1 00:00:15,697 --> 00:00:17,555 15年前 2 00:00:17,555 --> 00:00:20,668 私はニューヨークの公立小学校で 芸術の教師をしていました 3 00:00:20,668 --> 00:00:24,276 あるとき『シャーロットのおくりもの』を 4 00:00:24,276 --> 00:00:26,080 舞台で演じることにしました 5 00:00:26,080 --> 00:00:29,224 サウスブロンクスにある モット・ヘイブン・ビレッジ校の 6 00:00:29,224 --> 00:00:32,354 三年生の発表です 7 00:00:32,354 --> 00:00:34,762 みんなで集まって 手始めに 8 00:00:34,762 --> 00:00:40,060 E.B.ホワイトの 有名な そして素敵な物語の第1章を朗読しました 9 00:00:40,060 --> 00:00:41,968 覚えてる方もいるかもしれませんが 10 00:00:41,968 --> 00:00:46,773 お話はこんなふうに始まります お父さんのエラブルさんが 11 00:00:46,773 --> 00:00:51,863 おのを手に 豚舎へ子豚を殺しに行くと ファーンが知るのです 12 00:00:51,863 --> 00:00:55,265 (朗読)「殺さないで」 ファーンは 泣き叫びました 「かわいそうよ」 13 00:00:55,265 --> 00:00:57,214 エラブルさんは立ち止まりました 14 00:00:57,214 --> 00:00:58,990 「ファーン」と エラブルさんは 優しく言いました 15 00:00:58,990 --> 00:01:01,165 「自分の気持ちを抑えられる ようにならなくちゃ」 16 00:01:01,165 --> 00:01:03,134 「自分の気持ち?」 ファーンは 大声をはりあげました 17 00:01:03,134 --> 00:01:07,334 「生きるか死ぬかって時なのに 自分の気持ちを抑えろですって?」 18 00:01:07,334 --> 00:01:10,511 ファーンの頬を涙がつたいます ファーンはお父さんの手から 19 00:01:10,511 --> 00:01:13,362 おのをもぎとろうとしました 20 00:01:13,362 --> 00:01:14,652 (朗読 終) 21 00:01:14,652 --> 00:01:17,212 こうして子豚は助かり この後 22 00:01:17,282 --> 00:01:21,039 朝食の時に ファーンは 椅子にボール箱があるのを見つけます 23 00:01:21,079 --> 00:01:24,199 (朗読)彼女が椅子の方に行くと ボール箱はゆらゆらと揺れました 24 00:01:24,269 --> 00:01:26,565 ガリガリとひっかく ような音も聞こえます 25 00:01:26,575 --> 00:01:30,645 ファーンはお父さんの顔を見ました  ボール箱の蓋を開けてみると 26 00:01:30,685 --> 00:01:34,782 中にはブタの赤ちゃんがいて ファーンを見あげていました 27 00:01:34,842 --> 00:01:36,323 白いブタの赤ちゃんです 28 00:01:36,383 --> 00:01:40,051 朝日に照らされた耳は ピンク色でした 29 00:01:40,121 --> 00:01:44,362 「お前のブタだよ」お父さんが 言いました 「命拾いをしたブタだ 30 00:01:44,412 --> 00:01:48,428 こんなばかなことをする私を 神様が許して下さるといいんだが」 31 00:01:48,478 --> 00:01:51,671 ファーンは赤ちゃんから目を そらすことができませんでした 32 00:01:51,747 --> 00:01:54,967 「まぁ!見てちょうだい!」 ファーンは小さな声で言いました 33 00:01:55,007 --> 00:01:57,277 「ほんとに素敵な赤ちゃんよ」 34 00:01:57,327 --> 00:01:59,203 ファーンは箱のふたを そっと閉めて 35 00:01:59,249 --> 00:02:01,949 まずお父さんにキスをすると 次はお母さんにもキスをしました 36 00:02:01,959 --> 00:02:03,593 それから箱のふたを また開けると 37 00:02:03,623 --> 00:02:06,820 ブタの赤ちゃんを抱きあげて 頬ずりしました 38 00:02:06,850 --> 00:02:08,220 (さくまゆみこ訳 『シャーロットのおくりもの』より) 39 00:02:08,280 --> 00:02:11,696 この章を読み終えた後で ランチに並ぶ子供たちの中から 40 00:02:11,756 --> 00:02:14,886 ジョーイという男の子が 私の袖を引っ張りこう言いました 41 00:02:14,906 --> 00:02:18,605 「ビー先生 まるでお話の中に 自分もいる気分だったよ 42 00:02:18,685 --> 00:02:21,320 ブタの赤ちゃんが 本当に見えてるみたいだった 43 00:02:21,370 --> 00:02:24,953 