1 00:00:01,607 --> 00:00:20,883 (♪) 2 00:00:21,775 --> 00:00:23,559 12月になりました 3 00:00:24,526 --> 00:00:30,107 教会の中は もちろんのこと 町の至る所が 4 00:00:30,841 --> 00:00:33,590 クリスマスの飾りで キラキラしています 5 00:00:34,455 --> 00:00:36,655 毎年見る 同じ景色です 6 00:00:38,154 --> 00:00:40,866 けれど 今年 私は 7 00:00:42,614 --> 00:00:45,819 『マッチ売りの少女』の お話が 浮かんできます 8 00:00:46,868 --> 00:00:51,051 なぜ あの少女は 死ななければならなかったのか 9 00:00:51,849 --> 00:00:54,433 なぜ 救われなかったのか 10 00:00:55,983 --> 00:01:06,650 もし その声が聞かれていたなら と 考えてしまいます 11 00:01:06,650 --> 00:01:08,832 この一年を振り返ると 12 00:01:08,832 --> 00:01:12,661 乳幼児の虐待死が 何度も報じられ 13 00:01:13,127 --> 00:01:18,692 その都度「なぜ」と 思わずにいられませんでした 14 00:01:19,825 --> 00:01:21,942 「泣き声がうるさかったから」 15 00:01:22,658 --> 00:01:25,075 そんな理由も 報道されました 16 00:01:26,257 --> 00:01:28,190 赤ちゃんの泣き声は 17 00:01:29,605 --> 00:01:35,655 いつも 天使の声のように 聞こえるとはかぎりません 18 00:01:37,302 --> 00:01:40,099 泣きたくなるのは こっちの方と 19 00:01:40,784 --> 00:01:44,951 イライラとして 聞こえることもあります 20 00:01:46,583 --> 00:01:52,349 聞く者の心の状況で 赤ちゃんの声は 色々に聞こえます 21 00:01:53,514 --> 00:01:57,197 私の母は 私によく言いました 22 00:01:58,447 --> 00:02:02,196 「智子は生まれてきた時 23 00:02:02,278 --> 00:02:06,109 とても悲しい 寂しい声で泣いていた 24 00:02:08,326 --> 00:02:15,607 この世に よほど 生まれてきたくなかったんだと思った」と 25 00:02:17,457 --> 00:02:21,771 私は子供の時 そうだったんだと 思っていました 26 00:02:22,489 --> 00:02:25,970 けれども 大人になって気がつきました 27 00:02:27,355 --> 00:02:31,436 丸々と太って 元気に生まれてきた 私は 28 00:02:31,652 --> 00:02:35,734 その産声は 大きな 元気な声だったはずです 29 00:02:36,317 --> 00:02:42,083 けれども 母は 悲しい さみしい声と聞きました 30 00:02:44,297 --> 00:02:46,880 実は 私が生まれる頃 31 00:02:47,747 --> 00:02:51,680 私の 3歳になる姉が大病を患い 32 00:02:52,196 --> 00:02:56,979 一命は取り留めましたが これからの生涯は 33 00:02:57,795 --> 00:03:01,495 見ることができない 話すことができない 34 00:03:02,094 --> 00:03:08,224 身体の半分は動かせないと そう 宣告された時でした 35 00:03:09,045 --> 00:03:17,355 恐らく悲観して 不安でいっぱいの 母の心の声が 36 00:03:18,372 --> 00:03:22,404 私の泣き声に 重なったんだと思います 37 00:03:23,735 --> 00:03:26,786 乳幼児 特に赤ちゃんは 38 00:03:27,451 --> 00:03:30,851 言葉で 気持ちを 伝えることができません 39 00:03:33,716 --> 00:03:36,498 泣き声だけが 訴える手段です 40 00:03:37,564 --> 00:03:42,781 けれど 赤ちゃんに関わる者の 心の状況で 41 00:03:44,314 --> 00:03:51,127 私の母のように その訴えを 聞き逃すことも あるということです 42 00:03:52,675 --> 00:03:58,126 ましてや 赤ちゃんの声が 大きな声とは限りません 43 00:03:58,625 --> 00:04:04,241 小さな声だったり 声なき声のこともあります 44 00:04:06,041 --> 00:04:09,287 けれども その声を聞き留めないと 45 00:04:11,420 --> 00:04:17,902 赤ちゃんの命が 守られないことも 起こりうるのです 46 00:04:19,486 --> 00:04:24,833 2000年前 山で野宿していた 羊飼いは 47 00:04:25,618 --> 00:04:32,115 ダビデの町で 救い主がお生まれになると 天使に告げられました 48 00:04:33,200 --> 00:04:38,830 羊飼いたちは 山を下りて ベツレヘムへ行きました 49 00:04:39,629 --> 00:04:46,676 そして 飼い葉桶に寝かせてある 乳飲み子イエスを 探し当てました 50 00:04:48,061 --> 00:04:55,058 夜の 闇の中です 人々は それぞれの家や 宿屋の中にいて 51 00:04:55,625 --> 00:04:59,040 町には 人影が少なかったでしょう 52 00:05:00,273 --> 00:05:05,788 マタイによる福音書での クリスマス物語の 53 00:05:06,188 --> 00:05:12,536 東方の博士たちは 星に導かれたと 書いてありますけれども 54 00:05:12,770 --> 00:05:15,919 ここには 何も書いてありません 55 00:05:16,202 --> 00:05:20,043 では 羊飼いたちは どのようにして 56 00:05:20,812 --> 00:05:24,698 赤ちゃんイエスを 探し当てたのでしょうか 57 00:05:25,665 --> 00:05:28,581 宿屋を訪ねても どこにもいない 58 00:05:29,331 --> 00:05:32,561 ならば 外のどこかにいる 59 00:05:33,514 --> 00:05:36,928 手がかりは 赤ちゃんの泣き声です 60 00:05:38,095 --> 00:05:43,542 羊飼いたちは 赤ちゃんイエスの泣き声を聞こうと 61 00:05:44,709 --> 00:05:49,275 どのような小さな声をも 聞き逃さないようにと 62 00:05:50,090 --> 00:05:56,838 一生懸命 耳を澄ませて 捜し続けたのではないでしょうか 63 00:05:57,957 --> 00:06:01,520 また どの宿屋にも泊めてもらえず 64 00:06:03,135 --> 00:06:09,885 ついには 家畜小屋で出産した マリアの気持ち 65 00:06:10,084 --> 00:06:13,251 ヨセフの気持ちは どうだったのでしょうか 66 00:06:14,450 --> 00:06:18,265 出産は 危険がつきものです 67 00:06:19,798 --> 00:06:23,462 若いマリア 初めての出産です 68 00:06:25,568 --> 00:06:30,499 どんなに不安だったでしょうか 69 00:06:30,499 --> 00:06:32,498 その心の内を想像すると 70 00:06:32,498 --> 00:06:35,697 愛おしく 抱きしめたくなります 71 00:06:38,059 --> 00:06:40,792 小さな命が 守られるためには 72 00:06:43,025 --> 00:06:49,505 その命に関わる者の 命も 守られなければなりません 73 00:06:51,788 --> 00:06:55,753 小さな命が生きる ということは 希望ですが 74 00:06:58,220 --> 00:07:04,201 その命に 寄り添う者にも 希望が 必要なのです 75 00:07:05,934 --> 00:07:13,132 出産間近で その大きなお腹を見ても 76 00:07:13,983 --> 00:07:19,445 どの宿も マリアを泊めようとはしませんでした 77 00:07:22,112 --> 00:07:28,419 とうとう 家畜小屋で出産しました 78 00:07:28,897 --> 00:07:33,916 それは あまりにも寂しく 悲しい出来事です 79 00:07:35,024 --> 00:07:39,125 けれども ここで マリアにとって 80 00:07:39,309 --> 00:07:42,607 想像もしないことが起こりました 81 00:07:43,906 --> 00:07:46,521 羊飼いたちが ついに 82 00:07:46,822 --> 00:07:49,871 赤ちゃんイエスを 探し当てたのです 83 00:07:50,386 --> 00:07:54,419 布にくるまった 乳飲み子イエスを 探し当てたのです 84 00:07:55,287 --> 00:07:59,550 羊飼いたちは 赤ちゃんの泣き声を聞き 85 00:08:00,301 --> 00:08:02,299 その姿を見つけたとき 86 00:08:03,648 --> 00:08:08,333 どんなに 嬉しかったことでしょう 87 00:08:08,333 --> 00:08:10,065 不思議なことに 88 00:08:10,065 --> 00:08:14,729 