1 00:00:00,915 --> 00:00:02,880 お招き頂いて光栄です 2 00:00:02,880 --> 00:00:06,596 私は過去15年 3 00:00:06,596 --> 00:00:09,915 所得と富の分配の歴史について 研究してきました 4 00:00:09,915 --> 00:00:13,016 これらの歴史的な証拠から得られる 5 00:00:13,016 --> 00:00:15,517 最も興味深い教訓の1つは 6 00:00:15,517 --> 00:00:17,530 長期的には 7 00:00:17,530 --> 00:00:21,250 資本収益率が経済成長率を 8 00:00:21,250 --> 00:00:23,920 上回るものだということで 9 00:00:23,920 --> 00:00:26,665 そしてこれが富の集中に 繋がりやすいということです 10 00:00:26,665 --> 00:00:28,498 際限無く富の集中が 起こるのではありませんが 11 00:00:28,498 --> 00:00:31,289 資本収益率と経済成長率とが 乖離すればする程 12 00:00:31,289 --> 00:00:34,224 富の格差(資産の格差)が高まって行き 13 00:00:34,224 --> 00:00:37,431 社会一般的に この現象に収束しがちなのです 14 00:00:37,431 --> 00:00:40,985 これが今日お話したい 主要な経済の動力です 15 00:00:40,985 --> 00:00:42,954 強調しておきたいのは 16 00:00:42,954 --> 00:00:45,284 所得と富の分配のダイナミクスにおいて 17 00:00:45,284 --> 00:00:47,757 これが唯一の重要な動力なのではなく 18 00:00:47,757 --> 00:00:49,782 長期的な所得と富の分配のダイナミクスでは 19 00:00:49,782 --> 00:00:52,763 他の様々な要因となる動力が 重要な役割を果たす 20 00:00:52,763 --> 00:00:54,338 ということです 21 00:00:54,338 --> 00:00:56,307 まだまだデータも各種 22 00:00:56,307 --> 00:00:57,863 集積されなければなりません 23 00:00:57,863 --> 00:01:00,795 今日の私たちは以前に比べれば 少しは理解を深めていますが 24 00:01:00,795 --> 00:01:03,316 それでもまだ 知らないことが多すぎます 25 00:01:03,316 --> 00:01:05,992 そして経済、社会、政治― 26 00:01:05,992 --> 00:01:08,290 様々なプロセスが及ぼす影響について 27 00:01:08,290 --> 00:01:09,717 研究がなされなければいけません 28 00:01:09,717 --> 00:01:12,697 私は今日この単純な動力に 焦点を当ててお話しますが 29 00:01:12,697 --> 00:01:14,958 それは他の重要な動力の存在を 30 00:01:14,958 --> 00:01:16,162 否定するものではありません 31 00:01:16,162 --> 00:01:18,434 これから紹介するデータの殆どは 32 00:01:18,434 --> 00:01:20,639 オンラインで入手可能な 33 00:01:20,639 --> 00:01:21,899 ワールド・トップ・インカム 34 00:01:21,899 --> 00:01:23,384 データベースから入手しています 35 00:01:23,384 --> 00:01:25,487 これは経済的不平等をまとめた 36 00:01:25,487 --> 00:01:27,940 現存する最大の歴史的データベースで 37 00:01:27,940 --> 00:01:29,290 数十カ国 38 00:01:29,290 --> 00:01:33,182 30名以上の学者の 貢献によって作られました 39 00:01:33,182 --> 00:01:35,960 このデータベースから導き出される いくつかの事実をご紹介し 40 00:01:35,960 --> 00:01:37,105 それから資本収益率が 41 00:01:37,105 --> 00:01:39,179 経済成長率を上回る ということに戻りましょう 42 00:01:39,179 --> 00:01:41,689 第1の事実は所得格差において 過去1世紀の間に 43 00:01:41,689 --> 00:01:44,740 アメリカとヨーロッパの順序が 44 00:01:44,740 --> 00:01:46,645 逆転したということです 45 00:01:46,645 --> 00:01:48,400 逆転したということです 46 00:01:48,400 --> 00:01:51,905 1900年、1910年代には ヨーロッパでの所得格差の方が 47 00:01:51,905 --> 00:01:54,170 アメリカでのそれよりも大きかったのですが 48 00:01:54,170 --> 00:01:57,280 今日ではそれが逆転しています 49 00:01:57,280 --> 00:01:58,946 この点ははっきりさせておきたいのですが 50 00:01:58,946 --> 00:02:01,770 この逆転は「資本収益率が経済成長率を上回る」 51 00:02:01,770 --> 00:02:05,267 ということは関係ありません スキル需要と供給における変化 52 00:02:05,267 --> 00:02:08,720 教育と技術開発の相乗的発達 グローバリゼーション 53 00:02:08,720 --> 00:02:12,300 そして恐らく ―アメリカではより顕著な― スキル開発へのアクセスの不平等 54 00:02:12,300 --> 00:02:13,906 などが関わっています 55 00:02:13,906 --> 00:02:16,493 アメリカにはレベルの高い大学がありますが 56 00:02:16,493 --> 00:02:18,735 教育システム底辺の状況は良くありません 57 00:02:18,735 --> 00:02:19,500 教育システム底辺の状況は良くありません 58 00:02:19,500 --> 00:02:21,861 これがスキルへのアクセスの不平等を招き 59 00:02:21,861 --> 00:02:23,780 過去前例がないほどの経営陣への 60 00:02:23,780 --> 00:02:26,800 報酬の高騰を招きました 61 00:02:26,800 --> 00:02:29,650 これは教育ということだけでは 説明し難いのです 62 00:02:29,650 --> 00:02:31,604 ですから他の要因が関わっているのですが 63 00:02:31,604 --> 00:02:34,213 今日これについてはお話しせず 64 00:02:34,213 --> 00:02:36,879 富の格差に焦点を当てていきます 65 00:02:36,879 --> 00:02:39,860 所得格差について とても単純な指標をご紹介します 66 00:02:39,860 --> 00:02:42,210 所得格差について とても単純な指標をご紹介します 