0:00:00.688,0:00:03.577 15年前の人々の間では 0:00:03.577,0:00:05.627 脳は誕生後わずか数年で 0:00:05.627,0:00:08.606 その発達の大部分が起こると[br]考えられていました 0:00:08.606,0:00:11.318 そのころは 生きた人間の 0:00:11.318,0:00:13.939 脳の中身を見て [br]脳が発達していく経過を 0:00:13.939,0:00:17.118 観察するなんてことは[br]できませんでした 0:00:17.756,0:00:19.756 でもここ十年程のこと 0:00:19.756,0:00:21.375 MRIなどの 0:00:21.375,0:00:24.783 脳画像技術が進歩したため 0:00:24.783,0:00:27.929 脳科学者達は 幅広い年齢の脳を観て 0:00:27.929,0:00:30.513 年齢と共に 人の脳の構造と働きが 0:00:30.513,0:00:33.423 どう変化するのか研究し始めました 0:00:33.423,0:00:37.218 構造解析用のMRIを使えば[br]ものすごく高画質な 0:00:37.218,0:00:41.294 生きている脳のスナップ写真を[br]撮ることができ 0:00:41.294,0:00:44.031 灰白質は脳のどれくらいを占めるのか 0:00:44.031,0:00:46.226 その比率は歳と共に[br]どう変わるのか など 0:00:46.226,0:00:48.022 様々な謎を解明しだしました 0:00:48.022,0:00:51.268 そして機能的MRI [br]いわゆるfMRIを使えば 0:00:51.268,0:00:54.723 実験参加者の脳のビデオを撮って 0:00:54.723,0:00:57.735 考えたり 感じたり[br]知覚したりしている脳を 0:00:57.735,0:01:00.437 観察することができるのです 0:01:00.437,0:01:03.245 世界中で このような研究が[br]行われている今 0:01:03.245,0:01:05.981 生きた人間の脳の発達について 0:01:05.981,0:01:09.047 非常に多くのことが[br]分かってきました 0:01:09.047,0:01:11.536 そのため 科学者たちの 0:01:11.536,0:01:14.593 脳の発達についての考え方も[br]一新しました 0:01:14.593,0:01:17.654 脳は幼いころに[br]全て完成するのではなく 0:01:17.654,0:01:20.707 青年期 そして20代 30代と 0:01:20.707,0:01:24.015 発達し続けることが[br]明らかになったのです 0:01:24.015,0:01:29.517 さて青年期とは 人の生物的な面[br]ホルモンや身体の 0:01:29.517,0:01:32.493 思春期における変化とともに始まり 0:01:32.493,0:01:35.962 社会的に安定して[br]自立したとき終了する 0:01:35.962,0:01:39.306 期間だとされています 0:01:39.306,0:01:41.139 (笑) 0:01:41.139,0:01:43.819 青年期が長いこと続く人もいますが(笑) 0:01:43.819,0:01:46.907 脳で青年期に最も劇的に[br]変化する部分は 0:01:46.907,0:01:49.950 前頭前皮質でしょう 0:01:49.950,0:01:53.073 これは人の脳の模型です 0:01:53.073,0:01:55.955 正面の この部分が 前頭前皮質です 0:01:55.955,0:01:58.542 脳の中でも面白い部分です 0:01:58.542,0:02:03.311 人の前頭前皮質は他の生物に比べ [br]脳の中でより大きな比率を占め 0:02:03.311,0:02:07.253 様々な 高度の認知機能を果たします 0:02:07.253,0:02:10.381 例えば意思決定や計画—[br]明日 来週 あるいは来年 0:02:10.381,0:02:12.224 何をするか計画する 0:02:12.224,0:02:14.844 あるいは不適当な行動の抑制 つまり 0:02:14.844,0:02:16.795 失礼なことを口にしたり 0:02:16.795,0:02:19.079 ばかげたことをしないように[br]自己を抑える機能や 0:02:19.079,0:02:21.543 社会的交流 他人への理解 0:02:21.543,0:02:24.247 自己認識にも関わっています 0:02:24.247,0:02:26.918 MRIを利用して[br]脳のこの部分の発達を追う 0:02:26.918,0:02:29.832 