WEBVTT 00:00:00.371 --> 00:00:01.927 スティーブ・ラミレス: 大学院での一年目 00:00:01.927 --> 00:00:03.931 私は自分の部屋のベッドで 00:00:03.931 --> 00:00:06.231 アイスクリームを やけ食いしながら 00:00:06.231 --> 00:00:07.915 つまらないテレビ番組を 見ていました 00:00:07.915 --> 00:00:11.142 たぶん テイラー・スウィフトを 聞いていたと思います 00:00:11.142 --> 00:00:12.883 ガールフレンドと 別れたばかりでした 00:00:12.883 --> 00:00:14.330 (笑) 00:00:14.330 --> 00:00:16.526 その後 いつまでも繰り返し — 00:00:16.526 --> 00:00:20.342 彼女のことを 思い出す度に感じる — 00:00:20.342 --> 00:00:22.835 はらわたを引き裂かれる様 なこの感覚を 00:00:22.835 --> 00:00:25.368 なくすことは出来ないかと 願ったものです 00:00:25.368 --> 00:00:27.651 実は私は神経科学者なので 00:00:27.651 --> 00:00:30.053 彼女の記憶や それを脚色する 00:00:30.053 --> 00:00:33.193 隠れた感情は 主に脳の違う回路が 00:00:33.193 --> 00:00:35.827 司っていると 知っていました 00:00:35.827 --> 00:00:38.192 ですから もし脳内を探り— 00:00:38.192 --> 00:00:40.282 彼女の記憶はそのままにして — 00:00:40.282 --> 00:00:43.252 嫌な感情を削除出来るなら どうでしょう 00:00:43.252 --> 00:00:45.663 でもそれはちょっと 今は無理だと気がついたのです 00:00:45.663 --> 00:00:48.456 それではまず脳内を探り — 00:00:48.456 --> 00:00:51.089 1つの記憶を見つけ — 00:00:51.089 --> 00:00:53.603 その記憶を ジャンプスタートして蘇らせたり 00:00:53.603 --> 00:00:57.471 操作したり出来ないかと 考えたのです 00:00:57.471 --> 00:00:59.700 と言ったものの この世に1人だけ 00:00:59.700 --> 00:01:01.755 このトークを 見て欲しくない人がいます 00:01:01.755 --> 00:01:05.696 (笑) 00:01:05.696 --> 00:01:08.985 まあ そう簡単ではありません 00:01:08.985 --> 00:01:11.773 たぶんこのアイデアは映画の 『トータル・リコール』や 00:01:11.773 --> 00:01:13.747 『エターナル・サンシャイン』 『インセプション』 00:01:13.747 --> 00:01:15.050 を思い出させる事でしょう 00:01:15.050 --> 00:01:16.626 でも私たちと 仕事をするスターは 00:01:16.626 --> 00:01:18.569 研究所のスターです 00:01:18.569 --> 00:01:20.469 シュウ・リュウ:それは実験用マウス 00:01:20.469 --> 00:01:21.597 (笑) 00:01:21.597 --> 00:01:24.751 神経科学者として 研修室でネズミを使って 00:01:24.751 --> 00:01:28.161 記憶の仕組みを 研究しています 00:01:28.161 --> 00:01:30.730 今日 皆さんに 分って欲しいことは 00:01:30.730 --> 00:01:33.946 我々は実際に 脳内の記憶を瞬時に — 00:01:33.946 --> 00:01:36.116 光速で活性化出来る ということです 00:01:36.116 --> 00:01:39.222 それに必要なのは たった2つのステップです 00:01:39.222 --> 00:01:42.732 まず 脳の記憶を探し ラベルをつけ — 00:01:42.732 --> 00:01:46.362 あとはスイッチを押し 記憶を活性化するだけです 00:01:46.362 --> 00:01:47.807 それ丈のことです 00:01:47.807 --> 00:01:49.629 (笑) 00:01:49.629 --> 00:01:51.474 納得させられましたか 00:01:51.474 --> 00:01:55.195 