1 00:00:00,371 --> 00:00:01,927 スティーブ・ラミレス: 大学院での一年目 2 00:00:01,927 --> 00:00:03,931 私は自分の部屋のベッドで 3 00:00:03,931 --> 00:00:06,231 アイスクリームを やけ食いしながら 4 00:00:06,231 --> 00:00:07,915 つまらないテレビ番組を 見ていました 5 00:00:07,915 --> 00:00:11,142 たぶん テイラー・スウィフトを 聞いていたと思います 6 00:00:11,142 --> 00:00:12,883 ガールフレンドと 別れたばかりでした 7 00:00:12,883 --> 00:00:14,330 (笑) 8 00:00:14,330 --> 00:00:16,526 その後 いつまでも繰り返し — 9 00:00:16,526 --> 00:00:20,342 彼女のことを 思い出す度に感じる — 10 00:00:20,342 --> 00:00:22,835 はらわたを引き裂かれる様 なこの感覚を 11 00:00:22,835 --> 00:00:25,368 なくすことは出来ないかと 願ったものです 12 00:00:25,368 --> 00:00:27,651 実は私は神経科学者なので 13 00:00:27,651 --> 00:00:30,053 彼女の記憶や それを脚色する 14 00:00:30,053 --> 00:00:33,193 隠れた感情は 主に脳の違う回路が 15 00:00:33,193 --> 00:00:35,827 司っていると 知っていました 16 00:00:35,827 --> 00:00:38,192 ですから もし脳内を探り— 17 00:00:38,192 --> 00:00:40,282 彼女の記憶はそのままにして — 18 00:00:40,282 --> 00:00:43,252 嫌な感情を削除出来るなら どうでしょう 19 00:00:43,252 --> 00:00:45,663 でもそれはちょっと 今は無理だと気がついたのです 20 00:00:45,663 --> 00:00:48,456 それではまず脳内を探り — 21 00:00:48,456 --> 00:00:51,089 1つの記憶を見つけ — 22 00:00:51,089 --> 00:00:53,603 その記憶を ジャンプスタートして蘇らせたり 23 00:00:53,603 --> 00:00:57,471 操作したり出来ないかと 考えたのです 24 00:00:57,471 --> 00:00:59,700 と言ったものの この世に1人だけ 25 00:00:59,700 --> 00:01:01,755 このトークを 見て欲しくない人がいます 26 00:01:01,755 --> 00:01:05,696 (笑) 27 00:01:05,696 --> 00:01:08,985 まあ そう簡単ではありません 28 00:01:08,985 --> 00:01:11,773 たぶんこのアイデアは映画の 『トータル・リコール』や 29 00:01:11,773 --> 00:01:13,747 『エターナル・サンシャイン』 『インセプション』 30 00:01:13,747 --> 00:01:15,050 を思い出させる事でしょう 31 00:01:15,050 --> 00:01:16,626 でも私たちと 仕事をするスターは 32 00:01:16,626 --> 00:01:18,569 研究所のスターです 33 00:01:18,569 --> 00:01:20,469 シュウ・リュウ:それは実験用マウス 34 00:01:20,469 --> 00:01:21,597 (笑) 35 00:01:21,597 --> 00:01:24,751 神経科学者として 研修室でネズミを使って 36 00:01:24,751 --> 00:01:28,161 記憶の仕組みを 研究しています 37 00:01:28,161 --> 00:01:30,730 今日 皆さんに 分って欲しいことは 38 00:01:30,730 --> 00:01:33,946 我々は実際に 脳内の記憶を瞬時に — 39 00:01:33,946 --> 00:01:36,116 光速で活性化出来る ということです 40 00:01:36,116 --> 00:01:39,222 それに必要なのは たった2つのステップです 41 00:01:39,222 --> 00:01:42,732 まず 脳の記憶を探し ラベルをつけ — 42 00:01:42,732 --> 00:01:46,362 あとはスイッチを押し 記憶を活性化するだけです 43 00:01:46,362 --> 00:01:47,807 それ丈のことです 44 00:01:47,807 --> 00:01:49,629 (笑) 45 00:01:49,629 --> 00:01:51,474 納得させられましたか 46 00:01:51,474 --> 00:01:55,195 脳内の記憶を探すのは そう簡単ではないのです 47 00:01:55,195 --> 00:01:57,998 本当にそうです 48 00:01:57,998 --> 00:02:00,402 干し草の山から針を 見つけ出すよりずっと難しいのです 49 00:02:00,402 --> 00:02:02,991 というのは少なくとも針は 50 00:02:02,991 --> 00:02:05,491 実際に触れられる物だからです 51 00:02:05,491 --> 00:02:07,468 でも記憶はそうではありません 52 00:02:07,468 --> 00:02:10,506 その上 脳には 干し草の山の藁の数より 53 00:02:10,506 --> 00:02:15,572 ずっと多い細胞があります 54 00:02:15,572 --> 00:02:18,451 この仕事は本当に 根気がいる様です 55 00:02:18,451 --> 00:02:22,130 しかし幸いにも脳自体に 助けられました 56 00:02:22,130 --> 00:02:24,585 基本的に脳に新しいことを 記憶させるだけで 57 00:02:24,585 --> 00:02:26,578 基本的に脳に新しいことを 記憶させるだけで 58 00:02:26,578 --> 00:02:30,408 その特定の記憶に関与する 細胞が何処にあるか — 59 00:02:30,408 --> 00:02:32,174 脳自体が示してくれると 分ったのです 60 00:02:32,174 --> 00:02:34,531 では別れた彼女の記憶を 呼び起こしている時に — 61 00:02:34,531 --> 00:02:36,625 私の脳では 何が起きているのでしょう 62 00:02:36,625 --> 00:02:39,027 倫理的な話は 置いておくとして 63 00:02:39,027 --> 00:02:40,695 脳をスライスしてみるとします 64 00:02:40,695 --> 00:02:42,713 するとそれを 思い出している時の脳は 65 00:02:42,713 --> 00:02:45,891 驚く程 あらゆる部分が活発に なっているのが分ります 66 00:02:45,891 --> 00:02:48,803 特に海馬と呼ばれる脳の部分が 67 00:02:48,803 --> 00:02:50,810 盛んに活動しているのです 68 00:02:50,810 --> 00:02:53,265 それは様々な 私たちが大切に思う記憶の 69 00:02:53,265 --> 00:02:55,681 プロセスに携わっていると いわれて来た場所です 70 00:02:55,681 --> 00:02:58,255 これは記憶を探し 見つけて再活性化するのに — 71 00:02:58,255 --> 00:03:01,040 理想的なターゲットとなります 72 00:03:01,040 --> 00:03:03,434 海馬を拡大化してみると — 73 00:03:03,434 --> 00:03:05,782 勿論多くの細胞が見えますが 74 00:03:05,782 --> 00:03:08,813 ある特定の記憶に どの細胞が携わっているかを 75 00:03:08,813 --> 00:03:10,289 見つける事が出来ます 76 00:03:10,289 --> 00:03:12,907 なぜなら細胞が 記憶を形成している時の様に — 77 00:03:12,907 --> 00:03:14,371 活発な時は必ず — 78 00:03:14,371 --> 00:03:18,128 その細胞が活性化していたことが 後でわかるような — 79 00:03:18,128 --> 00:03:20,830 手がかりを残してくれるからです 80 00:03:20,830 --> 00:03:22,990 夜 ビルの電気がついていると 81 00:03:22,990 --> 00:03:25,938 そこで誰かが仕事をしていると 分かる様なものです 82 00:03:25,938 --> 00:03:29,226 細胞内の生物学的なセンサーも 83 00:03:29,226 --> 00:03:31,180 細胞の活動直後のみ — 84 00:03:31,180 --> 00:03:33,315 オンになっているという事です 85 00:03:33,315 --> 00:03:35,191 いわば 生物学的な窓に 明かりがついていれば — 86 00:03:35,191 --> 00:03:37,169 その細胞が直前まで 活発だったと解ります 87 00:03:37,169 --> 00:03:39,998 このセンサー部分を 切り取って — 88 00:03:39,998 --> 00:03:43,145 それを細胞を制御する スイッチにくっつけて — 89 00:03:43,145 --> 00:03:47,045 このスイッチを遺伝子組み換えで ウイルスに埋め込み — 90 00:03:47,045 --> 00:03:49,633 マウスの脳に注入しました 91 00:03:49,633 --> 00:03:52,267 ある記憶が形成されると — 