WEBVTT

00:00:01.130 --> 00:00:03.071
ひとつ驚くべき事実があります

00:00:03.095 --> 00:00:05.500
45年前に ATM —

00:00:05.500 --> 00:00:09.696
あの現金の自販機が
導入されて以来

00:00:09.720 --> 00:00:12.896
アメリカで雇用されている
銀行窓口係の数は

00:00:12.920 --> 00:00:14.176
おおよそ２倍に

00:00:14.200 --> 00:00:17.496
25万人から50万人に
増えていて

00:00:17.520 --> 00:00:20.646
1970年に25万人だったのが
今では50万人

00:00:20.646 --> 00:00:24.816
2000年以降だけでも
10万人増えているんです

NOTE Paragraph

00:00:24.840 --> 00:00:27.636
ボストン大学の経済学者
ジェームズ・ベッセンが

00:00:27.636 --> 00:00:30.416
最近出した本で
明らかにされたこの事実は

00:00:30.440 --> 00:00:32.560
興味深い疑問を提起します

00:00:32.560 --> 00:00:34.766
その人たちは
いったい何をやっているのか？

00:00:34.766 --> 00:00:38.576
なぜ自動化によって
そういった仕事がなくならないのか？

00:00:38.600 --> 00:00:39.900
考えてみれば

00:00:39.900 --> 00:00:43.096
過去200年における
偉大な発明の多くは

00:00:43.120 --> 00:00:46.460
人間の労働を
置き換えるためのものでした

00:00:46.720 --> 00:00:48.496
トラクターは人間の肉体労働を

00:00:48.520 --> 00:00:52.856
機械の力で置き換えるものとして
作られました

00:00:52.880 --> 00:00:54.290
組み立てラインは

00:00:54.290 --> 00:00:56.740
ムラのある人間の手作業を

00:00:56.740 --> 00:01:00.536
機械の正確さで
置き換えるため考案されました

00:01:00.560 --> 00:01:01.730
コンピューターは

00:01:01.730 --> 00:01:04.020
間違いの多い手計算を

00:01:04.020 --> 00:01:08.400
デジタルの完璧さで置き換えるべく
生み出されました

00:01:08.760 --> 00:01:10.930
これらの発明は大成功でした

00:01:10.930 --> 00:01:12.830
私たちはもはや
手で溝を掘ることも

00:01:12.830 --> 00:01:15.296
鍛鉄から道具を
打ち出すことも

00:01:15.296 --> 00:01:18.210
紙の帳面で簿記をすることも
なくなりました

00:01:18.210 --> 00:01:22.730
それでも労働市場で雇用されている
アメリカ成人の割合は

00:01:22.730 --> 00:01:24.790
2016年の今

00:01:24.790 --> 00:01:28.616
125年前の1890年よりも
高くなっており

00:01:28.640 --> 00:01:31.200
その間10年ごとに

00:01:31.200 --> 00:01:34.230
ほぼ上がり続けているのです

NOTE Paragraph

00:01:34.450 --> 00:01:36.550
これはパラドックスを提起します

00:01:36.640 --> 00:01:39.810
機械がますます人間に代わって
仕事をしている中で

00:01:39.810 --> 00:01:44.096
なぜ人間の労働が余計になったり
人間のスキルが廃れたりしないのか？

00:01:44.096 --> 00:01:47.696
どうしてまだ
こんなに仕事があるのか？

NOTE Paragraph

00:01:47.720 --> 00:01:49.456
(笑)