脳内の記憶を探すのは そう簡単ではないのです 00:01:55.195 --> 00:01:57.998 本当にそうです 00:01:57.998 --> 00:02:00.402 干し草の山から針を 見つけ出すよりずっと難しいのです 00:02:00.402 --> 00:02:02.991 というのは少なくとも針は 00:02:02.991 --> 00:02:05.491 実際に触れられる物だからです 00:02:05.491 --> 00:02:07.468 でも記憶はそうではありません 00:02:07.468 --> 00:02:10.506 その上 脳には 干し草の山の藁の数より 00:02:10.506 --> 00:02:15.572 ずっと多い細胞があります 00:02:15.572 --> 00:02:18.451 この仕事は本当に 根気がいる様です 00:02:18.451 --> 00:02:22.130 しかし幸いにも脳自体に 助けられました 00:02:22.130 --> 00:02:24.585 基本的に脳に新しいことを 記憶させるだけで 00:02:24.585 --> 00:02:26.578 基本的に脳に新しいことを 記憶させるだけで 00:02:26.578 --> 00:02:30.408 その特定の記憶に関与する 細胞が何処にあるか — 00:02:30.408 --> 00:02:32.174 脳自体が示してくれると 分ったのです 00:02:32.174 --> 00:02:34.531 では別れた彼女の記憶を 呼び起こしている時に — 00:02:34.531 --> 00:02:36.625 私の脳では 何が起きているのでしょう 00:02:36.625 --> 00:02:39.027 倫理的な話は 置いておくとして 00:02:39.027 --> 00:02:40.695 脳をスライスしてみるとします 00:02:40.695 --> 00:02:42.713 するとそれを 思い出している時の脳は 00:02:42.713 --> 00:02:45.891 驚く程 あらゆる部分が活発に なっているのが分ります 00:02:45.891 --> 00:02:48.803 特に海馬と呼ばれる脳の部分が 00:02:48.803 --> 00:02:50.810 盛んに活動しているのです 00:02:50.810 --> 00:02:53.265 それは様々な 私たちが大切に思う記憶の 00:02:53.265 --> 00:02:55.681 プロセスに携わっていると いわれて来た場所です 00:02:55.681 --> 00:02:58.255 これは記憶を探し 見つけて再活性化するのに — 00:02:58.255 --> 00:03:01.040 理想的なターゲットとなります 00:03:01.040 --> 00:03:03.434 海馬を拡大化してみると — 00:03:03.434 --> 00:03:05.782 勿論多くの細胞が見えますが 00:03:05.782 --> 00:03:08.813 ある特定の記憶に どの細胞が携わっているかを 00:03:08.813 --> 00:03:10.289 見つける事が出来ます 00:03:10.289 --> 00:03:12.907 なぜなら細胞が 記憶を形成している時の様に — 00:03:12.907 --> 00:03:14.371 活発な時は必ず — 00:03:14.371 --> 00:03:18.128 その細胞が活性化していたことが 後でわかるような — 00:03:18.128 --> 00:03:20.830 手がかりを残してくれるからです 00:03:20.830 --> 00:03:22.990 夜 ビルの電気がついていると 00:03:22.990 --> 00:03:25.938 そこで誰かが仕事をしていると 分かる様なものです 00:03:25.938 --> 00:03:29.226 細胞内の生物学的なセンサーも 00:03:29.226 --> 00:03:31.180 細胞の活動直後のみ — 00:03:31.180 --> 00:03:33.315 オンになっているという事です 00:03:33.315 --> 00:03:35.191 いわば 生物学的な窓に 明かりがついていれば — 00:03:35.191 --> 00:03:37.169 その細胞が直前まで 活発だったと解ります 00:03:37.169 --> 00:03:39.998 このセンサー部分を 切り取って — 00:03:39.998 --> 00:03:43.145 それを細胞を制御する スイッチにくっつけて — 00:03:43.145 --> 00:03:47.045 このスイッチを遺伝子組み換えで ウイルスに埋め込み — 00:03:47.045 --> 00:03:49.633 マウスの脳に注入しました 00:03:49.633 --> 00:03:52.267 ある記憶が形成されると — 00:03:52.267 --> 00:03:54.615 その記憶に働く細胞にも又 00:03:54.615 --> 00:03:57.357 このスイッチが設置されます 00:03:57.357 --> 00:03:58.982 これが 恐怖の記憶を 00:03:58.982 --> 00:04:01.822 形成した後の海馬の様子です 00:04:01.822 --> 00:04:03.962 ここに見れるブルーの海が 00:04:03.962 --> 00:04:05.914 密に詰まった脳細胞です 00:04:05.914 --> 00:04:07.459 緑色の脳細胞を見てください 00:04:07.459 --> 00:04:09.555 緑色の脳細胞は ある特定の恐怖の記憶に 00:04:09.555 --> 00:04:11.398 しがみついている細胞です 00:04:11.398 --> 00:04:13.377 これは瞬時に抱く恐怖が 00:04:13.377 --> 00:04:15.764 結晶化された脳です 00:04:15.764 --> 00:04:19.261 これは記憶の横断面図です 00:04:19.261 --> 00:04:21.669 ここでお話ししているスイッチは 00:04:21.669 --> 00:04:24.639 瞬時に作動して もらわなければなりません 00:04:24.639 --> 00:04:27.218 数分や数時間の単位でなく — 00:04:27.218 --> 00:04:31.482 千分の1秒の脳の スピードが求められます 00:04:31.482 --> 00:04:32.912 シュウ どう思いますか 00:04:32.912 --> 00:04:35.514 脳細胞を活性化したり 不活性化したりするのに — 00:04:35.514 --> 00:04:37.352 例えば医薬品とか 使えるでしょうか 00:04:37.352 --> 00:04:41.415 いやあ 薬品は あちこち広がり問題を起こすし 00:04:41.415 --> 00:04:44.423 細胞に作用するには 時間もかかるから 00:04:44.423 --> 00:04:48.072 リアルタイムで 記憶をコントロール出来ません 00:04:48.072 --> 00:04:52.366 スティーブ 脳に電気ショックを 当てたらどうだろう 00:04:52.366 --> 00:04:54.671 電気は速いけど — 00:04:54.671 --> 00:04:56.410 特定の記憶を持つ細胞だけを 00:04:56.410 --> 00:04:58.764 ターゲットにするのは無理だね 00:04:58.764 --> 00:05:00.642 それに脳を焼いて しまうかもしれません 00:05:00.642 --> 00:05:03.837 そうでしょうね 00:05:03.837 --> 00:05:06.448 光速で脳に影響を与える 00:05:06.448 --> 00:05:09.743 もっといい方法を 見つける必要があります 00:05:09.743 --> 00:05:14.829 光速は 勿論 光の速さですね 00:05:14.829 --> 00:05:18.312 それなら 記憶を 活性化・不活性化させるのに — 00:05:18.312 --> 00:05:19.809 光を使えるかもしれません 00:05:19.809 --> 00:05:21.164 それはかなり速いですね 00:05:21.164 --> 00:05:23.049 脳細胞は普通 — 00:05:23.049 --> 00:05:24.637 光パルスには 反応しません 00:05:24.637 --> 00:05:26.595 光パルスに反応するのは 00:05:26.595 --> 00:05:29.059 感光性スイッチの組み込まれた 細胞だけなので 00:05:29.059 --> 00:05:31.005 脳細胞を操作し レーザー光線に 反応する様にします 00:05:31.005 --> 00:05:32.467 脳細胞を操作し レーザー光線に 反応する様にします 00:05:32.467 --> 00:05:33.537 今お聞きになった通り 脳にレーザーを射込もうとしています 00:05:33.537 --> 00:05:35.669 今お聞きになった通り 脳にレーザーを射込もうとしています 00:05:35.669 --> 00:05:37.414 (笑) 00:05:37.414 --> 00:05:40.738 それを実現させるのが 光遺伝学です 00:05:40.738 --> 00:05:44.020 それはスイッチひとつで脳細胞の オン・オフを可能にさせてくれる 00:05:44.020 --> 00:05:45.528 それはスイッチひとつで脳細胞の オン・オフを可能にさせてくれる 00:05:45.528 --> 00:05:48.045 チャネルロドプシン と呼ばれるものです 00:05:48.045 --> 00:05:50.582 この脳細胞の 緑色の斑点がそれです 00:05:50.582 --> 00:05:53.881 チャネルロドプシンは光に敏感な スイッチだと考えてもいいでしょう 00:05:53.881 --> 00:05:56.508 チャネルロドプシンを 人工的に脳細胞に組み込み — 00:05:56.508 --> 00:05:58.422 それをクリックするだけで — 00:05:58.422 --> 00:06:01.435 脳細胞を活性化したり 不活性化したりできるのです 00:06:01.435 --> 00:06:03.903 この場合 光パルスでクリックします 00:06:03.903 --> 00:06:07.689 このチャネルロドプシンの 感光性スイッチを 00:06:07.689 --> 00:06:09.897 先ほどのセンサーにつけて — 00:06:09.897 --> 00:06:12.352 脳に注入します 00:06:12.352 --> 00:06:15.563 記憶が作られると — 00:06:15.563 --> 00:06:17.790 その特定の記憶を司る細胞は 00:06:17.790 --> 00:06:21.274 感光性スイッチを その中に設置させ — 00:06:21.274 --> 00:06:23.675 私たちは これらの細胞を 00:06:23.675 --> 00:06:27.939 ここにあるようなレーザーを使い コントロール出来るのです 00:06:27.939 --> 00:06:30.803 実際に実験してみましょう 00:06:30.803 --> 00:06:32.938 マウスを使ってみるのです 00:06:32.938 --> 00:06:35.866 ちょうどここにある様な箱に マウスを入れます 00:06:35.866 --> 00:06:38.206 そして足に 軽い刺激を与え — 00:06:38.206 --> 00:06:40.241 この箱に対する 恐怖の記憶を作ります 00:06:40.241 --> 00:06:42.220 ここで何か悪い事が起きた事を マウスは学びます 00:06:42.220 --> 00:06:44.562 さあ 私たちのシステムで — 00:06:44.562 --> 00:06:47.493 この記憶作成時に活性化された 海馬の細胞だけに 00:06:47.493 --> 00:06:50.376 チャネルロドプシンが 含まれてることになります 00:06:50.376 --> 00:06:53.393 あなたがマウス程小さいとしたら 00:06:53.393 --> 00:06:56.988 追いつめられた様な 気持ちだと思います 00:06:56.988 --> 00:06:58.736 そんな時 身を守る最善の策は 00:06:58.736 --> 00:07:01.218 察知されまいとする事でしょう 00:07:01.218 --> 00:07:03.251 マウスが恐怖を感じる時の 00:07:03.251 --> 00:07:04.777 典型的な行動がこれです 00:07:04.777 --> 00:07:06.546 箱の片隅で 00:07:06.546 --> 00:07:09.664 身動き1つしなくなります 00:07:09.664 --> 00:07:12.959 これは フリージングと呼ばれます 00:07:12.959 --> 00:07:17.253 もしマウスが何か悪い事が この箱の中で起きたと記憶するなら 00:07:17.253 --> 00:07:19.876 同じ箱に戻した時 00:07:19.876 --> 00:07:21.680 フリージングを起こします 00:07:21.680 --> 00:07:23.965 それはこの箱の中で どんな脅威にも — 00:07:23.965 --> 00:07:26.660 さらされたくないからです 00:07:26.660 --> 00:07:28.015 フリジーングとは こんな感じです 00:07:28.015 --> 00:07:30.230 あなたが呑気に 道を歩いていて — 00:07:30.230 --> 00:07:31.955 突然 別れた彼女か彼氏に — 00:07:31.955 --> 00:07:34.147 ばったり出会ったとします 00:07:34.147 --> 00:07:36.281 さあその恐怖の2秒 00:07:36.281 --> 00:07:38.157 あなたは「どうしよう? 