92 00:03:52,267 --> 00:03:54,615 その記憶に働く細胞にも又 93 00:03:54,615 --> 00:03:57,357 このスイッチが設置されます 94 00:03:57,357 --> 00:03:58,982 これが 恐怖の記憶を 95 00:03:58,982 --> 00:04:01,822 形成した後の海馬の様子です 96 00:04:01,822 --> 00:04:03,962 ここに見れるブルーの海が 97 00:04:03,962 --> 00:04:05,914 密に詰まった脳細胞です 98 00:04:05,914 --> 00:04:07,459 緑色の脳細胞を見てください 99 00:04:07,459 --> 00:04:09,555 緑色の脳細胞は ある特定の恐怖の記憶に 100 00:04:09,555 --> 00:04:11,398 しがみついている細胞です 101 00:04:11,398 --> 00:04:13,377 これは瞬時に抱く恐怖が 102 00:04:13,377 --> 00:04:15,764 結晶化された脳です 103 00:04:15,764 --> 00:04:19,261 これは記憶の横断面図です 104 00:04:19,261 --> 00:04:21,669 ここでお話ししているスイッチは 105 00:04:21,669 --> 00:04:24,639 瞬時に作動して もらわなければなりません 106 00:04:24,639 --> 00:04:27,218 数分や数時間の単位でなく — 107 00:04:27,218 --> 00:04:31,482 千分の1秒の脳の スピードが求められます 108 00:04:31,482 --> 00:04:32,912 シュウ どう思いますか 109 00:04:32,912 --> 00:04:35,514 脳細胞を活性化したり 不活性化したりするのに — 110 00:04:35,514 --> 00:04:37,352 例えば医薬品とか 使えるでしょうか 111 00:04:37,352 --> 00:04:41,415 いやあ 薬品は あちこち広がり問題を起こすし 112 00:04:41,415 --> 00:04:44,423 細胞に作用するには 時間もかかるから 113 00:04:44,423 --> 00:04:48,072 リアルタイムで 記憶をコントロール出来ません 114 00:04:48,072 --> 00:04:52,366 スティーブ 脳に電気ショックを 当てたらどうだろう 115 00:04:52,366 --> 00:04:54,671 電気は速いけど — 116 00:04:54,671 --> 00:04:56,410 特定の記憶を持つ細胞だけを 117 00:04:56,410 --> 00:04:58,764 ターゲットにするのは無理だね 118 00:04:58,764 --> 00:05:00,642 それに脳を焼いて しまうかもしれません 119 00:05:00,642 --> 00:05:03,837 そうでしょうね 120 00:05:03,837 --> 00:05:06,448 光速で脳に影響を与える 121 00:05:06,448 --> 00:05:09,743 もっといい方法を 見つける必要があります 122 00:05:09,743 --> 00:05:14,829 光速は 勿論 光の速さですね 123 00:05:14,829 --> 00:05:18,312 それなら 記憶を 活性化・不活性化させるのに — 124 00:05:18,312 --> 00:05:19,809 光を使えるかもしれません 125 00:05:19,809 --> 00:05:21,164 それはかなり速いですね 126 00:05:21,164 --> 00:05:23,049 脳細胞は普通 — 127 00:05:23,049 --> 00:05:24,637 光パルスには 反応しません 128 00:05:24,637 --> 00:05:26,595 光パルスに反応するのは 129 00:05:26,595 --> 00:05:29,059 感光性スイッチの組み込まれた 細胞だけなので 130 00:05:29,059 --> 00:05:31,005 脳細胞を操作し レーザー光線に 反応する様にします 131 00:05:31,005 --> 00:05:32,467 脳細胞を操作し レーザー光線に 反応する様にします 132 00:05:32,467 --> 00:05:33,537 今お聞きになった通り 脳にレーザーを射込もうとしています 133 00:05:33,537 --> 00:05:35,669 今お聞きになった通り 脳にレーザーを射込もうとしています 134 00:05:35,669 --> 00:05:37,414 (笑) 135 00:05:37,414 --> 00:05:40,738 それを実現させるのが 光遺伝学です 136 00:05:40,738 --> 00:05:44,020 それはスイッチひとつで脳細胞の オン・オフを可能にさせてくれる 137 00:05:44,020 --> 00:05:45,528 それはスイッチひとつで脳細胞の オン・オフを可能にさせてくれる 138 00:05:45,528 --> 00:05:48,045 チャネルロドプシン と呼ばれるものです 139 00:05:48,045 --> 00:05:50,582 この脳細胞の 緑色の斑点がそれです 140 00:05:50,582 --> 00:05:53,881 チャネルロドプシンは光に敏感な スイッチだと考えてもいいでしょう 141 00:05:53,881 --> 00:05:56,508 チャネルロドプシンを 人工的に脳細胞に組み込み — 142 00:05:56,508 --> 00:05:58,422 それをクリックするだけで — 143 00:05:58,422 --> 00:06:01,435 脳細胞を活性化したり 不活性化したりできるのです 144 00:06:01,435 --> 00:06:03,903 この場合 光パルスでクリックします 145 00:06:03,903 --> 00:06:07,689 このチャネルロドプシンの 感光性スイッチを 146 00:06:07,689 --> 00:06:09,897 先ほどのセンサーにつけて — 147 00:06:09,897 --> 00:06:12,352 脳に注入します 148 00:06:12,352 --> 00:06:15,563 記憶が作られると — 149 00:06:15,563 --> 00:06:17,790 その特定の記憶を司る細胞は 150 00:06:17,790 --> 00:06:21,274 感光性スイッチを その中に設置させ — 151 00:06:21,274 --> 00:06:23,675 私たちは これらの細胞を 152 00:06:23,675 --> 00:06:27,939 ここにあるようなレーザーを使い コントロール出来るのです 153 00:06:27,939 --> 00:06:30,803 実際に実験してみましょう 154 00:06:30,803 --> 00:06:32,938 マウスを使ってみるのです 155 00:06:32,938 --> 00:06:35,866 ちょうどここにある様な箱に マウスを入れます 156 00:06:35,866 --> 00:06:38,206 そして足に 軽い刺激を与え — 157 00:06:38,206 --> 00:06:40,241 この箱に対する 恐怖の記憶を作ります 158 00:06:40,241 --> 00:06:42,220 ここで何か悪い事が起きた事を マウスは学びます 159 00:06:42,220 --> 00:06:44,562 さあ 私たちのシステムで — 160 00:06:44,562 --> 00:06:47,493 この記憶作成時に活性化された 海馬の細胞だけに 161 00:06:47,493 --> 00:06:50,376 チャネルロドプシンが 含まれてることになります 162 00:06:50,376 --> 00:06:53,393 あなたがマウス程小さいとしたら 163 00:06:53,393 --> 00:06:56,988 追いつめられた様な 気持ちだと思います 164 00:06:56,988 --> 00:06:58,736 そんな時 身を守る最善の策は 165 00:06:58,736 --> 00:07:01,218 察知されまいとする事でしょう 166 00:07:01,218 --> 00:07:03,251 マウスが恐怖を感じる時の 167 00:07:03,251 --> 00:07:04,777 典型的な行動がこれです 168 00:07:04,777 --> 00:07:06,546 箱の片隅で 169 00:07:06,546 --> 00:07:09,664 身動き1つしなくなります 170 00:07:09,664 --> 00:07:12,959 これは フリージングと呼ばれます 171 00:07:12,959 --> 00:07:17,253 もしマウスが何か悪い事が この箱の中で起きたと記憶するなら 172 00:07:17,253 --> 00:07:19,876 同じ箱に戻した時 173 00:07:19,876 --> 00:07:21,680 フリージングを起こします 174 00:07:21,680 --> 00:07:23,965 それはこの箱の中で どんな脅威にも — 175 00:07:23,965 --> 00:07:26,660 さらされたくないからです 176 00:07:26,660 --> 00:07:28,015 フリジーングとは こんな感じです 177 00:07:28,015 --> 00:07:30,230 あなたが呑気に 道を歩いていて — 178 00:07:30,230 --> 00:07:31,955 突然 別れた彼女か彼氏に — 179 00:07:31,955 --> 00:07:34,147 ばったり出会ったとします 180 00:07:34,147 --> 00:07:36,281 さあその恐怖の2秒 181 00:07:36,281 --> 00:07:38,157 あなたは「どうしよう? 