研究をすることで [br]前頭前皮質は青年期に 0:02:29.832,0:02:32.492 本当に劇的に発達することが[br]明らかにされました 0:02:32.492,0:02:38.118 例えば 4歳から22歳の[br]前頭前皮質の灰白質を見ると 0:02:38.118,0:02:41.925 その容積は子供の頃に増え始め 0:02:41.925,0:02:43.728 このグラフを見てわかるように 0:02:43.728,0:02:46.328 青年期のはじめ ピークに達します 0:02:46.328,0:02:50.416 矢印は前頭前皮質中の灰白質容積の[br]ピークを示しています 0:02:50.416,0:02:53.196 このピークが訪れるのは [br]男の子の方が 0:02:53.196,0:02:55.613 女の子より2年ほど遅れています 0:02:55.613,0:02:57.665 平均して 男の子は女の子より 0:02:57.665,0:03:00.044 2年ほど遅れて[br]思春期を迎えるからでしょう 0:03:00.044,0:03:03.419 そして前頭前皮質の[br]灰白質容積は 0:03:03.419,0:03:05.967 青年期の間に[br]はっきりと減少します 0:03:05.967,0:03:08.011 これは悪いことに[br]聞こえるかもしれませんが 0:03:08.011,0:03:10.930 実は脳の発達にとって大変重要なことなのです 0:03:10.930,0:03:14.671 灰白質にはたくさんの神経細胞体や 0:03:14.671,0:03:17.905 細胞同士をつなぐシナプスがあり 0:03:17.905,0:03:20.665 灰白質の容積の減少は 0:03:20.665,0:03:24.244 余分なシナプスの除去に[br]関連していると 0:03:24.244,0:03:26.704 考えられています 0:03:26.704,0:03:28.907 これは非常に大切な過程で 0:03:28.907,0:03:32.912 ある程度 その生き物の[br]生活環境にも影響されます 0:03:32.912,0:03:36.472 使用されているシナプスは[br]より強化され 0:03:36.472,0:03:38.527 その環境で生活する上で 0:03:38.527,0:03:40.860 使われないシナプスは[br]除去されます 0:03:40.860,0:03:43.193 バラの木を剪定するように 0:03:43.193,0:03:45.657 やわな枝を除去することで 0:03:45.657,0:03:49.096 残りの 重要な枝が[br]より丈夫になるのです 0:03:49.096,0:03:52.532 その生き物特有の環境に最も適した 0:03:52.532,0:03:55.451 脳をつくり上げるこの過程が 0:03:55.451,0:03:58.495 青年期において 前頭前皮質や 0:03:58.495,0:04:01.825 その他の脳の部分で起きるのです 0:04:02.485,0:04:05.912 さて 青年期の脳の変化を[br]記録するために 0:04:05.918,0:04:08.942 fMRIを利用して [br]歳と共に人の脳の動きが 0:04:08.942,0:04:11.867 どう変化するか[br]研究したりもしています 0:04:11.867,0:04:14.327 例として私の研究室での[br]実験を紹介しましょう 0:04:14.327,0:04:17.483 私達は脳の社会的な機能に[br]興味があります 0:04:17.483,0:04:20.258 つまり周りの人を理解して 0:04:20.258,0:04:23.527 交流するために重要な [br]脳の部分です 0:04:23.527,0:04:27.504 この社会的な脳の持つ[br]2つの側面を示すために 0:04:27.504,0:04:31.608 ここにある写真を[br]見てもらいましょう 0:04:31.608,0:04:33.283 サッカーの試合の一場面ですが(笑) 0:04:33.283,0:04:35.683 ゴールをミスしたマイケル・オーウェンが 0:04:35.683,0:04:38.653 グラウンドに横たわり[br]頭を抱えているとこです 0:04:38.653,0:04:41.444 この写真では 社会的・感情的な反応が 0:04:41.444,0:04:44.574 自動的・本能的なものであることが[br]よく表れています 0:04:44.574,0:04:47.337 オーウェンがゴールをミスした [br]その瞬間に 0:04:47.337,0:04:49.484 皆 腕と顔で同じことをする 0:04:49.484,0:04:51.412 同じ動作 同じ表情 