0:00:01.112,0:00:05.063 私の旅はニューヨーク、ブロンクスの 0:00:06.098,0:00:07.866 寝室一部屋だけのアパートで 0:00:07.890,0:00:10.561 2人の姉妹と移民の母との[br]暮らしから始まりました 0:00:11.712,0:00:14.519 ご近所とは仲良しでした 0:00:15.382,0:00:16.890 皆 生き生きとしていました 0:00:16.914,0:00:19.359 突然メレンゲ(ダンス)を踊ったり 0:00:19.383,0:00:21.772 アパートの玄関口で[br]ご近所同士お喋りをして 0:00:21.796,0:00:25.219 ドミノをしながら [br]活気に満ちた会話をしました 0:00:26.327,0:00:27.789 それが故郷でした 0:00:28.852,0:00:30.344 懐かしいのですが 0:00:31.368,0:00:32.964 単純なものでは[br]ありませんでした 0:00:33.645,0:00:37.259 実際 学校中の誰もが[br]私達の住む界隈を知っていました 0:00:37.283,0:00:41.398 そこはマリファナやドラッグを[br]買いに来る所だからです 0:00:41.950,0:00:44.520 ドラッグの取り引きでは[br]衝突も起こります 0:00:44.544,0:00:48.413 私達は銃声を聞きながら[br]寝ることもありました 0:00:49.839,0:00:52.692 不安な子ども時代を過ごしました 0:00:53.121,0:00:55.549 自分達の身の安全への不安です 0:00:56.803,0:00:58.201 母も同じ気持ちでした 0:00:59.277,0:01:03.871 日常目にする暴力が自分達の[br]命を脅かすのではないかと恐れていました 0:01:04.337,0:01:06.063 貧困のうちに暮らすということは 0:01:06.087,0:01:08.762 同じ界隈で暮らす近所の人達が 0:01:08.786,0:01:10.071 私達を傷つけるかもしれない[br]ということです 0:01:10.851,0:01:13.881 私達はずっと[br]ブロンクス育ちでしたが 0:01:14.566,0:01:17.562 母は不安に駆られて即座に 0:01:17.586,0:01:22.356 コネチカットまで[br]車を飛ばすことにしたのです 0:01:22.380,0:01:23.452 (笑) 0:01:23.476,0:01:27.833 全額支給の奨学金付きで[br]私を全寮制の学校に託したのです 0:01:27.857,0:01:33.591 まったく 我が子の[br]身を守ると決意した 0:01:33.615,0:01:36.167 母の底力を[br]侮ってはいけませんよ 0:01:37.010,0:01:38.292 (声援) 0:01:38.316,0:01:40.735 (拍手) 0:01:43.553,0:01:45.004 寄宿学校では 0:01:46.658,0:01:48.795 生まれて初めて 0:01:49.867,0:01:52.184 安心して眠る事が出来ました 0:01:53.391,0:01:55.396 寮の部屋に[br]鍵を掛けずにすみました 0:01:55.968,0:01:57.803 芝生の上を裸足で歩き 0:01:58.291,0:02:02.410 星で一杯の夜空を眺めました 0:02:04.061,0:02:05.992 初めての体験で幸せでした 0:02:07.172,0:02:09.512 しかしまた[br]初めての体験は他にもあって 0:02:10.298,0:02:13.825 すぐに そこが[br]自分の居場所ではないと感じました 0:02:14.469,0:02:17.358 私は正しい話し方を[br]していなかったと知り 0:02:17.382,0:02:20.682 キチンとした喋り方を[br]説明する為に 0:02:21.226,0:02:25.287 先生はある言葉の[br]正しい発音の仕方を 0:02:25.759,0:02:29.291 皆の前で 何度も練習させました 0:02:31.068,0:02:33.889 ある日先生が廊下で[br]こう言うのだと私を指導しました 0:02:35.040,0:02:37.701 「アーースキング」 0:02:39.535,0:02:41.135 先生はこれを大声で言うのです 0:02:42.024,0:02:46.946 「ディナ『アキシング』じゃないの[br]それじゃaxe(斧)を持って走り回っているみたい 0:02:47.809,0:02:49.217 バカみたいでしょ」 0:02:50.082,0:02:55.016 さて この時点でクラスメートの[br]冷笑が想像出来るでしょう 0:02:56.258,0:02:57.779 しかし先生は こう続けました 0:02:59.246,0:03:04.174 「"ass"(尻)と"king"(王)とに[br]分けて考えてごらん 0:03:04.667,0:03:07.725 そして2つをくっつけると[br]ちゃんと言えるわ」 0:03:08.720,0:03:10.006 「アスキング」 0:03:11.918,0:03:15.321 この場が自分に相応しくない[br]と思う事が他にもありました 0:03:16.186,0:03:19.291 ある時 私が寮の[br]クラスメートの部屋に入ると 0:03:20.028,0:03:23.138 彼女は私の周囲にある[br]自分の貴重品を警戒していました 0:03:24.349,0:03:27.242 何故そんな事を気にするのだろうと[br]心の中で思いました 0:03:28.385,0:03:30.824 その後こんな事もありました 0:03:30.848,0:03:34.287 別のクラスメートが[br]私の部屋に入って来て 0:03:34.311,0:03:38.341 「やだぁ!」