WEBVTT

00:00:00.509 --> 00:00:04.841
私が関わった訴訟について
お話しします

00:00:04.841 --> 00:00:08.404
スティーブ・タイタス
という男性の事件です

00:00:08.404 --> 00:00:11.433
タイタスは
レストランの支配人で

00:00:11.433 --> 00:00:15.523
当時31歳で
ワシントン州シアトル在住でした

00:00:15.523 --> 00:00:17.418
グレッチェンという婚約者がいて

00:00:17.418 --> 00:00:20.366
運命の人との結婚を
間近に控えていました

00:00:20.366 --> 00:00:22.650
ある夜 二人は

00:00:22.650 --> 00:00:25.655
おしゃれなレストランで
食事を楽しみ

00:00:25.655 --> 00:00:27.303
家に戻る途中

00:00:27.303 --> 00:00:30.253
警官に止められました

00:00:30.253 --> 00:00:33.570
その日の夕方
女性ヒッチハイカーが

00:00:33.570 --> 00:00:37.457
男にレイプされる事件が
あったのですが

00:00:37.457 --> 00:00:40.863
タイタスの車は
レイプ犯の車と似たところがあり

00:00:40.863 --> 00:00:44.457
タイタス自身も 犯人と
どこか似ているというのです

00:00:44.457 --> 00:00:47.035
そこで 警察は
タイタスの写真を撮り

00:00:47.035 --> 00:00:49.802
ほかの人の写真と一緒に

00:00:49.802 --> 00:00:51.962
被害者に見せました

00:00:51.962 --> 00:00:54.122
すると 被害者は
タイタスの写真を指差し

00:00:54.122 --> 00:00:57.743
「この人が一番近い」
と言ったのです

00:00:57.743 --> 00:01:01.631
警察と検察は
逮捕・起訴に踏み切りました

00:01:01.631 --> 00:01:04.972
スティーブ・タイタスが
強姦罪で公判に付されたとき

00:01:04.972 --> 00:01:07.068
レイプの被害者は
証言台に立ち

00:01:07.068 --> 00:01:11.410
こう言いました
「この人で 絶対に間違いない」

00:01:11.410 --> 00:01:14.336
タイタスは
有罪判決を受けました

00:01:14.336 --> 00:01:16.310
彼は無実だと主張し

00:01:16.310 --> 00:01:18.892
家族も
陪審に叫び声をあげ

00:01:18.892 --> 00:01:21.763
婚約者は
その場に泣き崩れました

00:01:21.763 --> 00:01:25.158
そして タイタスは
刑務所へ送られます

00:01:25.158 --> 00:01:28.616
このとき あなたなら
どうしますか？

00:01:28.616 --> 00:01:30.252
どうしますか？

00:01:30.252 --> 00:01:34.020
タイタスは 司法への信頼を
完全に失いますが

00:01:34.020 --> 00:01:36.052
あることを思いつきます

00:01:36.052 --> 00:01:38.483
地元の新聞社に電話し

00:01:38.483 --> 00:01:41.870
ある調査ジャーナリストの
協力を得ることに成功します

00:01:41.870 --> 00:01:46.606
そして そのジャーナリストは
真犯人にたどり着きました

00:01:46.606 --> 00:01:49.959
その男は 最終的に
このレイプを自白し

00:01:49.959 --> 00:01:53.251
この地区で
50件ものレイプをしていたと

00:01:53.251 --> 00:01:54.583
考えられています

00:01:54.583 --> 00:01:57.757
この情報が
裁判所に提出され

00:01:57.757 --> 00:02:00.693
タイタスは
自由の身となりました

00:02:00.693 --> 00:02:04.724
これで 一件落着し
すべて終わりとなるべきでした

00:02:04.724 --> 00:02:05.847
これで 一件落着し
すべて終わりとなるべきでした

00:02:05.847 --> 00:02:08.367
タイタスにしても