67 00:02:42,210 --> 00:02:44,664 これはトップ10%が 総所得に占めるシェアです 68 00:02:44,664 --> 00:02:46,452 これはトップ10%が 総所得に占めるシェアです 69 00:02:46,452 --> 00:02:48,624 1世紀前のヨーロッパでは45から50% 70 00:02:48,624 --> 00:02:52,201 アメリカでは40%を少し上回る程度でした 71 00:02:52,201 --> 00:02:54,939 アメリカでは40%を少し上回る程度でした 72 00:02:54,939 --> 00:02:57,210 所得格差はヨーロッパの方が 大きかったのです 73 00:02:57,210 --> 00:02:59,234 それから20世紀前半に 74 00:02:59,234 --> 00:03:01,765 急な下落が起こり 75 00:03:01,765 --> 00:03:04,128 最近数十年になるとアメリカでの所得格差が 76 00:03:04,128 --> 00:03:07,630 ヨーロッパのそれを上回っています 77 00:03:07,630 --> 00:03:10,300 これが先程お話しした事実その1です 78 00:03:10,300 --> 00:03:14,211 第2の事実は財産格差についてですが 79 00:03:14,211 --> 00:03:17,301 第2の事実は財産格差についてですが 80 00:03:17,301 --> 00:03:19,907 所得格差のそれよりも 常に大きいということです 81 00:03:19,907 --> 00:03:22,292 富の格差の程度は 82 00:03:22,292 --> 00:03:24,945 近年増して来たとはいえ 83 00:03:24,945 --> 00:03:26,801 今日1世紀前と比較すると 84 00:03:26,801 --> 00:03:28,680 まだ緩やかなものです 85 00:03:28,680 --> 00:03:31,199 総資産/総所得比率は 86 00:03:31,199 --> 00:03:33,224 第一次世界大戦、大恐慌 87 00:03:33,224 --> 00:03:34,855 第二次世界大戦によってもたらされた 88 00:03:34,855 --> 00:03:36,880 非常に大きなショックから回復しました 89 00:03:36,880 --> 00:03:38,099 非常に大きなショックから回復しました 90 00:03:38,099 --> 00:03:40,143 ではこれから 第2と第3の事実を示す 91 00:03:40,143 --> 00:03:43,000 グラフを見ていきましょう 92 00:03:43,000 --> 00:03:47,390 まず富の格差のレベルに目を向けると 93 00:03:47,390 --> 00:03:50,548 これがトップ10%の資産家が 占める総資産のシェア 94 00:03:50,548 --> 00:03:53,070 これがトップ10%の資産家が 占める総資産のシェア 95 00:03:53,070 --> 00:03:55,779 ここでも所得格差と同じように 96 00:03:55,779 --> 00:03:58,344 アメリカとヨーロッパで 順番が逆転しています 97 00:03:58,344 --> 00:04:00,020 アメリカとヨーロッパで 順番が逆転しています 98 00:04:00,020 --> 00:04:03,570 1世紀前 財産の集中は 99 00:04:03,570 --> 00:04:05,813 アメリカよりもヨーロッパの方が 比較して大きく 100 00:04:05,813 --> 00:04:07,647 今やそれは逆転しました 101 00:04:07,647 --> 00:04:09,638 更に2つの事実が明らかになります 102 00:04:09,638 --> 00:04:13,339 一般に資産格差は 常に所得格差よりも大きく 103 00:04:13,339 --> 00:04:15,994 一般に資産格差は 常に所得格差よりも大きく 104 00:04:15,994 --> 00:04:18,334 所得格差においては 105 00:04:18,334 --> 00:04:20,662 トップ10%が国民総所得の シェアの30〜50%を占め 106 00:04:20,662 --> 00:04:24,960 トップ10%が国民総所得の シェアの30〜50%を占め 107 00:04:24,960 --> 00:04:27,772 一方 家計資産総額については 常に60〜90%のシェアを 108 00:04:27,772 --> 00:04:29,831 占めているということを 覚えておいて下さい 109 00:04:29,831 --> 00:04:31,347 これが事実その1で これは続く内容に関わる 110 00:04:31,347 --> 00:04:33,273 大変重要な前提です 111 00:04:33,273 --> 00:04:34,994 富の集中は常に 所得の集中に比べて 112 00:04:34,994 --> 00:04:36,873 かなりその割合が大きいのです 113 00:04:36,873 --> 00:04:40,259 事実その2は 近年数十年での富の格差の拡大は 114 00:04:40,259 --> 00:04:43,206 事実その2は 近年数十年での富の格差の拡大は 115 00:04:43,206 --> 00:04:47,492 未だ1910年代のレベルには 届いていないということです 116 00:04:47,492 --> 00:04:49,269 今日の様相はかなり違っています 117 00:04:49,269 --> 00:04:51,182 富の格差は未だとても大きく 118 00:04:51,182 --> 00:04:54,444 トップ10%の富のシェアが 全体の60から70%を占めます 119 00:04:54,444 --> 00:04:56,289 良いニュースはこれが 120 00:04:56,289 --> 00:04:58,070 トップ10%の富のシェアが 121 00:04:58,070 --> 00:05:01,441 90%を占めていた1世紀前と比べると 大分マシだと言うことです 122 00:05:01,441 --> 00:05:03,432 90%を占めていた1世紀前と比べると 大分マシだと言うことです 123 00:05:03,432 --> 00:05:05,434 今日ではミドル40% 124 00:05:05,434 --> 00:05:07,347 トップ10%でもなく 125 00:05:07,347 --> 00:05:09,120 ボトム50%でもない人々 126 00:05:09,120 --> 00:05:11,386 つまり中産階級の人々が 20〜30%の 127 00:05:11,386 --> 00:05:14,529 つまり中産階級の人々が 20〜30%の 128 00:05:14,529 --> 00:05:16,391 国富―国民純資産のシェアを占めています 129 00:05:16,391 --> 00:05:19,722 彼らは中産階級が 存在しなかった1世紀前には 130 00:05:19,722 --> 00:05:22,340 貧困層に位置していました 131 00:05:22,340 --> 00:05:23,917 