WEBVTT 00:00:01.809 --> 00:00:06.696 米国の野球選手で哲学者の ヨギ・ベラは言いました 00:00:06.720 --> 00:00:10.287 「行き先がわからなければ おそらく目的地にはたどり着かない」 00:00:11.525 --> 00:00:15.571 科学的な知識を蓄えると 00:00:15.595 --> 00:00:20.767 気候変動が私たちの将来と 健康に与える影響について 00:00:20.791 --> 00:00:23.674 より適切な見通しと より明瞭な理解が得られます 00:00:23.714 --> 00:00:27.404 今日お話しするのも これに関係することで 00:00:27.444 --> 00:00:32.109 化石燃料の燃焼により 排出される温室効果ガスが 00:00:32.133 --> 00:00:35.915 私たちの食物の栄養価を いかに低下させているかです NOTE Paragraph 00:00:37.011 --> 00:00:39.150 食生ピラミッドの話から 始めましょう 00:00:39.174 --> 00:00:41.136 食生ピラミッドは 皆さんもご存知でしょう 00:00:41.348 --> 00:00:43.786 バランスのとれた食生活は どんな人にも必要です 00:00:43.810 --> 00:00:45.327 私たちには タンパク質 00:00:45.351 --> 00:00:47.062 微量栄養素 00:00:47.086 --> 00:00:48.394 ビタミン類が必要です 00:00:48.418 --> 00:00:51.148 ですから このことから 00:00:51.172 --> 00:00:54.166 成長と発育に 常に必要な食物を いかに確実に入手するかについて 00:00:54.190 --> 00:00:56.308 考えてみましょう NOTE Paragraph 00:00:56.332 --> 00:00:58.917 とはいえ 私たちにとり 食事をすることは 00:00:58.941 --> 00:01:00.881 必要なだけでなく 楽しみでもあります 00:01:00.905 --> 00:01:03.508 パン パスタ ピザなど 00:01:03.532 --> 00:01:07.613 食文化に欠かせない食べ物が 多々あります 00:01:07.637 --> 00:01:09.429 私たちは それらを楽しんで食べます 00:01:10.088 --> 00:01:12.479 食べ物は 私たちの食生活に 大切なものですが 00:01:12.503 --> 00:01:15.173 同様に 食文化にとっても 大切なものなのです NOTE Paragraph 00:01:15.757 --> 00:01:19.175 二酸化炭素(CO2)濃度は 00:01:19.175 --> 00:01:26.647 産業革命黎明期の280ppmから 今日では 410ppmまで上昇し 00:01:26.671 --> 00:01:28.914 その上昇は現在も続いています 00:01:28.938 --> 00:01:33.364 植物の成長に必要な炭素は このCO2に含まれています 00:01:33.388 --> 00:01:34.850 植物は CO2を取り込み 00:01:34.874 --> 00:01:38.121 それを分解して 炭素を取り出し 00:01:38.145 --> 00:01:39.929 その炭素により成長します 00:01:40.542 --> 00:01:43.475 植物はまた 土の栄養を必要とします 00:01:44.166 --> 00:01:47.672 ですから CO2は 植物の栄養源なのです NOTE Paragraph 00:01:49.186 --> 00:01:52.556 これはCO2濃度上昇に関する 良いニュースと言えましょう 00:01:52.556 --> 00:01:57.132 それにより 世界中の食糧供給が安定し 00:01:57.156 --> 00:02:00.814 人々が 毎日充分な食物を確保できるのです 00:02:01.466 --> 00:02:06.621 日々の食糧不足に悩む人々は 世界でおよそ8億2千万人に上ります 00:02:07.090 --> 00:02:10.692 ですからCO2濃度の上昇が 食糧安全保障問題の解決になると 00:02:10.716 --> 00:02:13.487 記述する文献が多々あります 00:02:13.511 --> 00:02:18.593 私たちは 農業生産性の進歩を促進し 00:02:18.617 --> 00:02:23.452 2050年の予測人口 90億から100億人に食糧を提供し 00:02:23.476 --> 00:02:25.997 国連の持続可能な開発目標 00:02:26.021 --> 00:02:27.759 特に 目標2を達成せねばなりません 00:02:27.783 --> 00:02:30.939 これは 食糧不安定を減らし 00:02:30.963 --> 00:02:32.487 栄養摂取を増大させ 00:02:32.511 --> 00:02:36.171 食糧の入手経路を改善して 全ての人々に行き渡らせるという目標です 00:02:36.195 --> 00:02:40.935 気候変動が農業生産性に与える影響を 私たちは理解しています 00:02:40.959 --> 00:02:43.209 地球の気温は 00:02:43.209 --> 