0:00:00.760,0:00:02.760 私たちは恐怖の時代に生きています 0:00:03.800,0:00:07.176 恐怖に対する反応としては[br]縮こまって 0:00:07.200,0:00:09.000 自らの身を守ろうとするか 0:00:10.000,0:00:13.136 手を差し伸べて[br]互いを支え合い 0:00:13.160,0:00:14.920 共に立ち向かうかの[br]いずれかです 0:00:16.160,0:00:17.600 あなたはどちらを選ぶでしょう? 0:00:18.680,0:00:20.600 世界にはどちらが[br]よく見られるでしょうか? 0:00:22.240,0:00:24.216 前者のアプローチの問題は 0:00:24.240,0:00:26.576 孤立を深める中で 0:00:26.600,0:00:29.216 自分を他者から[br]引き離すことです 0:00:29.240,0:00:31.656 孤立は深まってゆきます 0:00:31.680,0:00:33.816 なぜなら つながりを絶った相手や 0:00:33.840,0:00:37.376 場に対する想像力は[br]惰性に陥るからです 0:00:37.400,0:00:40.840 見知らぬものという感覚が増し[br]共感する力を失います 0:00:42.560,0:00:44.976 今日はあるグループについて[br]お話しします 0:00:45.000,0:00:47.136 彼らはテロリズムという[br]世界的な問題に対して 0:00:47.160,0:00:51.840 見知らぬ者同士が団結できる場を[br]作ることで対抗しています 0:00:52.920,0:00:56.760 道理の通らぬ分断が[br]どうしても気になるのは子供の頃からです 0:00:57.840,0:01:02.016 ケニアのインド系イスラム教徒の[br]第4世代として 0:01:02.040,0:01:03.976 私が気になっていたのは[br]4世代にわたり 0:01:04.000,0:01:06.056 狭い宗教的コミュニティの[br]外での結婚が 0:01:06.080,0:01:08.200 私の家族としては ただ一度として[br]行われなかったことです 0:01:08.880,0:01:10.560 それはなぜかと考えました 0:01:11.600,0:01:13.376 恐怖ゆえだろうか? 0:01:13.400,0:01:14.720 人種差別ゆえだろうか? 0:01:16.240,0:01:17.800 文化を守るためだろうか? 0:01:18.760,0:01:20.856 植民地支配と[br]何か関係があるのだろうか? 0:01:22.240,0:01:26.120 確かに私たちは他者と公共の場所を[br]共有していませんでした 0:01:27.680,0:01:31.240 この分断はとても気がかりで[br]私のキャリアの選択に影響しました 0:01:32.400,0:01:37.440 私が20歳の時 ケニアとタンザニアの[br]アメリカ大使館が爆破されました 0:01:39.080,0:01:41.336 その1年後[br]私は中東に向かい 0:01:41.360,0:01:42.840 紛争解決を学びました 0:01:43.880,0:01:45.256 それ以来 0:01:45.280,0:01:48.816 仕事をする不安定な環境には[br]事欠きませんでした 0:01:48.840,0:01:50.696 世界は急速に変化しており 0:01:50.720,0:01:53.040 テロの時代へと[br]突入していったからです 0:01:53.920,0:01:57.176 9/11が起きた時 私は[br]ワシントンDCにいました 0:01:57.200,0:02:00.656 それから難民を支援するために[br]祖国ケニアへと戻り 0:02:00.680,0:02:02.816 その後 パキスタンや 0:02:02.840,0:02:04.320 アフガニスタンで仕事をしました 0:02:06.120,0:02:08.776 こうした場所で気づいたのは 0:02:08.800,0:02:11.336 安全であると感じ[br]気持ちが安らぎ 0:02:11.360,0:02:13.736 自分の居場所を感じるためには 0:02:13.760,0:02:15.056 物理的な空間が 0:02:15.080,0:02:16.280 重要だということでした 0:02:17.760,0:02:21.280 2013年にアフガニスタンから[br]ナイロビへと戻りました 0:02:22.640,0:02:25.776 アル・シャバブの戦闘員が[br]ウェストゲートの商業施設を包囲し 0:02:25.800,0:02:29.800 非常に恐ろしい一日のうちに[br]67人をも殺害しました 0:02:32.040,0:02:33.936 その後 間もなく 0:02:33.960,0:02:36.416 ナイロビが変化し始めたのが[br]分かりました 0:02:36.440,0:02:41.376 これまでに仕事をしてきたような[br]恐怖やテロへの恐れに満ち 0:02:41.400,0:02:43.920 戦争によって分断された街へと[br]近づいていきました 0:02:45.240,0:02:48.560 ナイロビは恐怖に追い立てられる方向へと[br]変化していきました 0:02:49.320,0:02:51.856 壁やバリケードや検問所が 0:02:51.880,0:02:53.120 