よしよし
眠れないの?
そうね 今夜は嵐だものね
でも 雷はすぐにおさまるわよ
そしたら 優しい雨の音だけになるわ
熱はないのよね?
ちょっと見せて
大丈夫ね
おでこも ほっぺも
とても冷たいわ
ちょっと寒いのかしら
毛布を掛けてあげましょうね
お待たせ
毛布を掛けるわね
あごの下まで 中に入れるのよ
腕も
足もよ
良いわ
枕も整えましょうか
ぺちゃんこだわ
寝心地を良くしてあげましょうね
ごめんね
頭を少し上げてくれる?
ありがと
こっちを…
こっちも
後ろも少し
触るわね
良いわ
大丈夫?
良かった
眠れるように お話を読んであげましょうか?
読む?
チェストから本を探してくるわね
この本は たくさんのお話が載ってるわ
どれにしましょうか
この話は素敵そうだわ 読んでみましょう
むかしむかし 遠い国の話
大きな屋根のお屋敷の 小さな寝室に
1人のメイドが 住んでいました
彼女は そこで何年も
とても親しみのある
とても高貴な方に 仕えていました
もちろん 彼女はそこで働くのが幸せでした
でも 地球上にいる他の人々と同じように
彼女にも 夢がありました
彼女の心はときどき お屋敷の外に傾き
王様や輝くドレスを 夢見ていました
彼女は 心のどこかで
新たな人生を待ち望んでいました
けれど 彼女に焦りはありませんでした
今は 初めて目にするような美しいものに囲まれた
自分の人生を楽しんでいました
奥様のサイズに ドレスのサイズが合っているかを
確認いたしますね
失礼いたします
こちらは…胸囲です
合っていますね
それから…
肩まわりを
首も
良いですね
そして…
腹囲です
待ち遠しくお思いですか?
その…明日のことをです
きっと 全てが良い結果となりますわ
では次に 背面を
いくつか切り込みが必要ですね
それを 肩と背中の目印にいたします
それでは 首から腰までを
良いですね それから…
近々 伯爵夫人が舞踏会を開かれると
耳にいたしました
戦地からお戻りになった
ご子息を称えるためのものだとか
何かご存じでいらっしゃいますか?
お出でになりますか?
素晴らしいです
はい 村でも舞踏会が開かれます
皆が祝福しております
私も とても意匠を凝らしたドレスを
作っております
もちろん
奥様のほど美しくはありません
…その後
彼女は村の舞踏会へ行き
思いがけない人に出会いました
変装した伯爵夫人の御子息です
この夜が 別の物語の始まりであったことは
言うまでもありません
面白かった?
あら 毛布がずれちゃってる
寝心地は良い?
他の話も?
そうね…
あなたの好きそうなお話が 2つあるわ
1つ目は 美容師のお話で
2つ目は 不思議な占い師のお話よ
どっちも?
良いわよ
じゃあ まずは エドワード朝の町にある
にぎやかな通りに行ってみましょう
その日 シルキー通りは明るく晴れ渡っていました
こんな日はいつも 何か新しい出会いがあります
その出会いは すぐそばにありました
大きな窓のある 素敵な石造りの建物から
作りたての石けんや スミレの香りが
ほのかに漂って…
失礼します
ぬるくはありませんか?
良かったです
では 石けんを付けますね
良いですね
では 髪をすすぎましょう
それでは 髪を拭きますね
優しく拭いていきます
完璧です
拭き終わりました
では 頭皮用ローションを使っていきます
少し乾燥されているので
専用のローションを使って
頭皮をマッサージしますね
髪がサラサラになりますよ
素敵です
失礼しますね
このローションには ローズマリーオイルや
アーモンドオイルに ごぼう
そして ラベンダーオイルが入っています
失礼します
これは とても良い物なのですが
あまり頻繁には 使用しないようにしてください
髪が黒くなる可能性があるんです
…それから1年後
素敵な出会いをたくさん経て
小さな美容師は
この町で 最も幸せな女性と なっていました
この話は面白かった?
そうね きっと続きがあると思うわ
じゃあ もう1つのお話ね
さあ タイムスリップしましょう
遠い昔に
人里離れた館と聞いて 何を思い浮かべるだろう
暗い森の奥?
それとも 風の吹き荒れる山の頂上?
運命を一端を知るために
どこまで旅をするのだろう
両方の手を見せて
こちらの手を じっくり見ていくわ
ここに小さな四角がある
他者から 自分を守ろうとする傾向にあるのね
おそらく あなたが思う以上に
あなたは傷ついてるわ
感情線は…途切れてる
タロットでも そう示されてたわね
生命線は とても良いわ
途切れることもなく 濃くて長い
頭脳線も同じね
こちら側の交わり方を見るに
巣立つためには
大切な人からの愛が 必要だったのね
この運命線は…
初めて見るわ
生命線と交差するほど長いのね
濃くなったり薄くなったりと 揺らいでいる
まるで 進むべき道が分からず
いくつもの道を歩もうとしているみたい
あまり手を広げ過ぎないように気を付けて
戦車のカードが出たときにも言ったけど
バランスのとり方を学ぶことね
この点は 変化の兆しでもあるわ
あなたの人生に 何か新しいものが訪れるのよ
今までに無かったものがね
個人的な変化だけでは なくて
周囲を変えたいと 思うようになるかもしれないわ
世界に何かをもたらしたいと 思うようになるかも
これ以上 伝えられることは無いわ
まだ起きてるの?
聞こえた?
離れていってるわ
嵐が離れていってる
最後にもう1つ お話を読んであげましょうか?
ちょっと待ってね
これは 一味違ったお話よ
別世界が舞台なの
蒸気機関や 光輝く機械にあふれた世界よ
聞いてみたい?
良かった
その日 医師はとても忙しく
彼女の仕事場は かなり散らかっていた
そして 彼女の同僚のエイダは
そろそろ 受付を閉めようとしていた
だが まだ予約が1件 残っており
彼女は それを断りたくなかった
その患者が 彼女にとって大切な人だったからだ
彼女が準備を始めた直後に…
さて じっとしていて
こっちから診ていくわね
こっちは異常無しよ
反対の耳も診せて
良いわね
素晴らしいわ
今度は 左右の耳それぞれに
いくつかの言葉をささやくわね
あなたの聴覚に 問題がないかを知りたいから
その言葉が何かを 教えてね
準備は良い? 始めるわね
蒸気機関
炎
羅針盤
雨雲
良いわよ
念のため 最後にあと1つ良い?
タコ
素晴らしいわ
次は 音叉を使うわね
音を鳴らした後に
顔の周りに 近づけるから
音が聞こえなくなったら 教えてね
良い?
おでこから始めるわね
どこで 音が聞こえた?
左? 右? 真ん中?
良いわね
じゃあ 左耳にも
右耳も
素晴らしいわ
全て正常みたいね
あなたは とても良い状態だから
任務を開始しても良いわ
証明書を書くわね
…2人は やっと仕事を終えた
港には 多くの人が集まり
潜水艦の就航を 心待ちにしていた
医師とエイダは
艦長を待つ 数人の友人たちと合流し
人生で最高とも言える夜を 楽しんだ