00:02:45.680 産業革命前と比べ およそ1度上昇しています 00:02:45.704 --> 00:02:49.513 これにより 各地の気温と 降水パターンに変化が生じており 00:02:49.537 --> 00:02:53.971 世界の多くの地域での 農業生産性に 00:02:53.995 --> 00:02:55.617 様々な影響が出ています 00:02:56.292 --> 00:02:59.583 各地の気温や降水量を 単に変化させたのみならず 00:02:59.607 --> 00:03:01.053 異常気象も引き起こしています 00:03:01.553 --> 00:03:05.224 熱波 洪水 干ばつといった 異常気象は 00:03:05.248 --> 00:03:09.018 生産性に顕著な影響を与えています NOTE Paragraph 00:03:10.677 --> 00:03:13.013 また CO2は 00:03:13.037 --> 00:03:15.994 植物の成長を助けるだけでなく 00:03:16.018 --> 00:03:18.795 他の様々な結果も もたらしています 00:03:18.819 --> 00:03:21.885 CO2濃度がより高くなると 00:03:21.909 --> 00:03:25.954 炭水化物 糖質 デンプン質の 合成量が増え 00:03:25.978 --> 00:03:31.238 タンパク質や その他の重要栄養素が 減少します 00:03:31.262 --> 00:03:37.775 将来の食糧安全保障を考える上で このことは非常に重要となります NOTE Paragraph 00:03:38.532 --> 00:03:42.438 2日前の晩に 気候変動について雑談をした際に 00:03:42.462 --> 00:03:46.427 ある人が言いました 「自分は7分の5の楽観主義者だ」と 00:03:46.451 --> 00:03:49.282 どういうことかというと 週のうち5日は楽観的で 00:03:49.306 --> 00:03:52.021 残りの2日は 気候変動を懸念していると言うのです NOTE Paragraph 00:03:53.227 --> 00:03:55.386 微量栄養素について考えてみると 00:03:55.410 --> 00:03:59.827 そのほぼ全てが CO2濃度の上昇に影響されています 00:03:59.851 --> 00:04:02.260 特に顕著なのが 鉄分と亜鉛の2つです 00:04:02.284 --> 00:04:06.291 鉄分が不足すると 鉄欠乏性貧血になる場合があります 00:04:06.315 --> 00:04:09.369 その症状は倦怠感 息切れから 00:04:09.393 --> 00:04:12.726 かなり深刻なものまであります 00:04:12.750 --> 00:04:14.466 亜鉛が不足すると 00:04:14.490 --> 00:04:17.021 食欲が減退します 00:04:17.045 --> 00:04:19.172 これは世界共通の 深刻な問題です 00:04:19.196 --> 00:04:22.271 亜鉛欠乏に陥っている人々は およそ10億人に上ります 00:04:22.295 --> 00:04:25.235 亜鉛は母子の健康にとって 非常に重要で 00:04:25.259 --> 00:04:27.166 発育に影響を与えます 00:04:27.788 --> 00:04:31.605 ビタミンB群は 様々な理由で必要不可欠です 00:04:31.629 --> 00:04:34.623 食物をエネルギーに変える助けとなり 00:04:34.647 --> 00:04:36.365 私たちの体内の 多くの生理的活動を 00:04:36.389 --> 00:04:39.960 機能させていく上で重要です 00:04:39.984 --> 00:04:42.688 ここで植物中の炭素濃度が高いと 00:04:42.712 --> 00:04:44.370 窒素が減少し 00:04:44.394 --> 00:04:46.310 ビタミンB群も少なくなります NOTE Paragraph 00:04:46.731 --> 00:04:48.295 問題は 人間以外にも及びます 00:04:48.319 --> 00:04:50.058 蓄牛には 既に影響が出ています 00:04:50.082 --> 00:04:53.704 牧草の質が低下しているからです 00:04:53.728 --> 00:04:57.189 それどころか 影響は 植物を摂取する生物全てに及びます 00:04:57.213 --> 00:05:01.085 例えば ペットの猫や犬について 考えてみましょう 00:05:01.109 --> 00:05:04.577 ペットフードやドッグフードの 食品表示ラベルを見ると 00:05:04.601 --> 00:05:09.246 そのほとんどが 相当量の穀類を使用しています 00:05:09.270 --> 00:05:11.357 ですから 影響は皆に及ぶのです NOTE Paragraph 00:05:11.381 --> 00:05:13.687 では なぜこれが問題と言えるのでしょうか? 