0:00:01.458,0:00:05.000 15年の間 人々の考えを[br]変えようとしてきました 0:00:05.917,0:00:09.768 大衆文化と新技術を利用して[br]人々の文化規範を変えるのが 0:00:09.792,0:00:11.250 私の仕事です 0:00:11.833,0:00:15.518 人権問題を知ってもらうためのゲームを作り 0:00:15.542,0:00:20.601 不公平な移民法を知ってもらうための[br]アニメも作りました 0:00:20.625,0:00:24.251 ホームレスに対する認識を変えるために 0:00:24.251,0:00:27.518 位置情報を利用した[br]拡張現実アプリまで 作りました 0:00:27.542,0:00:29.476 ポケモンGOよりずっと前ですよ 0:00:29.500,0:00:30.851 (笑) 0:00:30.875,0:00:34.893 しかしそのうち ゲームやアプリが [br]人の態度や行動を 0:00:34.917,0:00:37.393 本当に変えることができるのか[br]疑問に思い始めました 0:00:37.417,0:00:40.434 もし変えられたとして[br]その変化を測れるのかということもです 0:00:40.458,0:00:43.434 その過程の背後には[br]どんな科学が存在するのでしょうか 0:00:43.458,0:00:47.184 そこで焦点を変え [br]メディアやテクノロジーの開発ではなく 0:00:47.208,0:00:50.250 神経生物学的な効果の測定を始めました 0:00:51.458,0:00:53.309 私が発見した事を お話しします 0:00:53.333,0:00:57.226 ウェブ 携帯端末 仮想現実や拡張現実は 0:00:57.250,0:00:59.934 神経システムを書き換えていました 0:00:59.958,0:01:02.917 それらは文字通り 脳の構造を変化させます 0:01:03.875,0:01:08.851 精神に良い影響を与えようと思って[br]私が使っていたテクノロジーが 0:01:08.875,0:01:13.268 実は 共感や意思決定に必要な脳の機能を 0:01:13.292,0:01:15.143 むしばんでいたのです 0:01:15.167,0:01:19.309 それどころか[br]ウェブや携帯端末に依存することで 0:01:19.333,0:01:23.434 認知能力や感情が奪われて 0:01:23.458,0:01:27.018 私たちは社会的にも情緒的にも[br]能力が低下しているかもしれません 0:01:27.042,0:01:30.333 私は自分が この人間性喪失の[br]共謀者であるかのように感じました 0:01:31.292,0:01:35.424 社会問題についてのメディアを[br]作り続ける前に 0:01:35.424,0:01:40.375 テクノロジーが及ぼす悪影響を[br]分析する必要があることに気づきました 0:01:40.917,0:01:43.684 この問題に立ち向かうため 考えました 0:01:43.708,0:01:46.441 「どうやったら 共感のメカニズムや 0:01:46.441,0:01:49.698 認知 感情 動機といった要素を 0:01:49.698,0:01:54.018 私たちの行動を促す[br]ストーリー材料を作る原動力に 0:01:54.042,0:01:55.563 変換できるのか」 0:01:56.583,0:02:00.518 この問いに答えるため[br]私は機械を作らざるを得ませんでした 0:02:00.542,0:02:02.268 (笑) 0:02:02.292,0:02:05.184 オープンソースのソフトの生体認証機器で 0:02:05.208,0:02:08.684 Limbic LabというAIシステムの開発です 0:02:08.708,0:02:10.143 この機器は 脳や身体の 0:02:10.167,0:02:14.393 メディアやテクノロジーに対する[br]無意識的な反応を計測するだけでなく 0:02:14.422,0:02:17.393 得られた生物学的反応に基づいて[br]内容を適用させる― 0:02:17.417,0:02:19.625 機械学習を利用しています 0:02:20.667,0:02:24.184 私の目標は [br]どんなストーリー材料の組み合わせが 0:02:24.208,0:02:28.191 その特定の視聴者の興味を[br]最もそそるのかを突き止め 0:02:28.208,0:02:31.336 社会的公平 文化 教育に関わる機関が 