0:00:19.759,0:00:22.731
「歩きたい

0:00:22.731,0:00:26.003
自分の足で」

0:00:27.222,0:00:31.883
私は今でも そう思っています

0:00:33.681,0:00:38.511
段差 階段 坂道

0:00:40.172,0:00:43.358
街には 不便がある

0:00:44.714,0:00:48.472
生活には 不自由がある

0:00:49.481,0:00:51.189
私だけではありません

0:00:52.187,0:00:53.611
障害のある方

0:00:54.140,0:00:55.662
ご高齢の方

0:00:56.496,0:00:58.214
ベビーカーを押す方

0:00:59.942,0:01:04.793
合わせたら [br]日本で暮らす人の３割を超えます

0:01:06.813,0:01:08.344
その人たちには

0:01:08.950,0:01:13.816
共に行動する家族や友人もいます

0:01:15.223,0:01:17.475
多くの人が感じる—

0:01:18.434,0:01:22.358
不便や不安を解消するため

0:01:23.067,0:01:25.741
私は考えました

0:01:27.520,0:01:31.370
多様な方がゆったりくつろげる 旅館

0:01:32.841,0:01:37.715
家族みんなで幸せを共有する 結婚式場

0:01:38.942,0:01:42.689
それぞれの可能性を広げる スポーツジム

0:01:44.359,0:01:49.960
ありとあらゆる場所を[br]行きやすく 過ごしやすくしています

0:01:51.604,0:01:54.748
お墓も その一つです

0:01:55.748,0:02:00.252
かつて霊園は 砂利道や狭い道で

0:02:00.469,0:02:04.295
多くの人が 移動しづらい場所でした

0:02:05.142,0:02:11.784
そこで これまでにない[br]バリアフリーの霊園を実現しました

0:02:14.043,0:02:19.492
目が見えない人も[br]皆と同じようにアートを楽しみたい

0:02:19.829,0:02:23.422
名画を触ってわかるようにしました

0:02:24.085,0:02:29.263
ありとあらゆる人が[br]楽しめる空間を実現しました

0:02:30.868,0:02:33.494
行きたい場所へ行けるかどうか

0:02:33.914,0:02:36.068
行きやすい道順はどれか

0:02:36.928,0:02:39.944
一目でわかる地図を作りました

0:02:41.121,0:02:47.010
今では スマートフォンさえあれば[br]どこにいても見ることができます

0:02:49.347,0:02:54.556
これらは 社会貢献のみならず[br]ビジネスです

0:02:56.254,0:02:59.740
大きな市場が チャンスがあります

0:03:01.947,0:03:05.660
多くの人が 求めていることだからこそ

0:03:06.329,0:03:08.720
続けていかなければいけません

0:03:09.002,0:03:11.425
広げていかなければいけません

0:03:12.832,0:03:15.632
社会性と経済性

0:03:16.132,0:03:19.410
両輪あってこその継続です

0:03:21.172,0:03:26.198
世界には 10億人の障害者が暮らしています

0:03:26.964,0:03:31.890
そして どの国でも高齢化は進みます

0:03:32.765,0:03:37.100
取り組むべきは 日本だけではありません

0:03:42.858,0:03:48.055
10年前 私は 病室にいました

0:03:50.142,0:03:53.723
歩くことを夢見て 手術を受け

0:03:54.623,0:04:00.966
毎日毎日 リハビリに明け暮れました

0:04:03.029,0:04:07.621
しかし 歩くことは叶いませんでした

0:04:10.917,0:04:12.802
夢 断たれた日

0:04:13.122,0:04:19.620
私は自ら命をも断とうとしました

0:04:21.593,0:04:24.723
でも 私の足では[br]