挨拶する?握手する? 182 00:07:38,157 --> 00:07:39,525 背を向けてさっと逃げる? 他人のふりをする?」 183 00:07:39,525 --> 00:07:41,554 などと考え始めます 184 00:07:41,554 --> 00:07:44,738 浮かんでは消える不安な思いに 身動きすら取れなくなります 185 00:07:44,738 --> 00:07:47,484 ヘッドライトの中に立ちすくむ 車の前の鹿のようです 186 00:07:47,484 --> 00:07:50,775 でもそのマウスを次の様な — 187 00:07:50,775 --> 00:07:53,936 全く新しい箱に入れたなら 188 00:07:53,936 --> 00:07:56,083 その箱は恐れないでしょう 189 00:07:56,083 --> 00:08:00,812 新しい環境を恐れる 理由はないからです 190 00:08:00,812 --> 00:08:03,992 でもこの新しい箱に マウスを入れ — 191 00:08:03,992 --> 00:08:07,603 同時に前の恐怖の記憶を — 192 00:08:07,603 --> 00:08:10,282 レーザーで活性化させたら どうなるでしょう 193 00:08:10,282 --> 00:08:13,136 この全く新しい環境で — 194 00:08:13,136 --> 00:08:17,133 最初の箱の恐怖の記憶を 呼び戻す事が出来るでしょうか 195 00:08:17,133 --> 00:08:19,868 はい これは値千金の実験です 196 00:08:19,868 --> 00:08:22,781 あの日を思い出すと — 197 00:08:22,781 --> 00:08:24,964 レッドソックスが勝ち — 198 00:08:24,964 --> 00:08:26,873 緑が一杯の春の日でした 199 00:08:26,873 --> 00:08:28,690 川遊びをして — 200 00:08:28,690 --> 00:08:31,024 ノースエンドに行って — 201 00:08:31,024 --> 00:08:33,184 お茶を飲むには絶好の日でした 202 00:08:33,184 --> 00:08:36,286 一方 シュウと私は 203 00:08:36,286 --> 00:08:39,115 窓のない真っ暗な部屋にいて 204 00:08:39,115 --> 00:08:42,776 瞬きさえせず 目は一点を見つめ — 205 00:08:42,776 --> 00:08:45,242 コンピューターの画面に 釘付けになっていたのです 206 00:08:45,242 --> 00:08:47,798 この方法で初めて 記憶を活性化させるため — 207 00:08:47,798 --> 00:08:49,681 マウスを観察していたのです 208 00:08:49,681 --> 00:08:52,369 これが私たちが見たものです 209 00:08:52,369 --> 00:08:54,571 この箱に最初マウスを入れた時 210 00:08:54,571 --> 00:08:57,684 マウスは探索し 嗅ぎ回り 歩き回っていました 211 00:08:57,684 --> 00:08:59,373 勝手に動き回っていました 212 00:08:59,373 --> 00:09:01,074 普段のマウスの行動ですね 213 00:09:01,074 --> 00:09:03,053 ネズミは好奇心の強い動物です 214 00:09:03,053 --> 00:09:05,675 この新しい箱で何が起きているのか 知りたがっています 215 00:09:05,675 --> 00:09:07,206 面白いです 216 00:09:07,206 --> 00:09:10,657 しかしレーザーをつけた途端 — 217 00:09:10,657 --> 00:09:13,689 この様に全く突然 フリージング状態に入ったのです 218 00:09:13,689 --> 00:09:18,120 その場でビクリともせず じっとしていました 219 00:09:18,120 --> 00:09:19,748 明らかにフリージングです 220 00:09:19,748 --> 00:09:22,331 最初の箱の恐怖の記憶を 221 00:09:22,331 --> 00:09:24,395 この全く新しい環境の中で 222 00:09:24,395 --> 00:09:27,762 呼び起こすことが出来た様です 223 00:09:27,762 --> 00:09:29,874 これを見て スティーブと私は 224 00:09:29,874 --> 00:09:32,007 マウスと同様 衝撃を受けました 225 00:09:32,007 --> 00:09:33,269 (笑) 226 00:09:33,269 --> 00:09:36,576 実験後 私たちは何も言わず — 227 00:09:36,576 --> 00:09:38,329 部屋を出ました 228 00:09:38,329 --> 00:09:41,725 それからしばらく ぎこちない沈黙が続き — 229 00:09:41,725 --> 00:09:43,937 やがて スティーブが 口を開きました 230 00:09:43,937 --> 00:09:46,278 「うまくいったんじゃない?」 