これは 最悪の一年で

00:02:08.367 --> 00:02:12.203
冤罪との闘いも ようやく終わった
と思ったはずです

00:02:12.203 --> 00:02:14.250
でも そうは行きませんでした

00:02:14.250 --> 00:02:16.928
タイタスは
かなり憤慨していました

00:02:16.928 --> 00:02:19.508
仕事を失い
それを取り戻すこともできず

00:02:19.508 --> 00:02:21.351
婚約者まで失いました

00:02:21.351 --> 00:02:24.257
彼の しつこい怒りに
婚約者は耐えられなかったのです

00:02:24.257 --> 00:02:26.403
タイタスは
貯金も尽き

00:02:26.403 --> 00:02:29.261
裁判を起こすことを
決意しました

00:02:29.261 --> 00:02:31.542
彼の味わった苦痛の
責任を負うべき―

00:02:31.542 --> 00:02:33.861
警察などを
相手取った裁判です

00:02:33.861 --> 00:02:38.574
私がこの件に関わったのは
その時からで

00:02:38.574 --> 00:02:40.535
私が解明しようとしたのは

00:02:40.535 --> 00:02:42.609
なぜ 被害者の証言が

00:02:42.609 --> 00:02:44.137
「この人が一番近い」から

00:02:44.137 --> 00:02:48.887
「この人で 絶対に間違いない」に
変わったのかです

00:02:48.887 --> 00:02:52.166
タイタスは
この裁判にのめりこみ

00:02:52.166 --> 00:02:55.200
寝ても覚めても
このことばかり考えていました

00:02:55.200 --> 00:02:59.351
裁判所に出廷する
ほんの数日前

00:02:59.351 --> 00:03:01.570
タイタスは
朝 目覚めると

00:03:01.570 --> 00:03:03.378
身もよじれるほどの
激痛に襲われ

00:03:03.378 --> 00:03:06.072
ストレス性の心臓発作で
亡くなりました

00:03:06.072 --> 00:03:09.259
35歳でした

00:03:09.259 --> 00:03:14.069
私が タイタスの事件を
頼まれたのは

00:03:14.069 --> 00:03:16.584
私が心理科学者で

00:03:16.584 --> 00:03:20.411
記憶の研究をしているからです
もう数十年になります

00:03:20.411 --> 00:03:23.800
飛行機で乗り合わせた人と―

00:03:23.800 --> 00:03:25.896
ここへ来る時にも
ありましたが―

00:03:25.896 --> 00:03:27.726
飛行機で乗り合わせた人と―

00:03:27.726 --> 00:03:30.771
「お仕事は何を？」という
やりとりをしますよね

00:03:30.771 --> 00:03:32.222
「記憶の研究」と私が答えると

00:03:32.222 --> 00:03:35.602
たいてい
「人の名前を覚えられない」とか

00:03:35.602 --> 00:03:38.401
「アルツハイマー病や
記憶障害の親戚がいる」という

00:03:38.416 --> 00:03:40.481
話になります

00:03:40.481 --> 00:03:42.697
でも 私は「忘れる」ことは
研究していないのです

00:03:42.697 --> 00:03:46.202
でも 私は「忘れる」ことは
研究していないのです

00:03:46.202 --> 00:03:49.204
私の研究はその反対で
「記憶する」こと―

00:03:49.204 --> 00:03:51.957
起きてもいないことを
覚えていることや

00:03:51.957 --> 00:03:53.922
実際とは違う風に
覚えていることを

00:03:53.922 --> 00:03:55.947
研究しています

00:03:55.947 --> 00:04:00.683
私は 虚偽記憶を
研究しているのです

00:04:00.683 --> 00:04:04.990
残念ながら
スティーブ・タイタス以外にも

00:04:04.990 --> 00:04:09.295
他人の虚偽記憶によって
有罪とされた人たちがいます

00:04:09.295 --> 00:04:12.603
米国の あるプロジェクトで

