WEBVTT

00:00:00.000 --> 00:00:03.000
旅の大きな楽しみの１つであり

00:00:03.000 --> 00:00:05.200
また民族誌学の調査をする喜びの１つは

00:00:05.200 --> 00:00:07.520
昔ながらの暮らしを忘れていない人々と

00:00:07.520 --> 00:00:09.390
共に暮らすことです

00:00:09.390 --> 00:00:12.000
彼らは いまも 風の中に

00:00:12.000 --> 00:00:15.000
雨に打たれ磨かれた石に
そして葉の苦味の中に

00:00:15.000 --> 00:00:17.180
過去を感じる人々です

00:00:17.180 --> 00:00:21.380
ジャガーシャーマンが
いまも天の川を越えて旅をし

00:00:21.380 --> 00:00:25.930
イヌイット族の古老の神話が
いまも強烈な意味を持ち

00:00:25.930 --> 00:00:28.000
ヒマラヤでは 仏教徒が いまも

00:00:28.000 --> 00:00:32.000
「法」のしるしを探し求めている —
こういった事を知ることこそ

00:00:32.000 --> 00:00:35.390
人類学の最も重要な発見を
思い起こすことでもあります

00:00:35.390 --> 00:00:37.590
その発見とは 私たちの住む世界が

00:00:38.000 --> 00:00:40.120
絶対的なものとして
存在するのではなく

00:00:40.120 --> 00:00:41.680
現実の形の１つ—

00:00:41.680 --> 00:00:45.180
何世代も前に 我々の祖先が
適応するために選び

00:00:45.180 --> 00:00:49.630
うまくいった選択肢の組み合わせの
結果に過ぎないのだという概念です

00:00:50.000 --> 00:00:53.730
もちろん 適応は全人類に共通して
不可欠なものです

00:00:53.730 --> 00:00:56.000
私たちは皆 誰かから生まれ
また子を産みます

00:00:56.000 --> 00:00:58.000
皆 通過儀礼を経験します

00:00:58.000 --> 00:01:00.000
皆 避けがたい死別を耐えます

00:01:00.000 --> 00:01:04.000
ですから どの文化にも 歌があり
踊りがあり 芸術があることは

00:01:04.000 --> 00:01:06.000
驚きではありません

00:01:06.000 --> 00:01:08.740
でも面白いのは
それぞれの文化に固有の

00:01:08.740 --> 00:01:11.120
歌や踊りのリズムがあることです

00:01:11.120 --> 00:01:14.310
ボルネオ島の森林のペナン族も

00:01:14.310 --> 00:01:17.220
ハイチのブードゥー教の信者たちも

00:01:18.730 --> 00:01:22.700
ケニア北部にあるカイスット砂漠の戦士たちも

00:01:24.000 --> 00:01:26.190
アンデス山脈の呪医 クランデロも

00:01:27.000 --> 00:01:30.250
サハラのキャラバンサライの隊商も
皆そうです

00:01:30.250 --> 00:01:33.400
これは私が１ヶ月前に砂漠を

00:01:33.400 --> 00:01:35.000
一緒に旅した人です

00:01:35.000 --> 00:01:38.000
これは世界の地母神であるエベレスト

00:01:38.000 --> 00:01:40.000
チョモランマの斜面に住むヤク飼いです

00:01:40.000 --> 00:01:43.440
彼らが皆 私たちに教えてくれるのは
世界には

00:01:43.440 --> 00:01:44.600
別のあり方 考え方

00:01:44.600 --> 00:01:46.680
地球上での居場所の見つけ方が
他にもあるということです

00:01:46.680 --> 00:01:48.000
このような考え方は 私たちを

00:01:48.000 --> 00:01:50.230
ただ希望で満たしてくれます

00:01:51.180 --> 00:01:53.000
世界中の無数の文化が織りなす

00:01:53.000 --> 00:01:57.260
精神生活と文化生活は

00:01:57.260 --> 00:01:59.000
この星を包み込み

00:01:59.000 --> 00:02:01.000
幸福に導く大切な要素です

00:02:01.000 --> 00:02:04.300
生物圏 すなわち生物の織りなす世界も
やはり同様に大切です

00:02:04.300 --> 00:02:07.000
この文化が織りなす世界を

00:02:07.000 --> 00:02:08.720
「民族文化圏」と考えてもいいでしょう

00:02:08.720 --> 00:02:10.230
民族文化圏とは

00:02:10.230 --> 00:02:13.370
人間の意識のあけぼの以来
想像力により生み出された

00:02:13.370 --> 00:02:16.670
あらゆる考え、夢や神話

00:02:16.670 --> 00:02:20.150
発想、インスピレーションや直観の
総和と定義できるでしょう

00:02:20.150 --> 00:02:23.240
民俗文化圏は 人類の素晴らしい遺産です

00:02:23.240 --> 00:02:25.000
それは 驚くほど好奇心の強い種である—

00:02:25.000 --> 00:02:29.447
人類全体のあり方や可能性を
象徴しています

00:02:30.000 --> 00:02:33.340
生物圏が激しく侵されてしまったのと同様に

00:02:33.340 --> 00:02:35.000
民族文化圏も—

00:02:35.000 --> 00:02:36.760
しかも もっと急速に
侵食されています

00:02:36.760 --> 00:02:39.000
全ての種の50％以上が絶滅の危機に

00:02:39.000 --> 00:02:42.000
瀕していると言う生物学者はいません

00:02:42.000 --> 00:02:44.000
事実ではないからです

00:02:44.000 --> 00:02:46.880