ですからこれは重要な変化です 132 00:05:23,917 --> 00:05:28,532 資産総量の水準は回復したと言うのに 133 00:05:28,532 --> 00:05:31,838 富の格差が第一次世界大戦前のレベルまで 134 00:05:31,838 --> 00:05:35,347 戻っていないのは興味深い事実です 135 00:05:35,347 --> 00:05:37,294 いいですか 総資産/総所得比率は 136 00:05:37,294 --> 00:05:39,510 いいですか 総資産/総所得比率は 137 00:05:39,510 --> 00:05:41,623 ヨーロッパでは特に 138 00:05:41,623 --> 00:05:45,483 第一次世界大戦前のレベルに戻っています 139 00:05:45,483 --> 00:05:47,328 この物語には2つの異なった 140 00:05:47,328 --> 00:05:49,859 ポイントがあります 141 00:05:49,859 --> 00:05:50,978 まずひとつは― 142 00:05:50,978 --> 00:05:53,420 私達が蓄積する財産についてー 143 00:05:53,420 --> 00:05:55,098 もちろん財産を蓄えることには 144 00:05:55,098 --> 00:05:56,845 全く悪いことではありません 145 00:05:56,845 --> 00:05:59,713 とりわけそれが集中せず 広く分散していれば 146 00:05:59,713 --> 00:06:01,107 なおさら良いのですが 147 00:06:01,107 --> 00:06:03,852 ここで焦点を当てたいのは 148 00:06:03,852 --> 00:06:06,233 長期的な富の格差の発展が 149 00:06:06,233 --> 00:06:08,533 これから将来 どうなるかです 150 00:06:08,533 --> 00:06:10,558 ではどうすれば 151 00:06:10,558 --> 00:06:14,220 第一次世界大戦まで あれほど大きかった富の格差が 152 00:06:14,220 --> 00:06:17,410 更に拡大するようにさえ見えたことの 原因を示しつつ 153 00:06:17,410 --> 00:06:20,737 これから将来を予測できるでしょうか 154 00:06:20,737 --> 00:06:24,623 まずは少々説明をしてそれから 155 00:06:24,623 --> 00:06:26,759 将来の展望を推測してみたいと思います 156 00:06:26,759 --> 00:06:28,354 まず言っておきたいのは 157 00:06:28,354 --> 00:06:30,341 財産が所得よりも 158 00:06:30,341 --> 00:06:32,438 かなり集中していることをあらわす 159 00:06:32,438 --> 00:06:34,624 最も良いモデルはダイナミックであり 160 00:06:34,624 --> 00:06:37,736 相続による富の蓄積を含んで 161 00:06:37,736 --> 00:06:40,200 個人はあらゆる目的で 長期的に富を 162 00:06:40,200 --> 00:06:42,956 蓄えるという事を前提とするものです 163 00:06:42,956 --> 00:06:45,566 もし人々が通常一生涯に 最小限必要なだけの 164 00:06:45,566 --> 00:06:47,569 富を蓄えるのならば― 165 00:06:47,569 --> 00:06:49,582 例えば年老いた時に備えるだとか― 166 00:06:49,582 --> 00:06:51,169 例えば年老いた時に備えるだとか― 167 00:06:51,169 --> 00:06:53,542 資産格差のレベルは 168 00:06:53,542 --> 00:06:55,859 所得格差のレベルともっと近いはずです 169 00:06:55,859 --> 00:06:57,828 所得格差のレベルともっと近いはずです 170 00:06:57,828 --> 00:06:59,756 しかし 171 00:06:59,756 --> 00:07:01,950 所得格差よりも資産格差の方が 遥かに大きい事を 172 00:07:01,950 --> 00:07:03,434 所得格差よりも資産格差の方が 遥かに大きい事を 173 00:07:03,434 --> 00:07:04,710 純粋にライフサイクルモデルで― 174 00:07:04,710 --> 00:07:06,741 一生に必要なだけの蓄積ということで― 175 00:07:06,741 --> 00:07:08,429 説明するのは無理があるので 176 00:07:08,429 --> 00:07:10,960 それ以外の理由で人々は 資産を蓄えるものと考えるべきです 177 00:07:10,960 --> 00:07:12,884 通常人々は 178 00:07:12,884 --> 00:07:16,210 財産を次世代へ―子供たちへ 残したいと考えますし 179 00:07:16,210 --> 00:07:17,978 時に富により得られる威光を求めて 180 00:07:17,978 --> 00:07:20,746 富を蓄えることもあります 181 00:07:20,746 --> 00:07:22,130 私達がデータに見ている 182 00:07:22,130 --> 00:07:24,120 事象を説明するような 生涯に必要な分以上の 183 00:07:24,120 --> 00:07:26,888 富を蓄積することへの 色々な理由があるはずです 184 00:07:26,888 --> 00:07:30,234 相続のために蓄財するという 動機を考慮した 185 00:07:30,234 --> 00:07:32,210 相続のために蓄財するという 動機を考慮した 186 00:07:32,210 --> 00:07:35,768 富の蓄積の ダイナミックモデルには 187 00:07:35,768 --> 00:07:38,614 あらゆる種類の ショック(影響)が介在します 188 00:07:38,614 --> 00:07:39,537 あらゆる種類の ショック(影響)が介在します 189 00:07:39,537 --> 00:07:41,786 例えば ある家族では とても多くの子供がいて 190 00:07:41,786 --> 00:07:43,473 例えば ある家族では とても多くの子供がいて 191 00:07:43,473 --> 00:07:45,239 財産はその間で更に分与されます 192 00:07:45,239 --> 00:07:47,129 あるいは子供の数が少ない家族もいます 193 00:07:47,129 --> 00:07:49,357 資本収益率ショックもあります 194 00:07:49,357 --> 00:07:51,454 資本収益の大きい家庭もありますし 195 00:07:51,454 --> 00:07:53,249 あるいは投資に失敗する家庭もあります 196 00:07:53,249 --> 00:07:55,490 このように富のプロセスにも常にある程度の 197 00:07:55,490 --> 00:07:56,928 