1 00:00:00,669 --> 00:00:03,586 (穏やかなピアノ音楽) 2 00:00:07,688 --> 00:00:10,688 (穏やかなジャズ) 3 00:00:15,309 --> 00:00:16,410 -最後にこの場所から写真を撮って 4 00:00:16,410 --> 00:00:18,623 20年になります 5 00:00:20,480 --> 00:00:22,570 3年か4年の間 6 00:00:22,570 --> 00:00:26,050 この素晴らしい湾の写真を 撮り続けました 7 00:00:28,080 --> 00:00:28,913 これを出して 8 00:00:30,626 --> 00:00:31,999 フィルムを入れてっと 9 00:00:34,100 --> 00:00:35,850 驚きました 10 00:00:35,850 --> 00:00:38,650 いつも同じ橋だと人は思うかもしれません しかし- 11 00:00:39,570 --> 00:00:41,793 決して同じではないのです 12 00:00:51,040 --> 00:00:54,193 自身の仕事を振り返ること それはタイムマシーンに乗ることです 13 00:00:55,170 --> 00:00:58,763 失われていたかもしれない記憶 それらが呼び覚まされます 14 00:01:05,991 --> 00:01:09,110 (はっきりしない話し声) 15 00:01:09,110 --> 00:01:12,471 -リチャードとは 感謝祭のディナーパーティーで出会いました 16 00:01:12,471 --> 00:01:17,471 (スイッチ音) (映写機の回る音) 17 00:01:18,020 --> 00:01:20,860 親しくなったのは マザー・ジョーンズの仕事で 18 00:01:20,860 --> 00:01:22,930 爆撃練習場の取材をした時です 19 00:01:22,930 --> 00:01:24,363 彼は当時そこで働いていました 20 00:01:25,283 --> 00:01:29,490 彼と一緒に旅したことについて多くを書いてきたのですが 21 00:01:30,120 --> 00:01:34,450 いつからかそれを読むべきかどうか わからなくなっています 22 00:01:34,450 --> 00:01:35,533 -本番 アクション! 23 00:01:37,640 --> 00:01:40,540 -この冒険も12年になった 24 00:01:40,540 --> 00:01:43,923 リチャードと共に絶景を巡る旅だ 25 00:01:44,700 --> 00:01:46,890 最も印象深かった場所 26 00:01:47,180 --> 00:01:50,530 それは世界の終末後の風景、ブラボー20だ 27 00:01:51,150 --> 00:01:55,713 執拗にそして計画的に破壊された後の静寂 28 00:01:58,730 --> 00:02:01,620 砂漠との友情は深まっていく 29 00:02:01,620 --> 00:02:04,233 不毛の地とみなされている景色 30 00:02:05,140 --> 00:02:07,140 全ては真理に繋がっている 31 00:02:08,930 --> 00:02:13,180 新しきものと古きものが共存しながら ここでも地球は生きている 32 00:02:13,180 --> 00:02:15,760 雪のように輝く塩のベッド 33 00:02:15,760 --> 00:02:19,280 銀色と緑色の哨兵 白い砂丘 34 00:02:19,740 --> 00:02:24,073 どんな現代彫刻よりも前衛的な岩石層群 35 00:02:28,370 --> 00:02:31,360 彼はとても情熱的であり、 36 00:02:31,360 --> 00:02:34,283 同時にユーモアのセンスも持ち合わせていました 37 00:02:36,321 --> 00:02:38,281 ♪モー モー♪ 38 00:02:38,281 --> 00:02:42,214 ♪子を連れず♪ 39 00:02:42,214 --> 00:02:45,964 ♪独り立つ君を見たのさ♪ 40 00:02:47,900 --> 00:02:51,793 今まで私から逃げたことなんてなかったのに(笑い声) 41 00:02:54,702 --> 00:02:58,522 -世界は思っていたより素晴らしかったのです 42 00:03:04,003 --> 00:03:07,003 (メロウなジャズ) 43 00:03:11,760 --> 00:03:14,323 -エリック、今からそちらへ行くよ ピン留めしよう 44 00:03:14,323 --> 00:03:15,156 -オーケー 45 00:03:16,750 --> 00:03:19,080 -若い頃ミリアンは私と一緒に旅をしました 46 00:03:19,080 --> 00:03:22,450 一緒に来たがるのなんて彼女しかいやしません 47 00:03:23,290 --> 00:03:26,520 死骸捨て場や爆撃練習場 48 00:03:26,520 --> 00:03:28,330 原子力実験場などへ彼女は行きました 49 00:03:28,330 --> 00:03:29,430 ここは寒いね 50 00:03:30,330 --> 00:03:32,660 これらの場所は写真的関心だけでなく 51 00:03:32,660 --> 00:03:35,173 