それでも 文化的多様性の先行きは

00:02:46.880 --> 00:02:49.150
どんなに楽観的に考えたとしても

00:02:49.150 --> 00:02:52.510
生物多様性で言う最悪のシナリオが

00:02:52.510 --> 00:02:54.300
全く及ばないほど暗いものです

00:02:54.300 --> 00:02:57.520
言語の消失をみれば 明らかです

00:02:57.520 --> 00:03:00.000
ここにいる皆さんが生まれた時

00:03:00.000 --> 00:03:03.000
地球では6,000の言語が話されていました

00:03:03.000 --> 00:03:06.000
言語は 単に単語の集まり または

00:03:06.000 --> 00:03:07.460
文法の規則一式ではありません

00:03:07.460 --> 00:03:10.000
言語は人間精神の発露であり

00:03:10.000 --> 00:03:13.000
それぞれの文化の魂を
物質の世界に送り出す—

00:03:13.000 --> 00:03:14.380
手段でもあります

00:03:14.380 --> 00:03:17.740
どの言語も 人間の心にとって
太古の森のようなものであり

00:03:17.740 --> 00:03:21.460
精神が持つ可能性にとっての
河や、思考や生態系のようなものです

00:03:21.460 --> 00:03:25.710
そんな6,000の言語のうち半分が
私たちがこうしてここで座っている間にも

00:03:25.710 --> 00:03:29.260
もはや子供たちの耳に
届かなくなってしまっています

00:03:29.260 --> 00:03:32.000
その言語を学ぶ赤ん坊はもはやおらず

00:03:32.000 --> 00:03:34.000
何かが変わらない限り
その言語は事実上

00:03:34.000 --> 00:03:35.560
すでに死んでいます

00:03:35.560 --> 00:03:39.000
その言葉をしゃべる最後の人間となって
沈黙に包まれ

00:03:39.000 --> 00:03:41.390
先祖の知恵を未来に伝える手段もなく

00:03:41.390 --> 00:03:44.000
子供に将来を委ねられないほど

00:03:44.000 --> 00:03:47.000
寂しいことはありいません

00:03:47.000 --> 00:03:50.110
それでも この恐ろしい運命が
どこかの誰かに降りかかっています

00:03:50.110 --> 00:03:51.950
ほぼ２週間に一度

00:03:51.950 --> 00:03:53.800
地球上のどこかで 長老が亡くなり

00:03:53.800 --> 00:03:56.000
いにしえの言葉の最後の一言とともに

00:03:56.000 --> 00:03:58.000
一緒に葬られているからです

00:03:58.000 --> 00:04:00.230
「皆が1つの言語を話す世界の方が

00:04:00.230 --> 00:04:01.520
良いのでは？」と

00:04:01.520 --> 00:04:04.000
言う人もいるでしょう

00:04:04.000 --> 00:04:07.000
それなら ヨルバ語に統一しましょう
あるいは広東語に

00:04:07.000 --> 00:04:08.620
コギ語でもいい

00:04:08.620 --> 00:04:10.000
そう言われて初めて

00:04:10.000 --> 00:04:13.400
自分の言語が消えることが
どういうことか気付くはずです

00:04:13.990 --> 00:04:16.000
私は 今日皆さんを

00:04:16.000 --> 00:04:19.860
民族文化圏を巡る旅に
ご案内します

00:04:19.860 --> 00:04:21.390
その旅を通して

00:04:21.390 --> 00:04:26.000
実際に何が失われているかを
感じて欲しいのです

00:04:27.680 --> 00:04:34.000
我々の多くは
「人間の異なるあり方」と言う時

00:04:34.000 --> 00:04:36.190
本当の意味で

00:04:36.190 --> 00:04:38.790
「異なる」ということを
忘れがちです

00:04:39.590 --> 00:04:43.180
例えば この子はアマゾン北西部
バラサナ族の子ですが

00:04:43.180 --> 00:04:44.750
アナコンダの一族で

00:04:44.750 --> 00:04:47.000
自分たちは 神聖な蛇の腹の中に守られ

00:04:47.000 --> 00:04:50.230
東方から ミルク川を上がってきたという
神話を信じています

00:04:50.230 --> 00:04:52.850
この一族の色の認識には

00:04:52.850 --> 00:04:55.270
青と緑の区別がありません

00:04:55.270 --> 00:04:57.000
彼らにとって 生活を頼っている—

00:04:57.000 --> 00:04:58.610
森の樹冠と

00:04:58.610 --> 00:05:00.370
空の天蓋は同じものだからです

00:05:00.370 --> 00:05:03.000
彼らには一風変わった
言語と結婚の掟があり

00:05:03.000 --> 00:05:04.850
言語的な族外婚 すなわち

00:05:04.850 --> 00:05:08.000
自分と異なる言語を話す相手と
結婚しなければなりません

00:05:08.000 --> 00:05:10.230
昔からの伝説を根源とする風習ですが

00:05:10.230 --> 00:05:12.340
面白いのは 彼らが住む長屋では

00:05:12.340 --> 00:05:14.670
この結婚制度により
６〜７言語が話されていますが

00:05:14.670 --> 00:05:16.780
この結婚制度により
６〜７言語が話されていますが

00:05:16.780 --> 00:05:19.000
誰も言語を練習する訳ではないことです

00:05:19.000 --> 00:05:22.000
彼らはただ単に聞いて しゃべりだすのです

00:05:22.000 --> 00:05:24.590
