000 本当に難しい問題だったのです 00:02:30.000 --> 00:02:32.000 複雑な物理学の問題でした 00:02:32.000 --> 00:02:35.000 数千メートルの上空を 00:02:35.000 --> 00:02:37.000 時速数百キロで飛ぶ飛行機から 00:02:37.000 --> 00:02:40.000 静止している標的に向かって 00:02:40.000 --> 00:02:42.000 爆弾を落とすわけですが 00:02:42.000 --> 00:02:45.000 風や 視野を遮る雲など あらゆる障害がある中 00:02:45.000 --> 00:02:47.000 それを行うのです 00:02:47.000 --> 00:02:49.000 第一次世界大戦中や 00:02:49.000 --> 00:02:51.000 2つの大戦の間の時期に 00:02:51.000 --> 00:02:53.000 多くの人がこの問題に取り組みましたが 00:02:53.000 --> 00:02:55.000 みんな期待はずれな結果に終わりました 00:02:55.000 --> 00:02:57.000 当時の爆撃照準器は 00:02:57.000 --> 00:02:59.000 まったく未熟なものだったのです NOTE Paragraph 00:02:59.000 --> 00:03:02.000 しかしノルデンは糸口を見つけ 00:03:02.000 --> 00:03:05.000 非常に複雑な装置を考案しました 00:03:05.000 --> 00:03:07.000 重さが20キロ以上もあり 00:03:07.000 --> 00:03:11.000 ノルデン・マーク15爆撃照準器と名付けられました 00:03:11.000 --> 00:03:13.000 あらゆるレバーやボールベアリングや 00:03:13.000 --> 00:03:16.000 機械や計器が組み込まれた 00:03:16.000 --> 00:03:19.000 その装置を彼は作り上げたのです 00:03:19.000 --> 00:03:21.000 爆撃手は 00:03:21.000 --> 00:03:25.000 この照準器を使って 00:03:25.000 --> 00:03:27.000 標的を目視します 00:03:27.000 --> 00:03:31.000 爆撃手は爆撃機のプレキシガラス製の突端の中にいます 00:03:31.000 --> 00:03:34.000 飛行機の高度 00:03:34.000 --> 00:03:37.000 速度 風の速さ 00:03:37.000 --> 00:03:39.000 標的の座標を 00:03:39.000 --> 00:03:41.000 入力すると 00:03:41.000 --> 00:03:45.000 爆撃照準器が爆弾をいつ落とせばよいか教えてくれるのです 00:03:45.000 --> 00:03:48.000 ノルデンは豪語していました 00:03:48.000 --> 00:03:50.000 爆撃照準器のなかった頃は 00:03:50.000 --> 00:03:52.000 爆撃でしょっちゅう 00:03:52.000 --> 00:03:54.000 的を何キロも外していたが 00:03:54.000 --> 00:03:57.000 ノルデン・マーク15爆撃照準器があれば 00:03:57.000 --> 00:03:59.000 高度6千キロから爆弾を 00:03:59.000 --> 00:04:01.000 漬物桶に入れることだってできる NOTE Paragraph 00:04:01.000 --> 00:04:03.000 このノルデン爆撃照準器の話に 00:04:03.000 --> 00:04:05.000 米軍が 00:04:05.000 --> 00:04:07.000 どれほど喜んだことか 00:04:07.000 --> 00:04:10.000 わかりません 00:04:10.000 --> 00:04:12.000 まるで天からの贈り物です 00:04:12.000 --> 00:04:14.000 彼らが体験してきた 00:04:14.000 --> 00:04:16.000 第一次世界大戦では 00:04:16.000 --> 00:04:18.000 何百万という人々が 00:04:18.000 --> 00:04:20.000 塹壕の中で戦い合い 00:04:20.000 --> 00:04:22.000 膠着状態を続けていたのです 00:04:22.000 --> 00:04:26.000 そこへきて 00:04:26.000 --> 00:04:28.000 敵陣のはるか上空から 00:04:28.000 --> 00:04:30.000 何でもピンポイントに 00:04:30.000 --> 00:04:32.000 破壊できる装置が 00:04:32.000 --> 00:04:34.000 発明されたというのです NOTE