231 00:09:46,278 --> 00:09:49,252 「うん うまくいったみたいだ!」 232 00:09:49,252 --> 00:09:51,369 私たちは本当に興奮しました 233 00:09:51,369 --> 00:09:53,993 そして学術雑誌の 『ネイチャー』に 234 00:09:53,993 --> 00:09:55,689 研究成果を 出版したのです 235 00:09:55,689 --> 00:09:58,160 私たちの研究成果が 公に出て以来 — 236 00:09:58,160 --> 00:10:00,575 インターネット中で 237 00:10:00,575 --> 00:10:02,700 あらゆるコメントを頂いてます 238 00:10:02,700 --> 00:10:06,450 その中のいくつかを見てましょう 239 00:10:06,450 --> 00:10:08,907 [ ついに実現!バーチャル・リアリティの世界… ] 240 00:10:08,907 --> 00:10:10,907 [ 神経操作,ビジュアル夢模倣, 神経コーディング ] 最初に気づく事は 241 00:10:10,907 --> 00:10:13,810 [「記憶を書き直す」すごい未来!] このような研究は 議論を呼ぶ内容だということです 242 00:10:13,810 --> 00:10:16,364 私はこの最初の楽観的な見方に 全く同感です 243 00:10:16,364 --> 00:10:17,180 私はこの最初の楽観的な見方に 全く同感です 244 00:10:17,180 --> 00:10:19,988 私たちにとって — 245 00:10:19,988 --> 00:10:22,111 今までに一番胸に沁みる 褒め言葉です 246 00:10:22,111 --> 00:10:23,661 今までに一番胸に沁みる 褒め言葉です 247 00:10:23,661 --> 00:10:25,857 (笑) 248 00:10:25,857 --> 00:10:27,808 でも そんな楽観的な 意見だけではありません 249 00:10:27,808 --> 00:10:29,372 [ 恐ろしいことだ。これが簡単に— ] 250 00:10:29,372 --> 00:10:31,290 [ 人に出来るようになったら!? 何てことだ、人類は終わりだ! ] 251 00:10:31,290 --> 00:10:33,397 確かに2番目のを見れば 誰の目にも 252 00:10:33,397 --> 00:10:35,772 ポジティブではないことが分ります 253 00:10:35,772 --> 00:10:37,957 しかし これで思うことは 254 00:10:37,957 --> 00:10:40,143 研究は まだ マウスの段階ですが 255 00:10:40,143 --> 00:10:43,660 記憶コントロールにおける 256 00:10:43,660 --> 00:10:46,651 倫理的な問題について そろそろ議論する — 257 00:10:46,651 --> 00:10:48,599 時期だということです 258 00:10:48,599 --> 00:10:50,799 次に 私たちは 259 00:10:50,799 --> 00:10:52,773 「インセプション」と呼ばれる — 260 00:10:52,773 --> 00:10:55,201 プロジェクトも行っています 261 00:10:55,201 --> 00:10:58,444 [ 映画のネタにぴったり 人に記憶を植え付け利用する… その題は『インセプション』。 ] 262 00:10:58,444 --> 00:11:02,178 記憶を呼び戻す事は 納得して頂けましたが 263 00:11:02,178 --> 00:11:05,130 もし その記憶を いじったら どうなるでしょう 264 00:11:05,130 --> 00:11:08,163 それを虚偽記憶に してしまえるでしょうか? 