0:00:00.000,0:00:02.000 どうも 0:00:02.000,0:00:04.000 お招きいただいて光栄です 0:00:04.000,0:00:06.000 私が以前 0:00:06.000,0:00:10.000 この場で講演したのは 7年前のことで 0:00:10.000,0:00:13.000 スパゲティソースの話をしました 0:00:13.000,0:00:16.000 多くの人がそのビデオを見てくれたようで 0:00:16.000,0:00:18.000 それ以来 会う人会う人に 0:00:18.000,0:00:20.000 スパゲティソースについて聞かれるようになりました 0:00:20.000,0:00:23.000 一時のこととしては結構なんですが・・・ 0:00:23.000,0:00:25.000 (笑) 0:00:25.000,0:00:27.000 7年ともなると 0:00:27.000,0:00:29.000 必ずしも好ましくありません 0:00:29.000,0:00:31.000 それでスパゲティの話はお終いにしようと 0:00:31.000,0:00:34.000 ここへ来ることにしました 0:00:34.000,0:00:36.000 (笑) 0:00:36.000,0:00:39.000 今朝のセッションのテーマは「我々が作るもの」です 0:00:39.000,0:00:41.000 それで その当時としては 0:00:41.000,0:00:43.000 最も貴重なあるものを 0:00:43.000,0:00:45.000 作った人について 0:00:45.000,0:00:47.000 話をしようと思いました 0:00:47.000,0:00:50.000 その人の名はカール・ノルデン 0:00:50.000,0:00:52.000 1880年生まれの 0:00:52.000,0:00:54.000 スイス人です 0:00:54.000,0:00:56.000 スイス人というのは大まかに 0:00:56.000,0:00:58.000 2種類に分けられます 0:00:58.000,0:01:00.000 小さく精巧で高価なものを 0:01:00.000,0:01:02.000 作る人々と 0:01:02.000,0:01:04.000 小さく精巧で高価なものを 0:01:04.000,0:01:07.000 買う人たちのお金を 0:01:07.000,0:01:09.000 扱う人々です 0:01:09.000,0:01:12.000 ノルデンは明らかに前者に属していました 0:01:12.000,0:01:14.000 彼は技術者であり 0:01:14.000,0:01:17.000 チューリッヒ工科大学に行きました 0:01:17.000,0:01:20.000 クラスメートだったレーニンという若者は 0:01:20.000,0:01:22.000 後に 0:01:22.000,0:01:26.000 小さく精巧で高価なものを破壊する活動をすることになります 0:01:26.000,0:01:29.000 ノルデンはどこからどう見ても 0:01:29.000,0:01:32.000 スイス人技術者でした 0:01:32.000,0:01:34.000 三つ揃いのスーツを着て 0:01:34.000,0:01:39.000 厳めしい小さな口ひげを生やし 0:01:39.000,0:01:41.000 傲慢で 0:01:41.000,0:01:43.000 自己中心的で 0:01:43.000,0:01:45.000 活力的な 0:01:45.000,0:01:47.000 エゴの塊でした 0:01:47.000,0:01:50.000 そして日に16時間仕事し 0:01:50.000,0:01:53.000 交流に強い思いを持っていて 0:01:53.000,0:01:57.000 日焼けなど精神の弱さを示すものだと見なし 0:01:57.000,0:01:59.000 コーヒーを山ほど飲み 0:01:59.000,0:02:01.000 そしてチューリッヒにある 0:02:01.000,0:02:03.000 母親のキッチンで 何時間も 0:02:03.000,0:02:05.000 静寂の中 計算尺だけを頼りに 0:02:05.000,0:02:07.000 最高の仕事をしたのです 0:02:07.000,0:02:09.000 何にせよ 0:02:09.000,0:02:12.000 ノルデンは第一次世界大戦の直前に 0:02:12.000,0:02:14.000 アメリカに移住し 0:02:14.000,0:02:16.000 マンハッタンのダウンタウンにある 0:02:16.000,0:02:18.000 ラファイエット通りに工場を開きました 0:02:18.000,0:02:20.000 そして飛行機から爆弾を 0:02:20.000,0:02:23.000 どう落とすかという問題に取り付かれるようになりました 0:02:23.000,0:02:25.000 考えてください 0:02:25.000,0:02:28.000 GPSもレーダーもない時代のことです 0:02:28.000,0:02:30.000 