0:04:51.412,0:04:53.944 グラウンドに倒れている[br]オーウェンも きっと 0:04:53.944,0:04:56.531 同じ表情をしていることでしょう 0:04:56.531,0:04:58.458 例外は 後ろの方にいる 0:04:58.458,0:05:00.705 黄色の服を着た彼らだけでしょう(笑) 0:05:00.705,0:05:03.142 彼らはスタジアムの[br]反対側にいるべきでしょう 0:05:03.142,0:05:07.363 彼らは別の社会的感情反応を示しており[br]私たちにはそれがすぐにわかります 0:05:07.363,0:05:09.787 それが社会的な脳のもう一つの側面で 0:05:09.787,0:05:11.913 この写真がよく示していますが 0:05:11.913,0:05:15.614 私達は周囲の人の振舞い [br]行動 しぐさ 表情を見て 0:05:15.614,0:05:18.460 その人の感情と心理を非常に上手く 0:05:18.460,0:05:21.636 読みとる能力を持っているのです 0:05:21.636,0:05:23.613 だから彼らが今どんなことを 0:05:23.613,0:05:26.226 考え 感じているか 直接彼らに 0:05:26.226,0:05:28.489 問うまでもないのです 0:05:28.489,0:05:30.871 私の研究室の関心は[br]そういうことです 0:05:30.871,0:05:33.960 研究室に青年期と[br]成人期の人をそれぞれ集め 0:05:33.960,0:05:35.627 脳の映像をとります 0:05:35.627,0:05:38.233 そしてある課題を与えることで 0:05:38.233,0:05:41.850 他人の思考 心理 感情について[br]考えてもらいます 0:05:41.850,0:05:45.096 世界中で こんな研究を通して[br]あることが解明されました 0:05:45.096,0:05:48.235 前頭前皮質の内側部 0:05:48.235,0:05:51.688 このスライドで見ると青の部分で 0:05:51.688,0:05:54.362 前頭前皮質のちょうど中央 0:05:54.362,0:05:56.879 頭の正中線に位置する部分です 0:05:56.879,0:06:00.790 他人について考えている青年期の[br]脳の前頭前皮質内側部は 0:06:00.790,0:06:03.834 大人に比べより活発に[br]働いているのです 0:06:03.834,0:06:06.481 世界中の9つの研究室の結果を集めた 0:06:06.481,0:06:08.663 メタアナリシスの結果を見ると 0:06:08.663,0:06:10.993 同じ傾向を見て取ることができます 0:06:10.993,0:06:14.363 前頭前皮質内側部の活動は [br]青年期を頂点に 0:06:14.363,0:06:16.810 しだいに弱くなっていくのです 0:06:16.810,0:06:19.454 これは 社会的な意思決定をするとき 0:06:19.454,0:06:22.371 若者と大人では[br]違った精神的アプローチ 0:06:22.371,0:06:25.430 異なる認知的方略をとるためだと[br]考えられています 0:06:25.430,0:06:28.754 この違いを観察するために [br]人を研究室に集め 0:06:28.754,0:06:30.980 行動科学実験の課題を与えます 0:06:30.980,0:06:33.374 私の研究室で行っている実験を 0:06:33.374,0:06:36.688 もう一つ例として紹介しましょう 0:06:36.688,0:06:39.308 この実験の参加者として [br]実験室に来て 0:06:39.308,0:06:40.858 コンピュータで 0:06:40.858,0:06:43.631 こんな課題を見せられたと[br]想像してみてください 0:06:43.631,0:06:46.221 この課題は 本棚を使います 0:06:46.221,0:06:49.374 さて 棚のところどころに[br]物が置かれていて 0:06:49.374,0:06:52.342 反対側に男の人がいるのが見えますね 0:06:52.342,0:06:55.898 彼には全ての物は[br]見えないようになっています 0:06:55.898,0:06:58.180 いくつかの物は [br]この人には見えないよう 0:06:58.180,0:07:00.841 グレーの板によって[br]隠されているのです 0:07:00.841,0:07:04.258 これが 反対側に立っている[br]男に見える棚です 0:07:04.258,0:07:07.723 彼の方から見える物は限られています 