別の例は 私が共に暮らした

00:05:24.590 --> 00:05:28.000
最も興味深い部族の１つ
エクアドル北東部のワオラニ族です

00:05:28.000 --> 00:05:31.570
1958年に初めて平和的に接触できた
人々です

00:05:31.570 --> 00:05:35.000
1957年に5人の伝道者が接触を試みて

00:05:35.000 --> 00:05:36.000
重大な過ちを犯しました

00:05:36.000 --> 00:05:37.070
空から 大判の

00:05:37.070 --> 00:05:39.180
自分たちの映った写真を撒いたのです

00:05:39.180 --> 00:05:41.350
友好の印のつもりでしたが

00:05:41.350 --> 00:05:43.490
でも 森の人々がそれまで一度も

00:05:43.490 --> 00:05:46.000
２次元のものは見たことがないことを
忘れていたのです

00:05:46.000 --> 00:05:48.000
人々は地面から写真を拾い
写真の裏側にいる

00:05:48.000 --> 00:05:51.000
人物を探しましたが
何も見つからなかったので

00:05:51.000 --> 00:05:53.570
悪魔が来た証拠だと考え

00:05:53.570 --> 00:05:56.420
５人の伝道者たちを槍で突き殺しました

00:05:56.860 --> 00:05:58.860
でもワオラニ族は部外者を刺すだけでなく

00:05:58.860 --> 00:06:00.000
お互いも刺し殺します

00:06:00.000 --> 00:06:03.000
彼らの死因の54%は 刺し合いでした

00:06:03.000 --> 00:06:06.000
家系を８世代さかのぼり調査しましたが

00:06:06.000 --> 00:06:08.250
自然死はたった２例でした

00:06:08.250 --> 00:06:10.120
そのことについて少し問い詰めたところ

00:06:10.120 --> 00:06:12.530
仲間の１人がとても年を取ったため

00:06:12.530 --> 00:06:16.320
老齢で死んだが槍で突いておいたと
白状しました（笑）

00:06:16.320 --> 00:06:18.830
しかし同時に彼らは驚くほど
洞察力に富んだ森林の

00:06:18.830 --> 00:06:20.100
知識を持っていました

00:06:20.100 --> 00:06:23.000
狩人は40歩離れた場所から
動物の尿の臭いを嗅ぎ分け

00:06:23.000 --> 00:06:25.180
どの種が残したかが分かります

00:06:25.820 --> 00:06:28.340
80年代初め ハーバード大学の私の教授から

00:06:28.340 --> 00:06:30.650
びっくりするような
研究課題を提示されました

00:06:30.650 --> 00:06:33.000
ハイチに行って独裁者ドュバリエの

00:06:33.000 --> 00:06:35.000
権力を支え秘密警察の基盤となった―

00:06:35.000 --> 00:06:37.240
秘密結社に潜入すること

00:06:37.240 --> 00:06:38.180
そしてゾンビを作るのに使われる

00:06:38.180 --> 00:06:41.000
毒を入手する仕事に興味はないか
というのです

00:06:42.110 --> 00:06:44.640
もちろん このセンセーショナルな対象を
理解するため

00:06:44.640 --> 00:06:47.230
ブードゥーの驚くべき信仰を
理解する必要がありました

00:06:47.230 --> 00:06:50.230
ブードゥー教は
黒魔術のカルト宗教ではありません

00:06:50.230 --> 00:06:53.380
それどころか 複雑な
哲学的世界観を持つ面白い宗教です

00:06:53.380 --> 00:06:56.450
世界の主な宗教を聞かれたら
何をあげますか？

00:06:56.450 --> 00:06:59.000
キリスト教、イスラム教、
仏教、ユダヤ教…

00:06:59.000 --> 00:07:01.000
常に言及されない大陸が1つあります

00:07:01.000 --> 00:07:03.100
サハラ砂漠以南のアフリカには 宗教が

00:07:03.100 --> 00:07:05.880
ないかのように もちろん 間違いです

00:07:05.880 --> 00:07:07.650
そしてブードゥー教は
まさに奴隷の時代の

00:07:07.650 --> 00:07:09.290
悲劇的な離散を通して伝わった

00:07:09.290 --> 00:07:12.400
アフリカの大変奥深い宗教的思考の
エッセンスです

00:07:12.400 --> 00:07:14.230
ブードゥー教の興味深いところは

00:07:14.230 --> 00:07:16.000
生者と死者とをつなぐ

00:07:16.000 --> 00:07:17.000
生きた関係です

00:07:17.000 --> 00:07:18.810
生者は魂を生み出し

00:07:18.810 --> 00:07:21.160
魂は 大いなる海の下から呼び覚まされ

00:07:21.160 --> 00:07:23.080
ダンスのリズムに呼応して

00:07:23.080 --> 00:07:25.400
一時的に生者の魂が身体を離脱し

00:07:25.400 --> 00:07:29.370
そのほんの一瞬だけの間
信者に神が降りてくるのです

00:07:29.370 --> 00:07:31.000
そのためブードゥー教の信者は

00:07:31.000 --> 00:07:34.000
「白人は教会に行き
神について語るが

00:07:34.000 --> 00:07:36.250
私たちは寺院で踊って
神になる」と言います

00:07:36.250 --> 00:07:39.000
「霊に取り憑かれ
乗り移られているのだから

00:07:39.000 --> 00:07:40.440
傷つくはずがない」と

00:07:40.440 --> 00:07:43.000
事実 先ほどのような
驚くべき光景が見られます

00:07:43.000 --> 00:07:45.170
