WEBVTT 00:00:16.726 --> 00:00:18.066 思い浮かべて下さい 00:00:18.066 --> 00:00:20.391 あなたは友人とシットコムを見ています 00:00:20.391 --> 00:00:22.765 生意気な脇役が四段重ねの 00:00:22.765 --> 00:00:25.011 ウエディングケーキを 運んでいますが 00:00:25.011 --> 00:00:25.949 転けてしまって 00:00:25.949 --> 00:00:26.540 転けてしまって 00:00:26.540 --> 00:00:28.672 顔面からケーキへダイブ 00:00:28.672 --> 00:00:31.176 あなたの友人は笑い転げて 言います 00:00:31.176 --> 00:00:34.527 「ばかみたい!ほんと皮肉だね!」 00:00:34.527 --> 00:00:36.457 さてさて あなたは どうしますか? 00:00:36.457 --> 00:00:38.329 一緒になって笑い転げて 00:00:38.329 --> 00:00:41.569 この悲しくも誤った「皮肉」の 使い方を見過ごす? 00:00:41.569 --> 00:00:43.098 もしくは 危険を冒して 00:00:43.098 --> 00:00:45.487 「皮肉」の本当の意味を 説明しますか? 00:00:45.487 --> 00:00:48.658 私なら後者を選びますね 00:00:48.658 --> 00:00:52.591 不幸にして 皮肉という単語は 完全に誤解されています 00:00:52.591 --> 00:00:54.377 皮肉という言葉は 00:00:54.377 --> 00:00:57.765 おかしな場面、偶然が起きた時に 誤った意味で使われがちです 00:00:57.765 --> 00:01:00.854 もちろん 皮肉は大抵 滑稽ではありますが 00:01:00.854 --> 00:01:04.081 それは皮肉である条件ではありません 00:01:04.081 --> 00:01:07.303 皮肉というのは 予想されていたことと 00:01:07.303 --> 00:01:10.662 全く 逆のことが 起こった場合にのみ成立します 00:01:10.662 --> 00:01:13.247 結果 A を予期していて 結果 B が起これば 00:01:13.247 --> 00:01:15.015 これは皮肉ですね 00:01:15.015 --> 00:01:17.862 それでは先程の どたばた劇に戻りましょう 00:01:17.862 --> 00:01:20.941 誰かが 一人では運べないようなものを バランスを取りながら 00:01:20.941 --> 00:01:22.584 慎重に運んでいる最中に 00:01:22.584 --> 00:01:25.100 転けてしまえば 大混乱です 00:01:25.100 --> 00:01:27.637 これはおかしいですが 皮肉ではありません 00:01:27.637 --> 00:01:29.513 実を言えば 巨大なケーキを 00:01:29.513 --> 00:01:32.743 一人で運ぶ人は転けると 予想していませんでしたか? 00:01:32.743 --> 00:01:35.855 そこで 転んでも 予想と結果は同じなので 00:01:35.855 --> 00:01:38.633 これは皮肉ではない ということになります 00:01:38.633 --> 00:01:41.790 しかし この脇役が1996年 アトランタオリンピックの 00:01:41.790 --> 00:01:43.959 ケーキ運び競技で獲得した 00:01:43.959 --> 00:01:46.576 金メダルを首から 下げていたらどうでしょう? 00:01:46.576 --> 00:01:49.921 ケーキ運びのプロだったら どうでしょうか? 00:01:49.921 --> 00:01:52.926 そうすれば 巨大なケーキを 運んでいたとしても 00:01:52.926 --> 00:01:54.862 「こいつなら できるだろう」という 00:01:54.862 --> 00:01:57.954 合理的な期待がわくかもしれませんね 00:01:57.954 --> 00:02:02.683 さてこの合理的な期待が 覆されたとき つまり彼が転ぶと 00:02:02.683 --> 00:02:05.039 これこそが 皮肉というやつです 00:02:05.039 --> 00:02:06.286 別の例を挙げましょう 00:02:06.286 --> 00:02:09.089 あるお年寄りがテクスティングと ブログをしています 00:02:09.089 --> 00:02:10.590 「お年寄り」というと 色々なイメージが浮かびますよね 00:02:10.590 --> 00:02:13.253 「お年寄り」というと 色々なイメージが浮かびますよね 00:02:13.253 --> 00:02:16.826 テクノロジーに疎いか もしくは興味がない 00:02:16.826 --> 00:02:19.105 パソコンは 電源をつけるだけで一苦労 00:02:19.105 --> 00:02:22.879 80年代の煉瓦のような 携帯を持ってる 等々 00:02:22.879 --> 00:02:25.031 それでネットも使えず 00:02:25.031 --> 00:02:26.160 テクノロジーとは無関係 00:02:26.160 --> 00:02:27.895 テクスティングもブログも 00:02:27.895 --> 00:02:29.231 できないと予想されます 00:02:29.231 --> 00:02:31.832 「こういった最新技術は 若い頃には 00:02:31.832 --> 00:02:35.360 ありもしなかったんだ」 という声が聞こえてきそうです 00:02:35.360 --> 00:02:37.210 ですから おばあちゃんが スマートフォンを取りだして 00:02:37.210 --> 00:02:39.148 入れ歯とか 00:02:39.148 --> 00:02:40.530 孫の写真をアップしていれば 00:02:40.530 --> 00:02:42.759 合理的期待が裏切られたことになり 00:02:42.759 --> 00:02:46.473 これで皮肉が成立したことになります 00:02:46.473 --> 00:02:48.354 これが皮肉なのです 00:02:48.354 --> 00:02:51.316 ケーキを落とすのは 皮肉ではないかもしれませんが 00:02:51.316 --> 00:02:55.297 皮肉が起こりうる状況は 至るところに潜んでいます 00:02:55.297 --> 00:02:59.126 実際に 本当の皮肉を 探してみませんか?