1 00:00:00,000 --> 00:00:02,000 どうも 2 00:00:02,000 --> 00:00:04,000 お招きいただいて光栄です 3 00:00:04,000 --> 00:00:06,000 私が以前 4 00:00:06,000 --> 00:00:10,000 この場で講演したのは 7年前のことで 5 00:00:10,000 --> 00:00:13,000 スパゲティソースの話をしました 6 00:00:13,000 --> 00:00:16,000 多くの人がそのビデオを見てくれたようで 7 00:00:16,000 --> 00:00:18,000 それ以来 会う人会う人に 8 00:00:18,000 --> 00:00:20,000 スパゲティソースについて聞かれるようになりました 9 00:00:20,000 --> 00:00:23,000 一時のこととしては結構なんですが・・・ 10 00:00:23,000 --> 00:00:25,000 (笑) 11 00:00:25,000 --> 00:00:27,000 7年ともなると 12 00:00:27,000 --> 00:00:29,000 必ずしも好ましくありません 13 00:00:29,000 --> 00:00:31,000 それでスパゲティの話はお終いにしようと 14 00:00:31,000 --> 00:00:34,000 ここへ来ることにしました 15 00:00:34,000 --> 00:00:36,000 (笑) 16 00:00:36,000 --> 00:00:39,000 今朝のセッションのテーマは「我々が作るもの」です 17 00:00:39,000 --> 00:00:41,000 それで その当時としては 18 00:00:41,000 --> 00:00:43,000 最も貴重なあるものを 19 00:00:43,000 --> 00:00:45,000 作った人について 20 00:00:45,000 --> 00:00:47,000 話をしようと思いました 21 00:00:47,000 --> 00:00:50,000 その人の名はカール・ノルデン 22 00:00:50,000 --> 00:00:52,000 1880年生まれの 23 00:00:52,000 --> 00:00:54,000 スイス人です 24 00:00:54,000 --> 00:00:56,000 スイス人というのは大まかに 25 00:00:56,000 --> 00:00:58,000 2種類に分けられます 26 00:00:58,000 --> 00:01:00,000 小さく精巧で高価なものを 27 00:01:00,000 --> 00:01:02,000 作る人々と 28 00:01:02,000 --> 00:01:04,000 小さく精巧で高価なものを 29 00:01:04,000 --> 00:01:07,000 買う人たちのお金を 30 00:01:07,000 --> 00:01:09,000 扱う人々です 31 00:01:09,000 --> 00:01:12,000 ノルデンは明らかに前者に属していました 32 00:01:12,000 --> 00:01:14,000 彼は技術者であり 33 00:01:14,000 --> 00:01:17,000 チューリッヒ工科大学に行きました 34 00:01:17,000 --> 00:01:20,000 クラスメートだったレーニンという若者は 35 00:01:20,000 --> 00:01:22,000 後に 36 00:01:22,000 --> 00:01:26,000 小さく精巧で高価なものを破壊する活動をすることになります 37 00:01:26,000 --> 00:01:29,000 ノルデンはどこからどう見ても 38 00:01:29,000 --> 00:01:32,000 スイス人技術者でした 39 00:01:32,000 --> 00:01:34,000 三つ揃いのスーツを着て 40 00:01:34,000 --> 00:01:39,000 厳めしい小さな口ひげを生やし 41 00:01:39,000 --> 00:01:41,000 傲慢で 42 00:01:41,000 --> 00:01:43,000 自己中心的で 43 00:01:43,000 --> 00:01:45,000 活力的な 44 00:01:45,000 --> 00:01:47,000 エゴの塊でした 45 00:01:47,000 --> 00:01:50,000 そして日に16時間仕事し 46 00:01:50,000 --> 00:01:53,000 交流に強い思いを持っていて 47 00:01:53,000 --> 00:01:57,000 日焼けなど精神の弱さを示すものだと見なし 