NOTE Paragraph

00:01:49.480 --> 00:01:52.076
今宵はどうにかこの疑問に
答えようと思います

00:01:52.076 --> 00:01:55.576
その過程で それが仕事の未来に
対して持つ意味合い

00:01:55.600 --> 00:01:58.600
また自動化が我々の社会に
提起する問題

00:01:58.600 --> 00:02:01.680
しない問題について
話したいと思います

NOTE Paragraph

00:02:02.470 --> 00:02:04.720
なぜこんなに沢山の
仕事があるのか？

00:02:05.680 --> 00:02:09.056
これには２つの基本的な
経済学原理が関わっています

00:02:09.080 --> 00:02:11.270
１つは人間の才覚や

00:02:11.270 --> 00:02:13.216
創造性に関するもので

00:02:13.240 --> 00:02:15.590
もう１つは人間の
飽くことを知らない

00:02:15.590 --> 00:02:17.600
どん欲さに関わるものです

00:02:17.600 --> 00:02:19.880
１番目のものを
「Oリングの原理」と呼びましょう

00:02:19.880 --> 00:02:22.616
これは人間がする仕事の種類を
決めるものです

00:02:22.616 --> 00:02:25.270
２番目の原理は
「足ることなしの原理」です

00:02:25.270 --> 00:02:29.250
これはどれだけ多くの仕事があるかを
決めるものです

NOTE Paragraph

00:02:29.270 --> 00:02:31.776
Oリングの話から始めましょう

00:02:31.800 --> 00:02:33.530
ATM (現金自動預け払い機)には

00:02:33.530 --> 00:02:37.770
銀行窓口係の雇用に対し
相殺する２つの効果がありました

00:02:37.770 --> 00:02:40.976
ご想像の通り それは多くの窓口係の作業を
代替することになり

00:02:40.976 --> 00:02:44.120
支店あたりの窓口係の数は
３分の１減少しました

00:02:44.150 --> 00:02:48.056
しかしまた 銀行は新たに支店を開くコストが
安くなったことに気付き

00:02:48.080 --> 00:02:50.580
同じ時期に
銀行の支店数は

00:02:50.580 --> 00:02:52.736
40%増加しました

00:02:52.760 --> 00:02:57.410
総数としては支店数とともに
窓口係の数も増えたのです

00:02:57.440 --> 00:03:00.856
しかし窓口係の仕事内容も
少し変わりました

00:03:00.880 --> 00:03:04.536
日常の業務として 
現金受渡の作業は減って

00:03:04.560 --> 00:03:06.310
出納係よりは

00:03:06.310 --> 00:03:08.536
セールスマンのような
仕事になりました

00:03:08.560 --> 00:03:10.590
顧客との関係を築き

00:03:10.590 --> 00:03:11.820
問題を解決し

00:03:11.820 --> 00:03:16.326
クレジットカードや ローンや 投資といった
新しい商品を紹介するようになったのです

00:03:16.326 --> 00:03:20.570
窓口係の仕事は
より頭脳が要求されるものになりました

00:03:20.840 --> 00:03:23.090
ここにはある一般原理が
働いています

00:03:23.090 --> 00:03:24.816
我々のする仕事の多くは

00:03:24.840 --> 00:03:28.320
多様なスキルを必要とします

00:03:29.810 --> 00:03:32.240
頭脳と筋力—

00:03:32.240 --> 00:03:35.976
専門技術と経験の勘

00:03:36.000 --> 00:03:39.300
エジソンの言うところの
努力とひらめき

00:03:39.480 --> 00:03:42.736
通常そういった仕事の一部分を
自動化することで

00:03:42.760 --> 00:03:44.976
他の部分は不要になりません

00:03:45.000 --> 00:03:48.400
むしろ その部分が
より重要になります

00:03:48.790 --> 00:03:51.056
経済的価値が高くなるのです

NOTE Paragraph

00:03:51.080 --> 00:03:53.096
際だった例をお話ししましょう

00:03:53.120 --> 00:03:56.936
1986年 スペースシャトル・
チャレンジャー号が

00:03:56.960 --> 00:03:59.256
発射から２分もせずに爆発し

00:03:59.280 --> 00:04:01.680
破片となって地上に落下しました

00:04:01.720 --> 00:04:03.880
調査の結果分かったのは

00:04:03.880 --> 00:04:08.376
爆発の原因は補助ロケットの
安価なゴム製Ｏリングにあり

00:04:08.400 --> 00:04:11.256
前の夜に発射台で凍り付いて

00:04:11.280 --> 00:04:14.656
発射直後に破滅的な故障を
来したということです

00:04:14.680 --> 00:04:17.289
この数十億ドル規模の事業において

00:04:17.289 --> 00:04:19.256
単なるゴム製Ｏリングが

00:04:19.256 --> 00:04:22.805
計画の成功と
７人の宇宙飛行士の悲惨な死とを

00:04:22.805 --> 00:04:24.960
分けることになったのです

00:04:25.600 --> 00:04:27.820
「Ｏリング生産関数」は

00:04:27.820 --> 00:04:31.430
この悲劇的な状況の
巧妙なメタファーとして

00:04:31.430 --> 00:04:33.720
ハーバードの経済学者
マイケル・クリーマーが

