WEBVTT 00:00:01.458 --> 00:00:04.608 私たちの自己集合研究室では 10年近く 00:00:04.608 --> 00:00:07.012 ある種の材料システムに 取り組んできました 00:00:07.012 --> 00:00:09.525 自ら変形し 自ら組み上がり 00:00:09.525 --> 00:00:11.542 環境に適応するようなものです 00:00:12.333 --> 00:00:14.780 例えば「4Dプリンティング」の 初期の作品では 00:00:14.780 --> 00:00:17.055 プリントしたものを 水に浸すと 00:00:17.055 --> 00:00:23.446 温度や日光に反応する オークセティック構造へと変わります 00:00:23.446 --> 00:00:25.278 もっと最近では 00:00:25.278 --> 00:00:29.073 体温に反応して気孔率を変化させる アクティブな布地を開発し 00:00:29.073 --> 00:00:32.853 「高速液体プリンティング」で プリントした膨らむ構造物は 00:00:32.853 --> 00:00:34.905 気圧によって変形し 00:00:34.905 --> 00:00:37.371 ある形から別の形へと 変わります 00:00:37.371 --> 00:00:38.879 自己集合の作品では 00:00:38.879 --> 00:00:40.682 水の中のパーツが 00:00:40.682 --> 00:00:42.753 波のエネルギーに反応して 00:00:42.753 --> 00:00:46.168 家具のような 明確な形へと 自ら組み上がります NOTE Paragraph 00:00:46.693 --> 00:00:48.269 もっと大きなスケールの作品では 00:00:48.269 --> 00:00:51.693 1メートルの気象観測気球群が 風のエネルギーによって 00:00:51.693 --> 00:00:54.750 建築現場の上空で 集合します 00:00:54.750 --> 00:00:57.488 危険な環境や 厳しい極端な場所で 00:00:57.488 --> 00:00:59.610 人や装置を持ち込むことが 難しい場合に 00:00:59.610 --> 00:01:01.285 上空で組み立てることができ 00:01:01.285 --> 00:01:04.036 ヘリウムが抜けると 地面に降りてきて 00:01:04.036 --> 00:01:06.946 大きなスペースフレーム構造が あとに残ります NOTE Paragraph 00:01:06.946 --> 00:01:10.613 これらの研究はどれも シンプルな素材に 00:01:10.613 --> 00:01:16.364 重力 風 波 温度 日光といった その環境にある力で 00:01:16.364 --> 00:01:20.610 変形や組み立てといったことを 行わせています 00:01:20.610 --> 00:01:22.539 どうすれば スマートな物を 00:01:22.539 --> 00:01:25.738 複雑な電気機械装置なしで 構築できるか? NOTE Paragraph 00:01:25.738 --> 00:01:28.780 最近モルディブの人たちから 相談を受けました 00:01:28.780 --> 00:01:31.814 このような研究や考え方を 00:01:31.814 --> 00:01:36.307 気候変動のために直面している問題に 適用できないかと 00:01:36.307 --> 00:01:39.355 モルディブの人たちからの 依頼ということなので 00:01:39.355 --> 00:01:41.403 まず第一に 現場を確認したいと言いました NOTE Paragraph 00:01:41.403 --> 00:01:42.428 (笑) NOTE Paragraph 00:01:42.428 --> 00:01:44.307 いいところですね NOTE Paragraph 00:01:44.307 --> 00:01:45.873 モルディブに行って 00:01:45.873 --> 00:01:48.695 気候変動の未来への まったく違った視点を 00:01:48.695 --> 00:01:50.424 持ち帰ることになりました 00:01:50.424 --> 00:01:52.928 皆さんが考えるのは モルディブは沈みつつある 00:01:52.928 --> 00:01:55.175 終わりだ どうしようもない ということでしょう 00:01:55.175 --> 00:01:59.664 でも 私はそれが 未来の建造環境の モデルになるかもと思ったんです 00:01:59.664 --> 00:02:04.179 固定的な人工構造ではなく 適応性のある弾力的なものです NOTE Paragraph 00:02:04.179 --> 00:02:08.145 気候変動による海面上昇に対しては 主に3つの対応方法があります 00:02:08.145 --> 00:02:10.965 1つは できることはないと 逃げ出すということで 00:02:10.965 --> 00:02:12.777 これは大変まずい考えです 00:02:12.777 --> 00:02:15.027 世界人口の4割以上が 00:02:15.027 --> 00:02:17.108 沿岸部に住んでおり 00:02:17.108 --> 00:02:19.988 海水面が上昇し 嵐が激しさを増すにつれ 00:02:19.988 --> 00:02:22.277 水面下になる地域は 広がっていきます 00:02:22.277 --> 00:02:26.140 この難問の解決は 避けて通れないのです NOTE Paragraph 00:02:26.140 --> 00:02:30.204 2つ目は防壁を構築する というものです 00:02:30.204 --> 00:02:33.383 その問題は 静的な解決法 だということです 00:02:33.383 --> 00:02:37.821 相手は超ダイナミックで 高エネルギーの問題です 00:02:37.821 --> 00:02:40.655 たいていは自然が勝利を 収めることになります 00:02:40.655 --> 00:02:42.738 これも上手くいきそうに ありません NOTE Paragraph 00:02:42.738 --> 00:02:44.821 3つ目は浚渫(しゅんせつ)です 00:02:44.821 --> 00:02:48.084 大量の砂を 海の底から吸い上げて 00:02:48.084 --> 00:02:49.988 浜に積み上げるのです 00:02:49.988 --> 00:02:52.968 北東部や西部の海岸に行くと 00:02:52.968 --> 00:02:55.698 毎年毎年 浚渫を繰り返してるのが 見られますが 00:02:55.698 --> 00:02:57.071 単なる時間稼ぎで 00:02:57.071 --> 00:02:58.905 あまり良いやり方では ありません NOTE Paragraph 00:02:58.905 --> 00:03:00.797 モルディブでも 同じことをやっていて 00:03:00.797 --> 00:03:05.446 浚渫によって新たな島を 1か月で作ることができます 00:03:05.446 --> 00:03:09.653 でもこれは海洋の生態系に 甚大な影響を及ぼし 00:03:09.653 --> 00:03:12.196 また毎年繰り返す 必要があります NOTE Paragraph 00:03:12.196 --> 00:03:14.855 ところが彼らが島を 1つ作っている間に 00:03:14.855 --> 00:03:17.405 砂州が3つ 自然にできたのです 00:03:17.405 --> 00:03:19.583 膨大な量の砂で 00:03:19.583 --> 00:03:21.694 船をつけることができます 00:03:21.694 --> 00:03:23.988 これは現地視察というやつです 00:03:23.988 --> 00:03:25.485 とても大変な仕事です NOTE Paragraph 00:03:25.485 --> 00:03:27.363 (笑) NOTE Paragraph 00:03:27.363 --> 00:03:29.236 ボストンでは冬でしたしね 00:03:29.917 --> 00:03:33.360 膨大な量の砂が 自然に集積しています 00:03:33.360 --> 00:03:37.488 波の力と 海底の地形だけで 集積が起こるのです NOTE Paragraph 00:03:37.488 --> 00:03:40.015 そこで なぜ砂州が形成されたのか 調べ始めました 00:03:40.015 --> 00:03:41.437 その仕組みが分れば 00:03:41.437 --> 00:03:43.613 うまく利用できる かもしれません 00:03:43.613 --> 00:03:47.320 海の中のエネルギーの量と 地形によって 00:03:47.320 --> 00:03:49.857 砂の集積は起きます 00:03:49.857 --> 00:03:51.657 私達が提案しているのは 00:03:51.657 --> 00:03:55.363 自然の力を使って 破壊ではなく構築を行うということです 00:03:55.363 --> 00:03:57.959 MITの私の研究室では 造波水槽を用意して 00:03:57.959 --> 00:03:59.832 ポンプで波を起こし 00:03:59.832 --> 00:04:02.113 水中に地形を拵えました 00:04:02.113 --> 00:04:04.522 あらゆる地形を 試してみました 00:04:04.522 --> 00:04:08.523 波が地形に作用して 乱流が起き 00:04:08.523 --> 00:04:10.495 砂が集積し始め 00:04:10.495 --> 00:04:13.997 砂州がひとりでに 形成されます 00:04:13.997 --> 00:04:15.448 これは上から見たところです 00:04:15.448 --> 00:04:18.158 左側は広がりつつある浜で 00:04:18.158 --> 00:04:20.571 中央には形成された 砂州があります 00:04:20.571 --> 00:04:24.213 地形と波の力が協同して 作り上げているのです NOTE Paragraph 00:04:24.213 --> 00:04:27.446 ボストンで2月に 実作に取り掛かりました 00:04:27.446 --> 00:04:29.821 長い帆布のロールを 使っています 00:04:29.821 --> 00:04:34.054 生物分解性でとても安く 扱いも簡単です 00:04:34.054 --> 00:04:36.749 それを縫い合わせて 大きな袋を作り 00:04:36.749 --> 00:04:38.251 モルディブに飛びました 00:04:38.251 --> 00:04:41.655 何か連想したかもしれませんが ファイアフェスティバルではありませんので NOTE Paragraph 00:04:41.655 --> 00:04:42.905 (笑) NOTE Paragraph 