Paragraph 00:04:34.000 --> 00:04:36.000 米軍はその装置の開発に 00:04:36.000 --> 00:04:38.000 15億ドルを投じました 00:04:38.000 --> 00:04:41.000 1940年当時のお金でです 00:04:41.000 --> 00:04:43.000 それがどれほどの額かというと 00:04:43.000 --> 00:04:46.000 マンハッタン計画にかかったお金でさえ 00:04:46.000 --> 00:04:48.000 トータルで 00:04:48.000 --> 00:04:50.000 30億ドルです 00:04:50.000 --> 00:04:53.000 ノルデン爆撃照準器には 00:04:53.000 --> 00:04:57.000 近代の軍産分野における最も有名なプロジェクトの 00:04:57.000 --> 00:04:59.000 半分に相当する資金が投じられたのです 00:04:59.000 --> 00:05:02.000 米軍の戦略家の中には 00:05:02.000 --> 00:05:04.000 この発明1つが 00:05:04.000 --> 00:05:06.000 ナチや日本との戦いの 00:05:06.000 --> 00:05:08.000 明暗を分けることになると 00:05:08.000 --> 00:05:10.000 真剣に考える 00:05:10.000 --> 00:05:12.000 人たちさえいました NOTE Paragraph 00:05:12.000 --> 00:05:14.000 ノルデン自身にとっても 00:05:14.000 --> 00:05:17.000 この装置には倫理的に大きな意味がありました 00:05:17.000 --> 00:05:19.000 ノルデンは敬虔なクリスチャンです 00:05:19.000 --> 00:05:21.000 彼は人々が爆撃照準器を 00:05:21.000 --> 00:05:24.000 彼が創造したものとして語ることに腹を立てていました 00:05:24.000 --> 00:05:26.000 彼からすると 00:05:26.000 --> 00:05:28.000 物事を創造できるのは神だけです 00:05:28.000 --> 00:05:30.000 彼は神の意志実現の道具に過ぎません 00:05:30.000 --> 00:05:32.000 神の意志は何でしょう? 00:05:32.000 --> 00:05:35.000 神の意志は 戦争で被害を受ける人を 00:05:35.000 --> 00:05:38.000 できる限り少なくするということです NOTE Paragraph 00:05:38.000 --> 00:05:40.000 ノルデン爆撃照準器がすることは何でしょう? 00:05:40.000 --> 00:05:42.000 まさにそういうことです 00:05:42.000 --> 00:05:44.000 爆撃する必要があるものだけに 00:05:44.000 --> 00:05:48.000 爆弾を落とせるようになるのです 00:05:48.000 --> 00:05:51.000 第二次世界大戦までに米軍は 00:05:51.000 --> 00:05:54.000 ノルデン爆撃照準器を 00:05:54.000 --> 00:05:56.000 1台1万4千ドルで 00:05:56.000 --> 00:05:58.000 9万台購入しました 00:05:58.000 --> 00:06:01.000 1940年当時では相当なお金です 00:06:01.000 --> 00:06:04.000 そして5万人の爆撃手に使い方の訓練を施しました 00:06:04.000 --> 00:06:08.000 何ヶ月にも及ぶ広範なトレーニングが必要でした 00:06:08.000 --> 00:06:10.000 照準器は実質アナログコンピュータで 00:06:10.000 --> 00:06:12.000 簡単に使えるものではなかったのです 00:06:12.000 --> 00:06:15.000 そして爆撃手たちは 00:06:15.000 --> 00:06:18.000 捕虜になっても決して 00:06:18.000 --> 00:06:20.000 敵に情報を漏らさないという 00:06:20.000 --> 00:06:22.000 宣誓を求められました 00:06:22.000 --> 00:06:25.000 この中核技術を敵の手に渡さないということが 00:06:25.000 --> 00:06:27.000 絶対条件だったからです NOTE Paragraph 00:06:27.000 --> 00:06:30.000 そしてノルデン爆撃照準器を飛行機に積み込むときには 00:06:30.000 --> 00:06:33.000 武装した兵士が護衛に付き 00:06:33.000 --> 00:06:36.000 箱に入れて布の覆いを掛けて運ばれ 