トランス状態の信者は

00:07:45.170 --> 00:07:47.570
残り火に触れても
やけどしません

00:07:47.570 --> 00:07:51.000
これは
極限の興奮状態となったとき

00:07:51.000 --> 00:07:52.430
心が 器である体に

00:07:52.430 --> 00:07:55.110
影響を及ぼす力の
驚くべき表れであると言えます

00:07:55.670 --> 00:07:58.000
さて これまで私が
共に過ごした中で

00:07:58.000 --> 00:08:00.000
最も並外れて凄かったのが

00:08:00.000 --> 00:08:03.000
コロンビア北部の
シェラネバダ山地のコギ族でした

00:08:03.000 --> 00:08:05.890
コロンビアのカリブ海沿岸の平野を

00:08:05.890 --> 00:08:08.880
制圧していた古代タイロナ文明の

00:08:08.880 --> 00:08:10.350
子孫たちは 侵略を受け

00:08:10.350 --> 00:08:13.000
カリブ海沿岸の平野に高くそびえる

00:08:13.000 --> 00:08:15.740
隔離された火山群に逃げ込みました

00:08:15.740 --> 00:08:17.190
血にまみれた大陸で

00:08:17.190 --> 00:08:20.000
唯一スペイン人に
征服されなかった一族です

00:08:20.000 --> 00:08:23.000
現在も彼らは儀式を司る神官によって
治められていますが

00:08:23.000 --> 00:08:25.520
神官になるためには
並外れた修行が必要です

00:08:26.000 --> 00:08:28.200
修行は幼い頃から始まります

00:08:28.200 --> 00:08:30.000
３～４才の時に
家族の元から連れ去られ

00:08:30.000 --> 00:08:32.000
氷河のふもとにある石室の中

00:08:32.000 --> 00:08:36.050
暗闇の世界に
18年間隔離されます

00:08:36.050 --> 00:08:37.460
９年間を２度繰り返すのは

00:08:37.460 --> 00:08:40.660
母胎の中で過ごした ９ヶ月間の

00:08:40.660 --> 00:08:42.270
妊娠期間の象徴です

00:08:42.270 --> 00:08:45.130
偉大な母なる大地の
母胎の中に置かれるわけです

00:08:45.130 --> 00:08:46.840
その間ずっと

00:08:46.840 --> 00:08:50.000
彼らの社会の価値文化を教え込まれます

00:08:50.000 --> 00:08:52.790
彼らの祈りだけが 宇宙を維持し

00:08:52.790 --> 00:08:55.150
生態学的なバランスを 維持するのだ という

00:08:55.150 --> 00:08:57.460
命題を維持する価値を受容します

00:08:57.700 --> 00:08:59.580
この驚くべき儀式の終わりに

00:08:59.580 --> 00:09:01.100
ある日突然彼らは連れ出され

00:09:01.100 --> 00:09:04.090
18才にして初めて

00:09:04.090 --> 00:09:07.690
日の出を見るのです
周囲の丘が太陽の光を浴びて

00:09:07.690 --> 00:09:10.690
感嘆するほど美しい情景が広がる

00:09:10.690 --> 00:09:12.790
その最初の光を見た 澄み切った
ひらめきの瞬間

00:09:13.000 --> 00:09:15.100
突然 抽象的に学んでいたことを

00:09:15.100 --> 00:09:18.140
素晴らしい栄光として理解するのです
そこで神官が言います

00:09:18.140 --> 00:09:20.400
「ごらん 言ったとおりだろう

00:09:20.400 --> 00:09:23.330
こんなにも美しい
これをお前が守るんだ」

00:09:23.330 --> 00:09:25.390
彼らは 自分たちを「兄」と名乗り

00:09:25.390 --> 00:09:28.000
世界を破壊している責任は

00:09:28.000 --> 00:09:31.110
「弟」である我々にある と言います

00:09:31.840 --> 00:09:34.260
このような直観は とても重要です

00:09:34.260 --> 00:09:36.410
先住民の人々と
自然の風景について考える時

00:09:36.410 --> 00:09:38.000
我々は ルソーが唱えた
高貴な野蛮人という

00:09:38.000 --> 00:09:41.130
単純で人種差別的な

00:09:41.130 --> 00:09:43.270
虚構を思い浮かべるか

00:09:43.270 --> 00:09:46.000
あるいは ソローを想起して

00:09:46.000 --> 00:09:48.200
地球により近い人々
と呼ぶかもしれません

00:09:48.200 --> 00:09:50.560
先住民の人々は感傷的でもなければ

00:09:50.560 --> 00:09:52.000
郷愁によって衰弱してもいません

00:09:52.000 --> 00:09:54.000
マラリアのはびこるアスマットの沼地にも

00:09:54.000 --> 00:09:56.000
チベットの凍えるような風にも

00:09:56.000 --> 00:09:59.240
そんな余地はありません
しかしそれでもなお 彼らは

00:09:59.240 --> 00:10:03.090
歴史と儀式を通し 地球の伝統的な神秘を
案出してきました

00:10:03.090 --> 00:10:06.320
それは意識的に地球に近づこうと
考えるのではなく

00:10:06.320 --> 00:10:08.410
もっと敏感な直感に基づき

00:10:08.410 --> 00:10:11.450
地球が存在できるのは 人間の意識によって

00:10:11.760 --> 00:10:14.270
息を吹き込まれているからだ と考えるのです

00:10:14.270 --> 00:10:16.000
これはどういうことでしょうか？