0:07:07.723,0:07:10.237 逆に あなたの方からは [br]ずっと多くの物が見えます 0:07:10.237,0:07:12.535 課題は 棚の物を動かすことです 0:07:12.535,0:07:14.934 棚の反対側の男は 監督として 0:07:14.934,0:07:17.153 何を動かすかべきか指示します 0:07:17.153,0:07:19.695 ただ 彼が見えない物について[br]指示することはないのを 0:07:19.695,0:07:21.335 忘れないでくださいね 0:07:21.335,0:07:24.933 この設定により [br]あなたと監督の観点の間に 0:07:24.933,0:07:28.512 興味深い衝突が生じます 0:07:28.512,0:07:31.857 例えば 一番上のトラックを左に動かすよう[br]指示されたとします 0:07:31.857,0:07:33.982 トラックは3つありますが 直感的に 0:07:33.982,0:07:36.883 自分から見て一番上にある [br]白いトラックに手を伸ばすでしょう 0:07:36.883,0:07:38.689 ここで思い出さなければいけません 0:07:38.689,0:07:41.060 「そうだ 彼にはこのトラックは[br]見えないんだから 0:07:41.060,0:07:44.597 彼の方から見て一番上の[br]青いのトラックのことを言ってるんだ」 0:07:44.597,0:07:46.571 驚くことに あなた方のような 0:07:46.571,0:07:48.991 何の障害もない 頭のいい大人でも 0:07:48.991,0:07:52.146 50%近い確率で間違うのです 0:07:52.146,0:07:55.094 青いトラックでなく [br]白いのを動かしてしまいます 0:07:55.094,0:07:58.667 青年期と成人期の人に [br]それぞれこんな作業をしてもらうわけです 0:07:58.667,0:08:00.242 対照実験では 0:08:00.242,0:08:03.975 監督なしで 代わりにルールを設けます 0:08:03.975,0:08:06.081 全く同じことをするのですが 0:08:06.081,0:08:08.446 今回は反対側に監督はいません 0:08:08.446,0:08:11.996 ルールは 後ろに濃いグレーの板がある物は[br]無視するということです 0:08:11.996,0:08:14.563 全く同じ設定ですね 0:08:14.563,0:08:17.835 ただ監督なしの場合は 何だか恣意的な 0:08:17.835,0:08:20.410 ルールを与えられて 0:08:20.410,0:08:22.160 監督がいる設定では 0:08:22.160,0:08:25.701 彼の視点について考えることを忘れずに 0:08:25.701,0:08:29.291 次の動きを決めなければいけません 0:08:29.910,0:08:32.776 私の研究室で行った [br]大規模な発達の研究における 0:08:32.776,0:08:35.304 間違いの割合をお見せしましょう 0:08:35.304,0:08:38.828 参加者は7歳児から大人までいました 0:08:38.828,0:08:40.254 両方の設定における 0:08:40.254,0:08:42.572 大人たちの間違う割合を[br]見てみましょう 0:08:42.572,0:08:45.080 グレーは監督有りの設定です 0:08:45.080,0:08:48.521 賢い大人が 50%近い確率で[br]間違っていますね 0:08:48.521,0:08:50.989 でも グレーの板の前の物は[br]無視するという 0:08:50.989,0:08:53.138 監督無しの設定では 0:08:53.138,0:08:55.931 間違える確率がぐんと低い [br]ということが分かります 0:08:55.931,0:08:59.833 この2つの設定で必要となる能力は [br]全く同じように発達します 0:08:59.833,0:09:01.560 児童期の終わりから 0:09:01.560,0:09:04.077 青年期の半ばにかけて [br]両方の設定で 0:09:04.077,0:09:06.778 間違う確率は減っていきます 0:09:06.778,0:09:08.143 どちらの設定でも 0:09:08.143,0:09:10.148 でも右端の 青年期半ばと 0:09:10.148,0:09:12.610 大人のグループを比較すると 0:09:12.610,0:09:15.001 とても興味深いことが[br]明らかになります 0:09:15.001,0:09:18.511 ここからは 監督無しの設定では [br]進歩が見られません 0:09:18.511,0:09:21.212 つまり ルールを忘れずに[br]その通りに行動するために 0:09:21.212,0:09:23.804 必要な能力は もう青年期半ばに 0:09:23.804,0:09:26.008 完全に発達しているようです 0:09:26.008,0:09:28.805 反対に 最後の2つグレーの棒を見ると 0:09:28.805,0:09:32.047 監督有りの設定では[br]青年期半ばから成人期にかけて 0:09:32.047,0:09:34.699 はっきりした成績向上が続きます 0:09:34.699,0:09:37.864 つまり 他人の観点を理解しながら 0:09:37.864,0:09:41.149 次の動きを決めるために必要な能力 0:09:41.149,0:09:44.270 生きていく上で 日々[br]絶えず必要になる この能力は 0:09:44.270,0:09:47.888 青年期の後半には [br]まだ発達中なのです 0:09:47.888,0:09:50.675 だからティーンエージャーの息子や娘が 0:09:50.675,0:09:54.964 他人のことを考えて行動できない[br]と思っているなら その通りで 0:09:54.964,0:09:56.783 理由があるのです 0:09:56.783,0:10:00.364 ティーンエージャーって[br]面白いですよね 0:10:00.364,0:10:04.095 メディアは 典型的な[br]ティーンエージャーの振る舞いを 0:10:04.095,0:10:07.771 パロディ化したり [br]ときには悪魔のように扱います 0:10:07.771,0:10:10.836 リスキーなことをする 気分屋 [br]そして異常に自意識過剰 0:10:10.836,0:10:13.525 友達から聞いた [br]とてもいい話があります 0:10:13.525,0:10:16.514 彼の娘達の 思春期前後での 0:10:16.514,0:10:18.701 最もはっきりとした違いは 0:10:18.701,0:10:21.247 父親といる時の[br]彼女達の当惑ぶりだそうです 0:10:21.247,0:10:23.769 思春期前の娘達が [br]お店でふざけていたら 0:10:23.769,0:10:27.398 「お前たちの大好きな歌を歌ってあげるから[br]ふざけるのはやめなさい」と言えば 0:10:27.398,0:10:29.062 娘たちはすぐに[br]ふざけるのをやめ 0:10:29.062,0:10:30.601 喜んで彼の歌を[br]聞いたそうです 0:10:30.601,0:10:33.303 思春期を越えた彼女達にとって [br]これは脅しとなりました 0:10:33.303,0:10:34.380 (笑) 0:10:34.380,0:10:37.588 父親が人前で歌うなんて[br]考えただけで 0:10:37.588,0:10:40.135 おりこうにする気になったのです 0:10:40.135,0:10:41.877 こう疑問を持つ人もいます 0:10:41.877,0:10:44.487 「青年期って比較的新しい[br]現象なのかな? 0:10:44.487,0:10:46.633 最近 西洋人がつくり出した[br]概念なのかしら?」 0:10:46.633,0:10:48.986 おそらく そんなことはないでしょう 0:10:48.986,0:10:52.311 昔の人も 今日の私達と同じように 0:10:52.311,0:10:54.723 青年期を描写していました 0:10:54.723,0:10:58.985 よく知られた引用ですが[br]シェイクスピアは「冬物語」で 0:10:58.985,0:11:01.574 青年期について [br]こんなことを書いています 0:11:01.574,0:11:05.259 「10と23の間の年齢がなくなるか [br]その間ずっと 0:11:05.259,0:11:07.964 眠っていてくれたら [br]どんなに素晴らしいだろう 0:11:07.964,0:11:10.899 この時期といったら [br]娘を妊娠させる 0:11:10.899,0:11:16.124 年寄りに悪さする 盗む そして[br]喧嘩する以外に何もないのだから」(笑) 0:11:16.124,0:11:20.233 さらにこう続きます[br]「そうは言っても 0:11:20.233,0:11:23.653 19や22の煮え立つ脳以外に 0:11:23.653,0:11:26.538 こんな天気の中 狩りに出る者が[br]あるだろうか」(笑) 0:11:26.538,0:11:30.957 約400年前のシェイクスピアは [br]今日の私達と同じような感じで 0:11:30.957,0:11:33.365 青年期を描いていたわけです 