増加しました 0:02:54.000,0:02:55.656 世界の他の場所と同様に 0:02:55.680,0:02:59.840 人と人とのつながりが[br]希薄になっていきました 0:03:00.320,0:03:03.416 宗教間の対立は深まり 0:03:03.440,0:03:06.960 互いに共通点はあるのかと[br]私たちは疑いを深めています 0:03:08.600,0:03:09.896 今 岐路に立っています 0:03:09.920,0:03:13.456 今こそ 人間性への自信を取り戻し 0:03:13.480,0:03:16.360 大胆かつ目に見える形で[br]団結するときです 0:03:17.880,0:03:20.656 2014年 私はナイロビで[br]何をすべきか考えるために 0:03:20.680,0:03:21.920 人を集めました 0:03:22.680,0:03:27.640 知識人や外交官[br]芸術家や開発支援の人々などです 0:03:28.520,0:03:31.800 このグループが見い出した課題は[br]3つの要素から成ります 0:03:33.000,0:03:36.936 第一に 街を[br]テロという文脈から 0:03:36.960,0:03:40.176 そこに住む人々の手に[br]取り戻すこと 0:03:40.200,0:03:44.256 第二に 人種、民族、宗教を[br]超えるような言語を導入して 0:03:44.280,0:03:47.656 違いを乗り越える助けにすること 0:03:47.680,0:03:52.216 第三に 共感する心や[br]対話や信頼を取り戻すための 0:03:52.240,0:03:54.600 行動を起こすこと 0:03:56.520,0:03:59.496 このグループの中には[br]芸術家かつ建築家の 0:03:59.520,0:04:01.200 ヤズマニー・アルボレダがいました 0:04:02.040,0:04:04.816 彼とは長年に渡って[br]世界の別の場所で 0:04:04.840,0:04:06.416 協働してきました 0:04:06.440,0:04:07.976 彼はこれまでに 0:04:08.000,0:04:10.536 素晴らしく美しい[br]目を見張るような方法で 0:04:10.560,0:04:12.216 都市の環境に介入して 0:04:12.240,0:04:15.400 他者同士を結びつけた実績がありました 0:04:16.880,0:04:18.616 彼には考えがありました 0:04:18.640,0:04:21.776 異なる宗教を信じる人々を[br]結びつけるために 0:04:21.800,0:04:24.976 お互いの礼拝堂の壁を[br]塗ってもらうというのです 0:04:25.000,0:04:28.696 モスクや寺院[br]シナゴーグや教会などを 0:04:28.720,0:04:30.656 愛の名のもとに 0:04:30.680,0:04:32.040 黄色に塗るのです 0:04:34.160,0:04:37.496 信仰心の象徴に[br]焦点を合わせることで 0:04:37.520,0:04:41.576 自らの信仰心の核心である[br]親切心、寛容、友情などといった― 0:04:41.600,0:04:45.480 共通する価値観を[br]再検討する機会となります 0:04:46.800,0:04:49.816 異なる礼拝堂の間に[br]行き来を生むことで 0:04:49.840,0:04:51.456 ひとつの地区の中で 0:04:51.480,0:04:53.376 脅威にも耐えうるような 0:04:53.400,0:04:54.816 「安定の小島」― 0:04:54.840,0:04:57.360 人々の結びつきが生まれます 0:04:58.160,0:05:01.680 近所の人と一緒に[br]ペンキの刷毛を手にすることで 0:05:02.720,0:05:04.736 頭でっかちにならずに 0:05:04.760,0:05:07.080 手を動かし[br]心で繋がれるのです 0:05:08.320,0:05:11.456 そして色が塗られた建物は[br]景観の中に彫刻となって 0:05:11.480,0:05:14.136 非常に様々な背景を持つ人々が[br]共に支え合うことを 0:05:14.160,0:05:15.360 表すことになるのです 0:05:17.520,0:05:19.520 プロジェクトを[br]「信仰の色」と名付けました 0:05:20.400,0:05:24.456 このアイデアが気に入って[br]すぐに数ある礼拝堂に連絡しました 0:05:24.480,0:05:27.256 教会、寺院、モスク[br]シナゴーグなどです 0:05:27.280,0:05:29.936 扉から扉へと[br]60人以上ものラビや 0:05:29.960,0:05:32.480 イマーム、牧師や[br]僧侶を訪ねました 0:05:33.160,0:05:34.616 ご想像に難くないように 0:05:34.640,0:05:36.336 これらのコミュニティを[br]まとめることは 0:05:36.360,0:05:39.576 世界的に広まる恐怖によって[br]偏見が増長されている時代にあって 0:05:39.600,0:05:40.856 容易ではありません 0:05:40.880,0:05:42.080 複雑な問題でした 0:05:43.560,0:05:46.216 