それでは皆さんお待たせしました 今日は、ウェブアクセシビリティ推進協会の セミナーにお越しいただきましてありがとうございます これから2時間強にわたって ウェブアクセシビリティについて様々な視点から またそれにかかわる政府の政策についても お話をしていきたいと思います 協会の理事長を務めております 東洋大学の山田肇です 「東洋大学」と書くつもりが「山田肇」と2度打ってしまって 間違っております、東洋大学の山田肇です よろしくお願いします 初めに20分ほどこの協会が何のために活動しているのか 何を目的としているのかなどについてお話をさせていただきます 私たちは、生活の中でありとあらゆる場面で 様々な情報通信機器や情報通信サービスに囲まれています 朝起きてニュースや天気予報を知りたいとき 電車に乗るとき、最近は電車に乗る時も 改札口で切符をいちいち買い求めるということはほとんど無く スイカ、パスモを利用しますが、それも情報通信サービスのひとつです さらには、生活の中でたとえばレストラン等を探すとき 電車の切符を予約するとき 政府に、地方自治体に何かを申請するとき 様々な場面で情報通信を利用しています 情報通信全体についてはですね アクセシビリティに関してすでにJIS規格ができておりまして X8341シリーズというものなんですけれど それで、全7分冊に分かれて様々な規定を作っています 僕は、もう長いことX8341の原案作成委員会の委員長を務めておりますが すこしづつ標準規格は整備されてきています その中でこのウェブアクセシビリティ推進協会は ウェブに注目をしています それはどうしてかというとウェブでアクセシビリティを実現する ということは、人々が社会に参加するために最も重要なことの一つであると考えているからです ウェブは(情報の)受発信インタフェースとして広く利用されています ウェブでの閲覧、入力フォームを利用しての申請 申請というのは政府に申請するというだけでなくて たとえば、航空券を予約するというようなことも含まれますが あるいは、電子書籍での表示のコントロール 様々なものに利用されています で、そういうウェブ技術について、あるいはウェブ技術を用いて提供するサービスあるいは機器について アクセシビリティがあるということが、人々が社会に参加するうえでの必要条件だと考えています 今、ご覧頂いているのは電子書籍端末ですが みなさん方はもうすでにお使いになられているか、あるいは使おうと考えていらっしゃると思いますが このような電子書籍端末では、たとえば「指を開く」という動作をすることによって 画像であったり文字が拡大されたり、あるいは文字の大きさを自分で選択することによって 画面に表示される文字の大きさが大きく何段階にも変えることができます その時にですね、たとえば画面に1枚にドキュメントが 表示されていたとして、それを単純に拡大すると 画面からはみ出てしまうので、左右にスクロールする 下にスクロールする 一生懸命左右に動かしながら情報を読み上げていくことになるわけですけれども そんなめんどくさいことをしなくても、自動的に折り返し表示するようになっているのが 最近は当たり前のことですが、そのように折り返し表示するのも ウェブ技術を利用しているからです たとえば、もし表示されるものが単にテレビのように走査線の情報であるとすると そこから「言葉」、テキストを抽出することは不可能なんですけれども テキストが抽出されるおかげで音声読み上げを使ってそれを理解するということもできます このような音声読み上げの対応であるとか、文章の折り返しての表示というようなことが行われているのは 何を隠そう、ウェブ技術が根底ににあるからです 昨年なんですけれども、ISO/IECという世界の標準化団体で 日本が提案した非常に興味深いICカードが世界標準になりました それは、たとえば銀行のATMを考えていただければいいのですけれど 僕は、たとえば英語で少し大きめなテキストの大きさで白黒反転で表示してほしい あるいは、私は音声を用いてガイドしてほしい 音の高さはこのくらいがいいとか そういうことを、言語であるとか、音量であるとか、周波数であるとか 表示するテキストのサイズであるとか、色であるとか、コントラストであるとか あるいは、(操作の)反応が遅くても元に戻らないでであるとかの操作速度であるとか そのような利用者の好みをあらかじめカードに入れておく そうすると、それをかざすだけで画面が一気に変わって たとえば、英語で白黒反転の大きなテキストで表示される それで、Withdraw(引き出し)とか Deposite(入金)というボタンを押せば お金の引き出しや預け入れができるとか さまざまなことができるようなカードが国際標準になりました もちろん銀行のATMだけではなくて、電車の切符を欲しいとき あるいは、自治体に行って住民票の写しを発行してもらいたいとき さまざまな時にこのICカードを、多くの端末で共通に理解してもらうようになれば 