モビリティ(可動性)があるものです 198 00:07:56,928 --> 00:07:59,303 ある人々は(富のレベルを)上昇し ある人々は下降します 199 00:07:59,303 --> 00:08:00,955 重要な点は 200 00:08:00,955 --> 00:08:01,965 こうしたモデルはどれも 201 00:08:01,965 --> 00:08:04,521 こうしたショックによる変動を受けて 202 00:08:04,521 --> 00:08:06,557 富の格差が均衡するレベルは 203 00:08:06,557 --> 00:08:11,394 急激に増加する r-g の関数で表されます 204 00:08:11,394 --> 00:08:14,263 直感的に 205 00:08:14,263 --> 00:08:16,107 財産による資本収益率と経済成長率との 206 00:08:16,107 --> 00:08:17,862 違いが大切だという理由は 207 00:08:17,862 --> 00:08:20,174 最初の富の格差が 208 00:08:20,174 --> 00:08:22,565 より大きな r-gの為に 209 00:08:22,565 --> 00:08:24,634 加速して成長して行くからです 210 00:08:24,634 --> 00:08:26,108 これを単純な例で見てみましょう 211 00:08:26,108 --> 00:08:29,874 rが5%でgが1%だとします 212 00:08:29,874 --> 00:08:31,982 すると資産家が 213 00:08:31,982 --> 00:08:34,621 資本収益の1/5だけを再投資すれば 214 00:08:34,621 --> 00:08:37,354 彼らの資産は経済の規模と同じ速度で 215 00:08:37,354 --> 00:08:39,267 増して行きます 216 00:08:39,267 --> 00:08:40,650 これは大きな財を築き 217 00:08:40,650 --> 00:08:42,416 永続させるのに好都合です 218 00:08:42,416 --> 00:08:44,371 なぜなら税を加味しなければ 219 00:08:44,371 --> 00:08:46,110 残りの4/5を消費でき 1/5のみを 220 00:08:46,110 --> 00:08:47,771 再投資すれば良い訳だからです 221 00:08:47,771 --> 00:08:50,359 もちろんある家族はそれ以上消費し またある家族は 222 00:08:50,359 --> 00:08:52,102 それ以下の消費に留まるでしょう 223 00:08:52,102 --> 00:08:53,857 それで富の分布にはある程度の 可動域があるわけですが 224 00:08:53,857 --> 00:08:56,703 しかし平均して彼らは 1/5のみを再投資すれば良いので 225 00:08:56,703 --> 00:09:00,472 これが大きな富の格差が 持続する仕組みとなるのです 226 00:09:00,472 --> 00:09:02,969 「rがgよりも常に大きい」 ということを聞いて 227 00:09:02,969 --> 00:09:06,505 驚かないで下さい なぜなら 228 00:09:06,505 --> 00:09:08,121 これは人類の歴史の中でほぼ恒常的に 229 00:09:08,121 --> 00:09:10,192 起こってきたことだからです 230 00:09:10,192 --> 00:09:13,543 そしてある意味これは 皆の目に明らかだったのです 231 00:09:13,543 --> 00:09:15,321 経済成長率は人類の歴史において 232 00:09:15,321 --> 00:09:17,509 殆ど常に0%に近かったという 233 00:09:17,509 --> 00:09:19,130 単純な理由の為にです 234 00:09:19,130 --> 00:09:22,662 経済成長率は0.1、0.2、0.3%程度で 235 00:09:22,662 --> 00:09:24,658 人口増加、一人当り生産高共に 236 00:09:24,658 --> 00:09:26,655 増加は非常に緩やかでした 237 00:09:26,655 --> 00:09:28,539 ところが資本収益率は 238 00:09:28,539 --> 00:09:30,395 もちろん0%ではありませんでした 239 00:09:30,395 --> 00:09:32,431 それは産業革命前の社会における 240 00:09:32,431 --> 00:09:34,240 資産の伝統的な形式だった 241 00:09:34,240 --> 00:09:36,641 土地資産においては 242 00:09:36,641 --> 00:09:38,404 典型的には5%でした 243 00:09:38,404 --> 00:09:42,190 ジェーン・オースティンの 読者なら誰でも知っています 244 00:09:42,190 --> 00:09:45,098 1,000ポンドの年間所得を得るためには 245 00:09:45,098 --> 00:09:46,740 20,000の5%は1,000ですから 246 00:09:46,740 --> 00:09:48,596 20,000ポンドの資本価値が必要です 247 00:09:48,596 --> 00:09:51,146 20,000ポンドの資本価値が必要です 248 00:09:51,146 --> 00:09:53,163 そしてある意味においてこれは 249 00:09:53,163 --> 00:09:54,941 社会を築く基盤なのです 250 00:09:54,941 --> 00:09:57,976 rはgよりも大きいということは 251 00:09:57,976 --> 00:10:02,100 富と資産の保有者が資本収益のみで生活し 252 00:10:02,100 --> 00:10:04,790 一生を生き抜く為の 必要最低限の事以外に目を向け 253 00:10:04,790 --> 00:10:07,490 他の余剰の活動をすることを 可能にして来たからです 254 00:10:07,490 --> 00:10:10,685 他の余剰の活動をすることを 可能にして来たからです 255 00:10:10,685 --> 00:10:12,845 私が歴史的研究から導き出した 256 00:10:12,845 --> 00:10:14,836 ある重要な結論は 257 00:10:14,836 --> 00:10:17,547 近代の産業の成長は 思ったより 258 00:10:17,547 --> 00:10:20,371 この基本的な事実に 影響を与えなかったということです 259 00:10:20,371 --> 00:10:22,050 もちろん産業革命後の経済成長率は 260 00:10:22,050 --> 00:10:23,858 もちろん産業革命後の経済成長率は 261 00:10:23,858 --> 00:10:28,180 一般的に0%から 1~2%まで上昇しました 262 00:10:28,180 --> 00:10:30,110 しかし同時に資本収益率も上昇したので 263 00:10:30,110 --> 00:10:31,755 しかし同時に資本収益率も上昇したので 