WEBVTT 00:00:05.970 --> 00:00:08.198 マハトマ・ガンジーはかつてこう言いました 00:00:08.199 --> 00:00:11.838 「世界には2種類の力が存在する 00:00:11.839 --> 00:00:15.118 罰への恐れから生まれるものと 00:00:15.119 --> 00:00:17.879 愛の行いからもたらされるものだ」 00:00:17.880 --> 00:00:20.479 彼は 愛こそが変革への力となること 00:00:20.480 --> 00:00:24.709 罰への恐れから生まれる力は弱々しく 00:00:24.710 --> 00:00:28.799 長続きしないし 人の心を むしばんでしまうものだが 00:00:28.800 --> 00:00:32.158 愛の行いから生まれた力は 00:00:32.159 --> 00:00:35.078 その1,000倍も効果があるうえに 00:00:35.079 --> 00:00:39.279 永遠に続くものだと信じていたのです 00:00:39.280 --> 00:00:43.428 父が 自転車の乗り方を 初めて教えてくれたときに 00:00:43.429 --> 00:00:47.599 私はその「愛の力」を感じました 00:00:47.600 --> 00:00:49.398 彼の愛は 「忍耐」という形でした 00:00:49.399 --> 00:00:56.249 父が私の横をゆっくりと走りながら 自転車を支えたり 安定させたり 押したり 00:00:56.250 --> 00:01:01.339 私の中にあると知っていたものを信じるよう はげましてくれたことを 思い出します 00:01:02.489 --> 00:01:04.679 100回は失敗したはずです 00:01:06.149 --> 00:01:09.959 しかし とうとう 魔法のような瞬間が訪れました 00:01:09.960 --> 00:01:13.399 初めてまっすぐに走れたのです 00:01:13.400 --> 00:01:15.589 幼い子供だった私は 00:01:15.590 --> 00:01:21.958 近所の空中を飛んでいるように 感じたことを憶えています 00:01:21.959 --> 00:01:27.639 そしてそのひととき 子供心に重くのしかかっていた 00:01:27.640 --> 00:01:31.078 子供には理解できない さまざまなものごとが― 00:01:31.079 --> 00:01:34.078 夜遅くの両親のいさかいや 00:01:34.079 --> 00:01:37.718 破たんしかかっていた結婚生活 00:01:37.719 --> 00:01:39.519 母の身体を徐々に蝕みつつあった病気も 00:01:39.520 --> 00:01:42.969 その午後には 全てが 消え去ったたように感じました 00:01:44.439 --> 00:01:49.119 それからまもなく 私は私だけの「儀式」をするようになりました 00:01:49.120 --> 00:01:50.949 それは毎日放課後に始まります 00:01:50.950 --> 00:01:53.039 自転車のところに急いで帰ると 00:01:53.040 --> 00:01:56.508 ラックから取り出して 近所を横切り 00:01:56.509 --> 00:01:57.958 フェンスの下をくぐって向こう側へと 00:01:57.959 --> 00:02:02.318 そして サンフランシスコ・ベイ地区の 東部にある 00:02:02.319 --> 00:02:06.679 荒れ地の真ん中に向かって 走り出すのです 00:02:06.680 --> 00:02:09.559 私はそこで慰めを見つけました 00:02:09.560 --> 00:02:15.478 泥道でペダルをこぎ 森や木々の間を走り抜ける 00:02:15.479 --> 00:02:19.598 そんな単純な行動の中に 何かがあったからです 00:02:19.599 --> 00:02:23.408 そのうえ ゴムと鉄でできた これまた単純な機械に 00:02:23.409 --> 00:02:26.438 私を本来の自分に戻してくれる 何かがあったからです 00:02:26.439 --> 00:02:29.890 そこでは 私は自由だったのです 00:02:31.400 --> 00:02:34.239 しかしその後 私の人生は一変しました そういうものです 00:02:34.240 --> 00:02:37.399 2年たたないうちに 両親はひどい口論を繰り返しました 00:02:37.400 --> 00:02:43.099 父は家を出ていってしまい 私は自転車に興味をなくしました 00:02:44.439 --> 00:02:49.279 そして 自転車がガレージのどこか片隅で 埃をかぶって眠っているころ 00:02:49.280 --> 00:02:52.440 母は辛い離婚のさなかに亡くなりました 00:02:53.960 --> 00:02:58.318 言うまでもありませんが 若くして世間に放り出された私は 00:02:58.319 --> 00:03:01.809 人生の最初の10年を 怒り 苦しみながら 00:03:01.810 --> 00:03:06.279 自分自身や他人を傷つけて 過ごしました 00:03:06.280 --> 00:03:10.158 愛の力など どこにも見つかりませんでした 00:03:10.159 --> 00:03:13.878 でも その時 父が戻ってきたのです 