マーク・ブラウンのGame Maker's Toolkitへようこそ
ゲームデザインについてのシリーズだ
これはRandom HeroesというiPhoneのゲームだ
アクションシューティングで、出来はまあ普通だ
だがどうにも地味で、キャベツのようなゲームだ
あんまり面白そうにも見えないだろう
これをSuper Time Forceと比べてみよう
全く違うのがわかるはずだ
生き生きしていて手ごたえがある
Xboxから電流が流れるようなインパクトがある
こっちの方がずっと楽しい
開発者のCapyは、ある要素を最大限に活かしている
それは「ゲーム感」と呼ばれるものだ
これは基本的に抽象的で目に見えない技法だが
いいアクションゲームを作るためには
これを抑えておくことは必須だ
ゲーム感はアナログスティックを動かしたり
ボタンを押したりした瞬間にすぐ
わかってしまうからだ
この感覚は大抵、ゲームの基本アクションで発生する
瞬間ごとのゲームプレイに作用すると同時に
ゲームを根底から支える感覚でもある
この感覚をテストするいい方法は
ゲームから数値やストーリーや
グラフィック、音楽にステージ構成などを取り払って
その状態でどう感じるかを考えること
それらが何もなくても、操作していて楽しいかどうか
例えばマリオだ
マリオ64では、マリオは動かすだけで楽しい
よく跳ねるジャンプ、壁蹴り
三段跳びやロングジャンプ、ボディアタックなど
何もない部屋で跳ね回っているだけで
何時間も過ごせてしまう
実際、開発当初の数か月
マリオ64はそんな状態だったという
宮本茂は他の何よりも先に
マリオの動きを細かく調整したのだ
この場合の「ゲーム感」はマリオの
反動や勢い、重みにある
これは一番重要な要素だ
実際、マリオ64のステージと敵の構成は
マリオの動きを補助するために存在する
ステージはプレイヤーが自在に動き回り
マリオのアクションに慣れることを促す
他の開発者たちもこれを真似ている
例えばスーパーミートボーイには原始的な
感覚的レベルでの楽しさがある
だが操作性や動きがぎこちないゲームも多い
同様に、優れたアクションゲームは
何もない部屋で敵を倒しているだけでも楽しい
だが多くのゲームにはそうした活気が欠けている
基礎に関しては、この点で
アドバイスできることは少ない
ゲームの種類によって全く違うものだし
「宮本茂になれ」と言っても
あまり役には立たないだろう
でも洗練度を高める細かい工夫についてなら
名作から学べることは多い
それで君のゲームの爽快感は100倍も増すはずだ
ここで紹介するものの大半は
VlambeerやCactus、Grapefruktの講演から
そのまま盗んできたものだ
動画の下にリンクを張っておくので
興味があればどうぞ
まずは画面の振動だが
Vlambeerはこれの王様と言っていい
彼のゲームでは銃を撃ったり攻撃を当てたり
魚を粉砕したりで画面が激しく振動する
爽快だし、ゲーム世界に触れているという
直感的なフィードバックになる
Vlambeerは攻撃のヒットや敵の撃破時に
画面を一瞬停止する手法も好む
インパクトを高めるためだ
これは格闘ゲームでも見られる手法だ
ストリートファイターは動きに振動を加えて
キックのヒット感を生み出している
これはゴッドオブウォーや、多くの
ゼルダ作品もやっている
実は、敵にダメージを与えていることが
わかる要素なら何でもいい
敵が白く光る、ノックバックする、血が噴き出す
動きの変化や、爽快な効果音など
実用的なフィードバックが生まれるし
気持ちよさも向上する
これと似たもので、自キャラが本当に
ゲーム世界にいるような感覚を生む効果もある
着地時に出る細かい塵や
銃を撃った時の反動などだ
効果音を大きく響かせるのも重要だ
銃の効果音はこんなのじゃダメだ
こうでなくちゃ
繰り返しを避けるためには
効果音をランダム化したり、音のピッチを上げて
マリオやPeggleのように
コンボを眺める快感を高められる
次はカメラを工夫しよう
Luftrausersでは、カメラは自機を追うのではなく
上手に動きを捉えて、近くの危険物を映してくれる
Hotline Miamiでは
カメラは自キャラの視線の先に向かってずれる
向いている方向を示すためだ
それからサイズを大きくする
Nuclear Throneのように弾丸を顔ぐらいの大きさにする
Super Time Forceのように爆発を
小型核爆弾みたいにする
それから血しぶきは
Hotline Miamiのように赤い噴水にする
またHotline Miamiには
他のゲームにはあまりない特徴として
車に戻る際も、死体や血しぶきが残る
破壊の跡を見せることで
激戦を勝ち抜いたという感じを起こさせているのだ
「ジュース」と呼ばれることもあるこうした感覚は結局
ゲームのテーマを強調することだ
撃つゲームなら銃撃のインパクトを高め
連射力を強化し、撃つたびにカメラを揺らす
でもジャンプアクションなら
地形との摩擦を表現し
着地しやすいようにカメラを静止させる
ゲーム感は開発者たちが時として
何か月、あるいは何年も費やすものだ
だから5分のYoutube動画で
楽しく爽快なゲームを作る秘密が
見つかるとは思えない
でもここから少しでも学んで
基本的なアクションの爽快感を高め
細部の洗練からゲームの内容を
表現してみてほしい
このアドバイスに従ってくれたら
僕も仕事で退屈なiOSゲームばかり
プレイしないで済むようになるかもしれない