本当に難しい問題だったのです 0:02:30.000,0:02:32.000 複雑な物理学の問題でした 0:02:32.000,0:02:35.000 数千メートルの上空を 0:02:35.000,0:02:37.000 時速数百キロで飛ぶ飛行機から 0:02:37.000,0:02:40.000 静止している標的に向かって 0:02:40.000,0:02:42.000 爆弾を落とすわけですが 0:02:42.000,0:02:45.000 風や 視野を遮る雲など あらゆる障害がある中 0:02:45.000,0:02:47.000 それを行うのです 0:02:47.000,0:02:49.000 第一次世界大戦中や 0:02:49.000,0:02:51.000 2つの大戦の間の時期に 0:02:51.000,0:02:53.000 多くの人がこの問題に取り組みましたが 0:02:53.000,0:02:55.000 みんな期待はずれな結果に終わりました 0:02:55.000,0:02:57.000 当時の爆撃照準器は 0:02:57.000,0:02:59.000 まったく未熟なものだったのです 0:02:59.000,0:03:02.000 しかしノルデンは糸口を見つけ 0:03:02.000,0:03:05.000 非常に複雑な装置を考案しました 0:03:05.000,0:03:07.000 重さが20キロ以上もあり 0:03:07.000,0:03:11.000 ノルデン・マーク15爆撃照準器と名付けられました 0:03:11.000,0:03:13.000 あらゆるレバーやボールベアリングや 0:03:13.000,0:03:16.000 機械や計器が組み込まれた 0:03:16.000,0:03:19.000 その装置を彼は作り上げたのです 0:03:19.000,0:03:21.000 爆撃手は 0:03:21.000,0:03:25.000 この照準器を使って 0:03:25.000,0:03:27.000 標的を目視します 0:03:27.000,0:03:31.000 爆撃手は爆撃機のプレキシガラス製の突端の中にいます 0:03:31.000,0:03:34.000 飛行機の高度 0:03:34.000,0:03:37.000 速度 風の速さ 0:03:37.000,0:03:39.000 標的の座標を 0:03:39.000,0:03:41.000 入力すると 0:03:41.000,0:03:45.000 爆撃照準器が爆弾をいつ落とせばよいか教えてくれるのです 0:03:45.000,0:03:48.000 ノルデンは豪語していました 0:03:48.000,0:03:50.000 爆撃照準器のなかった頃は 0:03:50.000,0:03:52.000 爆撃でしょっちゅう 0:03:52.000,0:03:54.000 的を何キロも外していたが 0:03:54.000,0:03:57.000 ノルデン・マーク15爆撃照準器があれば 0:03:57.000,0:03:59.000 高度6千キロから爆弾を 0:03:59.000,0:04:01.000 漬物桶に入れることだってできる 0:04:01.000,0:04:03.000 このノルデン爆撃照準器の話に 0:04:03.000,0:04:05.000 米軍が 0:04:05.000,0:04:07.000 どれほど喜んだことか 0:04:07.000,0:04:10.000 わかりません 0:04:10.000,0:04:12.000 まるで天からの贈り物です 0:04:12.000,0:04:14.000 彼らが体験してきた 0:04:14.000,0:04:16.000 第一次世界大戦では 0:04:16.000,0:04:18.000 何百万という人々が 0:04:18.000,0:04:20.000 塹壕の中で戦い合い 0:04:20.000,0:04:22.000 膠着状態を続けていたのです 0:04:22.000,0:04:26.000 そこへきて 0:04:26.000,0:04:28.000 敵陣のはるか上空から 0:04:28.000,0:04:30.000 何でもピンポイントに 0:04:30.000,0:04:32.000 破壊できる装置が 0:04:32.000,0:04:34.000 発明されたというのです 0:04:34.000,0:04:36.000 米軍はその装置の開発に 0:04:36.000,0:04:38.000 15億ドルを投じました 0:04:38.000,0:04:41.000 1940年当時のお金でです 0:04:41.000,0:04:43.000 それがどれほどの額かというと 0:04:43.000,0:04:46.000 マンハッタン計画にかかったお金でさえ 0:04:46.000,0:04:48.000 トータルで 0:04:48.000,0:04:50.000 30億ドルです 0:04:50.000,0:04:53.000 ノルデン爆撃照準器には 0:04:53.000,0:04:57.000 近代の軍産分野における最も有名なプロジェクトの 0:04:57.000,0:04:59.000 半分に相当する資金が投じられたのです 