00:03:13.879 --> 00:03:17.039 父は私に言いました 「俺には分かるよ 00:03:18.879 --> 00:03:21.839 俺も その痛みを感じたんだ 00:03:21.840 --> 00:03:23.438 だから 誰かに話さなきゃならなかった 00:03:23.439 --> 00:03:26.449 お前も 同じように 考えたらいいんじゃないかな」 00:03:28.879 --> 00:03:32.460 6か月後 私は心理療法士の前に座っていました 00:03:33.940 --> 00:03:36.718 「僕は気が狂ってると思うんです」 と 彼女に言いました 00:03:36.719 --> 00:03:39.207 私は 彼女が全てを委ねさせると 思ったのですが 00:03:39.208 --> 00:03:42.399 その代わりに彼女は 暖かく 同情するような眼で私を見つめ 00:03:42.400 --> 00:03:46.758 「リック ほんとに狂ってる人達ほど 必死に 00:03:46.759 --> 00:03:50.839 狂ってないと納得させようとするものよ」と 言ったのです 00:03:51.889 --> 00:03:55.038 それが私の回復への始まりでした 00:03:55.039 --> 00:03:57.878 それからの3年間 私は自分自身を深く見つめました 00:03:57.879 --> 00:04:01.779 時には 見たくなかったものを 見ることもありました 00:04:03.019 --> 00:04:06.819 しかし その3年間が過ぎると 人々が 00:04:06.820 --> 00:04:10.799 気づきの瞬間 あるいは 「転換点」と呼ぶものが訪れ 00:04:10.800 --> 00:04:16.958 自分自身に 人生で最も大切な問いかけを することができたのです 00:04:16.959 --> 00:04:19.889 お前が死ぬ前の望みは何だ? 00:04:19.890 --> 00:04:22.239 お前の夢は何なんだ? 00:04:22.240 --> 00:04:25.518 私は新聞のカメラマンとして 14年間働きました 00:04:25.519 --> 00:04:30.349 一つ確かに分かったのは キャリアはもはや 飢えを満たしてくれないことでした 00:04:31.519 --> 00:04:34.239 私にはもっと大きな夢がありました 00:04:34.240 --> 00:04:37.919 世界中を自転車で旅してまわることを ずっと夢見ていたんです 00:04:37.920 --> 00:04:40.638 そして2年後 00:04:40.639 --> 00:04:43.999 私はゴールデンゲイト・ブリッジの上で 自転車にまたがり 00:04:44.000 --> 00:04:50.160 家族や友人たちに別れを告げて アメリカ横断を始めました 00:04:52.800 --> 00:04:57.238 アメリカを6400キロも走り回り ヨーロッパに渡りました 00:04:57.239 --> 00:05:02.119 歴史的な寒さに見舞われた冬のヨーロッパで 8か月の間過ごしました 00:05:03.480 --> 00:05:08.559 そこから南に下ってギリシャからトルコへ 00:05:08.560 --> 00:05:10.799 イランではビザの発給を拒否されました 00:05:10.800 --> 00:05:15.999 そこで私はウズベキスタンからキルギスタン そして中国へ 00:05:16.000 --> 00:05:21.180 標高5400メートルのチベット高原を抜け インドに下り 00:05:23.080 --> 00:05:25.080 ネパール、そしてバングラデシュ 00:05:27.080 --> 00:05:29.878 私はそこで 自転車のサドルの上から 00:05:29.879 --> 00:05:32.339 違う何かを見始めたのです 00:05:32.340 --> 00:05:36.150 それは 以前には見たことがないような 苦しみでした 00:05:37.480 --> 00:05:40.918 私がふたつ目の愛の力を学んだのは その時でした 00:05:40.919 --> 00:05:44.969 ひとつ目が自分自身をケアすることなら ふたつ目は 00:05:44.970 --> 00:05:48.950 それを周りに反映させ 他の人たちに尽くすことです 00:05:50.680 --> 00:05:53.318 私は 自転車に乗っていない時間 ボランティアを始めました 00:05:53.319 --> 00:05:55.789 最初の頃 もっとも辛かったのは 00:05:55.790 --> 00:05:58.879 タイのホスピスで 死人や 死につつある人の世話をすることでした 00:06:01.279 --> 00:06:05.248 その後 ラオスで不発弾の解体作業を 00:06:05.249 --> 00:06:08.608 この人たちと一緒に行いました 00:06:08.609 --> 00:06:13.039 不発弾を解体して 犠牲者が出ないようにする作業です 00:06:13.040 --> 00:06:18.199 その後はベトナムで 地雷の被害者たちの リハビリに携わりました 00:06:19.449 --> 00:06:23.100 そしてカンボジアでは 貧しい子供たちに 英語を教えました 00:06:24.870 --> 00:06:26.528 しかし 私が今日ここにいるのは 00:06:26.529 --> 