00:04:33.720 --> 00:04:36.136
チャレンジャー号事故の後に
名付けたものです

00:04:36.160 --> 00:04:37.710
Ｏリング生産関数は

00:04:37.710 --> 00:04:40.160
仕事を 連動する
一連のステップ

00:04:40.160 --> 00:04:42.376
鎖の輪として
捉えるものです

00:04:42.400 --> 00:04:46.096
計画の成功のためには
すべての鎖の輪が機能する必要があります

00:04:46.120 --> 00:04:47.820
どれか１つでも壊れると

00:04:47.820 --> 00:04:51.450
計画・製品・サービスの全体が

00:04:51.450 --> 00:04:53.350
墜落することになります

00:04:53.560 --> 00:04:58.360
この危うい状況には
驚くほどポジティブな意味合いがあります

00:04:58.360 --> 00:05:01.856
鎖の輪１つの信頼性を
改善することは

00:05:01.856 --> 00:05:05.466
他の鎖の輪を
改善することの価値を

00:05:05.466 --> 00:05:07.216
高めるということです

00:05:07.240 --> 00:05:12.120
もしほとんどの鎖の輪が
脆く壊れやすいとしたら

00:05:12.120 --> 00:05:14.600
自分の鎖の輪の
信頼性が高いかは

00:05:14.600 --> 00:05:15.976
さして重要ではありません

00:05:16.000 --> 00:05:18.000
どのみち どこかが
壊れるでしょうから

00:05:18.024 --> 00:05:22.016
しかし他の鎖の輪がみんな
堅牢で高い信頼性があるとしたら

00:05:22.040 --> 00:05:25.536
自分の鎖の輪の重要性は
より本質的なものになります

00:05:25.560 --> 00:05:28.500
究極的にはすべてが
そこにかかることになります

00:05:28.500 --> 00:05:32.176
Ｏリングがチャレンジャー号にとって
要となったのは

00:05:32.200 --> 00:05:35.400
他のすべてが完璧に
機能していたからです

00:05:35.400 --> 00:05:38.100
もしチャレンジャー号が
宇宙時代における

00:05:38.100 --> 00:05:40.776
Windows 2000のような
代物だったとしたら —

NOTE Paragraph

00:05:40.776 --> 00:05:42.590
(笑)

NOTE Paragraph

00:05:42.590 --> 00:05:45.316
Ｏリングの信頼性など
問題にならなかったでしょう

00:05:45.316 --> 00:05:47.098
どうせクラッシュするんだから

NOTE Paragraph

00:05:47.122 --> 00:05:48.602
(笑)

NOTE Paragraph

00:05:49.720 --> 00:05:51.696
より一般的な話として
言えるのは

00:05:51.696 --> 00:05:55.376
我々のする仕事の大部分では 
人間がＯリングだということです

00:05:55.400 --> 00:05:58.936
ATMは確かに
現金受け払いの仕事を

00:05:58.960 --> 00:06:01.950
窓口係より速く
うまくこなしましたが

00:06:01.950 --> 00:06:04.756
それで窓口係が不要になる
ことはありませんでした

00:06:04.756 --> 00:06:07.376
むしろ窓口係の
問題解決力や

00:06:07.400 --> 00:06:10.016
顧客との関係が
重要性を増したのです

00:06:10.040 --> 00:06:13.336
同じ原理が 
建物の建設や

00:06:13.360 --> 00:06:15.896
患者の診察や手当

00:06:15.920 --> 00:06:19.056
教室一杯の高校生への
授業などにも

00:06:19.080 --> 00:06:21.536
当てはまります

00:06:21.560 --> 00:06:23.720
道具が進歩し

00:06:23.720 --> 00:06:26.286
テクノロジーが
梃子として働くことで

00:06:26.286 --> 00:06:29.976
人間の専門技術や
判断力や創造性が

00:06:30.000 --> 00:06:32.420
より重要になるのです

NOTE Paragraph

00:06:33.000 --> 00:06:35.630
それが第２の原理に繋がります

00:06:36.000 --> 00:06:37.810
「足ることなしの原理」です

00:06:38.190 --> 00:06:40.796
こうお思いかもしれません
「Ｏリングは分かった

00:06:40.796 --> 00:06:43.100
人間の仕事が重要になる

00:06:43.100 --> 00:06:46.260
機械にはできないが
必要な仕事があるんだと

00:06:46.260 --> 00:06:49.540
しかしそれは必要になる仕事の量については
何も言っていない」

00:06:49.540 --> 00:06:52.070
何かについて
生産性が十二分に高くなったら

00:06:52.070 --> 00:06:54.330
その仕事から
人々が抜けていくのは

00:06:54.330 --> 00:06:56.270
自明のことでは
ないでしょうか？

00:06:56.270 --> 00:06:57.720
1900年には

00:06:57.720 --> 00:07:00.976
アメリカの雇用の40%は
農業でした

00:07:01.000 --> 00:07:03.150
今日では 2%未満です

00:07:03.150 --> 00:07:05.430
なぜ農業従事者が
そんなに減ったんでしょう？

00:07:05.430 --> 00:07:07.796
みんなの食べる量が
減ったからではありません

NOTE Paragraph

00:07:07.796 --> 00:07:09.850
(笑)