48 00:01:57,000 --> 00:01:59,000 コーヒーを山ほど飲み 49 00:01:59,000 --> 00:02:01,000 そしてチューリッヒにある 50 00:02:01,000 --> 00:02:03,000 母親のキッチンで 何時間も 51 00:02:03,000 --> 00:02:05,000 静寂の中 計算尺だけを頼りに 52 00:02:05,000 --> 00:02:07,000 最高の仕事をしたのです 53 00:02:07,000 --> 00:02:09,000 何にせよ 54 00:02:09,000 --> 00:02:12,000 ノルデンは第一次世界大戦の直前に 55 00:02:12,000 --> 00:02:14,000 アメリカに移住し 56 00:02:14,000 --> 00:02:16,000 マンハッタンのダウンタウンにある 57 00:02:16,000 --> 00:02:18,000 ラファイエット通りに工場を開きました 58 00:02:18,000 --> 00:02:20,000 そして飛行機から爆弾を 59 00:02:20,000 --> 00:02:23,000 どう落とすかという問題に取り付かれるようになりました 60 00:02:23,000 --> 00:02:25,000 考えてください 61 00:02:25,000 --> 00:02:28,000 GPSもレーダーもない時代のことです 62 00:02:28,000 --> 00:02:30,000 本当に難しい問題だったのです 63 00:02:30,000 --> 00:02:32,000 複雑な物理学の問題でした 64 00:02:32,000 --> 00:02:35,000 数千メートルの上空を 65 00:02:35,000 --> 00:02:37,000 時速数百キロで飛ぶ飛行機から 66 00:02:37,000 --> 00:02:40,000 静止している標的に向かって 67 00:02:40,000 --> 00:02:42,000 爆弾を落とすわけですが 68 00:02:42,000 --> 00:02:45,000 風や 視野を遮る雲など あらゆる障害がある中 69 00:02:45,000 --> 00:02:47,000 それを行うのです 70 00:02:47,000 --> 00:02:49,000 第一次世界大戦中や 71 00:02:49,000 --> 00:02:51,000 2つの大戦の間の時期に 72 00:02:51,000 --> 00:02:53,000 多くの人がこの問題に取り組みましたが 73 00:02:53,000 --> 00:02:55,000 みんな期待はずれな結果に終わりました 74 00:02:55,000 --> 00:02:57,000 当時の爆撃照準器は 75 00:02:57,000 --> 00:02:59,000 まったく未熟なものだったのです 76 00:02:59,000 --> 00:03:02,000 しかしノルデンは糸口を見つけ 77 00:03:02,000 --> 00:03:05,000 非常に複雑な装置を考案しました 78 00:03:05,000 --> 00:03:07,000 重さが20キロ以上もあり 79 00:03:07,000 --> 00:03:11,000 ノルデン・マーク15爆撃照準器と名付けられました 80 00:03:11,000 --> 00:03:13,000 あらゆるレバーやボールベアリングや 81 00:03:13,000 --> 00:03:16,000 機械や計器が組み込まれた 82 00:03:16,000 --> 00:03:19,000 その装置を彼は作り上げたのです 83 00:03:19,000 --> 00:03:21,000 爆撃手は 84 00:03:21,000 --> 00:03:25,000 この照準器を使って 85 00:03:25,000 --> 00:03:27,000 標的を目視します 86 00:03:27,000 --> 00:03:31,000 爆撃手は爆撃機のプレキシガラス製の突端の中にいます 87 00:03:31,000 --> 00:03:34,000 飛行機の高度 88 00:03:34,000 --> 00:03:37,000 速度 風の速さ 89 00:03:37,000 --> 00:03:39,000 標的の座標を 90 00:03:39,000 --> 00:03:41,000 入力すると 91 00:03:41,000 --> 00:03:45,000 爆撃照準器が爆弾をいつ落とせばよいか教えてくれるのです 92 00:03:45,000 --> 00:03:48,000 ノルデンは豪語していました 93 00:03:48,000 --> 00:03:50,000 爆撃照準器のなかった頃は 94 00:03:50,000 --> 00:03:52,000 爆撃でしょっちゅう 95 00:03:52,000 --> 00:03:54,000 的を何キロも外していたが 96 00:03:54,000 --> 00:03:57,000 ノルデン・マーク15爆撃照準器があれば 97 00:03:57,000 --> 00:03:59,000 高度6千キロから爆弾を 98 00:03:59,000 --> 00:04:01,000 漬物桶に入れることだってできる 99 00:04:01,000 --> 00:04:03,000 このノルデン爆撃照準器の話に 100 00:04:03,000 --> 00:04:05,000 米軍が 101 00:04:05,000 --> 00:04:07,000 どれほど喜んだことか 102 00:04:07,000 --> 00:04:10,000 わかりません 103 00:04:10,000 --> 00:04:12,000 まるで天からの贈り物です 104 00:04:12,000 --> 00:04:14,000 彼らが体験してきた 105 00:04:14,000 --> 00:04:16,000 第一次世界大戦では 106 00:04:16,000 --> 00:04:18,000 何百万という人々が 107 00:04:18,000 --> 00:04:20,000 塹壕の中で戦い合い 108 00:04:20,000 --> 00:04:22,000 膠着状態を続けていたのです 109 00:04:22,000 --> 00:04:26,000 そこへきて 110 00:04:26,000 --> 00:04:28,000 敵陣のはるか上空から 111 00:04:28,000 --> 00:04:30,000 何でもピンポイントに 112 00:04:30,000 --> 00:04:32,000 破壊できる装置が 113 00:04:32,000 --> 00:04:34,000 発明されたというのです 114 00:04:34,000 --> 00:04:36,000 米軍はその装置の開発に 115 00:04:36,000 --> 00:04:38,000 15億ドルを投じました 116 00:04:38,000 --> 00:04:41,000 1940年当時のお金でです 117 00:04:41,000 --> 00:04:43,000 それがどれほどの額かというと 118 00:04:43,000 --> 00:04:46,000 マンハッタン計画にかかったお金でさえ 119 00:04:46,000 --> 00:04:48,000 トータルで 120 00:04:48,000 --> 00:04:50,000 30億ドルです 121 00:04:50,000 --> 00:04:53,000 ノルデン爆撃照準器には 122 00:04:53,000 --> 00:04:57,000 近代の軍産分野における最も有名なプロジェクトの 123 00:04:57,000 --> 00:04:59,000 半分に相当する資金が投じられたのです 124 00:04:59,000 --> 00:05:02,000 米軍の戦略家の中には 125 00:05:02,000 --> 00:05:04,000 この発明1つが 126 00:05:04,000 --> 00:05:06,000 ナチや日本との戦いの 127 00:05:06,000 --> 00:05:08,000 明暗を分けることになると 128 00:05:08,000 --> 00:05:10,000 真剣に考える 129 00:05:10,000 --> 00:05:12,000 人たちさえいました 130 00:05:12,000 --> 00:05:14,000 ノルデン自身にとっても 131 00:05:14,000 --> 00:05:17,000 この装置には倫理的に大きな意味がありました 132 00:05:17,000 --> 00:05:19,000 ノルデンは敬虔なクリスチャンです 133 00:05:19,000 --> 00:05:21,000 彼は人々が爆撃照準器を 134 00:05:21,000 --> 00:05:24,000 彼が創造したものとして語ることに腹を立てていました 135 00:05:24,000 --> 00:05:26,000 彼からすると 136 00:05:26,000 --> 00:05:28,000 物事を創造できるのは神だけです 137 00:05:28,000 --> 00:05:30,000 彼は神の意志実現の道具に過ぎません 138 00:05:30,000 --> 00:05:32,000 神の意志は何でしょう? 