264 00:10:31,755 --> 00:10:34,180 この2つの間の乖離率には 265 00:10:34,180 --> 00:10:35,636 それほど変化が無かったのです 266 00:10:35,636 --> 00:10:37,886 20世紀中に 267 00:10:37,886 --> 00:10:40,530 非常にユニークな出来事が重なりました 268 00:10:40,530 --> 00:10:42,547 まず1914年と1945年の 269 00:10:42,547 --> 00:10:45,563 戦争ショックによる 非常に低い資本収益率 270 00:10:45,563 --> 00:10:47,868 富の破壊、インフレーション 271 00:10:47,868 --> 00:10:49,848 大恐慌時代中の破産 272 00:10:49,848 --> 00:10:51,513 これらのことが 273 00:10:51,513 --> 00:10:53,263 民間の財産による資本収益を 274 00:10:53,263 --> 00:10:55,158 異常な程低いレベルまで減少させました 275 00:10:55,158 --> 00:10:57,497 1914〜1945の間のことです 276 00:10:57,497 --> 00:10:59,333 そして戦後 277 00:10:59,333 --> 00:11:02,570 一部は復興のために 278 00:11:02,570 --> 00:11:04,944 非常に高い成長率がみられました 279 00:11:04,944 --> 00:11:06,869 ドイツ、フランス、日本では 280 00:11:06,869 --> 00:11:08,420 1950〜80年の間 成長率は5% 281 00:11:08,420 --> 00:11:11,570 1950〜80年の間 成長率は5% 282 00:11:11,570 --> 00:11:13,213 その理由は主に復興 283 00:11:13,213 --> 00:11:15,564 そして大きな人口増加― 284 00:11:15,564 --> 00:11:17,705 ベビーブーム世代の効果です 285 00:11:17,705 --> 00:11:20,143 明らかにこれは長くは続きません 286 00:11:20,143 --> 00:11:21,818 少なくとも人口増加については 287 00:11:21,818 --> 00:11:24,586 将来減少していくでしょう 288 00:11:24,586 --> 00:11:28,242 そして 289 00:11:28,242 --> 00:11:30,070 長期的成長率は 290 00:11:30,070 --> 00:11:31,493 4〜5%というよりも 291 00:11:31,493 --> 00:11:33,439 1〜2%に近付くでしょう 292 00:11:33,439 --> 00:11:36,116 これですが 293 00:11:36,116 --> 00:11:38,257 これらが今ある最善の 294 00:11:38,257 --> 00:11:39,913 世界のGDP成長率と 295 00:11:39,913 --> 00:11:42,272 資本収益率の予測値です 296 00:11:42,272 --> 00:11:44,360 平均的な資本収益率の値です 297 00:11:44,360 --> 00:11:45,428 ご覧のように 298 00:11:45,428 --> 00:11:46,945 人類の歴史の殆どに於いて 299 00:11:46,945 --> 00:11:48,558 経済成長率はとても小さく 300 00:11:48,558 --> 00:11:50,392 資本収益率よりも低く 301 00:11:50,392 --> 00:11:52,754 20世紀中に 302 00:11:52,754 --> 00:11:54,925 人口増加があり 303 00:11:54,925 --> 00:11:57,197 特に戦後の時代に高まり 304 00:11:57,197 --> 00:11:58,797 戦後の復興処理が 305 00:11:58,797 --> 00:12:00,370 経済成長率を 306 00:12:00,370 --> 00:12:03,441 資本収益率と乖離の少ない 同程度にまで押し上げたのです 307 00:12:03,441 --> 00:12:06,964 ここで国連の人口予測を使いますが 308 00:12:06,964 --> 00:12:09,440 もちろんこれらは誤差を含む 予測に過ぎません 309 00:12:09,440 --> 00:12:10,831 実際は将来 310 00:12:10,831 --> 00:12:12,937 出生率がもっと高くなるかも知れませんし 311 00:12:12,937 --> 00:12:15,702 よって経済成長率が伸びるかもしれません 312 00:12:15,702 --> 00:12:16,951 ですがとりあえず 313 00:12:16,951 --> 00:12:19,753 これは今私達が使えるベストな予測で 314 00:12:19,753 --> 00:12:21,687 これによると世界的に経済成長は鈍化し 315 00:12:21,687 --> 00:12:24,443 資本収益率との乖離は大きくなって行くと 316 00:12:24,443 --> 00:12:26,446 予測されます 317 00:12:26,446 --> 00:12:29,308 20世紀中の他の変わった出来事といえば 318 00:12:29,308 --> 00:12:30,979 20世紀中の他の変わった出来事といえば 319 00:12:30,979 --> 00:12:32,308 既に述べたように 320 00:12:32,308 --> 00:12:34,624 富の破壊、資産課税で 321 00:12:34,624 --> 00:12:37,359 これが税引前利益率 322 00:12:37,359 --> 00:12:40,338 そして税引後利益率です 323 00:12:40,338 --> 00:12:41,904 富の破壊が起こったあと 324 00:12:41,904 --> 00:12:43,681 このために 325 00:12:43,681 --> 00:12:45,369 富の破壊後 326 00:12:45,369 --> 00:12:47,158 税引き後平均資本収益率が 327 00:12:47,158 --> 00:12:49,578 とても長い間経済成長率を下回ることになりました 328 00:12:49,578 --> 00:12:51,252 しかし富の破壊と― 329 00:12:51,252 --> 00:12:53,727 資産課税無くしては これは起こらなかったでしょう 330 00:12:53,727 --> 00:12:56,970 ですからつまり 331 00:12:56,970 --> 00:12:59,326 資本収益と経済成長のバランスは 332 00:12:59,326 --> 00:13:01,188 様々な予測の難しい要因に 333 00:13:01,188 --> 00:13:03,273 影響されるということです 334 00:13:03,273 --> 00:13:05,388 例えばテクノロジーと 335 00:13:05,388 --> 