00:04:12.603 --> 00:04:14.855
無実の罪に問われた―

00:04:14.855 --> 00:04:18.789
300名の情報を集めました

00:04:18.789 --> 00:04:22.684
犯していない罪で有罪とされた
この300名の被告は

00:04:22.684 --> 00:04:27.984
刑務所で
10年 20年 30年を過ごし

00:04:27.984 --> 00:04:30.411
今になって
DNA鑑定により

00:04:30.411 --> 00:04:33.327
無実が証明されたのです

00:04:33.327 --> 00:04:35.848
これらを分析した結果

00:04:35.848 --> 00:04:37.989
４分の３のケースは

00:04:37.989 --> 00:04:43.600
目撃証人の
「誤った記憶」が原因でした

00:04:43.600 --> 00:04:44.863
なぜ こんなことに？

00:04:44.863 --> 00:04:48.314
これら無実の人たちを
有罪とした陪審員や

00:04:48.314 --> 00:04:50.598
タイタスを有罪とした
陪審員をはじめ

00:04:50.598 --> 00:04:52.839
多くの人が
記憶というものを

00:04:52.839 --> 00:04:54.486
記録装置と同一視しています

00:04:54.486 --> 00:04:56.743
人は 情報を
そのまま記録しておいて

00:04:56.743 --> 00:04:59.390
それを呼び出して再生し

00:04:59.390 --> 00:05:02.817
質問に答えたり
イメージを認識したりするというわけです

00:05:02.817 --> 00:05:04.980
しかし 何十年にもわたる
心理学研究が

00:05:04.980 --> 00:05:08.133
そうではないことを
証明しています

00:05:08.133 --> 00:05:10.563
私たちの記憶は
組み立てられるもので

00:05:10.563 --> 00:05:12.132
再構成もされます

00:05:12.132 --> 00:05:15.613
記憶は むしろ
ウィキペディアのようなものです

00:05:15.613 --> 00:05:20.726
自ら 内容を書き換えることもできれば
他人が書き換えることもできます

00:05:20.726 --> 00:05:25.975
私が この記憶の構成過程の
研究に着手したのは

00:05:25.975 --> 00:05:28.390
1970年代でした

00:05:28.390 --> 00:05:32.813
そのとき行った実験では
被験者に

00:05:32.813 --> 00:05:35.318
模擬犯罪や事故の現場を見せ

00:05:35.318 --> 00:05:38.836
覚えていることについて
質問をしました

00:05:38.836 --> 00:05:42.775
ある研究では
模擬事故を見せ

00:05:42.775 --> 00:05:44.053
こう聞きました

00:05:44.053 --> 00:05:46.917
車がぶつかった時
速度はどれくらいだったか？

00:05:46.917 --> 00:05:48.551
別の人たちには
こう聞きました

00:05:48.551 --> 00:05:52.240
車が激突したとき
速度はどれくらいだったか？

00:05:52.240 --> 00:05:55.242
「激突」という言葉で
質問をしたとき

00:05:55.242 --> 00:05:58.527
証人たちが証言する
車の速度は上がり

00:05:58.527 --> 00:06:02.524
さらに「激突」という言葉を
使うことによって

00:06:02.524 --> 00:06:05.384
ある証言を得る確率が
上がりました

00:06:05.384 --> 00:06:08.451
事故現場で ガラスが割れているのを
見たというのです

00:06:08.451 --> 00:06:12.230
実際は ガラスは
割れていなかったのにです

00:06:12.230 --> 00:06:15.119
別の研究では
車が―

00:06:15.119 --> 00:06:18.779
一時停止の標識がある交差点を
突っ切る模擬事故を見せました

00:06:18.779 --> 00:06:23.711
徐行の標識があったことを
ほのめかす質問をすると

00:06:23.711 --> 00:06:27.560
多くの証人は