NOTE Paragraph

00:07:09.850 --> 00:07:12.610
１世紀に渡る
農業生産性の向上により

00:07:12.610 --> 00:07:14.490
今や２百万の農家が

00:07:14.490 --> 00:07:17.846
３億２千万の国民を
食べさせられるようになったのです

00:07:17.846 --> 00:07:19.350
驚くほどの進歩ですが

00:07:19.350 --> 00:07:23.686
これは農家に多くのＯリング的な仕事が
残されたことも意味します

00:07:23.686 --> 00:07:26.616
だから確かにテクノロジーは
雇用を減らします

00:07:26.640 --> 00:07:28.486
農業はその一例に過ぎません

00:07:28.486 --> 00:07:30.790
そういう例は他にも沢山あります

00:07:31.440 --> 00:07:35.416
しかし１個の製品・サービス・ 
産業に当てはまることが

00:07:35.440 --> 00:07:38.216
経済全体にも当てはまる
わけではありません

00:07:38.240 --> 00:07:40.720
現在人々の働く産業の多く

00:07:40.720 --> 00:07:42.630
医療や健康

00:07:42.630 --> 00:07:44.760
金融や保険

00:07:44.760 --> 00:07:47.160
電子やITといったものは

00:07:47.540 --> 00:07:50.456
100年前には存在しなかったか
ごく小さなものでした

00:07:50.480 --> 00:07:53.260
私たちが多くのお金を
使っている製品

00:07:53.260 --> 00:07:55.290
エアコン SUV

00:07:55.290 --> 00:07:57.266
コンピューター 
携帯機器といったものは

00:07:57.266 --> 00:07:59.366
100年前には
とんでもなく高価か

00:07:59.366 --> 00:08:01.900
あるいは発明されても
いませんでした

00:08:01.920 --> 00:08:06.896
自動化により使える時間が増え 
可能なことの範囲が広がり

00:08:06.920 --> 00:08:10.136
新しい製品・アイデア・
サービスが生み出され

00:08:10.160 --> 00:08:11.736
それが私たちの関心を引き

00:08:11.760 --> 00:08:13.296
時間を占有し

00:08:13.320 --> 00:08:15.480
消費を促すようになりました

00:08:15.760 --> 00:08:18.976
くだらないものが多いと
思うかもしれません

00:08:19.000 --> 00:08:21.776
究極的なヨガ 冒険ツアー

00:08:21.800 --> 00:08:23.056
ポケモンGO･･･

00:08:23.080 --> 00:08:24.830
それは認めます

00:08:24.859 --> 00:08:28.456
でも人々はそういったものを欲しがり 
そのために熱心に働きます

00:08:28.480 --> 00:08:30.936
2015年の平均的な労働者が

00:08:30.936 --> 00:08:34.936
1915年当時の平均的な
生活水準を得るためには

00:08:34.960 --> 00:08:36.740
１年の３分の１

00:08:36.740 --> 00:08:40.050
17週 働くだけでよいのです

00:08:40.160 --> 00:08:42.416
しかし多くの人は
そうはしません

00:08:42.440 --> 00:08:45.915
技術の賜を
手にするために

00:08:45.915 --> 00:08:48.040
熱心に働くのです

00:08:48.480 --> 00:08:52.576
物質的豊かさで
心理的な不足感が消えることはありません

00:08:52.600 --> 00:08:55.176
経済学者ソースティン・ヴェブレンが
言うように

00:08:55.200 --> 00:08:58.160
「発明は必要の母」なのです

NOTE Paragraph

00:08:59.520 --> 00:09:00.720
さて

00:09:01.210 --> 00:09:03.200
この２つの原理
「Ｏリングの原理」と

00:09:03.200 --> 00:09:06.200
「足ることなしの原理」を
認めてもらえるなら

00:09:06.200 --> 00:09:07.656
仕事がなくならないのも

00:09:07.656 --> 00:09:09.130
うなずけるでしょう

00:09:09.140 --> 00:09:11.836
では心配することなど
何もないのでしょうか？

00:09:11.836 --> 00:09:14.536
自動化 雇用 ロボット 仕事･･･

00:09:14.560 --> 00:09:17.100
すべては自ずと
うまくいくのでしょうか？

00:09:17.120 --> 00:09:18.336
いいえ

00:09:18.360 --> 00:09:20.416
それはまた別の話です

00:09:20.440 --> 00:09:23.926
自動化は より少ない時間で
多くの仕事ができるようにすることで

00:09:23.926 --> 00:09:25.576
富を生み出します

00:09:25.600 --> 00:09:26.940
しかし その富を

00:09:26.940 --> 00:09:29.976
人間がうまく使うと保証する
経済法則はありません

00:09:30.000 --> 00:09:32.160
それは懸念すべき点です

00:09:32.800 --> 00:09:34.160
２つの国

00:09:34.160 --> 00:09:36.776
ノルウェーとサウジアラビアを
考えてみましょう

00:09:36.800 --> 00:09:38.766
どちらも石油のおかげで
豊かな国です

00:09:38.766 --> 00:09:41.976
地面の穴から お金が
吹き出しているようなものです

NOTE Paragraph

00:09:42.000 --> 00:09:43.536
(笑)