挨拶する?握手する? 00:07:38.157 --> 00:07:39.525 背を向けてさっと逃げる? 他人のふりをする?」 00:07:39.525 --> 00:07:41.554 などと考え始めます 00:07:41.554 --> 00:07:44.738 浮かんでは消える不安な思いに 身動きすら取れなくなります 00:07:44.738 --> 00:07:47.484 ヘッドライトの中に立ちすくむ 車の前の鹿のようです 00:07:47.484 --> 00:07:50.775 でもそのマウスを次の様な — 00:07:50.775 --> 00:07:53.936 全く新しい箱に入れたなら 00:07:53.936 --> 00:07:56.083 その箱は恐れないでしょう 00:07:56.083 --> 00:08:00.812 新しい環境を恐れる 理由はないからです 00:08:00.812 --> 00:08:03.992 でもこの新しい箱に マウスを入れ — 00:08:03.992 --> 00:08:07.603 同時に前の恐怖の記憶を — 00:08:07.603 --> 00:08:10.282 レーザーで活性化させたら どうなるでしょう 00:08:10.282 --> 00:08:13.136 この全く新しい環境で — 00:08:13.136 --> 00:08:17.133 最初の箱の恐怖の記憶を 呼び戻す事が出来るでしょうか 00:08:17.133 --> 00:08:19.868 はい これは値千金の実験です 00:08:19.868 --> 00:08:22.781 あの日を思い出すと — 00:08:22.781 --> 00:08:24.964 レッドソックスが勝ち — 00:08:24.964 --> 00:08:26.873 緑が一杯の春の日でした 00:08:26.873 --> 00:08:28.690 川遊びをして — 00:08:28.690 --> 00:08:31.024 ノースエンドに行って — 00:08:31.024 --> 00:08:33.184 お茶を飲むには絶好の日でした 00:08:33.184 --> 00:08:36.286 一方 シュウと私は 00:08:36.286 --> 00:08:39.115 窓のない真っ暗な部屋にいて 00:08:39.115 --> 00:08:42.776 瞬きさえせず 目は一点を見つめ — 00:08:42.776 --> 00:08:45.242 コンピューターの画面に 釘付けになっていたのです 00:08:45.242 --> 00:08:47.798 この方法で初めて 記憶を活性化させるため — 00:08:47.798 --> 00:08:49.681 マウスを観察していたのです 00:08:49.681 --> 00:08:52.369 これが私たちが見たものです 00:08:52.369 --> 00:08:54.571 この箱に最初マウスを入れた時 00:08:54.571 --> 00:08:57.684 マウスは探索し 嗅ぎ回り 歩き回っていました 00:08:57.684 --> 00:08:59.373 勝手に動き回っていました 00:08:59.373 --> 00:09:01.074 普段のマウスの行動ですね 00:09:01.074 --> 00:09:03.053 ネズミは好奇心の強い動物です 00:09:03.053 --> 00:09:05.675 この新しい箱で何が起きているのか 知りたがっています 00:09:05.675 --> 00:09:07.206 面白いです 00:09:07.206 --> 00:09:10.657 しかしレーザーをつけた途端 — 00:09:10.657 --> 00:09:13.689 この様に全く突然 フリージング状態に入ったのです 00:09:13.689 --> 00:09:18.120 その場でビクリともせず じっとしていました 00:09:18.120 --> 00:09:19.748 明らかにフリージングです 00:09:19.748 --> 00:09:22.331 最初の箱の恐怖の記憶を 00:09:22.331 --> 00:09:24.395 この全く新しい環境の中で 00:09:24.395 --> 00:09:27.762 呼び起こすことが出来た様です 00:09:27.762 --> 00:09:29.874 これを見て スティーブと私は 00:09:29.874 --> 00:09:32.007 マウスと同様 衝撃を受けました 00:09:32.007 --> 00:09:33.269 (笑) 00:09:33.269 --> 00:09:36.576 実験後 私たちは何も言わず — 00:09:36.576 --> 00:09:38.329 部屋を出ました 00:09:38.329 --> 00:09:41.725 それからしばらく ぎこちない沈黙が続き — 00:09:41.725 --> 00:09:43.937 やがて スティーブが 口を開きました 00:09:43.937 --> 00:09:46.278 「うまくいったんじゃない?」 