私が政治的関心を持つ場所でもあります 52 00:03:37,230 --> 00:03:40,290 -昔、彼に写真についてどう思うか 尋ねられたことがあります 53 00:03:40,290 --> 00:03:41,390 私は「美しいわ」と答えました 54 00:03:41,390 --> 00:03:44,470 すると彼は 「美しいってのは空っぽのシニフィエだ」と言いました 55 00:03:44,470 --> 00:03:46,460 私は「確かにそうね」と続けました 56 00:03:46,460 --> 00:03:48,850 -私が何を考えながら写真を撮ったか 57 00:03:48,850 --> 00:03:51,160 鑑賞者にはわからないと知っています 別に気にしません 58 00:03:51,160 --> 00:03:52,360 それは当然のことです 59 00:03:55,580 --> 00:03:57,730 しかし私はここに展示する全ての作品に 60 00:03:57,730 --> 00:04:00,660 概念的理念を持たせたいと考えています 61 00:04:00,660 --> 00:04:01,750 -仕方ないんです 62 00:04:01,750 --> 00:04:04,950 もしそれが十分に素晴らしくても 63 00:04:04,950 --> 00:04:08,053 その中にある特別性を見出してしまうんです 64 00:04:10,070 --> 00:04:12,770 ハワイの同じ場所によく旅行に行きます 65 00:04:12,770 --> 00:04:14,780 しかし9/11の起きた後彼は 66 00:04:14,780 --> 00:04:17,090 水の写真に夢中になっています 67 00:04:17,090 --> 00:04:19,763 下を見てこのような人々を見ています 68 00:04:22,090 --> 00:04:25,060 -雄大で広大な海に小さな人影を見る時 69 00:04:25,060 --> 00:04:27,815 自分がどれほどちっぽけか知るのです 70 00:04:30,420 --> 00:04:32,950 写真は撮られた時点から 71 00:04:32,950 --> 00:04:36,770 時と共に意味が変化する可能性があり 実際よくそうなります 72 00:04:36,770 --> 00:04:39,030 現時点で好きな写真はいっぱいありますが 73 00:04:39,030 --> 00:04:40,800 気が変わるかもしれないということもわかっています 74 00:04:40,800 --> 00:04:43,480 なので 撮り、確認し 75 00:04:43,480 --> 00:04:46,610 小さく印刷し 大きく印刷します 76 00:04:46,610 --> 00:04:48,030 それから放っておきます 77 00:04:48,030 --> 00:04:50,530 一年か二年になることもあります 78 00:04:50,530 --> 00:04:54,231 そうするとまるで初めて見たかのように とても新鮮な気持ちで写真を見ることができます 79 00:04:54,231 --> 00:04:56,981 (平和な音楽) 80 00:04:59,670 --> 00:05:03,140 -リチャードのスタジオでもあり 最近まで私たちが住んでいた倉庫には 81 00:05:03,140 --> 00:05:05,950 暗く長い廊下があり 82 00:05:05,950 --> 00:05:08,430 ネガやベタ焼きが積まれた棚が 83 00:05:08,430 --> 00:05:12,710 所狭しと置いてあった 84 00:05:12,710 --> 00:05:14,443 何万もの数だ 85 00:05:16,030 --> 00:05:19,180 それらのほとんどに日が当たることはない しかし 86 00:05:19,180 --> 00:05:22,861 全ては生命の可能性を秘めている 87 00:05:24,240 --> 00:05:27,470 私はそれらを休眠中の証人だと思っている 88 00:05:27,470 --> 00:05:30,983 それぞれが、ある瞬間のある場所を記録しているのだ 89 00:05:32,240 --> 00:05:35,720 リチャードにとってもそうだろうが、 90 00:05:35,720 --> 00:05:38,250 私にはそれらを捨てることができない 91 00:05:38,250 --> 00:05:41,473 写真家の謎は増すばかりだ 92 00:05:42,444 --> 00:05:45,444 (戸の擦れる音) 93 00:05:47,680 --> 00:05:51,870 -これらの棚には、 8インチX10インチのネガが約3万枚あります 94 00:05:51,870 --> 00:05:54,583 まだプリントされたことのないネガです 95 00:05:55,330 --> 00:05:59,100 こちらの箱はベタ焼きです 96 00:05:59,840 --> 00:06:01,800 宝の山です 97 00:06:01,800 --> 00:06:04,903 未印刷の写真を見つけました 98 00:06:07,120 --> 00:06:10,583 これは砂漠にいる美しい妻、ミリアンです 99 00:06:11,820 --> 00:06:14,310 実はこの写真はプリントできなかったのです 100 00:06:14,310 --> 00:06:15,890 傷が付いているかもしれないし 101 00:06:15,890 --> 00:06:17,610 色味が落ちているかもしれない 102 00:06:17,610 --> 00:06:20,510 だから仕舞ったままにしてありました 103 00:06:20,510 --> 00:06:23,460 現在のデジタル技術を用いれば 104 00:06:23,460 --> 00:06:27,330 写真をスキャンしてエラーを修復することができます 105 00:06:27,330 --> 00:06:29,513 この空を見てください 106 00:06:30,840 --> 00:06:33,359 まだプリントしたことのないものです 107 00:06:33,359 --> 00:06:34,640 (メロウなジャズ) 108 00:06:34,640 --> 00:06:38,120 - 彼は時間が尽きかけていることに気づいたのだと思います 109 00:06:38,120 --> 00:06:40,303 だからできる限りのことをしたいんです 110 00:06:42,350 --> 00:06:44,100 彼はより実験的になりました 111 00:06:44,100 --> 00:06:46,933 既成概念を拡大しようとしています 112 00:06:47,730 --> 00:06:52,303 これまで慣れ親しんできた様式を手放しています 113 00:06:53,950 --> 00:06:55,740 ”なぜだめなんだ?” 114 00:06:55,740 --> 00:06:57,520 ”なぜやらないんだ?” そうやって 115 00:06:57,520 --> 00:07:00,023 ルールを壊しています 116 00:07:00,023 --> 00:07:02,260 (活き活きとしたピアノ) 117 00:07:02,260 --> 00:07:03,093 - よし 118 00:07:07,190 --> 00:07:08,940 これをこっちに移動させよう 119 00:07:10,540 --> 00:07:14,030 長年続けてきた習慣にドライブがあります 120 00:07:14,030 --> 00:07:16,490 被写体を探しに2、3週間出かけるのです 121 00:07:17,360 --> 00:07:20,260 何年もそういったことを続けているうちに 実験の成果が形になり 122 00:07:20,260 --> 00:07:22,870 私に変化が起きました 123 00:07:22,870 --> 00:07:24,830 物事が違う風に見えてきたのです 124 00:07:24,830 --> 00:07:27,250 実験的に撮られた写真かどうか 125 00:07:27,250 --> 00:07:28,733 すぐにわかります 126 00:07:30,180 --> 00:07:34,690 元々は小枝や幹が這っている写真でしたが 127 00:07:34,690 --> 00:07:37,120 フォトショップを用いて 128 00:07:37,120 --> 00:07:39,580 色調を変化させました 129 00:07:39,580 --> 00:07:41,760 こうして異化された写真には 130 00:07:41,760 --> 00:07:43,660 新たな解釈が生まれます 131 00:07:44,620 --> 00:07:46,380 この神経細胞のような雑木林は 132 00:07:46,380 --> 00:07:49,960 ジャクソン・ポロックの絵に見えるかもしれませんが 実際は違います 133 00:07:49,960 --> 00:07:52,250 この写真にはリアリズムが残されています 134 00:07:52,250 --> 00:07:55,753 見て取れる自然の造形が 残っています 135 00:07:57,900 --> 00:07:59,600 以前から興味がありました 136 00:07:59,700 --> 00:08:04,310 最近プリツカー精神病院の アートの仕事を任されました 137 00:08:04,310 --> 00:08:08,510 建物はまだ建設中で 訪ねることができませんでした 138 00:08:08,510 --> 00:08:12,810 - その頃ちょうどCOVIDが始まりました どうすればいいのでしょうか? 139 00:08:12,810 --> 00:08:15,050 外出できず 写真を撮れません 140 00:08:15,050 --> 00:08:17,930 彼は今までの作品を掘り返さなければなりませんでした 141 00:08:17,930 --> 00:08:21,260 - 当時どのような考えで写真を撮ったか思い出そうとしました 142 00:08:21,260 --> 00:08:24,210 それから全く新しい方法で 写真を見つめ直しました 143 00:08:25,917 --> 00:08:29,250 - 「どうやったら生命を吹き込めるだろうか?」 144 00:08:29,250 --> 00:08:30,330 それからすぐ 145 00:08:30,330 --> 00:08:36,970 彼は物事を 思いもよらなかった視点で見るようになりました 146 00:08:36,970 --> 00:08:38,667 毎日そこから言いました 147 00:08:38,667 --> 00:08:40,809 「何を発見したかわかる? 148 00:08:40,809 --> 00:08:43,560 こっちへ来て見てくれ。 