宗教団体内部での[br]意思決定に関わる上下関係にも 0:05:46.240,0:05:47.920 直面しました 0:05:48.520,0:05:51.016 例えば カトリックの教会では 0:05:51.040,0:05:54.336 大司教が決定を下さねばならない[br]と言われました 0:05:54.360,0:05:56.456 そこで大司教に[br]手紙を書きました 0:05:56.480,0:05:58.280 バチカン市国にも手紙を書きました 0:05:58.840,0:06:00.416 返事はまだありません 0:06:00.440,0:06:02.296 (笑) 0:06:02.320,0:06:04.376 他の礼拝堂では 0:06:04.400,0:06:07.576 パトロンが意思決定をすると[br]言われました 0:06:07.600,0:06:10.136 建物の経費や工事費[br]塗装費を 0:06:10.160,0:06:11.600 負担する人々です 0:06:13.000,0:06:14.456 正面対決することになったのは 0:06:14.480,0:06:17.176 無条件で行われる市民的行為を[br]妨げてしまうような 0:06:17.200,0:06:20.496 伝道者や寄付に頼っているという[br]長く続く伝統でした 0:06:20.520,0:06:22.416 これには手痛い経験をしました 0:06:22.440,0:06:24.016 あるコミュニティに 0:06:24.040,0:06:27.376 何度も対話を持つたびに[br]自分たちに感謝してほしいと 0:06:27.400,0:06:29.000 言われました 0:06:29.760,0:06:31.776 ですから 何度も訪ねては 0:06:31.800,0:06:33.976 感謝の念を伝え続けました 0:06:34.000,0:06:35.816 そして もちろん 0:06:35.840,0:06:38.880 感謝していなければ[br]ここでお話しすることはなかったでしょう 0:06:41.080,0:06:43.576 後々になって 残念なことに[br]わかったのは 0:06:43.600,0:06:48.160 「感謝」という言葉が「有償なら参加する」[br]という隠語だということでした 0:06:49.480,0:06:51.440 そこで私たちは[br]彼らに立ち向かいました 0:06:52.600,0:06:54.416 真っ向から聞きました 0:06:54.440,0:06:55.680 「いくらかかります? 0:06:56.640,0:06:58.240 いくらお支払いすれば[br]いいですか? 0:06:59.760,0:07:02.480 お金がかかる信仰は[br]信仰と言えるでしょうか?」と 0:07:03.840,0:07:06.456 このプロジェクトは[br]問いかけから始めました 0:07:06.480,0:07:08.656 「あなたの信仰は[br]どこにありますか?」 0:07:08.680,0:07:10.936 そして実際にすることになった[br]問いかけは 0:07:10.960,0:07:12.680 「あなたの信仰は[br]いくらですか?」 0:07:14.280,0:07:18.160 ですが 最も難しい問題は[br]目立つリスクへの恐れでした 0:07:18.680,0:07:22.576 あるシナゴーグは最初から[br]参加を完全に拒否しました 0:07:22.600,0:07:24.816 自らに注目が向けられて[br]標的となることを 0:07:24.840,0:07:26.040 恐れたのです 0:07:27.000,0:07:30.240 モスクの中にも標的になることを[br]恐れたところがありました 0:07:31.600,0:07:33.480 こうした恐れは[br]理解できるものです 0:07:35.480,0:07:40.640 それでも25もの礼拝堂が[br]参加を確約してくれました 0:07:41.360,0:07:46.736 (拍手) 0:07:46.760,0:07:51.256 これらの大胆な指導者たちは[br]行動を起こし 自ら意味を見い出しました 0:07:51.280,0:07:54.240 自分たちはテロリストではないと[br]世界に伝えようと考えた人もいます 0:07:54.920,0:07:59.000 門戸を開き 質問したい人々を[br]歓迎しようと考えた人もいます 0:07:59.640,0:08:01.496 年長者と若者の世代間の 0:08:01.520,0:08:03.656 格差を埋めたいと[br]考えた人もいます 0:08:03.680,0:08:08.176 これは多くの信仰において[br]取り組まれている難題です 0:08:08.200,0:08:12.016 選挙関連の予測される暴力が[br]起こる前に 近隣地区と 0:08:12.040,0:08:14.240 ただ団結したいと[br]考えた人もいます 0:08:15.880,0:08:17.416 どうして黄色なのかと[br]問われた時 0:08:17.440,0:08:19.696 あるイマームが[br]美しい答えをくれました 0:08:19.720,0:08:21.640 「黄色は太陽の色だ 0:08:22.400,0:08:24.936 太陽は誰もに平等に降り注ぐ 0:08:24.960,0:08:26.480 陽の光は差別しない」と 0:08:27.480,0:08:30.176 彼や他の指導者は[br]集会やラジオで 