小さい命が 一生懸命生きている姿は 89 00:08:14,950 --> 00:08:20,795 私たちを励まし 希望を与える力があります 90 00:08:21,944 --> 00:08:27,342 羊飼いたちは 希望が与えられ 喜びいっぱいで 91 00:08:27,757 --> 00:08:31,657 「おめでとう」と お祝いしたことでしょう 92 00:08:32,289 --> 00:08:41,071 そして 自分たちを探し出し 喜んで お祝いする羊飼いの姿は 93 00:08:42,871 --> 00:08:47,253 マリアにとって どれほどの 喜びだったことでしょうか 94 00:08:48,518 --> 00:08:51,267 誰かが 見つけ出してくれた 95 00:08:52,067 --> 00:08:54,883 誰かが 声を聞いてくれた 96 00:08:55,783 --> 00:08:59,282 そして 一緒に喜んでくれた 97 00:09:00,182 --> 00:09:04,831 不安な心は きっと これから生きていける 98 00:09:05,545 --> 00:09:10,595 そう 希望へと 変えられたのではないでしょうか 99 00:09:11,844 --> 00:09:15,361 クリスマス物語は 逆転の発想です 100 00:09:18,159 --> 00:09:22,657 出産を 家の中でさせてもらえなかったマリア 101 00:09:24,290 --> 00:09:28,739 穢れの人と 扱われていた羊飼い 102 00:09:31,554 --> 00:09:35,121 それは 声を奪われた人 103 00:09:35,905 --> 00:09:38,837 声を上げることが出来ない人 104 00:09:40,070 --> 00:09:43,468 社会の端っこに 追いやられた人です 105 00:09:45,516 --> 00:09:54,716 神様は その人たちを 喜びの目撃者となさいました 106 00:09:56,164 --> 00:10:03,330 神様は その人たちに 喜びのしるしを 与えられました 107 00:10:04,678 --> 00:10:08,596 そして クリスマス物語は 108 00:10:08,762 --> 00:10:12,809 聖書を読む私たちに 示されました 109 00:10:14,859 --> 00:10:18,308 地に平和が訪れるには 110 00:10:19,057 --> 00:10:24,323 羊飼いのように 探し出しなさい と 111 00:10:26,155 --> 00:10:29,820 小さな声を 聞き逃さないように 112 00:10:31,521 --> 00:10:34,621 赤ちゃんイエスが守られたように 113 00:10:35,153 --> 00:10:37,019 マリアが 守られたように 114 00:10:39,168 --> 00:10:42,550 それは 小さな声が聞かれること 115 00:10:43,883 --> 00:10:46,632 声にならない声が 聞かれること 116 00:10:48,099 --> 00:10:51,215 奪われた声が 聞かれること 117 00:10:52,496 --> 00:10:55,980 つまり 小さくされ 118 00:10:56,291 --> 00:11:01,470 社会の端っこに追いやられた 人の声を聞くということです 119 00:11:03,009 --> 00:11:09,030 2000年前 神様は 平和の王として 120 00:11:09,806 --> 00:11:13,911 イエス様を この世に 送ってくださいました 121 00:11:15,211 --> 00:11:21,992 小さな命 誰かの支えを必要とする命 122 00:11:23,375 --> 00:11:28,642 乳飲み子イエスとして この世に 送ってくださいました。 123 00:11:30,556 --> 00:11:33,739 小さな声 聞きましたか 124 00:11:34,889 --> 00:11:38,138 小さな声 聞こえましたか 125 00:11:40,071 --> 00:11:42,270 もし 聞こえないなら 126 00:11:43,237 --> 00:11:46,685 聞こえるまで 探し続けましょう 127 00:11:49,269 --> 00:11:55,550 弱き 小さき者に 寄り添われる神様です 128 00:11:57,049 --> 00:12:01,281 必ず 神様は 導いてくださいます 129 00:12:03,596 --> 00:12:10,211 その声が 聞かれた時 その声が 守られた時 130 00:12:11,427 --> 00:12:14,560 地には 平和が訪れます 131 00:12:15,343 --> 00:12:18,992 クリスマス おめでとうございます。 132 00:12:19,258 --> 00:12:32,021 (♪)