あんなにお話に入りこんだことは これまでなかったよ」 44 00:02:24,993 --> 00:02:27,920 ジョーイがお話を気に入ってくれ とても嬉しかったのですが 45 00:02:27,980 --> 00:02:30,259 正直言って その時は 46 00:02:30,259 --> 00:02:32,447 それ以上にとても心配していた ことがあったのです 47 00:02:32,537 --> 00:02:35,023 枕カバーだけで どうやって農場の動物の 48 00:02:35,093 --> 00:02:36,323 衣装を作ろうか 49 00:02:36,403 --> 00:02:39,226 また子供達がセリフを 覚えられるかどうかとか 50 00:02:39,286 --> 00:02:41,392 でも成功しましたよ 51 00:02:41,492 --> 00:02:43,883 私がこのクラスに 行くといつも 52 00:02:43,973 --> 00:02:47,722 子供達は私の朗読を 楽しみにしていました 53 00:02:47,782 --> 00:02:49,948 会場の生徒の皆さん 54 00:02:49,988 --> 00:02:52,860 もしそうだったら 挙手してください 55 00:02:52,910 --> 00:02:56,084 先生やご両親の読み聞かせが 好きでしたか? 56 00:02:56,144 --> 00:03:00,114 大人の方も 覚えていますか? 好きでしたか? 57 00:03:00,204 --> 00:03:05,362 私は約20年 教師をしていて 58 00:03:05,392 --> 00:03:09,035 何千ページも 朗読してきました 59 00:03:09,075 --> 00:03:12,385 そして読み聞かせが嫌いな子供に 出会ったことは一度もありません 60 00:03:12,485 --> 00:03:18,227 彼らは面白いお話を読んでもらうのに 慣れ親しんでいます 61 00:03:18,268 --> 00:03:20,978 私は教師、母として 子供に読み聞かせをすることほど 62 00:03:21,038 --> 00:03:23,907 大切な事はないと思います 63 00:03:23,957 --> 00:03:26,733 それはどんな年齢でも 学校や家庭においてでもです 64 00:03:26,776 --> 00:03:30,816 読み聞かせによって子供達は 物語が展開していくパワーを 65 00:03:30,926 --> 00:03:33,910 独特の体験として味わい 66 00:03:34,010 --> 00:03:37,166 実際の読書の全てを 手助けされて経験できます 67 00:03:37,216 --> 00:03:39,344 つまり 世界を大きく捉え 他者の生活を知り 68 00:03:39,394 --> 00:03:43,211 そして私達自身についても 69 00:03:43,221 --> 00:03:45,961 深く理解し、考え 学んで話し合うことができるのです 70 00:03:46,001 --> 00:03:49,182 だから以前ジョーイが 私に言ったことを思い出します 71 00:03:49,232 --> 00:03:53,186 「ビー先生 僕もお話の中で ブタの赤ちゃんを本当に見た気分だった 72 00:03:53,186 --> 00:03:55,869 あんなにお話に入りこんだことは これまでなかったよ」 73 00:03:55,969 --> 00:03:57,794 私はこの言葉に強く 心を打たれました 74 00:03:57,854 --> 00:03:59,669 ジョーイは読み聞かせによって 75 00:03:59,709 --> 00:04:02,692 本の中へ入って行くことができたのです 76 00:04:02,742 --> 00:04:05,949 あたかも それまでの彼は お話の外にいたかのようです 77 00:04:05,989 --> 00:04:08,890 ジョーイだけがそう感じた わけではないのです 78 00:04:08,930 --> 00:04:12,957 多くの子供が 読書は鍵のかかった 建物のように感じています 79 00:04:12,987 --> 00:04:15,265 鍵やパスワードや適切な経験がなければ 80 00:04:15,295 --> 00:04:17,586 彼らは入っていけないのです 81 00:04:17,646 --> 00:04:19,512 だから彼らは外側に いるように感じるのです 82 00:04:19,532 --> 00:04:22,624 一部の子供にとっては 文字また音の羅列は暗号で 83 00:04:22,694 --> 00:04:25,738 ややこしい単語や 語彙を読み取るのは 84 00:04:25,768 --> 00:04:29,324 様々な理由があって とても難しいプロセスなのです 85 00:04:29,364 --> 00:04:32,466 単語の並びを読み取るだけでも 物凄く脳のエネルギーを使うので 86 00:04:32,496 --> 00:04:34,886 子供は脳の中に 余裕がなくなり 87 00:04:34,936 --> 00:04:37,777 