さあさあ」 149 00:08:43,560 --> 00:08:47,053 - 膨大な数の実験をフォトショップで行いました 150 00:08:49,466 --> 00:08:52,410 ただふざけていただけかもしれません 151 00:08:52,410 --> 00:08:54,053 補正につぐ補正 152 00:08:55,250 --> 00:08:57,913 全てはそこから始まりました 153 00:08:59,575 --> 00:09:03,075 (穏やかなパーカッション) 154 00:09:05,220 --> 00:09:10,510 - 精神医学の抱える大きな問題に入院施設への配慮があります 155 00:09:10,510 --> 00:09:17,073 これは精神医学界だけでなく医療界全般に言えることです 156 00:09:18,290 --> 00:09:24,140 アートほど直接的に 配慮を示す方法はあまりありません 157 00:09:24,140 --> 00:09:25,513 美は重要です 158 00:09:27,430 --> 00:09:30,060 このドアに足を踏み入れた全ての人に 159 00:09:30,060 --> 00:09:33,530 その空間によって高揚感を味わってほしいのです 160 00:09:33,530 --> 00:09:36,340 安心を与え 161 00:09:36,340 --> 00:09:38,183 希望を与えてほしいのです 162 00:09:44,800 --> 00:09:48,043 - プリツカー病院が私を選んだことに戸惑いました 163 00:09:49,940 --> 00:09:51,980 重い作品が多いんです 164 00:09:51,980 --> 00:09:54,050 何かの引き金になるかもしれない 165 00:09:54,050 --> 00:09:56,753 それは精神病院では望ましくありません 166 00:09:58,400 --> 00:10:01,180 非常に繊細な問題に取り組んできました 167 00:10:01,180 --> 00:10:06,113 キャンサー・アレイやペトロケミカル・アメリカや国境の壁などです 168 00:10:07,120 --> 00:10:10,453 しかし同時に、美ともバランスを取りたいと常に思っています 169 00:10:11,880 --> 00:10:12,913 海や 170 00:10:14,010 --> 00:10:15,183 空 171 00:10:16,150 --> 00:10:17,363 ゴールデンゲートブリッジ 172 00:10:19,240 --> 00:10:22,853 それは重さを中和してくれるものです 173 00:10:25,016 --> 00:10:28,183 (遠くで波の砕ける音) 174 00:10:33,550 --> 00:10:35,113 50年間を振り返ってみて 175 00:10:36,130 --> 00:10:38,423 自分が美を必要としていたんだと悟りました 176 00:10:43,550 --> 00:10:46,370 - ”その時”を感じた時 177 00:10:46,370 --> 00:10:49,817 彼の注意は他に向かなくなります 178 00:10:49,817 --> 00:10:52,430 「ちょっと待ってて」と彼は言います 179 00:10:52,430 --> 00:10:56,030 奇妙な緊迫感が表情に現れます 180 00:10:56,030 --> 00:10:59,410 完全に独りになった時の表情に似ています 181 00:10:59,410 --> 00:11:01,193 無心 182 00:11:03,920 --> 00:11:06,860 もし誰かが見ているのに気づいたら、 彼は微笑みー 183 00:11:06,860 --> 00:11:09,080 そして謝罪します 184 00:11:09,080 --> 00:11:10,920 (シャッター音) 185 00:11:10,920 --> 00:11:13,593 彼は妥協しません 186 00:11:15,790 --> 00:11:17,140 時が過ぎていきます 187 00:11:17,140 --> 00:11:18,440 彼は待ちます 188 00:11:18,440 --> 00:11:20,110 私たちも待ちます 189 00:11:20,110 --> 00:11:22,470 光を待ちます 190 00:11:22,470 --> 00:11:24,883 彼にはわかっています 191 00:11:26,637 --> 00:11:27,830 「見て」 192 00:11:27,830 --> 00:11:30,877 曇り空を指差しながら彼は言います 193 00:11:30,877 --> 00:11:34,687 「じき素晴らしい光が射してくる」 194 00:11:37,750 --> 00:11:40,073 希望と共に 195 00:11:45,876 --> 00:11:50,876 (穏やかなジャズ) (シャッター音) 196 00:12:00,372 --> 00:12:01,815 (シャッター音) 197 00:12:09,473 --> 00:12:10,334 (シャッター音) 198 00:12:14,721 --> 00:12:16,454 (シャッター音) 199 00:12:17,661 --> 00:12:18,570 (シャッター音)