0:08:30.200,0:08:31.416 話題を広めました 0:08:31.440,0:08:34.135 市当局は自ら進んで[br]許可を発行したり 0:08:34.159,0:08:38.336 市民社会団体を招集したりする[br]手助けをしてくれました 0:08:38.360,0:08:41.976 塗料会社は特別な配合の黄色の塗料を[br]千リットルも寄付してくれ 0:08:42.000,0:08:45.616 今では「楽観の黄色」と[br]呼ばれている色です 0:08:45.640,0:08:46.936 (笑) 0:08:46.960,0:08:52.016 (拍手) 0:08:52.040,0:08:55.296 詩作の団体は[br]大学と協力をして 0:08:55.320,0:08:57.576 いくつものツイートを行い 0:08:57.600,0:08:59.776 信仰に関して[br]全国に問いかけました 0:08:59.800,0:09:02.456 宗教という文脈にとどまらず 0:09:02.480,0:09:06.176 政治家や民族や国家に[br]関する信仰や 0:09:06.200,0:09:09.880 年長者の世代における信仰や[br]若者の世代における信仰もです 0:09:11.360,0:09:15.216 「信仰の色」は[br]ギャラリーのイベントで幕を開け 0:09:15.240,0:09:18.736 ここにはギャラリーの常連から[br]宗教的指導者や 0:09:18.760,0:09:22.560 アーティストやビジネス関係者まで[br]様々な顔ぶれが招かれました 0:09:23.560,0:09:26.216 刷毛を手にする前に すでに 0:09:26.240,0:09:30.456 私たちが望んでいたような[br]対話やつながりを 0:09:30.480,0:09:31.720 多く実現できました 0:09:33.000,0:09:35.280 そして 壁を塗り始めました 0:09:37.920,0:09:40.056 ムスリムに[br]キリスト教徒や無神論者や 0:09:40.080,0:09:43.296 不可知論者や[br]ヒンドゥー教徒が肩を並べて 0:09:43.320,0:09:46.360 モスクを黄色に塗りました 0:09:50.040,0:09:53.800 そしてまた全員が集まって[br]今度は教会を黄色に塗りました 0:09:55.120,0:09:57.216 そして別のモスクも 0:09:57.240,0:09:58.480 別の教会も 0:09:59.840,0:10:02.440 塗装作業中には[br]詩人や音楽家が演奏をしました 0:10:03.160,0:10:05.296 ナイロビでも壁を塗り 0:10:05.320,0:10:07.120 モンバサでも塗りました 0:10:08.840,0:10:12.696 地元や国際的な報道陣が[br]「信仰の色」を特集し 0:10:12.720,0:10:15.736 英語やフランス語や[br]スワヒリ語や 0:10:15.760,0:10:17.720 スペイン語やソマリ語で[br]報道しました 0:10:18.400,0:10:23.440 「信仰の家」はコミュニティを[br]結びつける方法だとCNNは報じました 0:10:25.520,0:10:28.376 私たちのソーシャルメディアも[br]功を奏して 0:10:28.400,0:10:30.936 より多くの人々を結びつけました 0:10:30.960,0:10:34.040 こうした隣人たちは[br]互いに連絡を取り続けています 0:10:34.840,0:10:38.456 中には平和の対話のために[br]政治を志す者もいます 0:10:38.480,0:10:41.536 遠くはアルゼンチンや[br]アメリカから 0:10:41.560,0:10:43.816 近くはマリやルワンダまで[br]多くのコミュニテイが 0:10:43.840,0:10:45.656 私たちに手助けを求めています 0:10:45.680,0:10:47.240 ぜひ力になりたいです 0:10:47.960,0:10:52.136 私たちの夢は手助けの有無にかかわらず[br]このプロジェクトやアイデアが 0:10:52.160,0:10:53.800 世界中へと広がることです 0:10:55.480,0:11:00.040 「信仰の色」は良心の持ち主を[br]文字通り 黄色で目立たせる行いです 0:11:01.000,0:11:03.536 「信仰の色」は近隣地区を[br]結びつけ 0:11:03.560,0:11:06.056 願わくば[br]脅威に襲われた折には 0:11:06.080,0:11:08.456 彼らが共に[br]噂から真実をふるい分け 0:11:08.480,0:11:10.160 団結してくれますように 0:11:11.320,0:11:14.976 私たちは 人類は家族として[br]共に支え合い 0:11:15.000,0:11:17.376 私たちを傷つけようとする者の声よりも 0:11:17.400,0:11:20.240 ずっと明るく力強いメッセージを[br]送ることができると証明したのです 0:11:21.320,0:11:23.016 恐怖は感染しやすいものですが 0:11:23.040,0:11:25.240 希望もまたそうであると[br]示しているのです 0:11:26.840,0:11:28.096 ありがとうございました 0:11:28.120,0:11:34.240 (拍手)