00:09:46.278 --> 00:09:49.252 「うん うまくいったみたいだ!」 00:09:49.252 --> 00:09:51.369 私たちは本当に興奮しました 00:09:51.369 --> 00:09:53.993 そして学術雑誌の 『ネイチャー』に 00:09:53.993 --> 00:09:55.689 研究成果を 出版したのです 00:09:55.689 --> 00:09:58.160 私たちの研究成果が 公に出て以来 — 00:09:58.160 --> 00:10:00.575 インターネット中で 00:10:00.575 --> 00:10:02.700 あらゆるコメントを頂いてます 00:10:02.700 --> 00:10:06.450 その中のいくつかを見てましょう 00:10:06.450 --> 00:10:08.907 [ ついに実現!バーチャル・リアリティの世界… ] 00:10:08.907 --> 00:10:10.907 [ 神経操作,ビジュアル夢模倣, 神経コーディング ] 最初に気づく事は 00:10:10.907 --> 00:10:13.810 [「記憶を書き直す」すごい未来!] このような研究は 議論を呼ぶ内容だということです 00:10:13.810 --> 00:10:16.364 私はこの最初の楽観的な見方に 全く同感です 00:10:16.364 --> 00:10:17.180 私はこの最初の楽観的な見方に 全く同感です 00:10:17.180 --> 00:10:19.988 私たちにとって — 00:10:19.988 --> 00:10:22.111 今までに一番胸に沁みる 褒め言葉です 00:10:22.111 --> 00:10:23.661 今までに一番胸に沁みる 褒め言葉です 00:10:23.661 --> 00:10:25.857 (笑) 00:10:25.857 --> 00:10:27.808 でも そんな楽観的な 意見だけではありません 00:10:27.808 --> 00:10:29.372 [ 恐ろしいことだ。これが簡単に— ] 00:10:29.372 --> 00:10:31.290 [ 人に出来るようになったら!? 何てことだ、人類は終わりだ! ] 00:10:31.290 --> 00:10:33.397 確かに2番目のを見れば 誰の目にも 00:10:33.397 --> 00:10:35.772 ポジティブではないことが分ります 00:10:35.772 --> 00:10:37.957 しかし これで思うことは 00:10:37.957 --> 00:10:40.143 研究は まだ マウスの段階ですが 00:10:40.143 --> 00:10:43.660 記憶コントロールにおける 00:10:43.660 --> 00:10:46.651 倫理的な問題について そろそろ議論する — 00:10:46.651 --> 00:10:48.599 時期だということです 00:10:48.599 --> 00:10:50.799 次に 私たちは 00:10:50.799 --> 00:10:52.773 「インセプション」と呼ばれる — 00:10:52.773 --> 00:10:55.201 プロジェクトも行っています 00:10:55.201 --> 00:10:58.444 [ 映画のネタにぴったり。人に記憶を植え付け利用する… その題は『インセプション』。 ] 00:10:58.444 --> 00:11:02.178 記憶を呼び戻す事は 納得して頂けましたが 00:11:02.178 --> 00:11:05.130 もし その記憶を いじったら どうなるでしょう 00:11:05.130 --> 00:11:08.163 それを虚偽記憶に してしまえるでしょうか? 