交差点にあったのは 徐行の標識で

00:06:27.560 --> 00:06:31.017
一時停止の標識ではなかったと
言いました

00:06:31.017 --> 00:06:33.206
皆さんは
こうお考えかもしれませんね

00:06:33.206 --> 00:06:34.529
これはビデオだから

00:06:34.529 --> 00:06:36.457
特に緊迫した状況ではないと

00:06:36.457 --> 00:06:39.191
では もっと緊迫した状況なら

00:06:39.191 --> 00:06:42.142
同じ間違いは
起こらないのでしょうか？

00:06:42.142 --> 00:06:45.233
答えは 私たちが
ほんの数ヶ月前に

00:06:45.233 --> 00:06:47.537
発表した論文に
載っています

00:06:47.537 --> 00:06:50.301
この研究では
通常と違い

00:06:50.301 --> 00:06:55.933
被験者に 強いストレスのかかる経験を
させたのです

00:06:55.933 --> 00:06:58.162
この研究の被験者は

00:06:58.162 --> 00:07:00.672
米軍に属し

00:07:00.672 --> 00:07:05.097
悲惨な訓練に
耐えている人たちでした

00:07:05.097 --> 00:07:07.879
戦争捕虜として
とらえられることが

00:07:07.879 --> 00:07:11.797
どんなものか
学ぶための訓練です

00:07:11.797 --> 00:07:14.227
この訓練の過程で

00:07:14.227 --> 00:07:17.756
軍人たちは 30分間

00:07:17.756 --> 00:07:22.842
肉体的虐待を含む
攻撃的で厳しい尋問を受けます

00:07:22.842 --> 00:07:25.659
その後
尋問をした人を

00:07:25.659 --> 00:07:28.682
特定するよう指示されます

00:07:28.682 --> 00:07:32.505
私たちが 別の人物を暗示する
情報を与えると

00:07:32.505 --> 00:07:35.283
私たちが 別の人物を暗示する
情報を与えると

00:07:35.283 --> 00:07:39.320
多くの人が
尋問した人を間違えました

00:07:39.320 --> 00:07:43.155
しばしば
実際の人とは

00:07:43.155 --> 00:07:46.259
似ても似つかない人を
選んだりもしました

00:07:46.259 --> 00:07:48.560
これらの研究が
示しているのは

00:07:48.560 --> 00:07:52.420
経験した事実について
誤った情報を与えると

00:07:52.420 --> 00:07:55.800
他人の記憶を
歪曲したり ねつ造したり

00:07:55.800 --> 00:08:01.455
変えてしまうことが
可能だということです

00:08:01.455 --> 00:08:03.655
現実世界は

00:08:03.655 --> 00:08:06.546
誤った情報で
あふれています

00:08:06.546 --> 00:08:07.906
私たちが
誤情報に触れるのは

00:08:07.906 --> 00:08:10.822
誘導尋問をされるとき
だけではありません

00:08:10.822 --> 00:08:13.269
他の証人と話していて

00:08:13.269 --> 00:08:16.302
相手が意識的に
あるいは 何の気なしに言う―

00:08:16.302 --> 00:08:18.439
情報が誤っていることもあります

00:08:18.439 --> 00:08:23.169
また 経験していても
おかしくないことを

00:08:23.169 --> 00:08:25.962
メディアの報道を通じて
見ることによっても

00:08:25.962 --> 00:08:30.312
私たちの記憶は
歪められてしまう可能性があります

00:08:30.312 --> 00:08:34.100
1990年代
私たちは

00:08:34.100 --> 00:08:38.783
さらに危険な「記憶」を
目にするようになりました

00:08:38.783 --> 00:08:41.879
何らかの問題で
心理療法を受けた患者が―

00:08:41.879 --> 00:08:44.793
うつや摂食障害などの治療です―

00:08:44.793 --> 00:08:47.546