00:06:36.000 --> 00:06:39.000 箱は護衛兵と手錠で繋がれていました 00:06:39.000 --> 00:06:41.000 写真を撮ることも禁じられていました 00:06:41.000 --> 00:06:44.000 中には小型爆破装置が組み込まれ 00:06:44.000 --> 00:06:47.000 飛行機が墜落したときは破壊して 00:06:47.000 --> 00:06:50.000 敵の手に渡らないようにしていました 00:06:50.000 --> 00:06:52.000 ノルデン爆撃照準器は 00:06:52.000 --> 00:06:55.000 まさに聖杯だったのです NOTE Paragraph 00:06:55.000 --> 00:06:58.000 それで第二次世界大戦での成果はどうだったのでしょう? 00:06:58.000 --> 00:07:01.000 実のところ聖杯でもなんでもないことがわかりました 00:07:01.000 --> 00:07:03.000 完璧な条件下であれば 00:07:03.000 --> 00:07:06.000 ノルデン爆撃照準器は 6千キロ上空から漬物桶に 00:07:06.000 --> 00:07:08.000 爆弾を投下することができましたが 00:07:08.000 --> 00:07:10.000 もちろん実戦においては 00:07:10.000 --> 00:07:12.000 完璧な条件なんてありはしません 00:07:12.000 --> 00:07:15.000 第一に操作が非常に難しかったのです 00:07:15.000 --> 00:07:17.000 5万人の爆撃手がみんな 00:07:17.000 --> 00:07:19.000 アナログコンピュータを 00:07:19.000 --> 00:07:23.000 プログラミングする能力があったわけではありません 00:07:23.000 --> 00:07:25.000 第二に しょっちゅう故障しました 00:07:25.000 --> 00:07:27.000 ジャイロスコープに 滑車に 機械に 00:07:27.000 --> 00:07:29.000 ボールベアリングが詰め込まれており 00:07:29.000 --> 00:07:31.000 実戦のさなかには 00:07:31.000 --> 00:07:33.000 期待したように機能しませんでした NOTE Paragraph 00:07:33.000 --> 00:07:36.000 第三に ノルデンが計算したときには 00:07:36.000 --> 00:07:38.000 飛行機が比較的低空を 00:07:38.000 --> 00:07:41.000 比較的低速で飛ぶことを想定していました 00:07:41.000 --> 00:07:43.000 これは実戦では出来ない相談です 00:07:43.000 --> 00:07:45.000 撃ち落とされてしまいます 00:07:45.000 --> 00:07:48.000 だから高高度を非常に速いスピードで飛んでいました 00:07:48.000 --> 00:07:50.000 そのような条件ではノルデン爆撃照準器は 00:07:50.000 --> 00:07:52.000 あまりうまく機能しなかったのです NOTE Paragraph 00:07:52.000 --> 00:07:54.000 そして何よりも 00:07:54.000 --> 00:07:56.000 爆撃手が標的を視認できることを 00:07:56.000 --> 00:07:59.000 前提としていたということがあります 00:07:59.000 --> 00:08:01.000 実際はどうでしょう? 00:08:01.000 --> 00:08:04.000 雲があります 00:08:04.000 --> 00:08:07.000 正確な爆撃には雲のない空が必要でした 00:08:07.000 --> 00:08:09.000 1940年から1945年の間の 00:08:09.000 --> 00:08:11.000 中央ヨーロッパで 00:08:11.000 --> 00:08:14.000 雲ひとつない空というのがどれほどあったのか? 00:08:14.000 --> 00:08:16.000 そんなにはなかったでしょう NOTE Paragraph 00:08:16.000 --> 00:08:18.000 ノルデン爆撃照準器の不正確さを 00:08:18.000 --> 00:08:20.000 お分かりいただける有名な例を挙げましょう 00:08:20.000 --> 00:08:22.000 1944年に連合軍は 00:08:22.000 --> 00:08:26.000 ドイツのロイナにある化学工場を爆撃しました 00:08:26.000 --> 00:08:28.000 工場は3平方キロの 00:08:28.000 --> 00:08:30.000 広さがありました 00:08:30.000 --> 00:08:33.000 22回の爆撃作戦で 00:08:33.000 --> 00:08:38.000 連合軍は8万5千発の爆弾を 00:08:38.000 --> 00:08:42.000 3平方キロの化学工場に 00:08:42.000 --> 00:08:45.000 ノルデン爆撃照準器を使って投下しました 00:08:45.000 --> 00:08:47.000 その爆弾の何パーセントが 00:08:47.000 --> 00:08:49.000 実際に3平方キロの工場敷地内に 00:08:49.000 --> 00:08:52.000 落ちたと思いますか? 