139 00:05:32,000 --> 00:05:35,000 神の意志は 戦争で被害を受ける人を 140 00:05:35,000 --> 00:05:38,000 できる限り少なくするということです 141 00:05:38,000 --> 00:05:40,000 ノルデン爆撃照準器がすることは何でしょう? 142 00:05:40,000 --> 00:05:42,000 まさにそういうことです 143 00:05:42,000 --> 00:05:44,000 爆撃する必要があるものだけに 144 00:05:44,000 --> 00:05:48,000 爆弾を落とせるようになるのです 145 00:05:48,000 --> 00:05:51,000 第二次世界大戦までに米軍は 146 00:05:51,000 --> 00:05:54,000 ノルデン爆撃照準器を 147 00:05:54,000 --> 00:05:56,000 1台1万4千ドルで 148 00:05:56,000 --> 00:05:58,000 9万台購入しました 149 00:05:58,000 --> 00:06:01,000 1940年当時では相当なお金です 150 00:06:01,000 --> 00:06:04,000 そして5万人の爆撃手に使い方の訓練を施しました 151 00:06:04,000 --> 00:06:08,000 何ヶ月にも及ぶ広範なトレーニングが必要でした 152 00:06:08,000 --> 00:06:10,000 照準器は実質アナログコンピュータで 153 00:06:10,000 --> 00:06:12,000 簡単に使えるものではなかったのです 154 00:06:12,000 --> 00:06:15,000 そして爆撃手たちは 155 00:06:15,000 --> 00:06:18,000 捕虜になっても決して 156 00:06:18,000 --> 00:06:20,000 敵に情報を漏らさないという 157 00:06:20,000 --> 00:06:22,000 宣誓を求められました 158 00:06:22,000 --> 00:06:25,000 この中核技術を敵の手に渡さないということが 159 00:06:25,000 --> 00:06:27,000 絶対条件だったからです 160 00:06:27,000 --> 00:06:30,000 そしてノルデン爆撃照準器を飛行機に積み込むときには 161 00:06:30,000 --> 00:06:33,000 武装した兵士が護衛に付き 162 00:06:33,000 --> 00:06:36,000 箱に入れて布の覆いを掛けて運ばれ 163 00:06:36,000 --> 00:06:39,000 箱は護衛兵と手錠で繋がれていました 164 00:06:39,000 --> 00:06:41,000 写真を撮ることも禁じられていました 165 00:06:41,000 --> 00:06:44,000 中には小型爆破装置が組み込まれ 166 00:06:44,000 --> 00:06:47,000 飛行機が墜落したときは破壊して 167 00:06:47,000 --> 00:06:50,000 敵の手に渡らないようにしていました 168 00:06:50,000 --> 00:06:52,000 ノルデン爆撃照準器は 169 00:06:52,000 --> 00:06:55,000 まさに聖杯だったのです 170 00:06:55,000 --> 00:06:58,000 それで第二次世界大戦での成果はどうだったのでしょう? 171 00:06:58,000 --> 00:07:01,000 実のところ聖杯でもなんでもないことがわかりました 172 00:07:01,000 --> 00:07:03,000 完璧な条件下であれば 173 00:07:03,000 --> 00:07:06,000 ノルデン爆撃照準器は 6千キロ上空から漬物桶に 174 00:07:06,000 --> 00:07:08,000 爆弾を投下することができましたが 175 00:07:08,000 --> 00:07:10,000 もちろん実戦においては 176 00:07:10,000 --> 00:07:12,000 完璧な条件なんてありはしません 177 00:07:12,000 --> 00:07:15,000 第一に操作が非常に難しかったのです 178 00:07:15,000 --> 00:07:17,000 5万人の爆撃手がみんな 179 00:07:17,000 --> 00:07:19,000 アナログコンピュータを 180 00:07:19,000 --> 00:07:23,000 プログラミングする能力があったわけではありません 181 00:07:23,000 --> 