265 00:11:08,163 --> 00:11:12,262 全ての記憶は精巧で 絶えず変化しています 266 00:11:12,262 --> 00:11:15,241 でも もし記憶を単純に — 267 00:11:15,241 --> 00:11:16,643 映画の1カットだと 想定すると — 268 00:11:16,643 --> 00:11:19,313 今まで話した事は 269 00:11:19,313 --> 00:11:21,244 「再生」ボタンを押して — 270 00:11:21,244 --> 00:11:25,829 同じ場面ををいつでも何処でも 観る事が出来るということです 271 00:11:25,829 --> 00:11:28,360 実際には 脳内に入って この映画のシーンを 272 00:11:28,360 --> 00:11:31,220 編集して違った物を作り上げる — 273 00:11:31,220 --> 00:11:34,116 そんな事が可能でしょうか 274 00:11:34,116 --> 00:11:36,294 可能なんです 275 00:11:36,294 --> 00:11:38,424 前回と同様に レーザーを使い — 276 00:11:38,424 --> 00:11:42,699 記憶を回復させる だけでいいのです 277 00:11:42,699 --> 00:11:46,138 この時に新しい情報を 278 00:11:46,138 --> 00:11:50,112 古い記憶の中に 組み込ませたら 279 00:11:50,112 --> 00:11:52,550 記憶は別のものになります 280 00:11:52,550 --> 00:11:56,213 リミックステープを 作る様なものです 281 00:11:56,213 --> 00:11:59,071 それは どうやって 行うのでしょうか 282 00:11:59,071 --> 00:12:01,028 脳内に恐怖の記憶を 見つけるやり方ではなく 283 00:12:01,028 --> 00:12:02,744 実験に使う動物を 284 00:12:02,744 --> 00:12:05,677 このような青い箱に入れ — 285 00:12:05,677 --> 00:12:08,171 青い箱を表す 脳細胞を見つけ — 286 00:12:08,171 --> 00:12:10,244 光パルスに 反応するようにさせます 287 00:12:10,244 --> 00:12:12,365 ちょうど先に 話したようにです 288 00:12:12,365 --> 00:12:14,489 その次の日 動物を取り出し — 289 00:12:14,489 --> 00:12:17,188 今度は赤い箱に入れます 290 00:12:17,188 --> 00:12:19,214 青い箱の記憶を 呼び起させる目的で — 291 00:12:19,214 --> 00:12:21,323 脳内に光パルスを照射します 292 00:12:21,323 --> 00:12:23,067 そして 記憶を 呼び起こさせると同時に — 293 00:12:23,067 --> 00:12:24,961 足に軽い刺激を 2,3回与えます 294 00:12:24,961 --> 00:12:27,604 どうなるでしょうか 295 00:12:27,604 --> 00:12:30,297 足に与えた刺激と — 296 00:12:30,297 --> 00:12:32,212 青い箱の記憶を ここでは人工的に — 297 00:12:32,212 --> 00:12:33,715 結び付けようと しているのです 298 00:12:33,715 --> 00:12:35,494 2つの情報を 繋ぎあわせるのです 299 00:12:35,494 --> 00:12:37,037 結果を検証する為に 300 00:12:37,037 --> 00:12:38,365 動物を再び取り出し — 301 00:12:38,365 --> 00:12:40,311 青い箱に戻します 302 00:12:40,311 --> 00:12:43,049 青い箱の記憶を 呼び起こしている時 303 00:12:43,049 --> 00:12:45,216 足に軽い刺激を 与えてましたから — 304 00:12:45,216 --> 00:12:47,586 突然 動かなくなりました 305 00:12:47,586 --> 00:12:50,788 実際 起きなかった事なのに ここで電気ショックを 306 00:12:50,788 --> 00:12:53,790 与えられたと 思い出したかの様にです 307 00:12:53,790 --> 00:12:55,652 つまり虚偽記憶を 作り上げたのです 308 00:12:55,652 --> 00:12:57,663 マウスは実際には 何も悪いことが起らなかった — 309 00:12:57,663 --> 00:12:58,917 マウスは実際には 何も悪いことが起らなかった — 310 00:12:58,917 --> 00:13:01,266 環境を恐れているのです 311 00:13:01,266 --> 00:13:03,719 今まで光制御 — 312 00:13:03,719 --> 00:13:06,085 「オン」スイッチの事 について話しましたが 313 00:13:06,085 --> 00:13:09,373 実は光制御「オフ」の スイッチもあり — 314 00:13:09,373 --> 00:13:11,453 そのスイッチを 設置する事で — 315 00:13:11,453 --> 00:13:13,931 記憶をいつでも何処でも 消す事も可能だと 316 00:13:13,931 --> 00:13:19,519 