0:04:25.780,0:04:29.513
飛び降りることもできませんでした

0:04:32.623,0:04:37.902
死ぬことすらできない自分に[br]絶望しました

0:04:40.475,0:04:42.293
病室のベッドの上で

0:04:43.175,0:04:48.235
枕に顔を押し付け 散々泣きました

0:04:50.703,0:04:55.681
けれど 人の涙は２週間も もちません

0:04:57.415,0:05:00.923
泣き明かした後 考えました

0:05:03.684,0:05:06.593
「ここまでやってダメなら仕方がない」

0:05:07.103,0:05:10.764
そう思えるまで とことん向き合おうと

0:05:13.305,0:05:17.549
可能性がないと わかっていながらも

0:05:18.172,0:05:21.559
歩くための努力を続けました

0:05:23.051,0:05:24.118
全力で

0:05:27.074,0:05:32.596
結果 やっぱりダメでした

0:05:34.051,0:05:37.798
今日も私は 車いすに乗っています

0:05:40.140,0:05:45.014
幼少期からずっと抱いた[br]「歩きたい」という想いは

0:05:45.226,0:05:48.813
これから先も 消えることはないでしょう

0:05:50.069,0:05:55.173
それでも 最後のリハビリを終えた時

0:05:56.096,0:06:01.544
私の心は 晴れ晴れとしていたことを[br]覚えています

0:06:04.241,0:06:10.904
私は 歩けなくてもできることを[br]探し始めました

0:06:12.959,0:06:17.221
病室を出て[br]猛勉強の末に大学へ入学しました

0:06:17.648,0:06:21.814
学費を賄うため[br]私はアルバイトをする必要がありました

0:06:22.536,0:06:25.405
コンビニ ファミレス 新聞配達

0:06:25.585,0:06:28.753
車いすの私に できることはありません

0:06:29.406,0:06:33.272
履歴書を持って 多くの会社を回ったところ

0:06:34.042,0:06:37.393
一社だけ 私を拾ってくれました

0:06:38.904,0:06:42.205
ウェブ制作の会社でした

0:06:43.066,0:06:47.234
すっかり デザインの仕事をするものと[br]思っていたところ

0:06:47.911,0:06:51.814
出社初日 私が任されたのは

0:06:53.079,0:06:54.934
営業の仕事でした

0:06:56.797,0:07:00.415
他の営業は 一日100件近く回ってきます

0:07:01.113,0:07:05.508
一方私は せいぜい10件程度でした

0:07:07.011,0:07:08.854
駅にエレベーターがない

0:07:08.854,0:07:10.512
建物に段差がある

0:07:11.432,0:07:15.830
お伺いすることさえ[br]叶わない日もありました

0:07:19.003,0:07:24.422
何とか諦めずに続けていると

0:07:26.193,0:07:28.427
「また車いすの営業が来た」

0:07:29.303,0:07:33.238
「また垣内が来てるぞ」と覚えてもらい

0:07:33.711,0:07:36.243
気づけば その会社で

0:07:36.424,0:07:41.394
一番の売上 結果を残していました

0:07:44.015,0:07:48.984
「歩けなくてもできること」だけではない

0:07:50.894,0:07:56.333
「歩けないから 障害があるから[br]できること」もある

0:07:57.943,0:08:02.604
私は 新たな道にたどり着きました

0:08:05.272,0:08:06.784
振り返れば

0:08:07.814,0:08:12.025
苦しいこと 辛いことばかりでした

0:08:13.826,0:08:17.909
しかし 不幸ではありません

0:08:19.389,0:08:24.054
歩けなかったからこそ[br]得られたチャンスがありました

0:08:25.524,0:08:27.523
出会えた人がいました

0:08:29.938,0:08:32.542
「バリアバリュー」

0:08:34.075,0:08:38.673
障害は 視点を変えれば価値に代わる

0:08:39.213,0:08:42.456
私は そう信じています

0:08:44.707,0:08:46.271
障害だけではありません

0:08:46.573,0:08:49.054
例えば 仕事が遅いとしましょう

0:08:49.652,0:08:54.674
でもそれは 人より丁寧な仕事を[br]しているのかもしれません

0:08:56.018,0:08:59.353
落ち着きにかけるのは[br]目先のことだけではなく

0:08:59.383,0:09:03.553
広い視野を持って[br]行動しているのかもしれません

0:09:04.635,0:09:06.405
不安になりやすいのは

0:09:06.415,0:09:09.460
人一倍 責任感が強く

0:09:09.785,0:09:14.635
最善の準備をしているのかもしれません

0:09:16.604,0:09:21.609
誰もが持っている[br]弱みやコンプレックスは

0:09:22.387,0:09:26.845
強みに 価値に変わる瞬間があります

0:09:27.696,0:09:32.245
もちろん すぐには難しいでしょう

0:09:33.046,0:09:35.943
でも 向き合い続けることで

0:09:36.043,0:09:37.719
信じることで

0:09:38.577,0:09:41.778
バリアはバリューに変わります

0:09:45.424,0:09:50.158
20歳の時 私は会社を立ち上げました

0:09:51.117,0:09:57.048
障害者の視点 経験 感性を生かす会社です

0:09:59.151,0:10:05.638
今 多くの仲間と[br]バリアをバリューへ変えています