0:04:59.000,0:05:02.000 米軍の戦略家の中には 0:05:02.000,0:05:04.000 この発明1つが 0:05:04.000,0:05:06.000 ナチや日本との戦いの 0:05:06.000,0:05:08.000 明暗を分けることになると 0:05:08.000,0:05:10.000 真剣に考える 0:05:10.000,0:05:12.000 人たちさえいました 0:05:12.000,0:05:14.000 ノルデン自身にとっても 0:05:14.000,0:05:17.000 この装置には倫理的に大きな意味がありました 0:05:17.000,0:05:19.000 ノルデンは敬虔なクリスチャンです 0:05:19.000,0:05:21.000 彼は人々が爆撃照準器を 0:05:21.000,0:05:24.000 彼が創造したものとして語ることに腹を立てていました 0:05:24.000,0:05:26.000 彼からすると 0:05:26.000,0:05:28.000 物事を創造できるのは神だけです 0:05:28.000,0:05:30.000 彼は神の意志実現の道具に過ぎません 0:05:30.000,0:05:32.000 神の意志は何でしょう? 0:05:32.000,0:05:35.000 神の意志は 戦争で被害を受ける人を 0:05:35.000,0:05:38.000 できる限り少なくするということです 0:05:38.000,0:05:40.000 ノルデン爆撃照準器がすることは何でしょう? 0:05:40.000,0:05:42.000 まさにそういうことです 0:05:42.000,0:05:44.000 爆撃する必要があるものだけに 0:05:44.000,0:05:48.000 爆弾を落とせるようになるのです 0:05:48.000,0:05:51.000 第二次世界大戦までに米軍は 0:05:51.000,0:05:54.000 ノルデン爆撃照準器を 0:05:54.000,0:05:56.000 1台1万4千ドルで 0:05:56.000,0:05:58.000 9万台購入しました 0:05:58.000,0:06:01.000 1940年当時では相当なお金です 0:06:01.000,0:06:04.000 そして5万人の爆撃手に使い方の訓練を施しました 0:06:04.000,0:06:08.000 何ヶ月にも及ぶ広範なトレーニングが必要でした 0:06:08.000,0:06:10.000 照準器は実質アナログコンピュータで 0:06:10.000,0:06:12.000 簡単に使えるものではなかったのです 0:06:12.000,0:06:15.000 そして爆撃手たちは 0:06:15.000,0:06:18.000 捕虜になっても決して 0:06:18.000,0:06:20.000 敵に情報を漏らさないという 0:06:20.000,0:06:22.000 宣誓を求められました 0:06:22.000,0:06:25.000 この中核技術を敵の手に渡さないということが 0:06:25.000,0:06:27.000 絶対条件だったからです 0:06:27.000,0:06:30.000 そしてノルデン爆撃照準器を飛行機に積み込むときには 0:06:30.000,0:06:33.000 武装した兵士が護衛に付き 0:06:33.000,0:06:36.000 箱に入れて布の覆いを掛けて運ばれ 0:06:36.000,0:06:39.000 箱は護衛兵と手錠で繋がれていました 0:06:39.000,0:06:41.000 写真を撮ることも禁じられていました 0:06:41.000,0:06:44.000 中には小型爆破装置が組み込まれ 0:06:44.000,0:06:47.000 飛行機が墜落したときは破壊して 0:06:47.000,0:06:50.000 敵の手に渡らないようにしていました 0:06:50.000,0:06:52.000 ノルデン爆撃照準器は 0:06:52.000,0:06:55.000 まさに聖杯だったのです 0:06:55.000,0:06:58.000 それで第二次世界大戦での成果はどうだったのでしょう? 0:06:58.000,0:07:01.000 実のところ聖杯でもなんでもないことがわかりました 0:07:01.000,0:07:03.000 完璧な条件下であれば 0:07:03.000,0:07:06.000 ノルデン爆撃照準器は 6千キロ上空から漬物桶に 0:07:06.000,0:07:08.000 爆弾を投下することができましたが 0:07:08.000,0:07:10.000 もちろん実戦においては 0:07:10.000,0:07:12.000 完璧な条件なんてありはしません 0:07:12.000,0:07:15.000 第一に操作が非常に難しかったのです 0:07:15.000,0:07:17.000 5万人の爆撃手がみんな 0:07:17.000,0:07:19.000 アナログコンピュータを 0:07:19.000,0:07:23.000 プログラミングする能力があったわけではありません 