容易に想像されます 317 00:13:19,519 --> 00:13:21,733 今日話した事全ては 318 00:13:21,733 --> 00:13:26,410 神経科学の哲学的原則に 基づいています 319 00:13:26,410 --> 00:13:30,528 そして一見神秘的な特質を 持つと思われる心は 320 00:13:30,528 --> 00:13:34,173 実は 私たちが操作出来る 物理的なものだということです 321 00:13:34,173 --> 00:13:35,648 個人的には私は 322 00:13:35,648 --> 00:13:37,229 皆が好ましいと思われる — 323 00:13:37,229 --> 00:13:39,345 記憶を呼び起せるような世界や 324 00:13:39,345 --> 00:13:42,643 好ましくない記憶を 削除出来る世界が見えてきます 325 00:13:42,643 --> 00:13:44,579 今や記憶を編集出来る世界さえ 326 00:13:44,579 --> 00:13:46,118 現実のものとなってきています 327 00:13:46,118 --> 00:13:47,823 なぜならSFから あらゆるヒントを得 — 328 00:13:47,823 --> 00:13:50,048 それを実験し 現実化することが可能な — 329 00:13:50,048 --> 00:13:52,468 そんな時代に なっているからです 330 00:13:52,468 --> 00:13:54,351 研究室内だけでなく — 331 00:13:54,351 --> 00:13:56,737 世界中 あらゆる分野で — 332 00:13:56,737 --> 00:14:00,554 似た様な方法で様々なデータが 復活されたり編集されています 333 00:14:00,554 --> 00:14:04,395 それはデータの年代や 使用目的の如何を問わずです 334 00:14:04,395 --> 00:14:07,067 そうやって私たちはメモリーの仕組みを 335 00:14:07,067 --> 00:14:08,931 私たちは理解出来ています 336 00:14:08,931 --> 00:14:10,715 例えば私たちの研究のグループは 337 00:14:10,715 --> 00:14:13,353 恐怖の記憶を司る 脳細胞を見つけ出し 338 00:14:13,353 --> 00:14:16,128 それを喜びの記憶に 変えることに成功しました 339 00:14:16,128 --> 00:14:19,190 これが 丁度その 編集するという事なのです 340 00:14:19,190 --> 00:14:21,002 雄のマウスに 雌のマウスの記憶を 341 00:14:21,002 --> 00:14:23,503 呼び戻すことに 成功したケースもあります 342 00:14:23,503 --> 00:14:26,498 マウスにも 面白い経験だったそうです 343 00:14:26,498 --> 00:14:30,615 胸躍るような時代に 今私たちはいます 344 00:14:30,615 --> 00:14:34,420 科学の発展のスピードは とどまるところを知りません 345 00:14:34,420 --> 00:14:37,607 あとは私たちの 想像力次第です 346 00:14:37,607 --> 00:14:39,754 最後に 今までの話を聞いてどう思いますか 347 00:14:39,754 --> 00:14:41,725 この技術を どう進めて行きましょうか 348 00:14:41,725 --> 00:14:43,562 これらの質問は 研究室だけに — 349 00:14:43,562 --> 00:14:45,237 留めておくべきではありません 350 00:14:45,237 --> 00:14:47,809 今日のトークの目的は 351 00:14:47,809 --> 00:14:50,128 現在の神経科学での可能性を 352 00:14:50,128 --> 00:14:51,512 皆さんにご紹介することです 353 00:14:51,512 --> 00:14:53,022 しかしそれと同様に 大切なことは 354 00:14:53,022 --> 00:14:56,354 皆様にこれに関し 真剣に考えて頂く事です 355 00:14:56,354 --> 00:14:58,683 この研究の意味 これからの可能性 — 356 00:14:58,683 --> 00:15:01,157 そしてこれから取るべき道を 一緒に考えましょう 357 00:15:01,157 --> 00:15:03,255 なぜなら この先 実に大きな課題が待っていると 358 00:15:03,255 --> 00:15:05,791 シュウと私は思っているからです 359 00:15:05,791 --> 00:15:06,916 有り難うございました 360 00:15:06,916 --> 00:15:08,550 (拍手)