この動画は、放送機材のikanの提供でお送りします そして同じく、Blackmagic Designの提供でお送りします FilmmakerIQ.comのジョン・ヘスです 今日はアスペクト比の進化についてお話します アスペクト比は、基本かつ奥の深い歴史です アスペクト比は動画の高さと幅の比率です 4:3とか16:9のような2つの数字で表します 1.85や2.35といった数字で書くこともあります 2.35:1のように比で書いたりもします さて、これらはどのように始まったのか まず歴史をさかのぼり 史上初の映画について調べましょう ウィリアム・ケネディ・ディクソンという男が登場します 彼はエジソンの研究所で写真技師として働いていました 1890年代初め、イーストマン・コダック社がフィルムの生産を始めると エジソンはこれをキネトスコープと呼ばれる機械に使います 映写機の原型ですね 数年後、試行錯誤の末プロトタイプが完成 ディクソンは1コマの高さをフィルム穴4つ分と決めました これで1コマは0.95インチ×0.735インチになりました 4:3、あるいは1.33という比率になります なぜディクソンがこのサイズに決めたのかは分かりません ですが、これが広まりました 1909年、モーション・ピクチャー・パテント・カンパニーが もっとも多くの会社はエジソンの影響下にあったのですが アメリカ向けの35㎜フィルムは1コマの高さを4穴分 4:3のアスペクト比にすることを宣言しました これでアメリカ国内での規格が決まったわけです それから長い間、変化はありませんでした 音声付の映画が発明された1929年 フィルムの画像の横に音声が焼きこまれるため アスペクト比に変化が生まれました 1932年、映画芸術科学アカデミーが 音声トラックのスペースを空けるため 1コマの上下をカットしてアスペクト比を1.37に定めました これは1.33とほぼ同じで互換性があります これが「アカデミー比」と呼ばれるものです そして長年に渡りハリウッドで使われることになりました 1950年代は映画にとって厳しい時代でした 映画業界はテレビの登場により再編を余儀なくされます 当時の映画のアスペクト比は4:3でしたから テレビもそれに合わせて4:3にするのはごく自然なことでした 新しいメディアとしてテレビは大きく注目されました そして映画を見る人は減少してしまいました では映画はどのようにして観客を取り戻したのでしょうか 家庭ではできないことをやったのです 1952年9月30日、映画は宣戦布告を行います 横長のスクリーンを使って見た目を変えてきたのです 「みなさん、これがシネラマです!」 「ジェットコースターが新しいスクリーンを切り開く!」 「新しい次元へ!」 「その次元とは……」 「ワイドスクリーンとステレオサウンドだ!」 フレッド・ウォーラーは、複数のカメラと映写機を使った 爆撃機のシミュレーターの開発者でした シネラマカメラは35mmフィルム3本を27㎜レンズで撮影します それぞれのコマの高さは穴6個分となります これで視野147度、アスペクト比2.59を実現したのです 3台の映写機で大きく湾曲したスクリーンに映写し 音響は7chのサラウンドでした シネラマは大変な人気を博しました ニューヨークのワーナー・シアターで 2年間も上映されたのです 3台のカメラで同時に撮影するのは大変な苦労でした 焦点距離が1種類しかないからです そして超広角でした 広角過ぎて役者の位置取りに苦労しました 目線の向きを正しく見せる必要があったからです 当初は旅行記やドキュメンタリーの媒体としてロードショウ形式で公開され、大人気となりました 10年後の1962年になってから やっと2本の「映画」が撮影されました 「不思議な世界の物語」と「西部開拓史」です シネラマの欠点は、撮影と映写設備のコストの高さでした しかしワイドスクリーンでの上映は大人気でした シネラマが登場して8か月後の1953年4月 パラマウントは平面スクリーン用シネラマ映画をリリースします 「シェーン」です 最初は1.85のアカデミー比でしたが パラマウントは上下をカットして1.66にしたのです それほど大きな違いは出ませんでしたが 注目すべきはスクリーンの大型化です ニューヨークの劇場では30フィートのスクリーンに代えて 50フィートのものが導入されました また3chのサウンドトラックが採用されました コマの上下をカットしてワイドにするのはよくないと パラマウント自身も分かっていたようです スクリーンを大きくすると、画像の粒子も荒くなり 画質が悪くなります 新しい方法が必要でした シネラマ登場ののち、20世紀フォックスの幹部は フランスでアンリ・クレティアン博士に接触します 1920年代にアナモルフィック・レンズを発明した人物です アナモルフィック・レンズは 像が一方向だけに歪む特殊なレンズです 言い換えると画像をぎゅっと圧縮するのです 2:1に圧縮するシネマスコープは 