治療を終えると

00:08:47.546 --> 00:08:50.207
別の問題を抱えるように
なっていたのです

00:08:50.207 --> 00:08:53.908
おぞましい虐待に関する
常軌を逸した記憶です

00:08:53.908 --> 00:08:55.891
悪魔崇拝儀式や

00:08:55.891 --> 00:09:00.588
本当に異様な要素を
含んでいることもあります

00:09:00.588 --> 00:09:03.142
心理療法を終えた
ある女性は

00:09:03.142 --> 00:09:05.570
何年もの間
儀礼虐待を受け

00:09:05.570 --> 00:09:09.472
妊娠までさせられ
堕胎もしたと

00:09:09.472 --> 00:09:12.038
信じ切っていました

00:09:12.038 --> 00:09:14.397
でも その話を裏付けるような

00:09:14.397 --> 00:09:16.423
傷跡や その他の身体的証拠は
ありませんでした

00:09:16.423 --> 00:09:19.304
傷跡や その他の身体的証拠は
ありませんでした

00:09:19.304 --> 00:09:22.312
こうしたケースを
調査し始めて

00:09:22.312 --> 00:09:23.762
思いました

00:09:23.762 --> 00:09:26.090
この奇妙な記憶は
どこから来るのだろう？

00:09:26.090 --> 00:09:30.477
そして
ほとんどのケースで

00:09:30.477 --> 00:09:35.968
ある特殊な心理療法が
行われていたことに気づきました

00:09:35.968 --> 00:09:37.567
そこで思ったのです

00:09:37.567 --> 00:09:40.955
この心理療法で
行われていること―

00:09:40.955 --> 00:09:43.839
想像訓練や

00:09:43.839 --> 00:09:45.896
夢判断

00:09:45.896 --> 00:09:48.028
一部の例では
催眠や

00:09:48.028 --> 00:09:51.846
虚偽の情報にさらすこと―

00:09:51.846 --> 00:09:54.633
こうしたことが
患者に

00:09:54.633 --> 00:09:57.310
奇妙で ありえない記憶を
作らせているのではないか？

00:09:57.310 --> 00:10:00.241
奇妙で ありえない記憶を
作らせているのではないか？

00:10:00.241 --> 00:10:02.400
そこで 私は実験を企画し

00:10:02.400 --> 00:10:07.425
この心理療法で使われる
プロセスを検証できるようにし

00:10:07.425 --> 00:10:10.498
このような内容豊かな虚偽記憶が

00:10:10.498 --> 00:10:14.049
どうやって形成されるか
研究しました

00:10:14.049 --> 00:10:16.457
最初に行った実験の一つで

00:10:16.457 --> 00:10:18.810
私たちは
暗示を使いました

00:10:18.810 --> 00:10:22.873
問題になっていた心理療法から
着想した手法で

00:10:22.873 --> 00:10:24.983
ある種の暗示を使って
被験者に

00:10:24.983 --> 00:10:26.835
偽りの記憶を植え付けました

00:10:26.835 --> 00:10:29.912
子どものとき
５歳か６歳ごろ

00:10:29.912 --> 00:10:32.163
ショッピング・モールで
迷子になって

00:10:32.163 --> 00:10:34.663
怖くて泣いていたら

00:10:34.663 --> 00:10:37.177
お年寄りに助けられ

00:10:37.177 --> 00:10:39.029
家族と再会できたという
記憶です

00:10:39.029 --> 00:10:41.637
その結果
私たちは この記憶を

00:10:41.637 --> 00:10:45.743
被験者の４分の１に
植え付けることに成功しました

00:10:45.743 --> 00:10:47.748
こうお考えかもしれませんね

00:10:47.748 --> 00:10:50.094
あまりストレスのある記憶ではないと

00:10:50.094 --> 00:10:53.463
でも 我々研究者は

00:10:53.463 --> 00:10:56.221