00:11:08.163 --> 00:11:12.262 全ての記憶は精巧で 絶えず変化しています 00:11:12.262 --> 00:11:15.241 でも もし記憶を単純に — 00:11:15.241 --> 00:11:16.643 映画の1カットだと 想定すると — 00:11:16.643 --> 00:11:19.313 今まで話した事は 00:11:19.313 --> 00:11:21.244 「再生」ボタンを押して — 00:11:21.244 --> 00:11:25.829 同じ場面ををいつでも何処でも 観る事が出来るということです 00:11:25.829 --> 00:11:28.360 実際には 脳内に入って この映画のシーンを 00:11:28.360 --> 00:11:31.220 編集して違った物を作り上げる — 00:11:31.220 --> 00:11:34.116 そんな事が可能でしょうか 00:11:34.116 --> 00:11:36.294 可能なんです 00:11:36.294 --> 00:11:38.424 前回と同様に レーザーを使い — 00:11:38.424 --> 00:11:42.699 記憶を回復させる だけでいいのです 00:11:42.699 --> 00:11:46.138 この時に新しい情報を 00:11:46.138 --> 00:11:50.112 古い記憶の中に 組み込ませたら 00:11:50.112 --> 00:11:52.550 記憶は別のものになります 00:11:52.550 --> 00:11:56.213 リミックステープを 作る様なものです 00:11:56.213 --> 00:11:59.071 それは どうやって 行うのでしょうか 00:11:59.071 --> 00:12:01.028 脳内に恐怖の記憶を 見つけるやり方ではなく 00:12:01.028 --> 00:12:02.744 実験に使う動物を 00:12:02.744 --> 00:12:05.677 このような青い箱に入れ — 00:12:05.677 --> 00:12:08.171 青い箱を表す 脳細胞を見つけ — 00:12:08.171 --> 00:12:10.244 光パルスに 反応するようにさせます 00:12:10.244 --> 00:12:12.365 ちょうど先に 話したようにです 00:12:12.365 --> 00:12:14.489 その次の日 動物を取り出し — 00:12:14.489 --> 00:12:17.188 今度は赤い箱に入れます 00:12:17.188 --> 00:12:19.214 青い箱の記憶を 呼び起させる目的で — 00:12:19.214 --> 00:12:21.323 脳内に光パルスを照射します 00:12:21.323 --> 00:12:23.067 そして 記憶を 呼び起こさせると同時に — 00:12:23.067 --> 00:12:24.961 足に軽い刺激を 2,3回与えます 00:12:24.961 --> 00:12:27.604 どうなるでしょうか 00:12:27.604 --> 00:12:30.297 足に与えた刺激と — 00:12:30.297 --> 00:12:32.212 青い箱の記憶を ここでは人工的に — 00:12:32.212 --> 00:12:33.715 結び付けようと しているのです 00:12:33.715 --> 00:12:35.494 2つの情報を 繋ぎあわせるのです 00:12:35.494 --> 00:12:37.037 結果を検証する為に 00:12:37.037 --> 00:12:38.365 動物を再び取り出し — 00:12:38.365 --> 00:12:40.311 青い箱に戻します 00:12:40.311 --> 00:12:43.049 青い箱の記憶を 呼び起こしている時 00:12:43.049 --> 00:12:45.216 足に軽い刺激を 与えてましたから — 00:12:45.216 --> 00:12:47.586 突然 動かなくなりました 00:12:47.586 --> 00:12:50.788 実際 起きなかった事なのに ここで電気ショックを 00:12:50.788 --> 00:12:53.790 与えられたと 思い出したかの様にです 00:12:53.790 --> 00:12:55.652 つまり虚偽記憶を 作り上げたのです 00:12:55.652 --> 00:12:57.663 マウスは実際には 何も悪いことが起らなかった — 00:12:57.663 --> 00:12:58.917 マウスは実際には 何も悪いことが起らなかった — 00:12:58.917 --> 00:13:01.266 環境を恐れているのです 00:13:01.266 --> 00:13:03.719 今まで光制御 — 00:13:03.719 --> 00:13:06.085 「オン」スイッチの事 について話しましたが 00:13:06.085 --> 00:13:09.373 実は光制御「オフ」の スイッチもあり — 00:13:09.373 --> 00:13:11.453 そのスイッチを 設置する事で — 00:13:11.453 --> 00:13:13.931 記憶をいつでも何処でも 消す事も可能だと 00:13:13.931 --> 