00:10:16.000 --> 00:10:18.000
たとえば アンデスの子供が

00:10:18.000 --> 00:10:20.460
山はアプの精霊だと信じて育ち

00:10:20.460 --> 00:10:22.110
山が彼の運命を導くと考えるのと

00:10:22.110 --> 00:10:24.460
モンタナ州の子供が 山はただの岩の堆積で

00:10:24.460 --> 00:10:28.000
鉱業化を待つのみ と思って育ったのとでは

00:10:28.000 --> 00:10:30.500
深いところで 異なる人間となり

00:10:30.500 --> 00:10:32.830
資源や場所と自分との関係性も

00:10:32.830 --> 00:10:34.000
異なるでしょう

00:10:34.000 --> 00:10:38.000
山が霊の住む場所なのか 鉱石の山なのかは
重要ではありません

00:10:38.000 --> 00:10:40.760
興味深いのは 個人と自然界の関係を

00:10:40.760 --> 00:10:43.310
定義する隠喩です

00:10:43.310 --> 00:10:45.160
私はブリティッシュコロンビア州の森林で

00:10:45.160 --> 00:10:47.000
森林は伐採されるために
存在すると信じて育ち

00:10:47.000 --> 00:10:49.040
クワキウトル族の友人とは

00:10:49.040 --> 00:10:51.000
違う人間になりました

00:10:51.000 --> 00:10:53.170
友人は こう信じていました
森は「天の曲がったくちばし」やハクウクー

00:10:53.170 --> 00:10:54.370
そして 世界の北の果てに住む

00:10:54.370 --> 00:10:57.320
人食い鬼のすみかなのだと

00:10:57.320 --> 00:11:01.000
鬼はハマツァの通過儀礼で
戦を交えなければならない精霊です

00:11:01.000 --> 00:11:03.000
文化ごとに 創り出される現実が

00:11:03.000 --> 00:11:05.000
違うという点に目を向ければ

00:11:05.000 --> 00:11:06.140
それぞれの文化が

00:11:06.140 --> 00:11:09.910
驚くべき発見をしてきたことが理解できます
例えば この植物です

00:11:09.910 --> 00:11:13.000
去年の４月にアマゾン北西部で撮った写真です

00:11:13.600 --> 00:11:16.150
これは 名前をご存じかもしれません
シャーマンが使う

00:11:16.150 --> 00:11:19.670
最強の向精神物質

00:11:19.670 --> 00:11:21.040
アヤワスカです

00:11:21.040 --> 00:11:23.200
アヤワスカが興味深いのは

00:11:23.200 --> 00:11:27.000
この製剤の単なる薬理的可能性ではなく

00:11:27.000 --> 00:11:31.770
調合の入念さです
2つの異なる原料で作られています

00:11:31.770 --> 00:11:33.390
ひとつは リアナの木のツル

00:11:33.390 --> 00:11:35.430
β-カルボリン類、ハルミン、ハルマリンなど

00:11:35.430 --> 00:11:38.290
軽い幻覚を起こす成分が含まれています

00:11:38.290 --> 00:11:40.000
ただツルだけを摂取すると

00:11:40.000 --> 00:11:42.000
青くかすんだ

00:11:42.000 --> 00:11:44.000
煙のようなものが意識に流れます

00:11:44.000 --> 00:11:47.000
でもこれをプシコトリア・ウィリディスという

00:11:47.000 --> 00:11:49.000
コーヒー科の木の葉と混ぜ合わせます

00:11:49.000 --> 00:11:52.090
この植物には 脳内セロトニン
ジメチルトリプタミン

00:11:52.090 --> 00:11:55.450
5-メトキシジメチルトリプタミン とよく似た

00:11:55.450 --> 00:11:57.200
最強のトリプタミン類が含まれています

00:11:57.200 --> 00:11:59.000
ヤノマミ族が それを鼻から

00:11:59.000 --> 00:12:01.000
吸っているのを見たことがあるでしょうか

00:12:01.000 --> 00:12:04.620
あの材料は異なる種を
組み合わせて作りますが やはり

00:12:04.620 --> 00:12:08.000
メトキシジメチルトリプタミンが
含まれています

00:12:08.000 --> 00:12:10.360
あの粉を鼻から吸い込むことは

00:12:10.360 --> 00:12:14.000
バロック絵画で内張された
ライフルの銃身から撃ち出されて

00:12:14.000 --> 00:12:20.790
電流の海に落ちるような感覚です
（笑）

00:12:20.790 --> 00:12:22.800
現実がねじれて見えるのではなく

00:12:22.800 --> 00:12:24.190
現実世界が崩壊します

00:12:24.190 --> 00:12:27.000
リチャード・E・シュルテス教授と
よく議論しました

00:12:27.000 --> 00:12:29.000
彼は1930年代にメキシコで

00:12:29.000 --> 00:12:31.000
マジックマッシュルームを発見し

00:12:31.000 --> 00:12:32.860
サイケデリック時代の
火付け役となった人です

00:12:32.860 --> 00:12:35.480
トリプタミン類は
幻覚誘発剤分類すべきでないと

00:12:35.480 --> 00:12:38.170
私は主張しました
なぜなら効果が現れる頃には

00:12:38.170 --> 00:12:42.000
幻覚を体験できる意識自体が
とっくにぶっとんでしまっているからです（笑）

00:12:42.000 --> 00:12:45.310
ただトリプタミン類は
モノアミン酸化酵素という人間の腸に

00:12:45.310 --> 00:12:47.000
常在する酵素によって