もっと非日常的で
もっとストレスのかかる―

00:10:56.221 --> 00:10:59.136
内容豊かな虚偽記憶の植え付けも
行っています

00:10:59.136 --> 00:11:01.675
テネシー州で行われた研究で

00:11:01.675 --> 00:11:04.091
研究者が植えつけた虚偽記憶は

00:11:04.091 --> 00:11:06.665
子どものとき
おぼれかけて

00:11:06.665 --> 00:11:09.172
救命士に助けられた
というものでした

00:11:09.172 --> 00:11:11.475
カナダの研究で

00:11:11.475 --> 00:11:13.999
研究者が植えつけた虚偽記憶は

00:11:13.999 --> 00:11:15.227
子どものときに

00:11:15.227 --> 00:11:18.957
どう猛な動物に
襲われたような

00:11:18.957 --> 00:11:20.339
ひどい経験で

00:11:20.339 --> 00:11:23.761
この植え付けは 被験者の約半分で
成功しました

00:11:23.761 --> 00:11:26.113
イタリアで行われた研究で

00:11:26.113 --> 00:11:28.771
研究者が植えつけた虚偽記憶は

00:11:28.771 --> 00:11:33.983
子どものとき
悪魔憑きを目撃したというものでした

00:11:33.983 --> 00:11:36.190
こうした実験は
まるで

00:11:36.190 --> 00:11:39.929
科学という名のもとに
被験者にトラウマを与えているようですが

00:11:39.929 --> 00:11:41.529
科学という名のもとに
被験者にトラウマを与えているようですが

00:11:41.529 --> 00:11:46.167
私たちの研究は
研究倫理委員会の精査を受け

00:11:46.167 --> 00:11:48.142
承認されたものだということを
付け加えておきます

00:11:48.142 --> 00:11:50.484
承認されたものだということを
付け加えておきます

00:11:50.484 --> 00:11:53.557
実験において
被験者は

00:11:53.557 --> 00:11:56.641
一時的に不快感を
抱くかもしれないが

00:11:56.641 --> 00:12:00.541
これらの研究は
記憶の過程を理解し

00:12:00.541 --> 00:12:03.648
世界各地で起こっている
記憶の悪用問題を解決するために

00:12:03.648 --> 00:12:06.994
世界各地で起こっている
記憶の悪用問題を解決するために

00:12:06.994 --> 00:12:10.287
必要だと判断されたのです

00:12:10.287 --> 00:12:13.325
驚いたことに

00:12:13.325 --> 00:12:16.754
私がこの研究成果を発表し

00:12:16.754 --> 00:12:20.649
ある特定の心理療法に
異論を唱え始めると

00:12:20.649 --> 00:12:24.629
困った問題が起きました

00:12:24.629 --> 00:12:29.530
ひどい嫌がらせを受けたのです
主に自分たちへの攻撃と捉えた―

00:12:29.530 --> 00:12:31.206
抑圧記憶のセラピストからで

00:12:31.206 --> 00:12:34.734
影響を受けた患者からもです

00:12:34.734 --> 00:12:37.671
私は 時には
武装した護衛をつけて

00:12:37.671 --> 00:12:39.576
招待講演にのぞみました

00:12:39.576 --> 00:12:43.793
私の解雇を狙った
手紙攻撃キャンペーンも展開されました

00:12:43.793 --> 00:12:45.774
でも おそらく
最悪だったのは

00:12:45.774 --> 00:12:48.541
ある女性の無実を
私が主張したことです

00:12:48.541 --> 00:12:50.965
彼女は成人した娘から

00:12:50.965 --> 00:12:53.801
虐待者として責められていました

00:12:53.801 --> 00:12:57.218
娘は 母親を
性的虐待で非難していましたが

00:12:57.218 --> 00:12:59.077
その根拠は
抑圧された記憶でした

00:12:59.077 --> 00:13:01.960