0:11:33.365,0:11:35.814 でも私たちは 青年期の若者の脳が 0:11:35.814,0:11:38.347 どう変化しているか知ることで [br]彼らの行動について 0:11:38.347,0:11:40.379 理解を深めようとしているのです 0:11:40.379,0:11:42.405 例えばリスクへの対応 0:11:42.405,0:11:46.459 彼らはリスキーなことをしたがる[br]傾向がありますね 本当に 0:11:46.459,0:11:48.850 彼らは子供や大人に比べて 0:11:48.850,0:11:51.757 リスキーなことをよくします 0:11:51.757,0:11:54.278 特に周りに友達がいるとき 0:11:54.278,0:11:57.036 これは青年期に 親から自立して 0:11:57.036,0:11:59.707 友達を感心させるために [br]重要な衝動です 0:11:59.707,0:12:02.378 青年期ついて理解を深めるために 0:12:02.378,0:12:05.452 今度は大脳辺縁系という部分の[br]発達を見てみましょう 0:12:05.452,0:12:07.987 私の後ろにあるスライドや この模型で 0:12:07.987,0:12:10.169 赤い部分が 大脳辺縁系です 0:12:10.169,0:12:12.818 大脳辺縁系は脳の深いところにあり 0:12:12.818,0:12:16.533 感情や報酬の処理を行う部分です 0:12:16.533,0:12:19.770 リスキーなことを含め[br]面白いことをした時に 0:12:19.770,0:12:22.831 報われたと感じるのはこの部分です 0:12:22.831,0:12:25.476 リスキーな行動に伴う高揚も[br]この部分からきます 0:12:25.476,0:12:29.879 そして大脳辺縁系内のこの部分は [br]大人に比べて青年期において 0:12:29.879,0:12:33.885 リスキーなことをしたときの[br]報われる感覚に対し 0:12:33.885,0:12:35.694 より敏感なのです 0:12:35.694,0:12:39.020 同時に 前頭前皮質 0:12:39.020,0:12:41.453 このスライドでは青い部分 0:12:41.453,0:12:44.656 過剰にリスキーなことをしないよう[br]制止するこの部分が 0:12:44.656,0:12:47.591 青年期ではまだ発達中なのです 0:12:47.591,0:12:51.385 脳科学者たちは研究を通して [br]脳は青年期に 0:12:51.385,0:12:54.881 ものすごい発達を遂げることを[br]明らかにしました 0:12:54.881,0:13:00.019 この発見は 教育やリハビリ[br]その他の介入に重要な意味があります 0:13:00.019,0:13:02.859 教育も含めて 周囲の環境は 0:13:02.859,0:13:06.195 青年期の脳の発達に[br]影響を及ぼすものです 0:13:06.195,0:13:08.914 しかし西洋の国々で [br]ティーンエージャーに 0:13:08.914,0:13:11.760 広く教育を与えるようになったのは [br]比較的最近です 0:13:11.760,0:13:16.960 例えば 私の祖父母は4人とも [br]青年期の初めの頃に学校をやめました 0:13:16.960,0:13:19.011 他に選択肢はなかったのです 0:13:19.011,0:13:22.722 今でもそういうティーンエージャーは[br]世界中にたくさんいます 0:13:22.722,0:13:25.115 ティーンエージャーの40%は 0:13:25.115,0:13:29.169 中学や高校に行けません 0:13:29.169,0:13:31.808 しかし この期間は人生で 0:13:31.808,0:13:34.835 脳の適応性 順応性が[br]最も優れている期間です 0:13:34.835,0:13:38.448 学習と創造性開発に最適な機会です 0:13:38.448,0:13:41.648 だから青年期の若者の問題として[br]見られがちな振る舞いを 0:13:41.648,0:13:43.134 非難すべきではありません 0:13:43.134,0:13:47.272 リスキーな行動 衝動的な行動 [br]自意識過剰な態度 そういった行動は 0:13:47.272,0:13:50.849 学習と社会性の発達に[br]最高な機会をもたらす 0:13:50.849,0:13:54.388 脳の変化を反映しているのです 0:13:54.388,0:13:56.149 ありがとうございました 0:13:56.149,0:14:04.285 (拍手)