0:07:23.000,0:07:25.000 第二に しょっちゅう故障しました 0:07:25.000,0:07:27.000 ジャイロスコープに 滑車に 機械に 0:07:27.000,0:07:29.000 ボールベアリングが詰め込まれており 0:07:29.000,0:07:31.000 実戦のさなかには 0:07:31.000,0:07:33.000 期待したように機能しませんでした 0:07:33.000,0:07:36.000 第三に ノルデンが計算したときには 0:07:36.000,0:07:38.000 飛行機が比較的低空を 0:07:38.000,0:07:41.000 比較的低速で飛ぶことを想定していました 0:07:41.000,0:07:43.000 これは実戦では出来ない相談です 0:07:43.000,0:07:45.000 撃ち落とされてしまいます 0:07:45.000,0:07:48.000 だから高高度を非常に速いスピードで飛んでいました 0:07:48.000,0:07:50.000 そのような条件ではノルデン爆撃照準器は 0:07:50.000,0:07:52.000 あまりうまく機能しなかったのです 0:07:52.000,0:07:54.000 そして何よりも 0:07:54.000,0:07:56.000 爆撃手が標的を視認できることを 0:07:56.000,0:07:59.000 前提としていたということがあります 0:07:59.000,0:08:01.000 実際はどうでしょう? 0:08:01.000,0:08:04.000 雲があります 0:08:04.000,0:08:07.000 正確な爆撃には雲のない空が必要でした 0:08:07.000,0:08:09.000 1940年から1945年の間の 0:08:09.000,0:08:11.000 中央ヨーロッパで 0:08:11.000,0:08:14.000 雲ひとつない空というのがどれほどあったのか? 0:08:14.000,0:08:16.000 そんなにはなかったでしょう 0:08:16.000,0:08:18.000 ノルデン爆撃照準器の不正確さを 0:08:18.000,0:08:20.000 お分かりいただける有名な例を挙げましょう 0:08:20.000,0:08:22.000 1944年に連合軍は 0:08:22.000,0:08:26.000 ドイツのロイナにある化学工場を爆撃しました 0:08:26.000,0:08:28.000 工場は3平方キロの 0:08:28.000,0:08:30.000 広さがありました 0:08:30.000,0:08:33.000 22回の爆撃作戦で 0:08:33.000,0:08:38.000 連合軍は8万5千発の爆弾を 0:08:38.000,0:08:42.000 3平方キロの化学工場に 0:08:42.000,0:08:45.000 ノルデン爆撃照準器を使って投下しました 0:08:45.000,0:08:47.000 その爆弾の何パーセントが 0:08:47.000,0:08:49.000 実際に3平方キロの工場敷地内に 0:08:49.000,0:08:52.000 落ちたと思いますか? 0:08:52.000,0:08:55.000 10%です 0:08:55.000,0:08:57.000 しかも落ちた10%のうちの 0:08:57.000,0:09:00.000 16%は不発でした 0:09:00.000,0:09:02.000 ロイナ化学工場は 0:09:02.000,0:09:05.000 第二次世界大戦中で最も徹底した爆撃を受けましたが 0:09:05.000,0:09:08.000 何週間かのちには復旧していたのです 0:09:08.000,0:09:10.000 ところでナチの手に渡すまいとする 0:09:10.000,0:09:13.000 あの予防措置は有効だったのでしょうか? 0:09:13.000,0:09:15.000 後にわかったことですが 0:09:15.000,0:09:17.000 生粋のスイス人だったノルデンは 0:09:17.000,0:09:20.000 ドイツ人の職人を気に入っていて 0:09:20.000,0:09:22.000 1930年代にたくさん雇っていましたが 0:09:22.000,0:09:24.000 その中の一人 ヘルマン・ロングという男が 0:09:24.000,0:09:26.000 1938年に 0:09:26.000,0:09:29.000 ノルデン爆撃照準器の設計図一式をナチの手に渡していました 0:09:29.000,0:09:32.000 だからドイツも大戦を通してノルデン爆撃照準器を持っていたのです 0:09:32.000,0:09:35.000 それもまたあまり機能はしていませんでしたが 0:09:35.000,0:09:37.000 (笑) 0:09:37.000,0:09:40.000 ではなぜノルデン爆撃照準器なんかの話をしているのでしょう? 