告発をした娘は
実際に 自分の話を

00:13:01.960 --> 00:13:05.394
カメラの前で語り
それを公開していました

00:13:05.394 --> 00:13:07.903
私は 疑念を抱き

00:13:07.903 --> 00:13:10.203
調査を始めて

00:13:10.203 --> 00:13:14.686
最終的に
母親が無実であると

00:13:14.686 --> 00:13:16.975
確信できる情報を
見つけました

00:13:16.975 --> 00:13:19.936
私が これに関する
暴露記事を発表すると

00:13:19.936 --> 00:13:23.380
告発していた娘は
そのすぐ後に

00:13:23.380 --> 00:13:24.901
訴訟を起こしました

00:13:24.901 --> 00:13:27.256
彼女の名前は
完全に伏せていたのですが

00:13:27.256 --> 00:13:31.618
名誉棄損とプライバシー侵害で
私を訴えたのです

00:13:31.618 --> 00:13:34.341
ほぼ５年もの間

00:13:34.341 --> 00:13:40.893
泥沼の裁判をし
不快な思いもしましたが

00:13:40.893 --> 00:13:44.567
ついに
ようやく終わって

00:13:44.567 --> 00:13:46.991
私も自分の仕事に
戻れました

00:13:46.991 --> 00:13:49.476
でも その過程で

00:13:49.476 --> 00:13:52.130
私は アメリカの
悪しき風潮に巻き込まれました

00:13:52.130 --> 00:13:54.237
世間で大論争になっていることを

00:13:54.237 --> 00:13:58.836
話題にしただけで
科学者が訴えられるという風潮です

00:13:58.836 --> 00:14:02.194
研究に戻った私に
こんな疑問が湧きました

00:14:02.194 --> 00:14:04.592
誰かの心に
虚偽記憶を植えたら

00:14:04.592 --> 00:14:06.436
影響はあるのだろうか？

00:14:06.436 --> 00:14:08.395
その後の考え方や行動に

00:14:08.395 --> 00:14:10.496
影響を与えるんだろうか？

00:14:10.496 --> 00:14:12.523
まず 試した虚偽記憶は

00:14:12.523 --> 00:14:15.849
子どものとき ある食べ物で
具合が悪くなったというものです

00:14:15.849 --> 00:14:18.848
ゆで卵やピクルス
苺のアイスを使いました

00:14:18.848 --> 00:14:22.038
この虚偽記憶を植えたあと

00:14:22.038 --> 00:14:24.489
被験者を戸外の食事に招くと
これらの食べ物を

00:14:24.489 --> 00:14:26.749
以前ほど食べなくなることが
わかりました

00:14:26.749 --> 00:14:30.622
虚偽記憶は 悪いことや
不快なことである必要はありません

00:14:30.622 --> 00:14:32.980
アスパラガスなどの
健康的な食べ物にまつわる―

00:14:32.980 --> 00:14:36.001
心が温まるような記憶を
植えつければ

00:14:36.001 --> 00:14:39.476
アスパラガスを
もっと食べたくなるようにできます

00:14:39.476 --> 00:14:41.850
これらの研究が
示しているのは

00:14:41.850 --> 00:14:43.965
虚偽記憶は
植え付けが可能で

00:14:43.965 --> 00:14:45.378
その記憶が根付いた後は

00:14:45.378 --> 00:14:50.463
長期に渡って
行動に影響を及ぼすということです

00:14:50.463 --> 00:14:52.887
こうして記憶を植え
行動をコントロールすることは

00:14:52.887 --> 00:14:55.810
こうして記憶を植え
行動をコントロールすることは

00:14:55.810 --> 00:14:59.991
当然 重大な
倫理的問題を伴います

00:14:59.991 --> 00:15:03.050
例えば この心理技術を
いつ使うべきか

00:15:03.050 --> 00:15:06.730
使用を禁止するべきか
といったことです

00:15:06.730 --> 00:15:09.513