0:10:11.585,0:10:15.735
ここで 私の人生を変えてくれた—

0:10:16.195,0:10:20.487
一人の女性との話をしましょう

0:10:22.374,0:10:28.065
私は 田んぼと山ばかりの町で育ちました

0:10:29.606,0:10:33.758
ひとたび外へ出れば 山あり谷あり

0:10:33.760,0:10:36.193
車いすでは移動が大変でした

0:10:37.299,0:10:43.209
家から学校まで[br]友人がいつも車いすを押してくれました

0:10:44.938,0:10:51.354
でも 私には[br]車いすを押してもらいたくない—

0:10:54.567,0:11:00.674
いいえ 押してもらえない人がいました

0:11:04.031,0:11:10.584
高校生のころ お付き合いしていた恋人です

0:11:13.363,0:11:16.251
小さなプライドでした

0:11:17.562,0:11:19.765
車いすを押してもらうことが

0:11:20.997,0:11:25.882
情けない 恥ずかしい かっこ悪い

0:11:27.883,0:11:30.882
そんな風に思っていました

0:11:33.130,0:11:36.439
ある日 彼女が私に言いました

0:11:38.585,0:11:41.505
「手をつないで歩きたい」 と

0:11:43.456,0:11:47.646
車いすに乗っている私と手をつなげば[br]目立ちます

0:11:48.012,0:11:50.472
私はすぐに断りました

0:11:51.527,0:11:56.786
彼女に冷たい視線を[br]浴びさせたくなかったからです

0:11:59.409,0:12:02.448
ところが 彼女はこう続けました

0:12:02.974,0:12:08.565
「付き合ってるんだから[br]手をつなぐのは当然でしょ」と

0:12:10.082,0:12:15.265
それから私は[br]片手で車いすをこぐ練習をして

0:12:15.735,0:12:22.237
彼女とはどこへ行くにも[br]手をつなぐようになりました

0:12:24.534,0:12:26.404
私と歩く彼女は

0:12:27.162,0:12:32.454
恥ずかしがるどころか[br]いつも笑顔でした

0:12:35.138,0:12:36.665
しばらくして

0:12:36.696,0:12:43.238
彼女が手をつなごうと言った[br]もう一つの理由を知りました

0:12:46.036,0:12:51.001
手をつないで坂道を歩いていると

0:12:51.527,0:12:53.845
私のほうが遅くなり

0:12:54.230,0:12:57.943
自然と 彼女に引っ張られる格好になります

0:13:01.476,0:13:03.349
坂道に差し掛かった時

0:13:03.645,0:13:07.617
私は 彼女へ負担をかけないように

0:13:08.027,0:13:12.839
「ここからは自分でこぐよ」と伝え[br]手を放そうとしました

0:13:15.033,0:13:20.546
すると彼女は手を放すことなく[br]笑って私に言いました

0:13:21.797,0:13:27.786
「車いすを押すなとは言われたけど[br]引っ張るなとは言われてないよ」と

0:13:32.134,0:13:33.533
「ありがとう」

0:13:34.388,0:13:38.769
その言葉が出るより先に 涙が出ました

0:13:41.059,0:13:44.170
家から一歩外へ出れば

0:13:44.683,0:13:48.835
私は周囲の人に手伝ってもらってばかり

0:13:50.617,0:13:54.950
口を開けば[br]「すみません すみません」と言い続け

0:13:55.804,0:13:57.422
下ばかり見ていました

0:13:59.198,0:14:00.836
でもこの時は違いました

0:14:01.867,0:14:04.580
顔を上げて 前を見ました

0:14:06.511,0:14:10.695
その先に 私の手を引いてくれる

0:14:11.355,0:14:15.251
笑顔の彼女がいたからです

0:14:17.914,0:14:21.547
「すみません」と言い続けた人生から

0:14:22.717,0:14:28.845
「ありがとう」と伝え続ける人生に[br]変わりました

0:14:32.368,0:14:39.006
彼女が彼女なりに考えたその答えに

0:14:40.226,0:14:42.950
私は救われました

0:14:46.810,0:14:48.751
「車いすだから押してあげよう」

0:14:49.816,0:14:51.864
「手伝ってあげよう」ではない

0:14:53.680,0:14:57.768
目の前の人と どのように向き合うか

0:14:58.999,0:15:01.338
どのように共に歩むか

0:15:02.761,0:15:06.597
今はそれを「ユニバーサルマナー」と名付け

0:15:06.877,0:15:09.950
私が伝え続けています

0:15:11.398,0:15:16.353
これから皆さんも 学校や職場 街中で

0:15:16.741,0:15:19.662
多様な方と向き合うことになるでしょう

0:15:21.110,0:15:24.616
どんな建物が快適なのか？

0:15:25.634,0:15:29.761
どんな製品が使いやすいのか？

0:15:30.512,0:15:33.448
どんな手助けが喜ばれるのか？

0:15:35.105,0:15:36.730
正解はありません

0:15:37.768,0:15:41.238
皆さんの考えるそれぞれの答えが

0:15:42.041,0:15:45.590
誰かの救いに繋がるはずです

0:15:48.009,0:15:53.157
ハードもハートも世界に誇れる日本を

0:15:54.285,0:15:58.954
誰もがバリアをバリューとできる未来を

0:16:00.166,0:16:05.464
皆さんと共に実現できたらと願っています

0:16:08.730,0:16:11.508
(拍手）