00:12:47.000 --> 00:12:50.000
分解されるため
経口摂取しても効きません

00:12:50.000 --> 00:12:53.000
トリプタミン類は
モノアミン酸化酵素の阻害剤と

00:12:53.000 --> 00:12:56.000
一緒に内服しなくてはいけません

00:12:56.000 --> 00:12:57.670
とても面白いのは

00:12:57.670 --> 00:13:01.210
先ほどのツル植物に見つかった
β-カルボリン類は

00:13:01.210 --> 00:13:04.850
トリプタミン類の薬効を高めるのに必要な

00:13:04.850 --> 00:13:07.730
モノアミン酵化酵素の阻害剤なのです
考えてみて下さい

00:13:07.730 --> 00:13:12.000
どうやって8万種もの維管束植物から

00:13:12.000 --> 00:13:16.000
彼らは形態的に無関連の２つの植物を探し

00:13:16.000 --> 00:13:17.370
このように組み合わせると

00:13:17.370 --> 00:13:19.390
単独の効果を足した以上の効果がある という

00:13:19.390 --> 00:13:21.330
生化学的事実を見出したのか？

00:13:21.330 --> 00:13:24.080
私たちは ほぼ無意味に近い 大変遠回りな

00:13:24.080 --> 00:13:25.990
試行錯誤を行って実証します

00:13:25.990 --> 00:13:29.000
でもインディアンに聞くと
「植物が語りかけてくる」と言います

00:13:29.000 --> 00:13:30.120
どういうことでしょう？

00:13:30.120 --> 00:13:34.670
このコファンの部族は17種類の
アヤワスカを持っていて

00:13:34.670 --> 00:13:37.700
彼らは森の中で
遠くから それを見分けますが

00:13:38.000 --> 00:13:42.000
私たちの目からは
それらは全て１つの種に属します

00:13:42.000 --> 00:13:44.710
どうやって分類法を確立したのか と聞くと

00:13:44.710 --> 00:13:47.000
彼らは「君は植物に詳しい
と思っていたのに何も知らないの？」

00:13:47.000 --> 00:13:49.150
といいます私は「知らないんだ」と

00:13:49.150 --> 00:13:52.000
彼らは17種類のそれぞれを満月の夜に採ると

00:13:52.000 --> 00:13:55.000
それぞれ別の音で歌いかけてくるから分かると言います

00:13:55.000 --> 00:13:57.380
それではハーバード大の
博士号は取れませんが

00:13:57.380 --> 00:14:01.340
雄しべを数える研究よりは
遥かに興味深いです　（笑）

00:14:01.340 --> 00:14:02.180
さて

00:14:02.180 --> 00:14:05.000
（拍手）

00:14:05.000 --> 00:14:06.720
問題は 先住民の状況に

00:14:06.720 --> 00:14:09.000
共感する人々ですら 彼らはユニークで

00:14:09.000 --> 00:14:10.290
興味深いけれども 歴史の隅に

00:14:10.290 --> 00:14:12.280
追いやられた人々に過ぎず その間に現実世界

00:14:12.280 --> 00:14:15.000
すなわち 我々の世界は
前進しているのだと 思うことです

00:14:15.000 --> 00:14:17.970
真実は 今から300年後に 20世紀が

00:14:17.970 --> 00:14:19.880
記憶されるのは 戦争 または

00:14:19.880 --> 00:14:21.360
技術革命によってではなく

00:14:21.360 --> 00:14:23.650
地球上の 生物と文化の多様性

00:14:24.000 --> 00:14:26.000
その両方の大破壊に積極的に荷担した

00:14:26.000 --> 00:14:29.490
ないしは 黙って許したことによってだろうと
いうことです

00:14:29.490 --> 00:14:32.000
問題は変化ではありません

00:14:32.000 --> 00:14:34.680
全ての文化が 全ての時代において

00:14:34.680 --> 00:14:37.050
常に新しい生活の可能性と共に

00:14:37.050 --> 00:14:38.570
戯れてきました

00:14:39.000 --> 00:14:41.660
問題は 技術そのものではありません

00:14:42.000 --> 00:14:43.780
スー族のインディアンは 弓矢を手放しても

00:14:43.780 --> 00:14:45.000
スー族です それは

00:14:45.000 --> 00:14:47.050
アメリカ人が馬車に乗らなくなっても

00:14:47.050 --> 00:14:49.110
アメリカ人であり続けたのと同じです

00:14:49.110 --> 00:14:50.680
民俗文化圏の原理を脅かすのは

00:14:50.680 --> 00:14:54.080
変化でも技術でもありませんそれは権力です

00:14:54.080 --> 00:14:56.000
支配という生々しい事実です

00:14:56.000 --> 00:14:58.000
皆さんが 世界を見渡せば これらが

00:14:58.000 --> 00:15:01.000
姿を消すべく運命づけられた
文化などではないと気付きます

00:15:01.000 --> 00:15:03.000
力強く生きる人々が 彼らの

00:15:03.000 --> 00:15:06.000
適応力を超えた 特定の権力によって

00:15:06.000 --> 00:15:08.290
存在できなくされています

00:15:08.290 --> 00:15:11.100
東南アジアのサラワク州の

00:15:11.100 --> 00:15:12.910
非定住民 ペナン族の母国で

00:15:12.910 --> 00:15:16.000
実にひどい森林伐採がありました

00:15:16.000 --> 00:15:20.240
一世代前まで 彼らは森林で