と叫びました [br]私がヘアグリースを頭皮に塗っていたからです 0:03:41.072,0:03:46.007 若者がありのままに振る舞えず[br]周囲に受け入れられるよう 0:03:46.504,0:03:51.238 自分らしさを人に捻じ曲げられるのは[br]感情を傷つけられるものです 0:03:52.627,0:03:54.637 それは一種の暴力とも言えます 0:03:56.940,0:04:00.985 最終的には 私の話は典型的な[br]サクセスストーリーとなりました 0:04:01.992,0:04:05.199 全寮制の学校に通い [br]ニューイングランドの大学へ進学し 0:04:05.223,0:04:07.303 チリに留学しました 0:04:07.327,0:04:10.442 その後ブロンクスに戻り[br]中学校の教員になり 0:04:11.027,0:04:13.424 トルーマン奨学金や[br]フルブライト奨学金 0:04:13.448,0:04:16.666 そしてソロス・フェローシップを[br]受けました 0:04:16.690,0:04:18.220 まだまだ続きます 0:04:18.598,0:04:19.759 (笑) 0:04:20.116,0:04:21.312 でもやめておきます 0:04:21.336,0:04:22.734 (笑) 0:04:23.908,0:04:27.041 コロンビア大学で[br]博士号を取得しました 0:04:27.792,0:04:28.883 (声援) 0:04:28.907,0:04:30.713 (拍手) 0:04:30.737,0:04:33.079 その後イエール大学で職を得ました 0:04:33.103,0:04:34.869 (拍手) 0:04:35.363,0:04:39.645 自分の人生において ここまで[br]成し遂げられた事に 0:04:40.036,0:04:41.948 誇りを持っています 0:04:44.884,0:04:47.847 私はずっとインポスター症候群[br]を抱えています 0:04:49.150,0:04:52.059 私は「平等の象徴」として[br]存在するというだけで 0:04:52.083,0:04:54.290 実際の私を評価された訳ではなく 0:04:54.314,0:04:57.404 本当は誰でも良かったのでは[br]ないかということです 0:04:58.388,0:05:00.983 又は 自分は例外で 0:05:01.673,0:05:05.995 愛する人達を置き去りに[br]しなければならなかったのだと― 0:05:07.528,0:05:13.573 それは私や他の多くの黒人達が学ぶ為に[br]支払う代償なのです 0:05:15.595,0:05:18.761 (拍手) 0:05:22.689,0:05:26.470 私は常に自身を監視しています 0:05:28.008,0:05:29.491 パンツはピッタリし過ぎてないか? 0:05:30.768,0:05:33.372 髪はアップそれとも[br]アフロにすべき? 0:05:34.726,0:05:37.171 自分自身を弁護すべきかなのか [br]それとも 0:05:37.195,0:05:41.893 何を言っても「彼女は怒ってる」[br]と誤解されるだけか 0:05:44.114,0:05:46.724 何故 私は[br]より良い教育を受けるために 0:05:46.748,0:05:49.607 ブロンクスを後にしなければ[br]ならなかったのか? 0:05:51.433,0:05:55.894 何故 より良い教育を得る過程で [br]自身を形成したもの― 0:05:55.918,0:06:01.798 アンティグア生まれの母に育てられた [br]ブロンクス出身の黒人少女という自分自身を 0:06:03.449,0:06:07.952 消去するというトラウマに[br]耐えなければならなかったのか? 