NOTE Paragraph

00:09:43.560 --> 00:09:46.310
しかし両者が国民の繁栄のために

00:09:46.310 --> 00:09:50.190
その富を同じように使っている
わけではありません

00:09:50.440 --> 00:09:53.346
ノルウェーは民主主義が
うまくいっている国です

00:09:53.346 --> 00:09:56.610
概ね国民は互いに
うまくやっており

00:09:56.610 --> 00:09:58.990
国民幸福度ランキングでは

00:09:58.990 --> 00:10:02.656
大概１位から４位の間にいます

00:10:02.680 --> 00:10:05.270
サウジは絶対君主国で

00:10:05.270 --> 00:10:08.976
多くの国民に栄達の道が
開かれてはいません

00:10:09.000 --> 00:10:12.320
国民幸福度ランキングは
35位あたりで

00:10:12.320 --> 00:10:14.616
あのように豊かな国にしては
低い順位です

00:10:14.640 --> 00:10:15.976
比較として

00:10:16.000 --> 00:10:19.230
アメリカがいるのは
12位か13位あたりです

00:10:19.270 --> 00:10:21.330
ノルウェーとサウジの違いは

00:10:21.330 --> 00:10:22.776
豊かさでも

00:10:22.800 --> 00:10:24.480
テクノロジーでもなく

00:10:24.480 --> 00:10:26.170
社会制度です

00:10:26.560 --> 00:10:29.000
ノルウェーは 機会が開かれていて

00:10:29.000 --> 00:10:33.096
経済的移動性のある社会を
作るために投資してきました

00:10:33.110 --> 00:10:35.616
サウジでは
生活水準は上がりましたが

00:10:35.616 --> 00:10:38.576
多くの国民は
不満を持っています

00:10:38.600 --> 00:10:41.210
２つの国は
どちらも豊かですが

00:10:41.210 --> 00:10:43.870
同じようにうまくやっている
わけではありません

NOTE Paragraph

00:10:43.880 --> 00:10:47.520
これは我々が
今日直面する問題

00:10:47.520 --> 00:10:50.230
自動化がもたらす問題を
思わせます

00:10:50.230 --> 00:10:52.380
問題は仕事が
なくなることではありません

00:10:52.380 --> 00:10:55.266
アメリカではグレート・リセッションの
最悪の時期から

00:10:55.266 --> 00:10:57.096
雇用が1400万増えています

00:10:57.096 --> 00:10:59.536
問題は 多くの職は

00:10:59.560 --> 00:11:00.856
良い仕事でなく

00:11:00.880 --> 00:11:02.400
多くの人には

00:11:02.400 --> 00:11:05.850
新たに生まれる良い仕事に就ける
スキルがないということです

00:11:05.850 --> 00:11:09.270
アメリカや その他の多くの
先進国における雇用の成長は

00:11:09.270 --> 00:11:11.916
両端の重みが増していく

00:11:11.916 --> 00:11:14.100
バーベルのようです

00:11:14.100 --> 00:11:15.330
一方には

00:11:15.330 --> 00:11:18.296
高学歴・高収入の仕事

00:11:18.320 --> 00:11:20.850
医師 看護師 プログラマー 
エンジニア

00:11:20.850 --> 00:11:23.946
マーケティングやセールスの
幹部社員といった仕事があります

00:11:23.946 --> 00:11:26.696
雇用は堅調で成長しています

00:11:26.720 --> 00:11:31.906
同様に 低スキル・低学歴の仕事もまた
雇用が増えています

00:11:31.906 --> 00:11:33.816
食品サービス

00:11:33.840 --> 00:11:36.096
清掃 警備

00:11:36.120 --> 00:11:37.680
介護などです

00:11:38.080 --> 00:11:41.476
他方で 中学歴・中収入な

00:11:41.476 --> 00:11:45.256
中流の仕事が
縮小しています

00:11:45.280 --> 00:11:49.096
工員や職人といった
労働者や

00:11:49.120 --> 00:11:52.096
事務やセールスといった
事務職です

00:11:52.120 --> 00:11:54.130
この中間部の縮小は

00:11:54.130 --> 00:11:55.736