ストーリーや意味を 汲み取ることができないのです 88 00:04:37,817 --> 00:04:40,647 中には読み取りは 簡単にできる子供もいますが 89 00:04:40,667 --> 00:04:44,730 ページの中の言葉を 翻訳しているだけのように感じるかもしれません 90 00:04:44,790 --> 00:04:47,931 私が医学書を読んだときの感覚に 近いかもしれません 91 00:04:48,001 --> 00:04:50,149 単語はわかるのですが 92 00:04:50,189 --> 00:04:54,174 内容を理解し、考え 説明することはできないのです 93 00:04:54,194 --> 00:04:58,039 みなさんも ページの半分まで読んで こう思ったことはありませんか 94 00:04:58,189 --> 00:05:00,299 「何を読んだのか さっぱり分からない」 95 00:05:00,339 --> 00:05:02,899 (笑) 96 00:05:02,949 --> 00:05:06,589 教師や親が朗読する場合には 暗号は解読済みになるのです 97 00:05:06,679 --> 00:05:09,759 大人が印刷物を手に 難しい言葉を声に出せば 98 00:05:09,799 --> 00:05:12,819 子供達は自由に 考えられます 99 00:05:12,865 --> 00:05:14,877 だから脳の全エネルギーを使って 100 00:05:14,927 --> 00:05:18,048 ストーリーを想像し 新しい事を 学ぶことができるのです 101 00:05:18,098 --> 00:05:21,376 つまり お話を聞いている子供達は 102 00:05:21,466 --> 00:05:25,579 建物内の楽しい読書パーティに 参加できるようになるのです 103 00:05:25,609 --> 00:05:30,024 子供達には 建物に入りパーティに参加して 腰を落ち着けて欲しいのです 104 00:05:30,084 --> 00:05:33,907 たとえ 自分で読める本を使って 105 00:05:33,967 --> 00:05:39,031 読み取りや読解の力や語彙を 身に着けていく途中の子供達でも 106 00:05:39,121 --> 00:05:41,831 子供が自ら読書を するようになっても 107 00:05:41,901 --> 00:05:45,055 読み聞かせをすることは 子供達が自分で読書をする上で 108 00:05:45,075 --> 00:05:47,315 この上ないインパクトを 与えます 109 00:05:47,345 --> 00:05:49,963 自分で読める本に戻って 一人で読書をする時にも 110 00:05:49,983 --> 00:05:54,608 頭の中に物語の世界が浮かんでくるのだと 分かるからです 111 00:05:54,628 --> 00:06:00,225 きちんと読むときには感じるため、考えるため 問いかけるために立ち止まるんだと分かります 112 00:06:00,265 --> 00:06:04,431 そして 物語から影響を 受けるんだと分かります 113 00:06:04,481 --> 00:06:06,919 人生が変わることも あるかもしれません 114 00:06:06,959 --> 00:06:09,620 内容に応じて読み聞かせに一息入れて 感想を挟むことで 115 00:06:09,640 --> 00:06:14,174 人を思いやる実例を示し 116 00:06:14,184 --> 00:06:17,250 人物やコミュニティが行った選択に対して 117 00:06:17,280 --> 00:06:20,171 素直な疑問を発するきっかけが得られます 118 00:06:20,211 --> 00:06:24,104 読み聞かせによって子供達は 自分とは全く異なる人々の立場に立ち 119 00:06:24,134 --> 00:06:27,162 その世界に入って行くことが できます 120 00:06:27,212 --> 00:06:30,095 登場人物の中に 自分と同じ物を見つけると 121 00:06:30,115 --> 00:06:32,334 自分は一人ではないと感じたり 122 00:06:32,344 --> 00:06:34,304 希望を与えてくれるかもしれません 123 00:06:34,334 --> 00:06:38,391 戦争でお父さんとお兄さんが 殺された後 124 00:06:38,441 --> 00:06:41,967 スーダンからミネソタ州へ 逃れてきた幼い難民の子 125 00:06:42,007 --> 00:06:45,681 ケックに何が 起きるのでしょうか? 126 00:06:45,731 --> 00:06:48,552 先天性の顔面異常を抱える 127 00:06:48,562 --> 00:06:51,595 オージーから私達は 何を学べるでしょうか? 