00:04:42.905 --> 00:04:45.200 正真正銘の本当の話です 00:04:45.200 --> 00:04:49.114 帆布の袋を旅行鞄に入れて 現地に飛び 00:04:49.114 --> 00:04:52.014 冬のボストンから来て 日焼けしています 00:04:52.014 --> 00:04:55.113 袋に砂を詰めて 水中に沈めます 00:04:55.113 --> 00:04:58.186 先程の水槽の中にあったのと 同じ形状で 00:04:58.186 --> 00:05:00.155 単に大きいというだけです 00:05:00.155 --> 00:05:03.187 砂の詰まった大きな物を 水中に配置し 00:05:03.187 --> 00:05:05.405 ごく単純な地形を作ります 00:05:05.405 --> 00:05:08.363 砂袋の前では 水が澄んでいます 00:05:08.363 --> 00:05:10.357 波が越えていき 00:05:10.357 --> 00:05:11.905 水はとても澄んでいます 00:05:11.905 --> 00:05:14.182 砂袋の裏側では 乱流が起きていて 00:05:14.182 --> 00:05:16.321 砂と水が混じり合っています 00:05:16.321 --> 00:05:19.821 沈殿物が移動して 砂が集積します 00:05:19.821 --> 00:05:22.780 訪ねてきた人懐っこい エイが見えますね 00:05:22.780 --> 00:05:25.571 左が1日目 右が3日目です 00:05:25.571 --> 00:05:29.321 光が当たっている所に 砂が波紋のように集積しているのが見えます 00:05:29.321 --> 00:05:31.071 2日でこんなに変わるんです NOTE Paragraph 00:05:31.071 --> 00:05:34.488 これが2か月前で 今も進行中の話です 00:05:34.488 --> 00:05:37.071 この研究は 始まったばかりです 00:05:37.071 --> 00:05:38.821 来年かもっと先に 00:05:38.821 --> 00:05:42.913 衛星画像や 水深測量データを調べて 00:05:42.913 --> 00:05:47.508 自然な砂の集積が環境に及ぼす 短期的・長期的な影響を 00:05:47.508 --> 00:05:49.393 把握するつもりです 00:05:49.393 --> 00:05:51.030 もっと大きなビジョンとして 00:05:51.030 --> 00:05:53.585 水中地形を作りたいと 考えています 00:05:53.585 --> 00:05:56.488 潜水艦のように 浮き沈みさせられるものです 00:05:56.488 --> 00:05:58.613 順応性がある人工の 岩礁のようなもので 00:05:58.613 --> 00:06:02.908 嵐の来る方角や 季節の変化に応じて 00:06:02.908 --> 00:06:04.848 展開させることができ 00:06:04.848 --> 00:06:07.193 この融通のきく岩礁を使って 00:06:07.193 --> 00:06:10.571 波の力で砂が 集積するようにします 00:06:10.571 --> 00:06:13.332 これは世界の多くの 沿岸地域や島国で 00:06:13.332 --> 00:06:15.898 活用できると思います NOTE Paragraph 00:06:15.898 --> 00:06:18.480 スマートな環境を作るとか 00:06:18.480 --> 00:06:22.173 スマートなビルや スマートな車や スマートな服というと 00:06:22.173 --> 00:06:28.663 電気や バッテリーや 装置や コストや 複雑さを加えて 00:06:28.663 --> 00:06:31.123 結局失敗することに なりがちです 00:06:31.123 --> 00:06:35.044 スマートなものを より少ないもので どう作れるかと私達はいつも考えています 00:06:35.044 --> 00:06:37.793 シンプルでスマートなものを どう作るか? 00:06:37.793 --> 00:06:41.314 私達の研究室や このプロジェクトで提案しているのは 00:06:41.314 --> 00:06:44.021 砂のようなシンプルな材料を使い 00:06:44.021 --> 00:06:47.457 波のような環境にある力を生かし 00:06:47.457 --> 00:06:49.910 集積や適応をさせる ということです NOTE Paragraph 00:06:49.910 --> 00:06:53.113 この考え方を発展させ 拡げ 適用していくために 00:06:53.113 --> 00:06:55.614 皆さんと協働したいと 思っています 00:06:55.614 --> 00:06:58.363 これは気候変動に対する 異なるモデルであり 00:06:58.363 --> 00:07:01.030 抵抗や怖れで対するのではなく 00:07:01.030 --> 00:07:04.030 適応力と復元力を生かすのです 00:07:04.030 --> 00:07:08.613 自然破壊を 自然の構築に変えるため 力を貸してください NOTE Paragraph 00:07:08.613 --> 00:07:09.946 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:07:09.946 --> 00:07:12.583 (拍手)