00:07:25,000 第二に しょっちゅう故障しました 182 00:07:25,000 --> 00:07:27,000 ジャイロスコープに 滑車に 機械に 183 00:07:27,000 --> 00:07:29,000 ボールベアリングが詰め込まれており 184 00:07:29,000 --> 00:07:31,000 実戦のさなかには 185 00:07:31,000 --> 00:07:33,000 期待したように機能しませんでした 186 00:07:33,000 --> 00:07:36,000 第三に ノルデンが計算したときには 187 00:07:36,000 --> 00:07:38,000 飛行機が比較的低空を 188 00:07:38,000 --> 00:07:41,000 比較的低速で飛ぶことを想定していました 189 00:07:41,000 --> 00:07:43,000 これは実戦では出来ない相談です 190 00:07:43,000 --> 00:07:45,000 撃ち落とされてしまいます 191 00:07:45,000 --> 00:07:48,000 だから高高度を非常に速いスピードで飛んでいました 192 00:07:48,000 --> 00:07:50,000 そのような条件ではノルデン爆撃照準器は 193 00:07:50,000 --> 00:07:52,000 あまりうまく機能しなかったのです 194 00:07:52,000 --> 00:07:54,000 そして何よりも 195 00:07:54,000 --> 00:07:56,000 爆撃手が標的を視認できることを 196 00:07:56,000 --> 00:07:59,000 前提としていたということがあります 197 00:07:59,000 --> 00:08:01,000 実際はどうでしょう? 198 00:08:01,000 --> 00:08:04,000 雲があります 199 00:08:04,000 --> 00:08:07,000 正確な爆撃には雲のない空が必要でした 200 00:08:07,000 --> 00:08:09,000 1940年から1945年の間の 201 00:08:09,000 --> 00:08:11,000 中央ヨーロッパで 202 00:08:11,000 --> 00:08:14,000 雲ひとつない空というのがどれほどあったのか? 203 00:08:14,000 --> 00:08:16,000 そんなにはなかったでしょう 204 00:08:16,000 --> 00:08:18,000 ノルデン爆撃照準器の不正確さを 205 00:08:18,000 --> 00:08:20,000 お分かりいただける有名な例を挙げましょう 206 00:08:20,000 --> 00:08:22,000 1944年に連合軍は 207 00:08:22,000 --> 00:08:26,000 ドイツのロイナにある化学工場を爆撃しました 208 00:08:26,000 --> 00:08:28,000 工場は3平方キロの 209 00:08:28,000 --> 00:08:30,000 広さがありました 210 00:08:30,000 --> 00:08:33,000 22回の爆撃作戦で 211 00:08:33,000 --> 00:08:38,000 連合軍は8万5千発の爆弾を 212 00:08:38,000 --> 00:08:42,000 3平方キロの化学工場に 213 00:08:42,000 --> 00:08:45,000 ノルデン爆撃照準器を使って投下しました 214 00:08:45,000 --> 00:08:47,000 その爆弾の何パーセントが 215 00:08:47,000 --> 00:08:49,000 実際に3平方キロの工場敷地内に 216 00:08:49,000 --> 00:08:52,000 落ちたと思いますか? 217 00:08:52,000 --> 00:08:55,000 10%です 218 00:08:55,000 --> 00:08:57,000 しかも落ちた10%のうちの 219 00:08:57,000 --> 00:09:00,000 16%は不発でした 220 00:09:00,000 --> 00:09:02,000 ロイナ化学工場は 221 00:09:02,000 --> 00:09:05,000 第二次世界大戦中で最も徹底した爆撃を受けましたが 222 00:09:05,000 --> 00:09:08,000 何週間かのちには復旧していたのです 223 00:09:08,000 --> 00:09:10,000 ところでナチの手に渡すまいとする 224 00:09:10,000 --> 00:09:13,000 あの予防措置は有効だったのでしょうか? 