128 00:06:51,615 --> 00:06:53,529 11歳のデルフィンは 129 00:06:53,559 --> 00:06:56,862 1968年カリフォルニア州の オークランドへ渡り 130 00:06:56,902 --> 00:07:00,918 ブラックパンサー党で活動する お母さんに初めて会いに行きます 131 00:07:00,938 --> 00:07:02,657 アンマリーは 132 00:07:02,677 --> 00:07:05,147 ホロコースト時代に親友が デンマークへ逃亡する 133 00:07:05,177 --> 00:07:06,153 手助けをします 134 00:07:06,183 --> 00:07:09,362 読み聞かせがなければ 発見できなかった 135 00:07:09,362 --> 00:07:12,238 あるいは詳しく探り得なかった 136 00:07:12,248 --> 00:07:15,393 物語、書物、アイデア、情報へと 137 00:07:15,423 --> 00:07:18,696 子供達を導くことができるのです 138 00:07:18,706 --> 00:07:20,395 そしてまた 139 00:07:20,395 --> 00:07:24,640 読み聞かせは 大人が テレビ、携帯、パソコンから 140 00:07:24,670 --> 00:07:27,431 離れる良い機会を 作ります 141 00:07:27,451 --> 00:07:29,780 一緒に読んだり 142 00:07:29,800 --> 00:07:34,404 話したりする単純な行動で お互いに関わりを持つことができます 143 00:07:34,424 --> 00:07:37,874 学校で読み聞かせをする時は 大抵一つの場所に集まります 144 00:07:37,894 --> 00:07:40,664 子供達には こんなことを教えます 一緒に話そう 145 00:07:40,694 --> 00:07:42,019 相手の話を聞こう 146 00:07:42,049 --> 00:07:45,348 お互いに目を合わせて 「あなたはどう思う?」と質問して 147 00:07:45,368 --> 00:07:47,922 「私はこう思います その理由は―」 と答えよう 148 00:07:47,952 --> 00:07:51,995 また 毎日クラスで つながりと 喜びの 149 00:07:52,015 --> 00:07:54,935 時間を作っています 150 00:07:54,965 --> 00:07:56,285 家庭では 151 00:07:56,315 --> 00:07:59,630 携帯電話から離れて 子供たちのために じっくりと 152 00:07:59,670 --> 00:08:02,478 時間を作るチャンスです 153 00:08:02,498 --> 00:08:07,453 子供を脇に座らせて 本を一緒に読んで話してもいいですね 154 00:08:07,453 --> 00:08:10,279 もう膝の上に座らせられなくなっても 155 00:08:10,309 --> 00:08:14,643 だんだん携帯の方が良くなってきても 156 00:08:14,683 --> 00:08:17,697 子供が3、4歳より大きくなって 157 00:08:17,727 --> 00:08:20,312 8、10、12歳、思春期を迎え 158 00:08:20,332 --> 00:08:23,877 いろいろと親に話さなくなってきても 159 00:08:23,917 --> 00:08:30,777 一緒に読める本があれば 子供達の内面を見る助けになるでしょう 160 00:08:30,807 --> 00:08:32,559 シェリー・タークルの新しい著書 161 00:08:32,559 --> 00:08:35,559 “Reclaiming Conversation”(会話を取り戻す)では 162 00:08:35,559 --> 00:08:41,142 面と向かって会話することが いかに大切かを説いています 163 00:08:41,162 --> 00:08:45,759 タークルによれば 「オンラインでの断片的な繋がりを寄せ集めれば 164 00:08:45,786 --> 00:08:49,652 実際の密な会話と 同じだと考えがちです 165 00:08:49,682 --> 00:08:51,435 でも違うのです」 166 00:08:51,459 --> 00:08:54,043 私は一緒に朗読することこそ 167 00:08:54,063 --> 00:08:58,041 密な会話の機会を与えると 信じています 168 00:08:58,061 --> 00:09:03,618 一貫して意義ある方法で お互い関わって会話ができる機会です 169 00:09:03,638 --> 00:09:06,950 だから子供は本を好きになり 170 00:09:06,960 --> 00:09:09,272 読書を沢山するだけでなく 171 00:09:09,302 --> 00:09:12,186 深く考え 様々な視点から 172 00:09:12,208 --> 00:09:14,838 思慮する事を学ぶのです 173 00:09:14,848 --> 00:09:19,729 子供達は聞くことを学び 探求することを学びます 174 00:09:19,749 --> 00:09:22,802 ありがとうございました 175 00:09:22,802 --> 00:09:25,769 (拍手)