00:06:29.838 その直後に起きた出来事について お話しするためなのです 00:06:29.839 --> 00:06:33.039 私は自転車でタイを南に旅していました 00:06:33.040 --> 00:06:38.679 そして イランのマシャードからやってきた このイラン人の紳士と出会ったのです 00:06:38.680 --> 00:06:40.759 私たちは しばらくの間 メールでやりとりをしました 00:06:40.760 --> 00:06:42.791 彼は モハメド・タヤランという名前でした 00:06:42.792 --> 00:06:45.751 彼は私をマレーシアのペナンに招きました 00:06:46.589 --> 00:06:50.599 じきに 私は彼と座って コーヒーやランチをしていました 00:06:50.600 --> 00:06:53.119 自転車で一緒にマレーシアを旅することになり 00:06:53.120 --> 00:06:59.278 世界最古の熱帯雨林の一つである マレーシア中部を縦断しました 00:06:59.279 --> 00:07:03.120 並んで自転車を走らせながら 私は彼の人生について尋ねました 00:07:04.480 --> 00:07:06.629 彼の話はとても奥深いものでした 00:07:07.839 --> 00:07:11.638 彼の父親は 彼がまだ小さい頃に亡くなりました 00:07:11.639 --> 00:07:14.639 彼は 人生において正しいことをなんでも行い 00:07:15.999 --> 00:07:19.520 工学の学位を取り 事業でも成功しました 00:07:19.521 --> 00:07:21.758 しかし ある日山登りをしていた時 00:07:21.759 --> 00:07:26.318 彼は それが正しくなかったことに 気づいたのです 00:07:26.319 --> 00:07:32.078 それで彼は 旅に出ようと計画を始めました 00:07:32.079 --> 00:07:36.059 彼も 世界中を自転車で旅してまわることを 夢見ていました 00:07:37.759 --> 00:07:42.680 その準備が整うと 彼は英語を学び 00:07:44.510 --> 00:07:49.239 500ドルをポケットに入れて出発したのです 00:07:49.240 --> 00:07:54.138 そう その午後私には 00:07:54.139 --> 00:07:58.608 彼の話すことが 私自身の物語だと分かったのです 00:07:58.609 --> 00:08:01.039 それは私の物語だったのです 00:08:01.040 --> 00:08:04.739 私は思いました ここにいる みんながお前の敵だと言うこの男は 00:08:04.740 --> 00:08:09.709 実際のところ 故郷にいる 私のたくさんの友人たちよりも 00:08:09.710 --> 00:08:12.509 自分と共通する部分が多いんだと 00:08:15.079 --> 00:08:17.018 私たちの旅が終わった後 00:08:17.019 --> 00:08:20.448 マレーシアの西の海岸に穴を掘りました 00:08:20.449 --> 00:08:22.638 彼は 世界中に木を植えて回っていたのです 00:08:22.639 --> 00:08:25.758 私たちは 平和の証に 一緒に木を植えることにしました 00:08:25.759 --> 00:08:28.578 その木は今でもありますし 私たちそれぞれの祖国 00:08:28.579 --> 00:08:30.939 アメリカとイランの平和の証として 育ち続けています 00:08:32.119 --> 00:08:33.460 (拍手) 00:08:42.120 --> 00:08:47.719 モハメッドに別れを告げる時 彼に「愛している」と言いました 00:08:47.720 --> 00:08:54.438 私たちの祖国が 戦時下のようなレトリックを 00:08:54.439 --> 00:08:58.518 突きつけ合っているのが悲しくて 私は泣き出してしまいました 00:08:58.519 --> 00:09:00.608 彼らの振る舞いは 愛の力によるものではなく 00:09:00.609 --> 00:09:02.678 彼らが 懲罰の脅威によって 00:09:02.679 --> 00:09:06.758 得たいと願っている力によるものです 00:09:06.759 --> 00:09:09.649 モハメッドと会わなかった何年かの間に 00:09:09.650 --> 00:09:14.659 私たちは「平和の車輪」と名付けた プロジェクトを立ち上げました 00:09:15.799 --> 00:09:17.638 そして その説明をする代わりに 00:09:17.639 --> 00:09:20.859 彼自身に説明してもらうため ここに来てもらおうと思います 00:09:20.860 --> 00:09:25.518 モハメッド その辺にいるんだろ? 