1 00:00:07,921 --> 00:00:10,361 壊滅的な核戦争の後 2 00:00:10,361 --> 00:00:14,661 250年間の眠りから リリス・イヤポが目覚めたとき 3 00:00:14,661 --> 00:00:18,857 オアンカリという宇宙人の集団に 囲まれていることに彼女は気付きました 4 00:00:18,857 --> 00:00:21,737 高度に進化したこれら生命体は 人間と交配することで 5 00:00:21,737 --> 00:00:23,157 DNAを交換を望んでいました 6 00:00:23,157 --> 00:00:27,517 それぞれの種の遺伝子を多様化し 相手の種を強化するためです 7 00:00:27,517 --> 00:00:32,257 さもなくば 全人類の 生殖能力を奪うと言います 8 00:00:32,257 --> 00:00:35,477 人類は生物学的に未知の世界に 飛び込むべきか 9 00:00:35,477 --> 00:00:38,327 それとも独自性にこだわり 滅びるべきなのか 10 00:00:38,327 --> 00:00:41,317 このような問いがオクティヴィア・バトラーの 3部作『血をわけた子』の 11 00:00:41,317 --> 00:00:44,217 第1部『Dawn』で影を落とします 12 00:00:44,217 --> 00:00:47,237 SFの常識を覆し 先見の明のある物語作家として 13 00:00:47,237 --> 00:00:50,097 バトラーは 作品を通して 驚くべき世界を構築し 14 00:00:50,097 --> 00:00:53,187 夜も眠れないほどの ジレンマを模索していました 15 00:00:53,187 --> 00:00:54,996 1947年生まれのバトラーは 16 00:00:54,996 --> 00:00:59,046 恥ずかしがり屋で内向的な子供として カルフォルニア州のパサデナで育ちました 17 00:00:59,046 --> 00:01:01,386 彼女は幼い頃から物語を思いつき 18 00:01:01,386 --> 00:01:04,306 すぐに そのシナリオを 紙に走り書きをしていました 19 00:01:04,306 --> 00:01:07,236 12歳のとき 母にタイプライターをねだりました 20 00:01:07,236 --> 00:01:12,256 『Devil Girl From Mars』という 平凡なSF映画を見た後にです 21 00:01:12,256 --> 00:01:14,097 映画に感銘を受けなかったバトラーは 22 00:01:14,097 --> 00:01:16,707 もっといい物語が書けると確信したのです 23 00:01:16,707 --> 00:01:19,437 SFの多くは 白人の男性ヒーローが 24 00:01:19,437 --> 00:01:22,897 宇宙人をやっつけるか 褐色の肌を持った人たちの救世主です 25 00:01:22,897 --> 00:01:26,607 バトラーは様々な読者のために 多種多様な登場人物を書きたかったのです 26 00:01:26,607 --> 00:01:31,187 彼女は彼らの経験の描写に ニュアンスと深みをもたらしました 27 00:01:31,187 --> 00:01:32,244 バトラーにとって 28 00:01:32,244 --> 00:01:35,924 想像力はSFの種を蒔くためだけに あるのではなく 29 00:01:35,924 --> 00:01:40,794 不公平な世界を生き抜くための 独自の戦略だったのです 30 00:01:40,794 --> 00:01:43,372 彼女の作品は 世界の厄介な特性をよく取り上げました 31 00:01:43,372 --> 00:01:48,182 人種 性別 階級 能力が根底にある 差別などです 32 00:01:48,182 --> 00:01:52,125 そして新たな状況下でその特性を 考察するよう読者をいざないます 33 00:01:52,125 --> 00:01:53,775 最も愛されている彼女の小説の一つ 34 00:01:53,775 --> 00:01:55,265 『Parable of the Sower』は 35 00:01:55,265 --> 00:01:56,805 このパターンに沿っています 36 00:01:56,805 --> 00:01:59,565 ここにはローレン・オヤ・オラミナの姿が 書かれています 37 00:01:59,565 --> 00:02:03,775 そして企業の強欲 不平等 環境破壊によって荒廃した 38 00:02:03,775 --> 00:02:06,865 