0:09:40.000,0:09:42.000 私たちが生きているこの時代には 0:09:42.000,0:09:44.000 たくさんのノルデン爆撃照準器が 0:09:44.000,0:09:46.000 あるからです 0:09:46.000,0:09:48.000 非常に頭のいい連中が 0:09:48.000,0:09:50.000 そこら中を闊歩して 0:09:50.000,0:09:52.000 世界を変えることになる 0:09:52.000,0:09:54.000 装置を発明したと言っています 0:09:54.000,0:09:57.000 人々を自由にするWebサイトを作ったと言っています 0:09:57.000,0:10:01.000 彼らはこれを作ったんだ これを作ったんだと言い 0:10:01.000,0:10:04.000 それが世界を永遠に良くするのだと言います 0:10:04.000,0:10:06.000 軍事領域に目を向ければ たくさんの 0:10:06.000,0:10:08.000 カール・ノルデンたちを目にするでしょう 0:10:08.000,0:10:10.000 ペンタゴンで彼らはこう言っています 0:10:10.000,0:10:12.000 「今や我々は 0:10:12.000,0:10:14.000 高度6千キロから 0:10:14.000,0:10:16.000 漬物桶の中に爆弾を投下できるのだ」 0:10:16.000,0:10:19.000 今ではそれが本当にできるようになったのです 0:10:19.000,0:10:21.000 しかしその意味がどれほど小さなものか 0:10:21.000,0:10:24.000 私たちは認識している必要があります 0:10:24.000,0:10:27.000 イラク戦争の初期に 0:10:27.000,0:10:29.000 米空軍は 0:10:29.000,0:10:32.000 F-15Eイーグル戦闘機の飛行隊2つを 0:10:32.000,0:10:34.000 イラクの砂漠に派遣し 0:10:34.000,0:10:36.000 それには砂漠の地表を見渡せる 0:10:36.000,0:10:39.000 5百万ドルのカメラが搭載されていました 0:10:39.000,0:10:42.000 彼らの目的はスカッドミサイルの発見と破壊です 0:10:42.000,0:10:44.000 イラクが 0:10:44.000,0:10:46.000 イスラエルに撃ち込んでいた 0:10:46.000,0:10:48.000 あの地対地ミサイルです 0:10:48.000,0:10:50.000 2つの飛行隊の目的は 0:10:50.000,0:10:53.000 スカッドミサイルの発射台を一掃することでした 0:10:53.000,0:10:55.000 それで彼らはこの悩みの種を取り除くべく 0:10:55.000,0:10:57.000 昼となく夜となく 0:10:57.000,0:11:00.000 何千という爆弾を投下し 0:11:00.000,0:11:03.000 何千というミサイルを撃ち込みました 0:11:03.000,0:11:05.000 戦争が終わって監査が行われました 0:11:05.000,0:11:07.000 軍隊がいつもやることです 0:11:07.000,0:11:09.000 彼らの疑問は どれだけのスカッドが 0:11:09.000,0:11:11.000 実際破壊されたのかということでした 0:11:11.000,0:11:13.000 結果はどうだったと思います? 0:11:13.000,0:11:15.000 ゼロです 0:11:15.000,0:11:17.000 どうしてだったのでしょう? 0:11:17.000,0:11:19.000 兵器の精度が低かったためでしょうか? 0:11:19.000,0:11:22.000 いえ 極めて高精度でした 0:11:22.000,0:11:24.000 ここにある小さな箱を 上空7千5百メートルから 0:11:24.000,0:11:26.000 破壊することもできました 0:11:26.000,0:11:30.000 問題はスカッドの発射台がどこにあるのかわからなかったということです 0:11:30.000,0:11:33.000 爆弾と漬物桶の問題で難しいのは 0:11:33.000,0:11:35.000 爆弾を桶に入れることではなく 0:11:35.000,0:11:38.000 漬物桶をどうやって見つけるかということなのです 0:11:38.000,0:11:40.000 戦争において難しいのは 0:11:40.000,0:11:42.000 いつもそういうことなのです 0:11:42.000,0:11:45.000 アフガニスタンの戦闘はどうでしょう? 0:11:45.000,0:11:47.000 北西パキスタンにおける 0:11:47.000,0:11:49.000 CIAの戦争を代表する兵器は何でしょう? 0:11:49.000,0:11:52.000 ドローンです ドローンとは何か? 