00:08:52.000 --> 00:08:55.000 10%です 00:08:55.000 --> 00:08:57.000 しかも落ちた10%のうちの 00:08:57.000 --> 00:09:00.000 16%は不発でした 00:09:00.000 --> 00:09:02.000 ロイナ化学工場は 00:09:02.000 --> 00:09:05.000 第二次世界大戦中で最も徹底した爆撃を受けましたが 00:09:05.000 --> 00:09:08.000 何週間かのちには復旧していたのです NOTE Paragraph 00:09:08.000 --> 00:09:10.000 ところでナチの手に渡すまいとする 00:09:10.000 --> 00:09:13.000 あの予防措置は有効だったのでしょうか? 00:09:13.000 --> 00:09:15.000 後にわかったことですが 00:09:15.000 --> 00:09:17.000 生粋のスイス人だったノルデンは 00:09:17.000 --> 00:09:20.000 ドイツ人の職人を気に入っていて 00:09:20.000 --> 00:09:22.000 1930年代にたくさん雇っていましたが 00:09:22.000 --> 00:09:24.000 その中の一人 ヘルマン・ロングという男が 00:09:24.000 --> 00:09:26.000 1938年に 00:09:26.000 --> 00:09:29.000 ノルデン爆撃照準器の設計図一式をナチの手に渡していました 00:09:29.000 --> 00:09:32.000 だからドイツも大戦を通してノルデン爆撃照準器を持っていたのです 00:09:32.000 --> 00:09:35.000 それもまたあまり機能はしていませんでしたが NOTE Paragraph 00:09:35.000 --> 00:09:37.000 (笑) NOTE Paragraph 00:09:37.000 --> 00:09:40.000 ではなぜノルデン爆撃照準器なんかの話をしているのでしょう? 00:09:40.000 --> 00:09:42.000 私たちが生きているこの時代には 00:09:42.000 --> 00:09:44.000 たくさんのノルデン爆撃照準器が 00:09:44.000 --> 00:09:46.000 あるからです 00:09:46.000 --> 00:09:48.000 非常に頭のいい連中が 00:09:48.000 --> 00:09:50.000 そこら中を闊歩して 00:09:50.000 --> 00:09:52.000 世界を変えることになる 00:09:52.000 --> 00:09:54.000 装置を発明したと言っています 00:09:54.000 --> 00:09:57.000 人々を自由にするWebサイトを作ったと言っています 00:09:57.000 --> 00:10:01.000 彼らはこれを作ったんだ これを作ったんだと言い 00:10:01.000 --> 00:10:04.000 それが世界を永遠に良くするのだと言います NOTE Paragraph 00:10:04.000 --> 00:10:06.000 軍事領域に目を向ければ たくさんの 00:10:06.000 --> 00:10:08.000 カール・ノルデンたちを目にするでしょう 00:10:08.000 --> 00:10:10.000 ペンタゴンで彼らはこう言っています 00:10:10.000 --> 00:10:12.000 「今や我々は 00:10:12.000 --> 00:10:14.000 高度6千キロから 00:10:14.000 --> 00:10:16.000 漬物桶の中に爆弾を投下できるのだ」 00:10:16.000 --> 00:10:19.000 今ではそれが本当にできるようになったのです 00:10:19.000 --> 00:10:21.000 しかしその意味がどれほど小さなものか 00:10:21.000 --> 00:10:24.000 私たちは認識している必要があります NOTE Paragraph 00:10:24.000 --> 00:10:27.000 イラク戦争の初期に 00:10:27.000 --> 00:10:29.000 米空軍は 00:10:29.000 --> 