00:13:07,972 資本集約的技術の発展です 336 00:13:07,972 --> 00:13:10,991 今経済で最も資本集約型のセクターは 337 00:13:10,991 --> 00:13:14,367 不動産セクター、住宅、 エネルギー部門ですが 338 00:13:14,367 --> 00:13:17,229 ひょっとすると将来は 339 00:13:17,229 --> 00:13:20,941 たくさんのセクターで 大量の作業ロボットを用いるようになり 340 00:13:20,941 --> 00:13:22,830 これが今日に比べて大きな 341 00:13:22,830 --> 00:13:24,740 総資本のシェアを 占めるかもしれません 342 00:13:24,740 --> 00:13:26,734 私達はまだこれからは遠く 343 00:13:26,734 --> 00:13:28,500 これから不動産セクターや 344 00:13:28,500 --> 00:13:30,289 エネルギーセクターで起こることは 345 00:13:30,289 --> 00:13:32,415 総資本と資本の分配にとって 346 00:13:32,415 --> 00:13:33,549 はるかに重要です 347 00:13:33,549 --> 00:13:35,582 他の重要な問題は 348 00:13:35,582 --> 00:13:37,732 ポートフォリオ管理における 349 00:13:37,732 --> 00:13:40,151 規模の効果や金融の複雑さ 350 00:13:40,151 --> 00:13:41,601 そして金融自由化などで 351 00:13:41,601 --> 00:13:44,310 大規模なポートフォリオは より容易に高い利益率を 352 00:13:44,310 --> 00:13:45,937 得られるようになり 353 00:13:45,937 --> 00:13:48,600 これは特に億万長者や 354 00:13:48,600 --> 00:13:50,582 大規模な寄付基金に 追い風となります 355 00:13:50,582 --> 00:13:52,872 例を一つ挙げると 356 00:13:52,872 --> 00:13:56,205 これはフォーブス誌の億万長者ランキング 357 00:13:56,205 --> 00:13:59,535 1987〜2013年のものです 358 00:13:59,535 --> 00:14:02,323 ランキング上位者たちは 359 00:14:02,323 --> 00:14:05,440 インフレ率を上回り 360 00:14:05,440 --> 00:14:07,831 年間実質6〜7%上昇してきました 361 00:14:07,831 --> 00:14:10,203 それに対して世界の一般的な所得や 362 00:14:10,203 --> 00:14:11,566 世界の富の平均は 363 00:14:11,566 --> 00:14:14,949 年間2%ずつのみしか上昇していないのです 364 00:14:14,949 --> 00:14:16,678 額の大きな大学基金においても― 365 00:14:16,678 --> 00:14:17,954 同じ現象が見られます 366 00:14:17,954 --> 00:14:20,222 最初の額が大きいほど 367 00:14:20,222 --> 00:14:22,290 収益率も高いのです 368 00:14:22,290 --> 00:14:23,968 ではどうすればよいでしょう? 369 00:14:23,968 --> 00:14:26,364 まず私達は今以上に 370 00:14:26,364 --> 00:14:28,479 経済の透明性が必要です 371 00:14:28,479 --> 00:14:32,320 私達はグローバルな富のダイナミクスを 372 00:14:32,320 --> 00:14:34,220 知らなさすぎるので 国際間での 373 00:14:34,220 --> 00:14:35,482 銀行口座情報の共有が必要です 374 00:14:35,482 --> 00:14:38,168 金融資産のグローバルな登録制度や 375 00:14:38,168 --> 00:14:40,659 資産課税における協調も必要です 376 00:14:40,659 --> 00:14:43,771 富裕税を小さな税率と共に導入し 377 00:14:43,771 --> 00:14:45,987 それにより情報を生成することが 378 00:14:45,987 --> 00:14:48,669 実態に基づいて政策を適応させていくための 379 00:14:48,669 --> 00:14:50,505 方策となるでしょう 380 00:14:50,505 --> 00:14:52,343 そしてある程度 381 00:14:52,343 --> 00:14:53,824 タックス・ヘイブンに反対する動きや 382 00:14:53,824 --> 00:14:55,639 情報の自動共有という動きは 383 00:14:55,639 --> 00:14:57,490 我々はこの方向に動いています 384 00:14:57,490 --> 00:14:59,814 富の再分配には他の方法もあります 385 00:14:59,814 --> 00:15:02,771 一見魅力的な方法です 386 00:15:02,771 --> 00:15:04,127 インフレーション 387 00:15:04,127 --> 00:15:05,826 税法を改定するよりも 通貨供給量を増やす方が 388 00:15:05,826 --> 00:15:07,981 遥かに簡単ですからこれはとても魅力的です 389 00:15:07,981 --> 00:15:10,101 しかししばしば私達は お金というものの扱いをわかっていません 390 00:15:10,101 --> 00:15:11,748 これが問題です 391 00:15:11,748 --> 00:15:13,611 (強制的)収用も魅力的です 392 00:15:13,611 --> 00:15:15,872 時々 一部の人が豊かになりすぎたと感じたら 393 00:15:15,872 --> 00:15:17,166 資産を収用してしまうのです 394 00:15:17,166 --> 00:15:18,878 しかしこれは富のダイナミクスを 395 00:15:18,878 --> 00:15:21,711 調整する上で効率的な方法ではありません 396 00:15:21,711 --> 00:15:24,190 戦争は更に非効率です 397 00:15:24,190 --> 00:15:26,526 ですから私はそれらよりも 累進課税を好みがちですが 398 00:15:26,526 --> 00:15:29,100 もちろん歴史―(笑) 399 00:15:29,100 --> 00:15:30,835 歴史は常にその時の最良の策を生み出し 400 00:15:30,835 --> 00:15:32,533 それにはこれら全ての要素が 401 00:15:32,533 --> 00:15:34,267 複雑に絡み合っていくことでしょう 402 00:15:34,267 --> 00:15:36,133 ありがとうございました 403 00:15:36,133 --> 00:15:38,270 (拍手) 404 