0:11:52.000,0:11:56.000 ノルデン・マーク15爆撃照準器の孫に当たるものです 0:11:56.000,0:12:00.000 圧倒的なまでの精度と正確さを備えた兵器です 0:12:00.000,0:12:02.000 過去6年 0:12:02.000,0:12:05.000 北西パキスタンで 0:12:05.000,0:12:08.000 CIAは何百というドローンミサイルを発射し 0:12:08.000,0:12:10.000 パキスタンやタリバンの 0:12:10.000,0:12:12.000 戦闘員と疑わしき 0:12:12.000,0:12:16.000 2千人を殺しました 0:12:16.000,0:12:19.000 ドローンの精度はどれくらいだったのでしょう? 0:12:19.000,0:12:21.000 すごいものです 0:12:21.000,0:12:24.000 ドローンの攻撃精度は 0:12:24.000,0:12:26.000 95%と目されています 0:12:26.000,0:12:29.000 殺した相手の95%は殺すべき人間だということです 0:12:29.000,0:12:31.000 近代戦争の歴史の中でも 0:12:31.000,0:12:33.000 最も目覚ましい記録でしょう 0:12:33.000,0:12:35.000 しかし重要なことがひとつあります 0:12:35.000,0:12:37.000 圧倒的な精度を持つドローンを 0:12:37.000,0:12:39.000 米軍が使っていた 0:12:39.000,0:12:41.000 同じ時期に 0:12:41.000,0:12:44.000 アフガニスタンの米軍に対する 0:12:44.000,0:12:46.000 自爆攻撃やテロ攻撃の数は 0:12:46.000,0:12:49.000 10倍にも増えたのです 0:12:49.000,0:12:51.000 我々が彼らを殺す効率が 0:12:51.000,0:12:53.000 良くなればなるほど 0:12:53.000,0:12:56.000 彼らはますます怒って 0:12:56.000,0:12:59.000 我々を殺そうとする動機を強める結果になっているのです 0:12:59.000,0:13:02.000 私がお話ししているのは成功談ではありません 0:13:02.000,0:13:04.000 私がお話ししているのは 0:13:04.000,0:13:06.000 成功談の反対です 0:13:06.000,0:13:08.000 この問題は 私たちが作るものに対する 0:13:08.000,0:13:10.000 思い上がりの結果です 0:13:10.000,0:13:13.000 私たちは自分の作ったもので問題が解決すると 0:13:13.000,0:13:16.000 思っていますが 問題はもっと複雑なのです 0:13:16.000,0:13:19.000 問題は爆弾の精度ではなく 0:13:19.000,0:13:21.000 爆弾をどう使うかということ 0:13:21.000,0:13:23.000 さらに重要なのは 0:13:23.000,0:13:26.000 そもそも爆弾を使うべきなのかということです 0:13:27.000,0:13:29.000 カール・ノルデンの 0:13:29.000,0:13:31.000 見事な爆撃照準器の話には 0:13:31.000,0:13:34.000 続きがあります 0:13:34.000,0:13:37.000 1945年8月6日 0:13:37.000,0:13:40.000 エノラ・ゲイというB-29爆撃機が 0:13:40.000,0:13:42.000 日本へと飛んで 0:13:42.000,0:13:44.000 ノルデン爆撃照準器を使って 0:13:44.000,0:13:47.000 広島に大きな 0:13:47.000,0:13:50.000 熱核反応装置を投下しました 0:13:50.000,0:13:53.000 ノルデン爆撃照準器ではいつものことですが 0:13:53.000,0:13:56.000 標的を250メートルほど外していました 0:13:56.000,0:13:59.000 しかしもちろんそれは問題ではありませんでした 0:13:59.000,0:14:01.000 ノルデン爆撃照準器にとって 0:14:01.000,0:14:04.000 最大の皮肉と言えるでしょう 0:14:04.000,0:14:08.000 米空軍が15億ドル投じた爆撃照準器が 0:14:08.000,0:14:12.000 30億ドルの爆弾を投下するのに使われましたが 0:14:12.000,0:14:15.000 その爆弾にはそもそも爆撃照準器が必要なかったのです 0:14:15.000,0:14:17.000 その頃ニューヨークでは 0:14:17.000,0:14:19.000 ノルデンに彼の爆撃照準器が 0:14:19.000,0:14:22.000 広島で使われたことを伝える人はいませんでした 0:14:22.000,0:14:24.000 彼は敬虔なクリスチャンであり 0:14:24.000,0:14:26.000 戦争の犠牲者を減らすものを 0:14:26.000,0:14:29.000 作ったと思っていたわけですから 0:14:29.000,0:14:32.000 知ればきっと心を痛めたことでしょう 0:14:32.000,0:14:39.000 (拍手)