00:10:32.000 F-15Eイーグル戦闘機の飛行隊2つを 00:10:32.000 --> 00:10:34.000 イラクの砂漠に派遣し 00:10:34.000 --> 00:10:36.000 それには砂漠の地表を見渡せる 00:10:36.000 --> 00:10:39.000 5百万ドルのカメラが搭載されていました 00:10:39.000 --> 00:10:42.000 彼らの目的はスカッドミサイルの発見と破壊です 00:10:42.000 --> 00:10:44.000 イラクが 00:10:44.000 --> 00:10:46.000 イスラエルに撃ち込んでいた 00:10:46.000 --> 00:10:48.000 あの地対地ミサイルです 00:10:48.000 --> 00:10:50.000 2つの飛行隊の目的は 00:10:50.000 --> 00:10:53.000 スカッドミサイルの発射台を一掃することでした 00:10:53.000 --> 00:10:55.000 それで彼らはこの悩みの種を取り除くべく 00:10:55.000 --> 00:10:57.000 昼となく夜となく 00:10:57.000 --> 00:11:00.000 何千という爆弾を投下し 00:11:00.000 --> 00:11:03.000 何千というミサイルを撃ち込みました NOTE Paragraph 00:11:03.000 --> 00:11:05.000 戦争が終わって監査が行われました 00:11:05.000 --> 00:11:07.000 軍隊がいつもやることです 00:11:07.000 --> 00:11:09.000 彼らの疑問は どれだけのスカッドが 00:11:09.000 --> 00:11:11.000 実際破壊されたのかということでした 00:11:11.000 --> 00:11:13.000 結果はどうだったと思います? 00:11:13.000 --> 00:11:15.000 ゼロです 00:11:15.000 --> 00:11:17.000 どうしてだったのでしょう? 00:11:17.000 --> 00:11:19.000 兵器の精度が低かったためでしょうか? 00:11:19.000 --> 00:11:22.000 いえ 極めて高精度でした 00:11:22.000 --> 00:11:24.000 ここにある小さな箱を 上空7千5百メートルから 00:11:24.000 --> 00:11:26.000 破壊することもできました 00:11:26.000 --> 00:11:30.000 問題はスカッドの発射台がどこにあるのかわからなかったということです 00:11:30.000 --> 00:11:33.000 爆弾と漬物桶の問題で難しいのは 00:11:33.000 --> 00:11:35.000 爆弾を桶に入れることではなく 00:11:35.000 --> 00:11:38.000 漬物桶をどうやって見つけるかということなのです 00:11:38.000 --> 00:11:40.000 戦争において難しいのは 00:11:40.000 --> 00:11:42.000 いつもそういうことなのです NOTE Paragraph 00:11:42.000 --> 00:11:45.000 アフガニスタンの戦闘はどうでしょう? 00:11:45.000 --> 00:11:47.000 北西パキスタンにおける 00:11:47.000 --> 00:11:49.000 CIAの戦争を代表する兵器は何でしょう? 00:11:49.000 --> 00:11:52.000 ドローンです ドローンとは何か? 00:11:52.000 --> 00:11:56.000 ノルデン・マーク15爆撃照準器の孫に当たるものです 00:11:56.000 --> 00:12:00.000 圧倒的なまでの精度と正確さを備えた兵器です 00:12:00.000 --> 00:12:02.000 過去6年 00:12:02.000 --> 00:12:05.000 北西パキスタンで 00:12:05.000 --> 00:12:08.000 CIAは何百というドローンミサイルを発射し 00:12:08.000 --> 00:12:10.000 パキスタンやタリバンの 00:12:10.000 --> 00:12:12.000 戦闘員と疑わしき 00:12:12.000 --> 00:12:16.000 2千人を殺しました 00:12:16.000 --> 00:12:19.000 ドローンの精度はどれくらいだったのでしょう? 