0:06:09.861,0:06:14.534 だから現在の教育改革の [br]イニシアティブについて考えると 0:06:15.390,0:06:17.203 私はこう問わずには[br]いられません 0:06:18.179,0:06:21.881 有色人種の学生は自分自身について[br]何を学んでいるのかと 0:06:23.830,0:06:27.117 30年の研究で次の事が[br]明らかになっています 0:06:27.141,0:06:30.407 有色人種の学生は[br]白人の3倍の割合で 0:06:30.431,0:06:33.546 停学や除籍になり 0:06:34.170,0:06:39.349 同じ違反行為に対し [br]より厳しい処分が行われるのです 0:06:41.138,0:06:44.635 学習課程の中に彼らの生活や物語が[br]存在しないことで 0:06:44.659,0:06:45.858 これを知るのです 0:06:47.432,0:06:52.317 児童図書館が4千冊近くの本の[br]レビューを行なったところ 0:06:52.848,0:06:56.927 アフリカ系アメリカ人の話は[br]僅か3%に過ぎませんでした 0:06:58.686,0:07:00.049 彼らは更に自分達と 0:07:00.073,0:07:02.899 同じ立場の教員が足りない事で[br]現実を思い知るのです 0:07:05.550,0:07:06.989 全米教育統計センターの 0:07:07.013,0:07:10.727 データ解析によって 0:07:10.751,0:07:15.907 全米の年中児から高校生の45%が [br]有色人種だと分かりました 0:07:15.931,0:07:17.558 全米の年中児から高校生の45%が [br]有色人種だと分かりました 0:07:18.300,0:07:22.724 その一方で有色人種の教員は[br]僅か17%に過ぎません 0:07:24.881,0:07:27.718 有色人種の若者は教育制度が送る 0:07:27.742,0:07:29.860 「成功するためには [br]彼らが管理され 0:07:29.884,0:07:32.013 アイデンティティを置き去り[br]にしなければならない」 0:07:32.479,0:07:34.863 というメッセージを受けて 0:07:34.887,0:07:36.980 大変な対価を支払っています 0:07:39.027,0:07:42.314 全ての生徒には[br]自分を偽ることなく 0:07:42.338,0:07:45.859 安全に教育を受ける[br]権利があるのです 0:07:45.883,0:07:50.230 安全に教育を受ける[br]権利があるのです 0:07:51.484,0:07:55.442 (拍手) 0:07:59.551,0:08:04.794 情緒的 また物理的に安心安全で 0:08:04.818,0:08:07.544 学業的に成功できる教室を[br]作ることは可能です 0:08:08.511,0:08:11.901 ブロンクスに戻って教職に就いた時 0:08:11.925,0:08:14.051 私は自分の教室で[br]それを実行しました 0:08:15.681,0:08:17.310 どんな感じだったでしょうか? 0:08:19.040,0:08:21.074 生徒の生活、歴史 0:08:21.098,0:08:25.249 アイデンティティを[br]私は指導の中心に置きました 0:08:26.621,0:08:29.613 全てのことは [br]彼らが最高の自分になれるよう 0:08:29.637,0:08:33.323 周りの皆から支えられていると 0:08:33.347,0:08:35.255 知ってもらうために行いました 0:08:37.054,0:08:42.297 不安定な家庭環境や[br]次の食事にありつけるかへの不安 0:08:42.321,0:08:44.972 眠りを妨げる騒々しい近隣を 0:08:45.472,0:08:47.922 コントロールすることは[br]できませんが 0:08:48.641,0:08:52.007 ありのままの自分達に[br]誇りを持たせ 0:08:52.031,0:08:54.748 自分達が大切だと[br]実感出来るような 0:08:55.313,0:08:58.118 愛情にあふれる教室を[br]作ったのです 0:08:59.620,0:09:00.823 さて私は 0:09:02.522,0:09:08.073 "asking"という言葉を[br]耳にし 口にするたび 0:09:10.977,0:09:12.431 高校生に戻ったような[br]気持ちになります 0:09:14.135,0:09:18.549 "ass"と"king"の事を思い出し 0:09:20.117,0:09:24.182 その2つをくっつけるのです 0:09:24.206,0:09:27.742 権力のある人達が聞きたいと思うような[br]話し方をしてみるんです 0:09:30.115,0:09:31.788 有色人種の子供達に 0:09:32.365,0:09:35.979 板挟みを強いる事のない [br]より良い方法があります 0:09:36.799,0:09:39.161 それは彼らが[br]自分達の家族、故郷、 0:09:39.185,0:09:41.931 コミュニティとの[br]つながりを保つ事 そして 0:09:42.944,0:09:47.641 彼らに自分達の[br]本能を信頼し 0:09:48.555,0:09:54.110 自分自身の創造的な才能に [br]信念を持つよう教える事なのです 0:09:55.144,0:09:56.327 ありがとうございました 0:09:56.351,0:10:04.370 (拍手)