自由に暮らしていたのに

00:15:20.240 --> 00:15:23.620
いまでは川岸で
奴隷と売春をするにいたっています

00:15:23.620 --> 00:15:25.000
川岸では

00:15:25.000 --> 00:15:29.000
川自体が沈泥であふれ ボルネオの半分が

00:15:29.000 --> 00:15:30.930
南シナ海に運び出されたように見えます

00:15:30.930 --> 00:15:32.000
その海では

00:15:32.000 --> 00:15:34.480
日本の貨物船が水平線に光りを灯し

00:15:34.480 --> 00:15:38.000
森から切り出された丸太を積み込もうと
手ぐすねを引いています

00:15:38.000 --> 00:15:39.280
またはヤノマミ族の場合

00:15:39.280 --> 00:15:41.000
金の発見をきっかけに

00:15:41.000 --> 00:15:43.170
種々の問題が起こりました

00:15:43.170 --> 00:15:45.630
または 私が最近多く調査をしている

00:15:45.630 --> 00:15:48.000
チベットの山々に行くと

00:15:48.000 --> 00:15:51.000
露骨な占領支配を目にします

00:15:51.000 --> 00:15:53.430
民族を集団虐殺し 物理的に死滅させることは

00:15:53.430 --> 00:15:56.010
一般にも非難されていますが

00:15:56.010 --> 00:15:59.000
文化の破壊は非難されないばかりか

00:15:59.000 --> 00:16:02.260
世界各地で開発戦略の一部として

00:16:02.260 --> 00:16:04.000
称賛されています

00:16:04.000 --> 00:16:07.000
チベットの苦悩は 現地を見て

00:16:07.000 --> 00:16:09.620
初めて分かります

00:16:09.620 --> 00:16:13.000
中国西部の成都から陸路で

00:16:13.000 --> 00:16:16.240
チベット南東を通って若い同僚と共に

00:16:16.240 --> 00:16:20.060
4,000キロを旅して
ラサへ着いた時にやっと

00:16:20.060 --> 00:16:23.000
統計でみた数字が示していた 悲惨な実態が

00:16:23.000 --> 00:16:24.160
分かったのです

00:16:24.160 --> 00:16:28.000
6,000の僧院が粉々に破壊され

00:16:28.000 --> 00:16:31.240
120万人もの人が 文化革命の最中に

00:16:31.240 --> 00:16:32.830
紅衛兵に殺されました

00:16:33.000 --> 00:16:35.590
この若者の父親は
パンチェン・ラマとつながりがあると見なされ

00:16:35.590 --> 00:16:37.380
中国の侵略時に

00:16:37.380 --> 00:16:39.000
すぐに 殺されました

00:16:39.000 --> 00:16:41.610
彼の叔父はダライラマと共に逃げ

00:16:41.610 --> 00:16:44.000
ネパールに移住しました

00:16:44.000 --> 00:16:45.700
彼の母親は 裕福であるという罪で

00:16:45.700 --> 00:16:49.010
投獄されました

00:16:49.010 --> 00:16:51.690
母親は ２歳の彼と離れるにしのびなく

00:16:51.690 --> 00:16:53.370
息子をスカートの下に隠して

00:16:53.370 --> 00:16:55.170
牢獄にこっそりつれていきました

00:16:55.170 --> 00:16:56.830
勇敢に抵抗した妹は 教育キャンプに

00:16:56.830 --> 00:16:58.220
入れられました

00:16:58.220 --> 00:17:01.040
ある日 妹はうっかり毛沢東の

00:17:01.040 --> 00:17:03.590
腕章を踏んでしまい その罪で

00:17:03.590 --> 00:17:06.530
７年間の重労働が課せられました

00:17:06.530 --> 00:17:09.000
チベットの苦痛に耐えるのは不可能ですが

00:17:09.000 --> 00:17:12.740
チベットの人々の あがないの精神
見守るべきものです

00:17:13.650 --> 00:17:16.000
結局 何を選ぶか なのです

00:17:16.000 --> 00:17:19.000
無味乾燥な単色の世界に住みたいか？

00:17:19.000 --> 00:17:22.000
または多様性に富んだ
多色の世界を受け入れたいか？

00:17:22.000 --> 00:17:25.000
偉大なる人類学者のマーガレット・ミードが
亡くなる前に

00:17:25.000 --> 00:17:28.000
「最も恐れるのは私たちがあいまいで個性のない

00:17:28.000 --> 00:17:30.570
世界観へと押し流され

00:17:30.570 --> 00:17:35.000
人間の想像力の全域が 狭く
パターン化した思考に

00:17:35.000 --> 00:17:39.000
縮小されることだけでなく

00:17:39.000 --> 00:17:40.830
ある日夢から覚め 違った可能性が

00:17:40.830 --> 00:17:43.610
あったことすら
すっかり忘れていることだ」と言いました

00:17:44.000 --> 00:17:47.190
私たち人類の歴史は
たかだか15万年だと思えば

00:17:47.190 --> 00:17:49.190
謙虚になります

00:17:49.190 --> 00:17:52.000
新石器時代 我々が農業を知り

00:17:52.000 --> 00:17:54.230
種を崇拝するようになり

00:17:54.230 --> 00:17:56.120
シャーマンの詩が 司祭の賛歌に

00:17:56.120 --> 00:17:57.480
置き換えられ

00:17:57.480 --> 00:18:00.380
余剰生産により階級制度が生まれたのは