倫理上 療法士は
患者に虚偽記憶を

00:15:09.513 --> 00:15:11.100
植えてはいけません

00:15:11.100 --> 00:15:13.664
それが患者のために
なるとしてもです

00:15:13.664 --> 00:15:15.286
でも 親が
肥満の子どもに

00:15:15.286 --> 00:15:19.735
この方法を使うことは
止められていません

00:15:19.735 --> 00:15:22.340
これを公言したとき

00:15:22.340 --> 00:15:25.686
また激しい抗議を
受けました

00:15:25.686 --> 00:15:29.719
「今度は親が子供に嘘をつくことを
推奨するのか」

00:15:29.719 --> 00:15:31.964
サンタはどうなの？（笑）

00:15:31.964 --> 00:15:41.461
つまり
別の言い方をするなら

00:15:41.461 --> 00:15:43.494
これは選択の問題なのです

00:15:43.494 --> 00:15:46.523
子どもが 肥満や糖尿病で
寿命を縮め

00:15:46.523 --> 00:15:48.055
様々な問題を抱えるのと

00:15:48.055 --> 00:15:51.071
ちょっとした虚偽記憶を持つのと
どちらが良いか

00:15:51.071 --> 00:15:54.462
私なら 我が子のために
どちらを選ぶか決まっています

00:15:54.462 --> 00:15:58.439
でも もしかしたら 仕事柄
人とは考え方が違うのかもしれません

00:15:58.439 --> 00:16:00.518
ほとんどの人にとって
記憶は大切で

00:16:00.518 --> 00:16:02.672
自分のアイデンティティーや

00:16:02.672 --> 00:16:04.697
人間としての本質を
象徴するものです

00:16:04.697 --> 00:16:07.555
それは十分理解しますし
私もそう感じます

00:16:07.555 --> 00:16:09.760
でも 私は仕事を通じて

00:16:09.760 --> 00:16:14.241
どれだけフィクションが
世に あふれているか知っています

00:16:14.241 --> 00:16:16.973
この数十年
こうした問題を研究してきて

00:16:16.973 --> 00:16:19.383
何か学んだとすれば
これです

00:16:19.383 --> 00:16:21.594
誰かに何か言われて

00:16:21.594 --> 00:16:23.169
その人が自信満々で

00:16:23.169 --> 00:16:25.849
詳細に語ったとしても

00:16:25.849 --> 00:16:28.608
感情がこもっていたとしても

00:16:28.608 --> 00:16:31.810
それが事実とは限りません

00:16:31.810 --> 00:16:35.675
虚偽の記憶を
確実に見破る方法はありません

00:16:35.675 --> 00:16:39.223
一つ一つ実証していくことが
必要です

00:16:39.223 --> 00:16:42.313
こうしたことに
気付いたことで

00:16:42.313 --> 00:16:44.452
友人や家族の 日々の記憶違いに
より寛容になりました

00:16:44.452 --> 00:16:47.366
友人や家族の 日々の記憶違いに
より寛容になりました

00:16:47.366 --> 00:16:51.900
この気付きがあれば
スティーブ・タイタスを救えたかもしれません

00:16:51.900 --> 00:16:55.476
虚偽記憶によって
彼は 将来を奪い取られずに

00:16:55.476 --> 00:16:57.714
済んだかもしれません

00:16:57.714 --> 00:17:00.530
でも 同時に
心に留めておくべきは

00:17:00.530 --> 00:17:02.166
しっかり留めておくべきは

00:17:02.166 --> 00:17:06.037
記憶は
自由と同じで

00:17:06.037 --> 00:17:09.731
はかないものだ
ということです

00:17:09.731 --> 00:17:12.669
ありがとうございました

00:17:12.669 --> 00:17:15.397
ありがとうございます
（拍手）

00:17:15.397 --> 00:17:19.116
どうもありがとうございます
（拍手）