00:05:13.711 --> 00:05:15.588 野外での研究や 00:05:15.612 --> 00:05:18.943 研究所での実験結果から 問題が判明したのです 00:05:18.967 --> 00:05:20.447 野外での研究について 00:05:20.471 --> 00:05:24.916 主に小麦と米に焦点をあてて 説明すると 00:05:24.940 --> 00:05:27.346 例えば 稲田があり 00:05:27.370 --> 00:05:29.460 それは いくつかの区画に分かれています 00:05:30.460 --> 00:05:32.564 各区画の条件はどれも同じです 00:05:32.588 --> 00:05:34.459 土壌も 00:05:34.483 --> 00:05:36.192 降水量も 00:05:36.216 --> 00:05:38.152 全て同じ条件ですが 00:05:38.176 --> 00:05:42.193 異なるのは 幾つかの区画に CO2を吹き付けていることです 00:05:42.637 --> 00:05:45.058 こうすることで 00:05:45.082 --> 00:05:48.352 今現在と 今世紀後半という 00:05:48.376 --> 00:05:52.563 CO2濃度の異なる条件下での 違いを比較できます NOTE Paragraph 00:05:53.032 --> 00:05:56.097 こうした研究は多くありませんが 私はその1つに関わりました 00:05:56.121 --> 00:06:00.692 中国と日本で 18種の稲を観察しました 00:06:00.716 --> 00:06:03.538 今世紀後半に想定される諸条件の下で 00:06:03.562 --> 00:06:05.185 その稲を栽培しました 00:06:07.185 --> 00:06:09.233 その結果を見ますと 00:06:09.257 --> 00:06:12.349 白が 現在の条件 00:06:12.373 --> 00:06:16.409 赤が 今世紀後半の条件下のものです 00:06:16.741 --> 00:06:20.735 タンパク質は約10%減少し 00:06:20.759 --> 00:06:24.602 鉄分は約8% 亜鉛は約5%減少しています 00:06:25.404 --> 00:06:27.950 大きな変化には 見えないかもしれませんが 00:06:27.974 --> 00:06:31.878 デンプン質の食物を主食とする 00:06:31.902 --> 00:06:34.347 各国の貧困層のことを考えると 00:06:34.371 --> 00:06:37.297 この変化により 00:06:37.321 --> 00:06:39.558 社会的弱者たちの栄養不足は 限度を超えてしまい 00:06:39.582 --> 00:06:42.239 あらゆる健康不良が生じるでしょう NOTE Paragraph 00:06:42.263 --> 00:06:46.124 ビタミンB群については 事態はより深刻です 00:06:46.148 --> 00:06:49.777 ビタミンB1とビタミンB2を見ると 00:06:49.801 --> 00:06:52.470 約17%の減少 00:06:52.494 --> 00:06:57.513 パントテン酸 ビタミンB5は 約13%減少し 00:06:57.537 --> 00:07:00.864 葉酸は 約30%減少しています 00:07:00.888 --> 00:07:05.162 これらの数値は 様々な実験での平均値です 00:07:05.186 --> 00:07:08.758 葉酸は 胎児の発育に欠かせません 00:07:08.782 --> 00:07:10.891 妊婦が 葉酸を充分に摂取しないと 00:07:10.915 --> 00:07:14.091 子どもが異常を持って生まれる リスクがかなり高くなります 00:07:14.599 --> 00:07:19.845 そのため CO2濃度が増加し続けると 00:07:19.869 --> 00:07:22.190 私たちの健康に 深刻な結果を与え得るのです NOTE Paragraph 00:07:23.636 --> 00:07:24.917 別の例ですが 00:07:24.941 --> 00:07:29.316 クリス・ウェイアントとその同僚が 行ったモデリングでは 00:07:29.340 --> 00:07:33.972 CO2濃度の上昇から鉄分や亜鉛の減少に至る 道筋を調べました 00:07:33.996 --> 00:07:36.428 対象は鉄分と亜鉛のみでしたが さらにそれが 00:07:36.452 --> 00:07:38.409 健康に及ぼす様々な影響も調べました 00:07:38.433 --> 00:07:41.771 調べたのは マラリア 下痢疾患 肺炎 00:07:41.795 --> 00:07:43.559 鉄欠乏性貧血についてで 00:07:43.583 --> 00:07:47.730 2050年に予測される 様々な結果を調べました 00:07:47.754 --> 00:07:49.974 色が濃い地域ほど 00:07:49.998 --> 00:07:51.958 受ける影響も大きくなります 00:07:51.982 --> 00:07:54.681 アジアとアフリカで 00:07:54.705 --> 00:07:57.614 影響がより大きいのが見て取れますが 00:07:57.638 --> 00:08:00.503 それだけでなく 米国や 00:08:00.527 --> 00:08:02.033 欧州諸国においても 00:08:02.057 --> 00:08:04.472 影響を受ける人々がいるのがわかります 