00:15:38,270 --> 00:15:43,829 ブルーノ・ジウサーニ: トマ・ピケティ ありがとうございました 405 00:15:43,829 --> 00:15:45,708 トマ 2〜3質問をさせてください 406 00:15:45,708 --> 00:15:49,567 あなたの見事なデータの 扱いも素晴らしいのですが 407 00:15:49,567 --> 00:15:53,361 おっしゃっているのはつまり 408 00:15:53,361 --> 00:15:54,934 富の集中という傾向が強まっているのは 409 00:15:54,934 --> 00:15:56,858 資本主義の性質上自然な傾向で 410 00:15:56,858 --> 00:16:00,396 そのまま放っておくと 411 00:16:00,396 --> 00:16:02,636 社会の仕組み自体を脅かしかねないので 412 00:16:02,636 --> 00:16:04,362 我々が富の再配分を促すような 413 00:16:04,362 --> 00:16:07,400 経済政策を策定することを 提案されているのですね 414 00:16:07,400 --> 00:16:09,121 先程示されたような 415 00:16:09,121 --> 00:16:10,592 累進課税などですが 416 00:16:10,592 --> 00:16:12,731 現在の政治的文脈の中で 417 00:16:12,731 --> 00:16:14,722 一体どれ程現実味があるのでしょう? 418 00:16:14,722 --> 00:16:16,533 これらの経済政策が 実際に実施されるのは 419 00:16:16,533 --> 00:16:18,277 どれぐらいの確率でしょう? 420 00:16:18,277 --> 00:16:19,488 トマ・ピケティ: そうですね 421 00:16:19,488 --> 00:16:21,269 時間を遡って見てみると 422 00:16:21,269 --> 00:16:23,920 所得、富と課税の歴史は 423 00:16:23,920 --> 00:16:25,522 驚きに満ちています 424 00:16:25,522 --> 00:16:28,127 ですからこれから何がおきるか おきないかなどを 425 00:16:28,127 --> 00:16:29,695 分かっていると言われても 426 00:16:29,695 --> 00:16:31,326 それは そこまで重要視していません 427 00:16:31,326 --> 00:16:33,030 1世紀前 428 00:16:33,030 --> 00:16:34,599 多くの人々は所得への累進課税は 429 00:16:34,599 --> 00:16:36,737 あり得ないだろうと言いましたが 430 00:16:36,737 --> 00:16:38,257 それはやがて実現しました 431 00:16:38,257 --> 00:16:40,246 5年前も 432 00:16:40,246 --> 00:16:42,598 多くの人々はスイスの銀行の 433 00:16:42,598 --> 00:16:44,623 秘密主義は永遠に変わらないだろうし 434 00:16:44,623 --> 00:16:46,411 スイスは世界の他の国々に対して 435 00:16:46,411 --> 00:16:47,900 力が有り過ぎると見ていました 436 00:16:47,900 --> 00:16:50,861 それから米国がスイスの銀行に 437 00:16:50,861 --> 00:16:53,483 経済制裁を課したことで 突然 大きな変化が起こりました 438 00:16:53,483 --> 00:16:55,186 そして今私達は更なる 439 00:16:55,186 --> 00:16:56,862 経済透明性へと移行しています 440 00:16:56,862 --> 00:17:01,143 このことで政治的により良い協力体制を 441 00:17:01,143 --> 00:17:03,612 組むのはそれほど難しくないでしょう 442 00:17:03,612 --> 00:17:05,670 これから 443 00:17:05,670 --> 00:17:08,719 アメリカとEUとが交渉して条約を結べば 444 00:17:08,719 --> 00:17:10,721 世界のGDPの半分をカバーします 445 00:17:10,721 --> 00:17:12,847 もし世界のGDPの半分がカバーできれば 446 00:17:12,847 --> 00:17:15,513 経済的不透明さの是正と 447 00:17:15,513 --> 00:17:19,597 多国籍企業の利益への最小限の課税を 進めるのに 448 00:17:19,597 --> 00:17:21,261 何が足りないというのでしょう? 449 00:17:21,261 --> 00:17:24,884 これらは技術的な難しさではないのです 450 00:17:24,884 --> 00:17:26,678 私はこれらの課題に 451 00:17:26,678 --> 00:17:29,785 より実利的な手段を採り 経済的不透明さから利益を享受する者へ 452 00:17:29,785 --> 00:17:31,766 適切な経済制裁を採用すれば 453 00:17:31,766 --> 00:17:34,287 前進出来ると思います 454 00:17:34,287 --> 00:17:35,940 ジウサーニ:あなたの見方に 455 00:17:35,940 --> 00:17:37,373 反対する議論のひとつは 456 00:17:37,373 --> 00:17:38,815 経済的不平等は 457 00:17:38,815 --> 00:17:42,452 資本主義の一要素なだけでなく 実はその原動力の一つだというものです 458 00:17:42,452 --> 00:17:45,253 ですから我々が不平等を 是正していこうとすると同時に 459 00:17:45,253 --> 00:17:47,660 経済成長を阻害してしまう 可能性があるということです 460 00:17:47,660 --> 00:17:49,220 これにはどうお答えになりますか? 