225 00:09:13,000 --> 00:09:15,000 後にわかったことですが 226 00:09:15,000 --> 00:09:17,000 生粋のスイス人だったノルデンは 227 00:09:17,000 --> 00:09:20,000 ドイツ人の職人を気に入っていて 228 00:09:20,000 --> 00:09:22,000 1930年代にたくさん雇っていましたが 229 00:09:22,000 --> 00:09:24,000 その中の一人 ヘルマン・ロングという男が 230 00:09:24,000 --> 00:09:26,000 1938年に 231 00:09:26,000 --> 00:09:29,000 ノルデン爆撃照準器の設計図一式をナチの手に渡していました 232 00:09:29,000 --> 00:09:32,000 だからドイツも大戦を通してノルデン爆撃照準器を持っていたのです 233 00:09:32,000 --> 00:09:35,000 それもまたあまり機能はしていませんでしたが 234 00:09:35,000 --> 00:09:37,000 (笑) 235 00:09:37,000 --> 00:09:40,000 ではなぜノルデン爆撃照準器なんかの話をしているのでしょう? 236 00:09:40,000 --> 00:09:42,000 私たちが生きているこの時代には 237 00:09:42,000 --> 00:09:44,000 たくさんのノルデン爆撃照準器が 238 00:09:44,000 --> 00:09:46,000 あるからです 239 00:09:46,000 --> 00:09:48,000 非常に頭のいい連中が 240 00:09:48,000 --> 00:09:50,000 そこら中を闊歩して 241 00:09:50,000 --> 00:09:52,000 世界を変えることになる 242 00:09:52,000 --> 00:09:54,000 装置を発明したと言っています 243 00:09:54,000 --> 00:09:57,000 人々を自由にするWebサイトを作ったと言っています 244 00:09:57,000 --> 00:10:01,000 彼らはこれを作ったんだ これを作ったんだと言い 245 00:10:01,000 --> 00:10:04,000 それが世界を永遠に良くするのだと言います 246 00:10:04,000 --> 00:10:06,000 軍事領域に目を向ければ たくさんの 247 00:10:06,000 --> 00:10:08,000 カール・ノルデンたちを目にするでしょう 248 00:10:08,000 --> 00:10:10,000 ペンタゴンで彼らはこう言っています 249 00:10:10,000 --> 00:10:12,000 「今や我々は 250 00:10:12,000 --> 00:10:14,000 高度6千キロから 251 00:10:14,000 --> 00:10:16,000 漬物桶の中に爆弾を投下できるのだ」 252 00:10:16,000 --> 00:10:19,000 今ではそれが本当にできるようになったのです 253 00:10:19,000 --> 00:10:21,000 しかしその意味がどれほど小さなものか 254 00:10:21,000 --> 00:10:24,000 私たちは認識している必要があります 255 00:10:24,000 --> 00:10:27,000 イラク戦争の初期に 256 00:10:27,000 --> 00:10:29,000 米空軍は 257 00:10:29,000 --> 00:10:32,000 F-15Eイーグル戦闘機の飛行隊2つを 258 00:10:32,000 --> 00:10:34,000 イラクの砂漠に派遣し 259 00:10:34,000 --> 00:10:36,000 それには砂漠の地表を見渡せる 260 00:10:36,000 --> 00:10:39,000 5百万ドルのカメラが搭載されていました 261 00:10:39,000 --> 00:10:42,000 彼らの目的はスカッドミサイルの発見と破壊です 262 00:10:42,000 --> 00:10:44,000 イラクが 263 00:10:44,000 --> 00:10:46,000 イスラエルに撃ち込んでいた 264 00:10:46,000 --> 00:10:48,000 あの地対地ミサイルです 265 00:10:48,000 --> 00:10:50,000 2つの飛行隊の目的は 266 00:10:50,000 --> 00:10:53,000 スカッドミサイルの発射台を一掃することでした 267 00:10:53,000 --> 