自転車で道に迷ったかな 00:09:25.519 --> 00:09:29.839 どこにいるんだい モハメッド 彼はシャイなんです 00:09:29.840 --> 00:09:31.439 彼は今出てきたくないのかも 00:09:31.440 --> 00:09:33.550 モハメッド いるよね? 00:09:38.320 --> 00:09:39.678 どうしちゃったのかな 00:09:39.679 --> 00:09:41.279 (拍手) 00:09:49.199 --> 00:09:52.679 タヤラン:私はこの瞬間を待ち続けてきました 00:09:52.680 --> 00:09:57.959 私の国 イランで みなさんの前で 親友と抱き合える時を 00:09:57.960 --> 00:10:00.970 すごく興奮してますし 泣きそうです 00:10:02.380 --> 00:10:04.838 「平和の車輪」は 00:10:04.839 --> 00:10:08.039 二つの国の子供たちを結びつける プロジェクトです 00:10:08.042 --> 00:10:14.479 子供たちは まるで自転車の二つの車輪のように お互いに頼りあっています 00:10:14.480 --> 00:10:18.719 ひとつが動かないと もう一方もうまくいかないでしょう 00:10:18.720 --> 00:10:25.979 リックと私は ちょうどフレームのようなもので 私たちの力で 彼らを結びつけようとしています 00:10:25.980 --> 00:10:29.139 手紙を書き それをやりとりすることです 00:10:30.429 --> 00:10:32.010 分かりあうための手紙です 00:10:32.930 --> 00:10:36.758 全体のシステムの中で 彼らはみんな同じ価値を持っています 00:10:36.759 --> 00:10:40.548 同じように この世界では 00:10:40.549 --> 00:10:45.429 ひとつひとつの国の平和が 全体の平和に関係しているのです 00:10:46.876 --> 00:10:49.068 サアディーが言ったように 00:10:49.069 --> 00:10:54.839 「人類は ひとつの創造物 ひとつの魂を 構成する一員なのだ 00:10:54.840 --> 00:11:01.660 一人が痛みに苦しめば 他のものたちも心は安まらない」 00:11:04.000 --> 00:11:08.250 ガン:私とモハメッドはイランとアメリカの 学校を訪ねました 00:11:08.269 --> 00:11:10.999 それぞれ 子供たちが交換するための 00:11:11.000 --> 00:11:13.999 絵や手紙を集めて回ったのです 00:11:14.000 --> 00:11:17.209 そして私たちは・・・言葉が出てこない 00:11:17.210 --> 00:11:20.638 キーシュ島 すぐそこで去年会ったのです 00:11:20.639 --> 00:11:25.239 私たちは 絵や手紙を一緒に運びました 00:11:25.240 --> 00:11:27.918 そして 私が締めくくりとして お話ししたいのは 00:11:27.919 --> 00:11:30.599 このことによって いったい何を学んだのか ということです 00:11:30.600 --> 00:11:34.999 そう みなさんがすでに お分かりになっていることだと思います 00:11:35.000 --> 00:11:39.079 私たちの日々の行い その時その時の行いの中で 00:11:39.080 --> 00:11:42.678 私たちは ガンジーが話していた 「愛」によってもたらされるもの 00:11:42.679 --> 00:11:48.399 あるいは「怖れ」によってもたらされるもの どちらをよりどころにするか 選んでいるのです 00:11:50.399 --> 00:11:54.599 そして 私自身の選択が何か みなさんは ご存じだと思います 00:11:54.600 --> 00:11:57.558 モハメッドの選択が何か ご存じだと思います 00:11:57.559 --> 00:11:59.857 しかし 長い年月の間に いずれ私たちはこの世を去ります 00:11:59.858 --> 00:12:02.614 そして 次の世代が現れるのです 00:12:02.615 --> 00:12:04.999 そこで 絵や手紙によって お互いに伝えようとしたことを 00:12:05.000 --> 00:12:07.969 ここでみなさんにご紹介したいと思います 00:12:10.909 --> 00:12:14.979 [アメリカとイランの子供たちが お互いに伝えようとしたこと] 00:12:16.369 --> 00:12:18.323 (ビデオ)(音楽) 00:12:33.208 --> 00:12:35.062 [僕は君のことが好きだよ!] 00:12:35.063 --> 00:12:38.539 [私たちみんな人間でしょ だったら仲良く生きられるよね?] 00:12:46.609 --> 00:12:47.730 [愛] 00:12:53.030 --> 00:12:55.269 [君と僕 いつまでも友だち] 00:13:01.715 --> 00:13:02.895 [友だち] 00:13:04.879 --> 00:13:06.660 [戦争はやめよう] 00:13:13.294 --> 00:13:16.294 「イラン アメリカ 平和」 00:13:17.230 --> 00:13:19.989 [戦争やめよう もっと平和を] 00:13:32.659 --> 00:13:36.388 [愛だけが敵を友人に変える力を持つ」 マーチン・ルーサー・キング博士 00:13:36.388 --> 00:13:37.439 (拍手) 00:13:37.440 --> 00:13:38.499 ガン:ありがとうございます 00:13:38.500 --> 00:13:40.919 タヤラン:本当にありがとう 心から感謝します 00:13:40.920 --> 00:13:42.320 (拍手)