461 00:17:49,220 --> 00:17:50,949 ピケティ:格差それ自体は 462 00:17:50,949 --> 00:17:52,838 問題ではないのです 463 00:17:52,838 --> 00:17:54,878 不平等はある程度 イノベーションや発展に 464 00:17:54,878 --> 00:17:57,530 寄与しますからね 465 00:17:57,530 --> 00:17:59,723 問題はその程度です 466 00:17:59,723 --> 00:18:02,267 格差が極端になると 467 00:18:02,267 --> 00:18:05,156 経済成長にとってのその価値は無くなり 468 00:18:05,156 --> 00:18:06,618 更に悪いことには 469 00:18:06,618 --> 00:18:09,675 結果的に格差が長期間続き 470 00:18:09,675 --> 00:18:11,311 人々の経済的流動性が 471 00:18:11,311 --> 00:18:13,177 停滞することになりがちなのです 472 00:18:13,177 --> 00:18:16,463 例えば19世紀から第一次世界大戦まで 473 00:18:16,463 --> 00:18:19,340 全てのヨーロッパ諸国で みられたような種類の 474 00:18:19,340 --> 00:18:21,265 富の集中は経済成長には 475 00:18:21,265 --> 00:18:23,030 富の集中は経済成長には 476 00:18:23,030 --> 00:18:25,124 有益では無かったと思います 477 00:18:25,124 --> 00:18:27,226 これは悲劇的な出来事や政策の変化により 478 00:18:27,226 --> 00:18:29,567 破壊されましたが その後の経済の成長を 479 00:18:29,567 --> 00:18:31,839 とどめるまでには至りませんでした 480 00:18:31,839 --> 00:18:35,282 極端な格差は 我々の民主主義という基盤にとっては 481 00:18:35,282 --> 00:18:37,480 良くないことがあります 482 00:18:37,480 --> 00:18:39,863 政治的な代表権へのアクセスの格差や 483 00:18:39,863 --> 00:18:41,728 アメリカでの民間資金の政治への影響力 484 00:18:41,728 --> 00:18:43,730 それらはまさに今懸念されていることです 485 00:18:43,730 --> 00:18:46,270 それらはまさに今懸念されていることです 486 00:18:46,270 --> 00:18:49,346 ですから私達はそのような極端な 第一次世界大戦前のような 487 00:18:49,346 --> 00:18:51,436 格差の世界へは戻りたくないのです 488 00:18:51,436 --> 00:18:55,110 ミドルクラスが国富の十分なシェアを占める 489 00:18:55,110 --> 00:18:58,500 というのは経済成長にとっては 悪くない事なのです 490 00:18:58,500 --> 00:18:59,781 公平性や効率に関してとても 491 00:18:59,781 --> 00:19:02,865 有用な状況なのです 492 00:19:02,865 --> 00:19:04,530 ジウサーニ:始めにあなたの著書は 493 00:19:04,530 --> 00:19:06,639 批判もされていると申し上げました 494 00:19:06,639 --> 00:19:07,880 いくつかのデータ 495 00:19:07,880 --> 00:19:10,346 あなたの選択したデータセット について批判がありました 496 00:19:10,346 --> 00:19:12,222 仮説を立証するのに好都合なデータを 497 00:19:12,222 --> 00:19:14,959 選んで使っていると これに対しては? 498 00:19:14,959 --> 00:19:16,886 ピ:それには拙著が議論への 499 00:19:16,886 --> 00:19:19,353 刺激となっているのは嬉しいことです とお答えします 500 00:19:19,353 --> 00:19:21,834 これは目論見の一つですし 501 00:19:21,834 --> 00:19:25,128 私がデータの全てを細かな計算式も含めて 502 00:19:25,128 --> 00:19:26,974 オンラインで公開するのは 503 00:19:26,974 --> 00:19:29,308 それでオープンで透明な議論が 504 00:19:29,308 --> 00:19:30,977 生まれるからです 505 00:19:30,977 --> 00:19:32,743 これで全ての疑念に1つずつ 506 00:19:32,743 --> 00:19:34,535 お答え出来ました 507 00:19:34,535 --> 00:19:37,648 今日 本を書き直すとしたら 508 00:19:37,648 --> 00:19:39,189 特にアメリカにおける財産格差の上昇は 509 00:19:39,189 --> 00:19:41,383 特にアメリカにおける財産格差の上昇は 510 00:19:41,383 --> 00:19:43,310 実際には以前に書き記したよりも 511 00:19:43,310 --> 00:19:45,683 激しいものだと述べているでしょう 512 00:19:45,683 --> 00:19:48,928 サエズとザックマンによる最近の研究は 513 00:19:48,928 --> 00:19:50,520 私が出版した当時には 514 00:19:50,520 --> 00:19:52,297 まだ無かったデータを使って 515 00:19:52,297 --> 00:19:54,824 アメリカでの富の集中は 私が記した時の状況よりも 516 00:19:54,824 --> 00:19:56,760 加速していると証明しました 517 00:19:56,760 --> 00:19:58,791 将来はまた別のデータが出るでしょう 518 00:19:58,791 --> 00:20:00,942 そしてまた別の仮説が 生まれるかもしれません 519 00:20:00,942 --> 00:20:05,041 ほぼ毎週新たな 直近のデータで 520 00:20:05,041 --> 00:20:07,975 ワールド・トップ・インカム データベースを更新しています 521 00:20:07,975 --> 00:20:09,875 将来も続けるつもりです 522 00:20:09,875 --> 00:20:12,181 特に発展途上国について 523 00:20:12,181 --> 00:20:15,110 このデータ集積に皆さんも貢献されることを 524 00:20:15,110 --> 00:20:17,456 歓迎します 525 00:20:17,456 --> 00:20:20,264 実際 確かに 富のダイナミクスにおいては 526 00:20:20,264 --> 00:20:21,878 十分な透明性が無いと 527 00:20:21,878 --> 00:20:23,756 考えていますし 528 00:20:23,756 --> 00:20:25,671 より良いデータを入手するには― 529 00:20:25,671 --> 00:20:27,536 この重要な進化についての 530 00:20:27,536 --> 00:20:29,107 同意が得られるように― 531 00:20:29,107 --> 00:20:31,446 まずは小さな税率で富裕税を課し 532 00:20:31,446 --> 00:20:33,010 まずは小さな税率で富裕税を課し 533 00:20:33,010 --> 00:20:36,337 そこで観測される状況に対して 政策を適応するのです 534 00:20:36,337 --> 00:20:38,399 ですから課税は知識の源であり 535 00:20:38,399 --> 00:20:41,335 今我々が最も必要としていることなのです 536 00:20:41,335 --> 00:20:43,590 ジウサーニ:トマ・ピケティでした ありがとうございました 537 00:20:43,590 --> 00:20:47,150 (拍手)