00:10:55,000 それで彼らはこの悩みの種を取り除くべく 268 00:10:55,000 --> 00:10:57,000 昼となく夜となく 269 00:10:57,000 --> 00:11:00,000 何千という爆弾を投下し 270 00:11:00,000 --> 00:11:03,000 何千というミサイルを撃ち込みました 271 00:11:03,000 --> 00:11:05,000 戦争が終わって監査が行われました 272 00:11:05,000 --> 00:11:07,000 軍隊がいつもやることです 273 00:11:07,000 --> 00:11:09,000 彼らの疑問は どれだけのスカッドが 274 00:11:09,000 --> 00:11:11,000 実際破壊されたのかということでした 275 00:11:11,000 --> 00:11:13,000 結果はどうだったと思います? 276 00:11:13,000 --> 00:11:15,000 ゼロです 277 00:11:15,000 --> 00:11:17,000 どうしてだったのでしょう? 278 00:11:17,000 --> 00:11:19,000 兵器の精度が低かったためでしょうか? 279 00:11:19,000 --> 00:11:22,000 いえ 極めて高精度でした 280 00:11:22,000 --> 00:11:24,000 ここにある小さな箱を 上空7千5百メートルから 281 00:11:24,000 --> 00:11:26,000 破壊することもできました 282 00:11:26,000 --> 00:11:30,000 問題はスカッドの発射台がどこにあるのかわからなかったということです 283 00:11:30,000 --> 00:11:33,000 爆弾と漬物桶の問題で難しいのは 284 00:11:33,000 --> 00:11:35,000 爆弾を桶に入れることではなく 285 00:11:35,000 --> 00:11:38,000 漬物桶をどうやって見つけるかということなのです 286 00:11:38,000 --> 00:11:40,000 戦争において難しいのは 287 00:11:40,000 --> 00:11:42,000 いつもそういうことなのです 288 00:11:42,000 --> 00:11:45,000 アフガニスタンの戦闘はどうでしょう? 289 00:11:45,000 --> 00:11:47,000 北西パキスタンにおける 290 00:11:47,000 --> 00:11:49,000 CIAの戦争を代表する兵器は何でしょう? 291 00:11:49,000 --> 00:11:52,000 ドローンです ドローンとは何か? 292 00:11:52,000 --> 00:11:56,000 ノルデン・マーク15爆撃照準器の孫に当たるものです 293 00:11:56,000 --> 00:12:00,000 圧倒的なまでの精度と正確さを備えた兵器です 294 00:12:00,000 --> 00:12:02,000 過去6年 295 00:12:02,000 --> 00:12:05,000 北西パキスタンで 296 00:12:05,000 --> 00:12:08,000 CIAは何百というドローンミサイルを発射し 297 00:12:08,000 --> 00:12:10,000 パキスタンやタリバンの 298 00:12:10,000 --> 00:12:12,000 戦闘員と疑わしき 299 00:12:12,000 --> 00:12:16,000 2千人を殺しました 300 00:12:16,000 --> 00:12:19,000 ドローンの精度はどれくらいだったのでしょう? 301 00:12:19,000 --> 00:12:21,000 すごいものです 302 00:12:21,000 --> 00:12:24,000 ドローンの攻撃精度は 303 00:12:24,000 --> 00:12:26,000 95%と目されています 304 00:12:26,000 --> 00:12:29,000 殺した相手の95%は殺すべき人間だということです 305 00:12:29,000 --> 00:12:31,000 近代戦争の歴史の中でも 306 00:12:31,000 --> 00:12:33,000 最も目覚ましい記録でしょう 307 00:12:33,000 --> 00:12:35,000 しかし重要なことがひとつあります 308 00:12:35,000 --> 00:12:37,000 圧倒的な精度を持つドローンを 309 00:12:37,000 --> 00:12:39,000 米軍が使っていた 310 00:12:39,000 --> 