0:02:31.336,0:02:35.723 より効果的なメディアを[br]制作できるようにすることです 0:02:35.917,0:02:38.768 Limbic Labは2つの要素から成っています 0:02:38.792,0:02:41.733 ストーリーエンジンとメディアマシンです 0:02:42.375,0:02:46.065 ある視聴者が メディアコンテンツの[br]観賞や利用をしている間 0:02:46.065,0:02:47.865 ストーリーエンジンは 0:02:47.865,0:02:53.239 脳波や心拍数 血流 体温 筋肉収縮[br]また視線や顔の表情といった 0:02:53.239,0:02:56.101 生物物理学的なリアルタイムデータを 0:02:56.125,0:02:59.253 取り込んで 同期させます 0:03:00.083,0:03:04.333 データは ストーリー展開や[br]キャラクターの会話 0:03:04.333,0:03:07.250 カメラの角度などにおいて[br]特徴的な場面から集めます 0:03:08.292,0:03:11.018 ドラマシリーズ[br]『ゲーム・オブ・スローンズ』の 0:03:11.042,0:03:12.741 あるラストシーンのように 0:03:12.741,0:03:14.934 突然 全員が死ぬような場面です 0:03:14.958,0:03:16.208 (笑) 0:03:17.042,0:03:20.226 その人の政治理念も 0:03:20.250,0:03:23.393 サイコグラフィックス(心理学的属性)や[br]人口統計的データと併せて 0:03:23.417,0:03:25.184 システムに統合されます 0:03:25.208,0:03:27.917 その人をより深く理解するためです 0:03:28.833,0:03:30.375 例を挙げましょう 0:03:31.708,0:03:35.919 好きなテレビ番組と[br]社会正義に対する考えの関係を見ると 0:03:35.919,0:03:40.891 移民問題を重要な問題の[br]上位3位内に挙げるアメリカ国民は 0:03:40.891,0:03:44.958 ドラマ『ウォーキング・デッド』を[br]好む傾向にあります 0:03:44.958,0:03:49.453 興奮を味わう為なのですが [br]それはアドレナリンの計測でわかります 0:03:49.792,0:03:53.726 一人の人間の生物学的特徴と[br]調査への回答を組み合わせて 0:03:53.750,0:03:58.601 独自のメディアパターンが[br]できあがります 0:03:58.625,0:04:02.893 そして私たちの予測モデルが[br]メディアパターンの共通性を見つけだし 0:04:02.917,0:04:04.893 どんなストーリー材料が 0:04:04.917,0:04:07.724 その人を不安や無関心ではなく 0:04:07.724,0:04:11.393 利他的な行動へ導くのかを教えてくれるのです 0:04:11.417,0:04:13.601 データベースに [br]テレビシリーズからゲームまで 0:04:13.625,0:04:16.851 様々なメディアから[br]多くのパターンを集めるほど 0:04:16.875,0:04:19.542 予測モデルの精度が上がります 0:04:20.417,0:04:24.602 つまりメディアゲノムを[br]初めて解読しているのです 0:04:24.602,0:04:28.083 (拍手と歓声) 0:04:32.083,0:04:35.292 ヒトゲノムは人間のDNA配列にある― 0:04:35.292,0:04:37.497 すべての遺伝子を特定するのに対し 0:04:37.917,0:04:41.143 メディアパターンの 増大するデータベースは 0:04:41.167,0:04:45.292 ある個人のメディアDNAを[br]特定することができるのです 0:04:46.250,0:04:49.913 既にLimbic Labのストーリーエンジンは 0:04:50.333,0:04:53.768 コンテンツ制作者がストーリーを洗練させて 0:04:53.768,0:04:57.368 特定の視聴者の共感を[br]個人レベルで引き出すのに役立っています 0:04:59.042,0:05:01.226 Limbic Labのもう一つの要素である― 0:05:01.250,0:05:03.226 メディアマシンは 0:05:03.250,0:05:07.726 メディアがどのように情緒的 生理的な[br]反応を引き起こすのかを調べ 0:05:07.750,0:05:10.184 