00:08:05.075 --> 00:08:09.399 およそ1億2千5百万の人々に 影響が出ると推定されています 00:08:10.041 --> 00:08:14.088 最も効果のある介入策についても モデリングによる検討を行い 00:08:14.112 --> 00:08:18.617 そこで出た結論は 温室効果ガスの削減でした 00:08:18.641 --> 00:08:21.719 今世紀半ばまでに 温室効果ガス排出量を削減しておけば 00:08:21.743 --> 00:08:25.046 今世紀の後半に もたらされ得る結果について 00:08:25.070 --> 00:08:26.584 さほど心配しなくて済むのです NOTE Paragraph 00:08:28.568 --> 00:08:31.074 これらの実験やモデリングによる研究では 00:08:31.098 --> 00:08:33.656 気候変動そのものは 考慮されていません 00:08:34.082 --> 00:08:37.206 CO2の含有量のみに 焦点をあてています 00:08:37.584 --> 00:08:39.714 この2つの要素を併せると 00:08:39.738 --> 00:08:43.197 ここで皆さんにお話ししたよりも はるかに大きな影響が予測されます NOTE Paragraph 00:08:44.108 --> 00:08:47.127 本当は 皆さんにはここで 00:08:47.151 --> 00:08:51.965 皆さんが朝食に食べた物 これから昼食に食べる物が 00:08:51.989 --> 00:08:54.868 皆さんの祖父母の時代と比べ 栄養価の点でどう変わったか 00:08:54.892 --> 00:08:57.236 お話しできればいいのですが 00:08:58.312 --> 00:08:59.469 残念ながら できません 00:08:59.493 --> 00:09:01.506 研究がされていないのです 00:09:02.253 --> 00:09:05.404 また 現在起きている食糧不安定が 00:09:05.428 --> 00:09:07.161 この変化に いかに影響されているのか 00:09:07.851 --> 00:09:09.097 お話ししたくてもできません 00:09:09.121 --> 00:09:11.430 これもまた 研究がされていません 00:09:12.437 --> 00:09:15.879 この領域については どのような解決策があるかを含め 00:09:15.903 --> 00:09:19.962 知るべきことが山ほどあります 00:09:19.986 --> 00:09:22.740 解決策については 正確にはわかっていませんが 00:09:22.764 --> 00:09:25.497 取りうる方法の選択肢は多々あります 00:09:25.521 --> 00:09:28.032 技術は進歩を見せています 00:09:28.056 --> 00:09:31.412 植物育種や 栄養成分強化の技術です 00:09:31.436 --> 00:09:33.238 土質で改善を図ることも可能です 00:09:33.262 --> 00:09:36.255 もちろん これらの変化が 00:09:36.279 --> 00:09:39.760 私たちやその子ども さらに孫世代の健康に 将来的に与える影響について 00:09:39.784 --> 00:09:43.119 知ることは非常に有益でしょう 00:09:44.111 --> 00:09:46.474 これらの投資には 時間を要します 00:09:47.053 --> 00:09:50.237 問題をすべて解決するには 時間を要するでしょう 00:09:51.427 --> 00:09:55.074 国の団体や 民間企業団体からの 00:09:55.098 --> 00:09:56.952 研究資金提供もありません 00:09:57.799 --> 00:10:03.249 私たちが 将来たどる道を見極めるには 投資が不可欠です NOTE Paragraph 00:10:04.048 --> 00:10:06.657 その間に 私たちができることは 00:10:06.681 --> 00:10:12.093 富裕な地域のみならず 世界の全ての地域の人々が 00:10:12.093 --> 00:10:16.902 栄養価が充分な食糧を 確実に入手できるようにすることです 00:10:17.552 --> 00:10:22.371 また個人や団体での努力により 温室効果ガス排出量を削減し 00:10:22.395 --> 00:10:25.643 今世紀後半に起こり得る問題を 軽減することです NOTE Paragraph 00:10:27.570 --> 00:10:33.175 「教育は高くつくと思うのなら 無知になりたまえ」とは言いますが 00:10:33.862 --> 00:10:35.871 それは避けましょう 00:10:35.977 --> 00:10:38.763 私たちや子どもたち 00:10:38.787 --> 00:10:39.945 そして地球のために 00:10:39.969 --> 00:10:41.297 投資を行いましょう NOTE Paragraph 00:10:41.321 --> 00:10:42.535 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:10:42.559 --> 00:10:46.818 (拍手)