00:13:19.519 容易に想像されます 00:13:19.519 --> 00:13:21.733 今日話した事全ては 00:13:21.733 --> 00:13:26.410 神経科学の哲学的原則に 基づいています 00:13:26.410 --> 00:13:30.528 そして一見神秘的な特質を 持つと思われる心は 00:13:30.528 --> 00:13:34.173 実は 私たちが操作出来る 物理的なものだということです 00:13:34.173 --> 00:13:35.648 個人的には私は 00:13:35.648 --> 00:13:37.229 皆が好ましいと思われる — 00:13:37.229 --> 00:13:39.345 記憶を呼び起せるような世界や 00:13:39.345 --> 00:13:42.643 好ましくない記憶を 削除出来る世界が見えてきます 00:13:42.643 --> 00:13:44.579 今や記憶を編集出来る世界さえ 00:13:44.579 --> 00:13:46.118 現実のものとなってきています 00:13:46.118 --> 00:13:47.823 なぜならSFから あらゆるヒントを得 — 00:13:47.823 --> 00:13:50.048 それを実験し 現実化することが可能な — 00:13:50.048 --> 00:13:52.468 そんな時代に なっているからです 00:13:52.468 --> 00:13:54.351 研究室内だけでなく — 00:13:54.351 --> 00:13:56.737 世界中 あらゆる分野で — 00:13:56.737 --> 00:14:00.554 似た様な方法で様々なデータが 復活されたり編集されています 00:14:00.554 --> 00:14:04.395 それはデータの年代や 使用目的の如何を問わずです 00:14:04.395 --> 00:14:07.067 そうやって私たちはメモリーの仕組みを 00:14:07.067 --> 00:14:08.931 私たちは理解出来ています 00:14:08.931 --> 00:14:10.715 例えば私たちの研究のグループは 00:14:10.715 --> 00:14:13.353 恐怖の記憶を司る 脳細胞を見つけ出し 00:14:13.353 --> 00:14:16.128 それを喜びの記憶に 変えることに成功しました 00:14:16.128 --> 00:14:19.190 これが 丁度その 編集するという事なのです 00:14:19.190 --> 00:14:21.002 雄のマウスに 雌のマウスの記憶を 00:14:21.002 --> 00:14:23.503 呼び戻すことに 成功したケースもあります 00:14:23.503 --> 00:14:26.498 マウスにも 面白い経験だったそうです 00:14:26.498 --> 00:14:30.615 胸躍るような時代に 今私たちはいます 00:14:30.615 --> 00:14:34.420 科学の発展のスピードは とどまるところを知りません 00:14:34.420 --> 00:14:37.607 あとは私たちの 想像力次第です 00:14:37.607 --> 00:14:39.754 最後に 今までの話を聞いてどう思いますか 00:14:39.754 --> 00:14:41.725 この技術を どう進めて行きましょうか 00:14:41.725 --> 00:14:43.562 これらの質問は 研究室だけに — 00:14:43.562 --> 00:14:45.237 留めておくべきではありません 00:14:45.237 --> 00:14:47.809 今日のトークの目的は 00:14:47.809 --> 00:14:50.128 現在の神経科学での可能性を 00:14:50.128 --> 00:14:51.512 皆さんにご紹介することです 00:14:51.512 --> 00:14:53.022 しかしそれと同様に 大切なことは 00:14:53.022 --> 00:14:56.354 皆様にこれに関し 真剣に考えて頂く事です 00:14:56.354 --> 00:14:58.683 この研究の意味 これからの可能性 — 00:14:58.683 --> 00:15:01.157 そしてこれから取るべき道を 一緒に考えましょう 00:15:01.157 --> 00:15:03.255 なぜなら この先 実に大きな課題が待っていると 00:15:03.255 --> 00:15:05.791 シュウと私は思っているからです 00:15:05.791 --> 00:15:06.916 有り難うございました 00:15:06.916 --> 00:15:08.550 (拍手)