個人特有のメディアDNAを対象とした 0:05:10.208,0:05:13.362 コンテンツライブラリからシーンを抽出します 0:05:14.042,0:05:17.624 人工知能を生体データに適用することで 0:05:17.624,0:05:20.684 個々人に特化した経験を作り出せるのです 0:05:20.708,0:05:26.262 リアルタイムの無意識な反応に基づいて[br]選ばれた内容を利用するのです 0:05:26.625,0:05:31.164 非営利団体やメディア制作者が[br]リアルタイムで 0:05:31.164,0:05:34.119 視聴者の感想を[br]知ることができたらどうでしょう 0:05:34.119,0:05:36.952 そして その場で内容を変えられたら? 0:05:36.952,0:05:40.678 私は それが将来のメディアの姿だと思います 0:05:41.333,0:05:44.308 これまで メディアや[br]社会変革戦略のほとんどは 0:05:44.308,0:05:46.809 大衆としての視聴者に[br]訴えかけようとしていました 0:05:46.833,0:05:50.663 しかしこれからのメディアは[br]個人毎にカスタマイズされるのです 0:05:51.458,0:05:54.143 メディア消費のリアルタイム計測と 0:05:54.167,0:05:57.018 自動メディア制作が標準化することで 0:05:57.042,0:06:01.101 私たちはじきに サイコグラフィックスと[br]生体データとAIを融合させたものを利用して 0:06:01.125,0:06:06.175 個々人の要求に応じたメディアを[br]消費するようになるでしょう 0:06:06.250,0:06:09.809 個人のDNAに合わせて[br]薬をカスタマイズするようなものです 0:06:09.833,0:06:12.000 「バイオメディア」と呼びましょう 0:06:13.042,0:06:15.949 私は現在 ノーマン・リア・センターと共同で 0:06:15.949,0:06:18.249 Limbic Labの予備研究を行っています 0:06:18.375,0:06:22.101 ストーリーのあるテレビ番組の[br]トップ50を調査対象にしたものです 0:06:22.125,0:06:25.143 しかしある倫理的なジレンマを抱えています 0:06:25.167,0:06:29.018 もし私の開発したツールが[br]武器として使われるとしたら 0:06:29.042,0:06:30.723 それを作るべきでしょうか 0:06:31.750,0:06:35.221 Limbic Labをオープンソース化し[br]だれもが利用できるようにすることで 0:06:35.221,0:06:38.875 リスクも生じます[br]支配的な政府や利益至上主義の企業が 0:06:38.875,0:06:44.103 フェイクニュースやマーケティングや[br]大衆操作のために 0:06:44.103,0:06:46.256 プラットフォームを私物化するかもしれません 0:06:47.375,0:06:50.750 ですから私の研究を 視聴者にとって[br]遺伝子組み換え情報のラベルと同等に 0:06:50.750,0:06:55.053 透明性のあるものにすることが[br]非常に大事だと考えています 0:06:55.333,0:06:58.335 ですが それだけでは不十分です 0:06:59.208,0:07:00.851 クリエイティブ・テクノロジストとして 0:07:00.875,0:07:03.101 私たちには責任があります 0:07:03.125,0:07:07.893 現在のテクノロジーが 文化的価値観と[br]社会的行動に どのように影響するかを 0:07:07.917,0:07:09.934 十分に検討するだけでなく 0:07:09.958,0:07:14.893 未来のテクノロジーがどこへ向かうのか[br]積極的に議論しなければなりません 0:07:14.917,0:07:18.976 私たちが 倫理的に[br]確約できることを願います 0:07:19.000,0:07:21.351 身体の情報を利用して 0:07:21.375,0:07:24.809 本物で公正な物語を作ることを― 0:07:24.833,0:07:27.250 それはメディアとテクノロジーを [br]有害な武器ではなく 0:07:27.250,0:07:30.726 人を癒すストーリーにするためなのです 0:07:30.750,0:07:32.018 ありがとうございました 0:07:32.042,0:07:36.039 (拍手と歓声)