00:12:19.000 --> 00:12:21.000 すごいものです 00:12:21.000 --> 00:12:24.000 ドローンの攻撃精度は 00:12:24.000 --> 00:12:26.000 95%と目されています 00:12:26.000 --> 00:12:29.000 殺した相手の95%は殺すべき人間だということです 00:12:29.000 --> 00:12:31.000 近代戦争の歴史の中でも 00:12:31.000 --> 00:12:33.000 最も目覚ましい記録でしょう NOTE Paragraph 00:12:33.000 --> 00:12:35.000 しかし重要なことがひとつあります 00:12:35.000 --> 00:12:37.000 圧倒的な精度を持つドローンを 00:12:37.000 --> 00:12:39.000 米軍が使っていた 00:12:39.000 --> 00:12:41.000 同じ時期に 00:12:41.000 --> 00:12:44.000 アフガニスタンの米軍に対する 00:12:44.000 --> 00:12:46.000 自爆攻撃やテロ攻撃の数は 00:12:46.000 --> 00:12:49.000 10倍にも増えたのです 00:12:49.000 --> 00:12:51.000 我々が彼らを殺す効率が 00:12:51.000 --> 00:12:53.000 良くなればなるほど 00:12:53.000 --> 00:12:56.000 彼らはますます怒って 00:12:56.000 --> 00:12:59.000 我々を殺そうとする動機を強める結果になっているのです 00:12:59.000 --> 00:13:02.000 私がお話ししているのは成功談ではありません 00:13:02.000 --> 00:13:04.000 私がお話ししているのは 00:13:04.000 --> 00:13:06.000 成功談の反対です NOTE Paragraph 00:13:06.000 --> 00:13:08.000 この問題は 私たちが作るものに対する 00:13:08.000 --> 00:13:10.000 思い上がりの結果です 00:13:10.000 --> 00:13:13.000 私たちは自分の作ったもので問題が解決すると 00:13:13.000 --> 00:13:16.000 思っていますが 問題はもっと複雑なのです 00:13:16.000 --> 00:13:19.000 問題は爆弾の精度ではなく 00:13:19.000 --> 00:13:21.000 爆弾をどう使うかということ 00:13:21.000 --> 00:13:23.000 さらに重要なのは 00:13:23.000 --> 00:13:26.000 そもそも爆弾を使うべきなのかということです NOTE Paragraph 00:13:27.000 --> 00:13:29.000 カール・ノルデンの 00:13:29.000 --> 00:13:31.000 見事な爆撃照準器の話には 00:13:31.000 --> 00:13:34.000 続きがあります 00:13:34.000 --> 00:13:37.000 1945年8月6日 00:13:37.000 --> 00:13:40.000 エノラ・ゲイというB-29爆撃機が 00:13:40.000 --> 00:13:42.000 日本へと飛んで 00:13:42.000 --> 00:13:44.000 ノルデン爆撃照準器を使って 00:13:44.000 --> 00:13:47.000 広島に大きな 00:13:47.000 --> 00:13:50.000 熱核反応装置を投下しました 00:13:50.000 --> 00:13:53.000 ノルデン爆撃照準器ではいつものことですが 00:13:53.000 --> 00:13:56.000 標的を250メートルほど外していました 00:13:56.000 --> 00:13:59.000 しかしもちろんそれは問題ではありませんでした 00:13:59.000 --> 00:14:01.000 ノルデン爆撃照準器にとって 00:14:01.000 --> 00:14:04.000 最大の皮肉と言えるでしょう 00:14:04.000 --> 00:14:08.000 米空軍が15億ドル投じた爆撃照準器が 00:14:08.000 --> 00:14:12.000 30億ドルの爆弾を投下するのに使われましたが 00:14:12.000 --> 00:14:15.000 その爆弾にはそもそも爆撃照準器が必要なかったのです NOTE Paragraph 00:14:15.000 --> 00:14:17.000 その頃ニューヨークでは 00:14:17.000 --> 00:14:19.000 ノルデンに彼の爆撃照準器が 00:14:19.000 --> 00:14:22.000 広島で使われたことを伝える人はいませんでした 00:14:22.000 --> 00:14:24.000 彼は敬虔なクリスチャンであり 00:14:24.000 --> 00:14:26.000 戦争の犠牲者を減らすものを 00:14:26.000 --> 00:14:29.000 作ったと思っていたわけですから 00:14:29.000 --> 00:14:32.000 知ればきっと心を痛めたことでしょう NOTE Paragraph 00:14:32.000 --> 00:14:39.000 (拍手)