00:12:41,000 同じ時期に 311 00:12:41,000 --> 00:12:44,000 アフガニスタンの米軍に対する 312 00:12:44,000 --> 00:12:46,000 自爆攻撃やテロ攻撃の数は 313 00:12:46,000 --> 00:12:49,000 10倍にも増えたのです 314 00:12:49,000 --> 00:12:51,000 我々が彼らを殺す効率が 315 00:12:51,000 --> 00:12:53,000 良くなればなるほど 316 00:12:53,000 --> 00:12:56,000 彼らはますます怒って 317 00:12:56,000 --> 00:12:59,000 我々を殺そうとする動機を強める結果になっているのです 318 00:12:59,000 --> 00:13:02,000 私がお話ししているのは成功談ではありません 319 00:13:02,000 --> 00:13:04,000 私がお話ししているのは 320 00:13:04,000 --> 00:13:06,000 成功談の反対です 321 00:13:06,000 --> 00:13:08,000 この問題は 私たちが作るものに対する 322 00:13:08,000 --> 00:13:10,000 思い上がりの結果です 323 00:13:10,000 --> 00:13:13,000 私たちは自分の作ったもので問題が解決すると 324 00:13:13,000 --> 00:13:16,000 思っていますが 問題はもっと複雑なのです 325 00:13:16,000 --> 00:13:19,000 問題は爆弾の精度ではなく 326 00:13:19,000 --> 00:13:21,000 爆弾をどう使うかということ 327 00:13:21,000 --> 00:13:23,000 さらに重要なのは 328 00:13:23,000 --> 00:13:26,000 そもそも爆弾を使うべきなのかということです 329 00:13:27,000 --> 00:13:29,000 カール・ノルデンの 330 00:13:29,000 --> 00:13:31,000 見事な爆撃照準器の話には 331 00:13:31,000 --> 00:13:34,000 続きがあります 332 00:13:34,000 --> 00:13:37,000 1945年8月6日 333 00:13:37,000 --> 00:13:40,000 エノラ・ゲイというB-29爆撃機が 334 00:13:40,000 --> 00:13:42,000 日本へと飛んで 335 00:13:42,000 --> 00:13:44,000 ノルデン爆撃照準器を使って 336 00:13:44,000 --> 00:13:47,000 広島に大きな 337 00:13:47,000 --> 00:13:50,000 熱核反応装置を投下しました 338 00:13:50,000 --> 00:13:53,000 ノルデン爆撃照準器ではいつものことですが 339 00:13:53,000 --> 00:13:56,000 標的を250メートルほど外していました 340 00:13:56,000 --> 00:13:59,000 しかしもちろんそれは問題ではありませんでした 341 00:13:59,000 --> 00:14:01,000 ノルデン爆撃照準器にとって 342 00:14:01,000 --> 00:14:04,000 最大の皮肉と言えるでしょう 343 00:14:04,000 --> 00:14:08,000 米空軍が15億ドル投じた爆撃照準器が 344 00:14:08,000 --> 00:14:12,000 30億ドルの爆弾を投下するのに使われましたが 345 00:14:12,000 --> 00:14:15,000 その爆弾にはそもそも爆撃照準器が必要なかったのです 346 00:14:15,000 --> 00:14:17,000 その頃ニューヨークでは 347 00:14:17,000 --> 00:14:19,000 ノルデンに彼の爆撃照準器が 348 00:14:19,000 --> 00:14:22,000 広島で使われたことを伝える人はいませんでした 349 00:14:22,000 --> 00:14:24,000 彼は敬虔なクリスチャンであり 350 00:14:24,000 --> 00:14:26,000 戦争の犠牲者を減らすものを 351 00:14:26,000 --> 00:14:29,000 作ったと思っていたわけですから 352 00:14:29,000 --> 00:14:32,000 知ればきっと心を痛めたことでしょう 353 00:14:32,000 --> 00:14:39,000 (拍手)