僕の好み、私の好みをカードに入れておくだけで 世界中でどこでも自分の希望する作業をすることができます 実際に、この国際標準を策定する際には ヨーロッパ各国の標準化団体が強く賛成をしてくれましたが 彼らはそろそろ夏に近づくと、スウェーデンの人、フィンランドの人は お日様を求めてイタリアに行くなんていうことが多々あります イタリアに行ってお金を下ろそうと思ったら、表示が全部イタリア語だったらどこを押していいかわからない そういうことがあって、多言語対応というようなことを求めています こういうふうにして、インタフェースになる画面の表示を様々な形に変える あるいは、場合によっては音声で出力するといったことが容易にできるようになりつつあります 現実にはこのICカードは実用化されていませんが、いま金融機関とか交通機関とか自治体が 協力をしようという相談をしているところですが こういうことができるようになるのもウェブ技術があるからです ウェブ技術によって、表示を容易に変更することができるようになっています そのような、ウェブ技術の中でも一番ポイントとなるのはウェブサイトだと思います 我々は、ウェブサイトを用いてニュースを入手します あるいは、様々な情報を入手します 先ほども申しあげたように、この近くでおいしいレストランを探すのにも利用します 航空券の予約にも利用します 最近は、大学では入学願書の提出も全部ウェブをおこなっていて 郵送などとということはおこなわれていません 我々、ウェブアクセシビリティ推進協会では47都道府県と12府省の サイトの中にアクセシビリティ方針がちゃんと書いてあるかどうかを 今年の3月に調査しました 調査結果についてはあとで浅野より皆様にご報告しますが その3月の半ばの時点で、今は少し変わっているのですけれど 47都道府県庁でアクセシビリティ方針の中に2010年版のJIS規格に対応しますと 明記してあったのは、群馬県、静岡県、岡山県、山口県だけでした 12府省の中でみんなの公共サイト運用モデルに基づいた つまり総務省が推奨する非常に多くの項目を記述させるようなアクセシビリティ方針のたたき台があるのですけれど それに基づいてアクセシビリティ方針を掲載していたのは、総務省と経済産業省だけでした このように、実は都道府県庁であっても、あるいは政府中央官庁であっても ウェブサイトのアクセシビリティについての理解が広まっているというわけであはありません とても残念なことです 今日、石川先生にお話をいただくのは障害者基本計画です。 障害者基本計画というのは、10年に1回更新されることになっており この前の計画は今年の3月の終わりで終了しています、失効しています 基本計画というのは、政府全体として関係者の理解と協力のもとに取り組むべき 障害者施策の基本的な方向を記述したものです したがって、本当は「この方向に向かう」ということがないと 政府は予算付けもできないし、施策の遂行もできないはずなんですが 石川先生が委員長を務められている障害者政策委員会が 去年の12月に、新しい、今年の4月からの基本計画に盛り込むべき項目についてせっかく提言を出したんですけれども 12月に野田政権が安倍政権に代わって、自民党、公明党政権になったところで さまざまなものが滞るということが起きていますので 今日現在もまだ新しい障害者基本計画は発表されていません その、石川先生の出された提言であるとか、これからの基本計画がどうなっていくかについては 僕の後、石川先生にお話をしていただきますが その提言の中でも、国の行政機関等はインターネットで公表している情報の アクセシビリティを再点検し、改善することということが書かれています まさに、そのようなことが障害者にとって、あるいは高齢者にとってとても重要なことであるからです 先般から、友人たちと話をしているんですけれど 日本は高齢化に向かっています もう20%以上の人が高齢者です 高齢者の人たちを、僕も高齢者に入っているそうですが 高齢者の人たちを社会から離れたとことで たとえば、老人ホームの中でのんびり暮らしてくださいというふうにしておくことは かえって、高齢者の意欲をそぐことですし、老化を早めることになります むしろ、高齢者の持っている知識や経験を社会のなかに生かしていただくことのほうが 社会全体として幸福な方向にあります このことはすでに皆様方にもお話ししたと思います そのときにですね、ITを使うということが、高齢者でもITを使うということが多々あるわけで むしろ業界は、政府はIT利用の多数派は高齢者であるというくらいに考えるべきだと僕は思っています あるいは、障害者であると考えるべきだと思っています ユーザビリティ=使いやすさとか、アクセシビリティ=利用できるかできないかを 満たさないITサービスや機器を提供するのは時代遅れだと思います みなさん方の中にも、タブレット端末やスマートフォンをお使いの方が非常に多くいらっしゃると思います