近未来のカリフォルニアを生き抜く姿が 描かれています 39 00:02:06,865 --> 00:02:08,795 小説の中で彼女は ハイパーエンパシーという 40 00:02:08,795 --> 00:02:11,945 他人の痛みを自らの痛みとして感じ 41 00:02:11,945 --> 00:02:14,155 時に他人の喜びをも 感じる能力を持っています 42 00:02:14,155 --> 00:02:18,325 ローレンは 生き延びるための場所を探し求め 難民の集団と旅に出ます 43 00:02:18,325 --> 00:02:23,250 そこで彼女らは ローレンが開いた宗教 「アースシード」に則った生き方を模索します 44 00:02:23,250 --> 00:02:24,830 これは 人間は常に変化する世界に 45 00:02:24,830 --> 00:02:28,240 適応すべきだという考えに 基づいていました 46 00:02:28,240 --> 00:02:30,710 ローレンの探求は ある事実に根差していました 47 00:02:30,710 --> 00:02:32,950 それは カルフォルニア州法案187条 のことで 48 00:02:32,950 --> 00:02:36,950 これが違憲とみなされる前は 49 00:02:36,950 --> 00:02:39,580 不法入国者の基本的人権を否定する 内容となっていました 50 00:02:39,580 --> 00:02:42,990 バトラーは当時のニュースを 彼女の作品によく取り込んでいました 51 00:02:42,990 --> 00:02:47,360 1998年に発表された『The Parable of the Sower』 の続編『Parable of the Talents』では 52 00:02:47,360 --> 00:02:49,281 仮想現実と「感電首輪」を用いて 53 00:02:49,281 --> 00:02:53,591 アメリカ人を支配する 大統領候補者のことを書いています 54 00:02:53,591 --> 00:02:56,481 彼のスローガンは 「アメリカ合衆国を再び偉大な国に」でした 55 00:02:56,481 --> 00:02:58,341 人々はバトラーの先見性を認めており 56 00:02:58,341 --> 00:03:01,661 バトラー自身は歴史の再考に 興味を持っていました 57 00:03:01,661 --> 00:03:03,771 例えば『キンドレッド 絆の召喚』では 58 00:03:03,771 --> 00:03:09,241 代々受継がれているメリーランド州の農園に 女性が何度も時を巻き戻されます 59 00:03:09,241 --> 00:03:13,771 序盤 彼女は曾祖母をいずれ 強姦することになる白人男性の命を 60 00:03:13,771 --> 00:03:15,532 救うことが使命であることを知ります 61 00:03:15,532 --> 00:03:19,662 彼を助けなければ 彼女自身の存在はなくなります 62 00:03:19,664 --> 00:03:23,074 この厳しいジレンマでダナは奴隷制度と 黒人女性に対する性暴力という 63 00:03:23,074 --> 00:03:26,684 存在し続けるトラウマと 向き合わざるを得なくなります 64 00:03:26,684 --> 00:03:29,334 女性たちが新しい社会を築き上げ 65 00:03:29,334 --> 00:03:31,864 タイムトラベラーが歴史的な争いを乗り越え 66 00:03:31,864 --> 00:03:33,774 種族間で繋がりを深めていく物語で 67 00:03:33,774 --> 00:03:38,694 バトラーはアフロフューチャーリズムの 人気の高まりに多大な影響を与えました 68 00:03:38,694 --> 00:03:40,000 この文化運動で 69 00:03:40,000 --> 00:03:44,820 過去 現在 未来に影響を受けた 黒人の作家やアーティストが 70 00:03:44,820 --> 00:03:50,200 魔法 歴史 技術などを 取り入れた作品を創り出しています 71 00:03:50,200 --> 00:03:53,100 ローレンが『Prable of the Sower』 で学ぶように 72 00:03:53,100 --> 00:03:55,360 「あなたが触れるものは全て変化し 73 00:03:55,360 --> 00:03:57,729 あなたが変化させたものは あなたを変化させる 74 00:03:57,729 --> 00:04:01,169 永続的な唯一の真実は変化である」