不思議なことではありません

00:11:55.736 --> 00:11:57.916
そういった中間的スキルの
仕事の多くは

00:11:57.916 --> 00:12:00.716
よく分かっている
ルールや手順に従っており

00:12:00.716 --> 00:12:03.256
それがソフトウェア化されて

00:12:03.280 --> 00:12:06.140
コンピューターで実行されるように
なっているからです

00:12:06.200 --> 00:12:09.140
この現象が作り出すのは

00:12:09.140 --> 00:12:12.136
経済学者が「雇用の二極化」
と呼ぶ問題で

00:12:12.160 --> 00:12:14.776
経済の梯子の段が
取りのけられ

00:12:14.800 --> 00:12:16.616
中間層が縮小し

00:12:16.640 --> 00:12:19.776
社会の階層化が
進むということです

00:12:19.800 --> 00:12:23.360
高収入・高学歴の
知的職業に就く人が

00:12:23.360 --> 00:12:25.296
興味深い仕事をする一方で

00:12:25.320 --> 00:12:28.030
多数の人は低収入の仕事をし

00:12:28.030 --> 00:12:34.280
その主な責務は 裕福な層が快適で
健康的であるように世話をすることなのです

00:12:34.280 --> 00:12:36.996
これは私の考える
進歩の姿ではありません

00:12:36.996 --> 00:12:38.960
皆さんもそうでしょう

NOTE Paragraph

00:12:39.440 --> 00:12:41.456
しかし心強い話もあります

00:12:41.480 --> 00:12:46.080
私たちは過去に同じように大きな
経済的転換に直面しており

00:12:46.080 --> 00:12:49.056
それをうまく
切り抜けてきたのです

00:12:49.080 --> 00:12:53.590
1800年代末から
1900年代初めにかけて

00:12:53.590 --> 00:12:58.576
自動化によって農業の仕事が
大幅に減りました

00:12:58.600 --> 00:13:00.590
トラクターを思い出してください

00:13:00.590 --> 00:13:03.956
農業州では大規模な失業の危機に
直面しました

00:13:03.956 --> 00:13:07.310
１世代の若者達が
農場で必要とされなくなり

00:13:07.310 --> 00:13:10.020
工業に従事できる
準備もできていません

00:13:10.080 --> 00:13:11.656
この問題に対して

00:13:11.680 --> 00:13:13.476
彼らは大胆な施策を取り

00:13:13.476 --> 00:13:15.710
若い世代全体に

00:13:15.710 --> 00:13:18.060
16歳まで学校に残り

00:13:18.060 --> 00:13:21.330
教育を受けるよう
求めたのです

00:13:21.600 --> 00:13:23.576
これはハイスクール運動と呼ばれ

00:13:23.600 --> 00:13:26.416
極めて高く付くことでした

00:13:26.440 --> 00:13:28.696
学校への投資が
必要なだけでなく

00:13:28.720 --> 00:13:31.416
その若者達が
働けなくなるからです

00:13:31.440 --> 00:13:34.340
これはアメリカが20世紀にした

00:13:34.340 --> 00:13:36.976
最良の投資であったことが
分かりました

00:13:37.000 --> 00:13:40.266
世界でも最もスキルの高い
柔軟で生産的な労働力を

00:13:40.266 --> 00:13:42.056
手にすることになったからです

00:13:42.080 --> 00:13:44.810
これがいかにうまくいったか
理解するには

00:13:44.810 --> 00:13:48.936
1899年の労働者を現代に
連れてきたところを想像するといいです

00:13:48.936 --> 00:13:51.816
いかに頑丈な体を持ち
良い性格をしていたとしても

00:13:51.840 --> 00:13:55.616
その多くは基本的な読み書きや
数理的なスキルを欠いていて

00:13:55.640 --> 00:13:58.160
最も単純な仕事以外はできず

00:13:58.160 --> 00:14:01.380
大部分が雇用不適格でしょう

NOTE Paragraph

00:14:01.840 --> 00:14:05.410
この例が示しているのは
我々の制度

00:14:05.410 --> 00:14:07.376
特に学校の優位性であり

00:14:07.400 --> 00:14:09.936
それが技術的繁栄の実りを

00:14:09.960 --> 00:14:12.140