2.35というアスペクト比になりました 通常の35㎜フィルムが使用できました 多重録音も可能です シネマスコープは1953年の「聖衣」で初めて使われました これも大ヒットしました シネマスコープは時代の勝者となりました アナモルフィック・レンズには問題があったものの シネラマよりずっと楽に撮影できたのです また映画館の設備にも ほとんど投資が必要ありませんでした メジャースタジオはほぼすべて シネマスコープを導入しました たった1つ、ワイド競争を始めたパラマウント以外は ワイド化のためフィルムの上下を マスクするよりはよかったものの シネマスコープはフィルムの粒子の粗さの問題を 解決できませんでした そこでパラマウントはビスタビジョンを開発します ビスタビジョンはこれまでの35㎜を横向きに使います 1コマを横8穴分とし アスペクト比は1.85となりました 上映用フィルムは、撮影したフィルムを 通常の向きに戻して現像されます こうすることで 画像の粒子を小さくすることができました 最初のビスタビジョン作品は 1954年の「ホワイト・クリスマス」でした その後「十戒」など多くの作品で採用されています 最も有名なのは アルフレッド・ヒッチコックの作品群でしょう 「泥棒成金」「めまい」「北北西に進路をとれ」など 多くの作品をビスタビジョンで発表しています 50年代にはワイドフォーマットがたくさん誕生しました スーパースコープ、テクニラマ、シネミラクル、ビスタラマなどです しかし35㎜フィルムにも限界があります エンジニアはより大きなフィルムを作り出しました シネラマ開発者の一人であった マイク・トッドのトッドAOがそれです アメリカン・オプティカル社と開発したトッドAOは カメラ1台でシネラマと同じことができました アスペクト比は2.20 トッドAOは1955年 ロジャー・ハマースタインの「オクラホマ」で初めて使用されました その後「80日間世界一周」でも使われました 両方とも大ヒット作品となりました トッドAOは 他にもロジャー・ハマースタインのレパートリー、例えば 「南太平洋」や 「サウンド・オブ・ミュージック」でも使われました そしてD-150システムが開発され 1970年の「パットン大戦車軍団」が誕生します 1954年、ワイド化が大流行していたころ パナビジョンという小さな会社が アナモルフィック・レンズの不足を補うため生産を開始します 当初はシネマスコープ向けレンズのみを扱っていましたが、すぐ業界トップとなりました シネマスコープ初期の問題の多くを解決したのです 50年代後半 パナビジョンはシネマスコープの改良をはじめます そして独自の新しいカメラシステムと フォーマットを作り出しました 例えばMGM65です 70㎜フィルムを用い 「ベン・ハー」の戦車競技シーンの撮影に使われました 2.76という非常にワイドなアスペクト比をもっていました MGM65はスーパーパナビジョン70に進化しました MGM65のようなアナモルフィック・レンズではなく ごく普通のレンズを使用するようになりました アスペクト比は2.20でした これは「アラビアのロレンス」で使用されました 1962年アカデミー撮影賞を受賞しています 70mmフィルムは非常に高価でした 35㎜フィルムの材質は改善され 以前よりも画像の粒子が細かくなりました そのため70mmや IMAXは特殊な用途向けのみになってしまいました さて、サイレント時代の1.33、または4:3 1.37のアカデミー比 2.59のシネラマ 2.35のシネマスコープ 1.85のビスタビジョン 2.20のトッドAOとスーパーパナビジョン70 「ベン・ハー」で使われた2.76のMGM65 それでは16:9、または1.77はどこにいるのでしょう? その答えを探すためには、映画の弟、テレビに話を戻しましょう 1980後半、ハイビジョン規格が計画されつつあるころ 米国映画テレビ技術者協会のカーンズ・パワーズが 「妥協案」として16:9を提案しました 16:9は4:3と2.35のシネマスコープの中間にあたります この2つはアスペクト比の主流でした 16:9であれば、この2つのいずれも ほぼ同じ面積で投影できます つまり4:3にも2.35のワイドにも都合がよいものでした このように16:9というのは妥協の産物であったのです そしてすべてのビデオ生産物のアスペクト比になったのです DVD、ハイビジョン、4K放送などです ウィリアム・ディクソンがエジソンの研究所で4:3を発明し 50年代にはシネラマによるワイド革命 そしてデジタル時代の16:9 アスペクト比の進化 そして私たちへの影響は計り知れないものがあります もちろんこれはあくまでも器 画家にとってもキャンバスでしかないのです しかし、キャンバスの形は絵の描かれ方を左右します アスペクト比という偉大なツールを使って 素晴らしい作品を作ってください ジョン・ヘスでした。 FilmmakerIQ.comでまたお会いしましょう