収穫できるように
してくれたのです

NOTE Paragraph

00:14:12.140 --> 00:14:14.956
何も心配することはない
などと言うのは馬鹿げています

00:14:14.956 --> 00:14:17.620
我々がやり方を間違うことは
十分あり得ます

00:14:17.640 --> 00:14:20.800
もしアメリカが
１世紀前のハイスクール運動で

00:14:20.800 --> 00:14:23.416
学校やスキルに
投資していなければ

00:14:23.440 --> 00:14:25.010
これほど繁栄はしておらず

00:14:25.010 --> 00:14:28.306
経済移動性も低く 
ずっと不幸な社会になっていたでしょう

00:14:28.306 --> 00:14:31.446
しかし我々の運命は閉ざされている
と言うのも愚かなことです

00:14:31.446 --> 00:14:33.170
運命を決めるのは
機械ではなく

00:14:33.170 --> 00:14:34.820
マーケットでさえありません

00:14:34.820 --> 00:14:38.200
運命を決めるのは 我々自身と 
我々の制度なのです

NOTE Paragraph

00:14:38.360 --> 00:14:40.760
私はパラドックスから
話を始めました

00:14:40.760 --> 00:14:43.530
機械がますます人間の仕事を
するようになっているのに

00:14:43.530 --> 00:14:45.730
どうして人間の労働やスキルが

00:14:45.730 --> 00:14:47.266
余分なものにならないのか？

00:14:47.266 --> 00:14:49.456
経済的・社会的な地獄への道は

00:14:49.456 --> 00:14:53.630
我々自身の偉大な発明によって敷かれているのは
自明なことではないのか？

NOTE Paragraph

00:14:53.900 --> 00:14:58.216
歴史はこのパラドックスに
繰り返し答えてきました

00:14:58.240 --> 00:15:01.760
答えの１つは
テクノロジーが梃子として働き

00:15:01.760 --> 00:15:04.936
人間の専門知識 判断力 創造性の

00:15:04.936 --> 00:15:08.056
付加価値や重要性を
高めるということ

00:15:08.080 --> 00:15:09.500
Ｏリングです

00:15:09.880 --> 00:15:12.616
もう１つの答えは 
人間の尽きることのない創意と

00:15:12.640 --> 00:15:14.096
果てなき欲求のため

00:15:14.120 --> 00:15:16.456
決して満ち足りることが
ないということ

00:15:16.480 --> 00:15:19.220
常に新たな仕事があるのです

00:15:19.960 --> 00:15:23.000
技術が変化する速さへの対応は

00:15:23.000 --> 00:15:24.776
難しい問題を生み出し

00:15:24.800 --> 00:15:27.120
そのことは
労働市場の二極化や

00:15:27.120 --> 00:15:31.140
それが経済的移動性を脅かす様に
見て取れます

00:15:31.150 --> 00:15:34.140
この困難を越えることは
自動的に出来ることでも

00:15:34.140 --> 00:15:35.800
コストなしに
できることでもなく

00:15:35.800 --> 00:15:37.436
容易ではありませんが

00:15:37.436 --> 00:15:39.080
可能なことです

00:15:39.120 --> 00:15:40.936
そして明るい話もあります

00:15:40.960 --> 00:15:42.970
驚くべき生産性のお陰で

00:15:42.970 --> 00:15:44.376
我々は豊かです

00:15:44.400 --> 00:15:47.536
アメリカが100年前に
ハイスクール運動でしたように

00:15:47.560 --> 00:15:50.896
我々自身や子供達に投資することは
もちろん可能です

00:15:50.920 --> 00:15:53.700
むしろ しないことは
許されないでしょう

NOTE Paragraph

00:15:53.960 --> 00:15:55.896
こう思っているかもしれません

00:15:55.920 --> 00:15:58.510
オートー先生は 
明るい話を

00:15:58.510 --> 00:16:00.550
遠い昔や 少し前や

00:16:00.550 --> 00:16:03.036
現在については
しているかもしれないけど

00:16:03.036 --> 00:16:05.296
未来のことは
言っていない

00:16:05.320 --> 00:16:09.256
今回が違うことは
みんな知っているから

00:16:09.280 --> 00:16:12.096
今回は違うんですよね？

00:16:12.120 --> 00:16:14.016
もちろん今回は違います

00:16:14.040 --> 00:16:15.946
毎回違っているのです

00:16:15.946 --> 00:16:19.376
過去200年間に
数え切れないくらい

00:16:19.400 --> 00:16:22.176
学者や活動家達が
警告してきました

00:16:22.200 --> 00:16:25.736
仕事がなくなり 
我々は用済みになると

00:16:25.760 --> 00:16:30.376
たとえばラッダイトが
1800年代初めに

00:16:30.400 --> 00:16:33.336
米国労働長官ジェームス・デイヴィスが

00:16:33.360 --> 00:16:35.740
1920年代半ばに

00:16:35.740 --> 00:16:41.136
ノーベル賞経済学者ワシリー・レオンチェフが
1982年に言っています

00:16:41.136 --> 00:16:44.256
そしてもちろん
現在の多くの学者

00:16:44.280 --> 00:16:46.340
評論家 科学技術者

00:16:46.340 --> 00:16:48.890
マスメディアの人々が
言っています

NOTE Paragraph

00:16:49.600 --> 00:16:53.250
そのような予言は
私には傲慢に思えます

00:16:53.500 --> 00:16:56.596
そういった自称予言者達は 
実質的にこう言っているのです

00:16:56.596 --> 00:16:59.936
「人々が将来どんな仕事をするのか
私に考え付かないなら

00:16:59.960 --> 00:17:02.856
世の人々にも 子孫達にも

00:17:02.880 --> 00:17:04.875
考え付かないだろう」

00:17:05.760 --> 00:17:09.134
人類の創意に対して
そのような賭けをする肝っ玉は

00:17:09.134 --> 00:17:10.896
私にはありません

00:17:10.920 --> 00:17:13.896
何百年先に人々が
どんな仕事をしているか

00:17:13.920 --> 00:17:15.709
私には分かりません

00:17:15.709 --> 00:17:19.170
しかし未来は私の想像力に
かかっているわけではありません

00:17:19.280 --> 00:17:22.649
私が1900年の
アイオワ州の農民で

00:17:22.649 --> 00:17:26.826
21世紀から経済学者が
私の畑にテレポートしてきて言ったとします

00:17:26.826 --> 00:17:29.450
「ねえ お百姓のオートーさん

00:17:30.000 --> 00:17:31.776
この先100年の

00:17:31.776 --> 00:17:34.000
生産性向上によって

00:17:34.000 --> 00:17:36.280
農業雇用は40%から

00:17:36.280 --> 00:17:38.600
2%に減るんだよ

00:17:39.220 --> 00:17:43.020
他の38%の人たちは
何を仕事にしていると思うね？」

00:17:43.260 --> 00:17:46.070
私はたぶん
こうは言わないでしょう

00:17:46.070 --> 00:17:49.096
「ああ そりゃアプリ開発とか 
放射線医療とか

00:17:49.120 --> 00:17:52.316
ヨガのインストラクターとか 
絵文字デザインとかかな」

NOTE Paragraph

00:17:52.316 --> 00:17:53.510
(笑)

NOTE Paragraph

00:17:53.510 --> 00:17:55.760
私には見当が付かないでしょう

00:17:55.760 --> 00:17:58.336
しかし こう言える知恵が
あればと思います

00:17:58.360 --> 00:18:02.376
「すごいね 農業人口が95%減って

00:18:02.400 --> 00:18:04.536
食糧不足にならないなんて

00:18:04.560 --> 00:18:06.976
すごい進歩だ

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その繁栄によって

00:18:08.730 --> 00:18:12.590
人類が何かすごいことを
やってくれることを望むよ」

NOTE Paragraph

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そして概ねそうなっていると
私は思います

NOTE Paragraph

00:18:17.690 --> 00:18:19.216
ありがとうございました

NOTE Paragraph

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(拍手)