00:18:00.380 --> 00:18:02.000
つい１万年前のことです

00:18:02.000 --> 00:18:04.220
近代産業社会は生まれてから

00:18:04.220 --> 00:18:05.760
わずか300年です

00:18:05.760 --> 00:18:08.310
その浅い歴史が 示唆するように

00:18:08.310 --> 00:18:10.830
私たちは 次の千年間に直面する
すべての挑戦への

00:18:10.830 --> 00:18:13.610
すべての答えを持っていません

00:18:13.610 --> 00:18:15.510
世界の無数の文化に

00:18:15.510 --> 00:18:17.740
人間でいる意味を問えば

00:18:17.740 --> 00:18:20.490
１万の異なる声で 答えが戻ってくるでしょう

00:18:20.490 --> 00:18:25.780
そして そのハーモニーの中から
私たちは 私たちでいられる 可能性を

00:18:25.780 --> 00:18:29.000
再発見するのです
全ての人 全ての楽園が

00:18:29.000 --> 00:18:32.490
繁栄するための方法を
確実に見つけることの大切さを知っている

00:18:32.490 --> 00:18:38.210
意識のひらけた種となる可能性を思うと
とても楽観的になれます

00:18:38.210 --> 00:18:41.000
この写真はバフィン島の最北端で
イヌイット族の人々と

00:18:41.000 --> 00:18:43.610
イッカク狩りに行った時に撮ったもので

00:18:43.850 --> 00:18:47.580
この男性 オラヤ が
自分の祖父の武勇伝を話してくれました

00:18:48.000 --> 00:18:50.000
カナダ政府は イヌイット族に対し

00:18:50.000 --> 00:18:52.000
常に好意的であったわけではなく
1950年代に

00:18:52.000 --> 00:18:55.000
国の主権を確立するために
強制的に入植地に移住させました

00:18:55.000 --> 00:18:59.000
オラヤの年老いた祖父は
行くのを拒みました

00:18:59.000 --> 00:19:03.220
家族は彼の命を心配し
彼の持っていた武器や道具を

00:19:03.220 --> 00:19:04.440
取り上げました

00:19:04.820 --> 00:19:07.310
イヌイット族は
寒さをまったく恐れず

00:19:07.310 --> 00:19:08.420
活用して生きてきました

00:19:08.420 --> 00:19:11.000
イヌイットのそりの
滑走部は もともと魚を

00:19:11.000 --> 00:19:12.430
カリブーの皮で覆ったものでした

00:19:12.430 --> 00:19:17.490
なのでオラヤの祖父は
北極の夜にも 夜の猛吹雪にも

00:19:17.490 --> 00:19:19.000
脅えることはありませんでした

00:19:19.000 --> 00:19:22.490
彼は当たり前のように外へ出て
アザラシの毛皮のズボンを下ろし

00:19:22.780 --> 00:19:26.370
自分の手に排便しました
排泄物が凍ると

00:19:26.370 --> 00:19:29.000
それを刃物の形にしました

00:19:29.000 --> 00:19:31.600
大便の刃に唾液を吹きかけ

00:19:31.600 --> 00:19:34.350
やっと固体に固まると
それで犬を切り裂きました

00:19:34.350 --> 00:19:37.220
犬の皮をはいで
その場で引き具を作り

00:19:37.220 --> 00:19:40.550
同じ犬の胸郭でそりを作り

00:19:40.550 --> 00:19:42.000
近くの犬に 引き具を付け

00:19:42.000 --> 00:19:46.000
ベルトには大便の刃物を巻いて
浮氷塊の向こうへ姿を消しました

00:19:46.000 --> 00:19:49.300
裸一貫から身を起こす とは
まさにこういうことを言うんですね（笑）

00:19:49.300 --> 00:19:51.290
これが色んな意味で

00:19:51.290 --> 00:19:53.000
（拍手）

00:19:53.000 --> 00:19:55.250
イヌイット族の人々
そして世界中の全ての

00:19:55.250 --> 00:19:58.000
先住民の人々の生命力の象徴です

00:19:58.000 --> 00:20:00.000
カナダ政府は1999年4月

00:20:00.000 --> 00:20:03.000
イヌイット族に
カリフォルニア州とテキサス州の

00:20:03.000 --> 00:20:06.350
総面積を上回る大きさの土地を返しました

00:20:06.350 --> 00:20:08.860
イヌイットにとっての新しい故郷
ヌナブトです

00:20:08.860 --> 00:20:12.090
独立した準州です
住民が全ての鉱物資源を仕切っています

00:20:12.090 --> 00:20:14.710
国家が国民への賠償を忘れなかった—

00:20:14.710 --> 00:20:18.420
素晴らしい例です

00:20:18.830 --> 00:20:22.120
そして最後に 少なくとも

00:20:22.120 --> 00:20:23.620
これら遠方の 現代社会から
隔離された土地まで

00:20:23.620 --> 00:20:25.950
旅したことのある人には明らかですが

00:20:25.950 --> 00:20:28.100
そこは「遠方」ではありません

00:20:28.100 --> 00:20:30.000
誰かにとっては故郷なのです

00:20:30.000 --> 00:20:32.480
太古の時代にさかのぼる人間の想像力の

00:20:32.480 --> 00:20:35.750
枝先を象徴しています
私たち全員にとって

00:20:35.750 --> 00:20:39.000
これらの子供の夢は私たちの子供の夢のように

00:20:39.000 --> 00:20:42.450
子供達の夢が希望の地形を形作るのです

00:20:42.450 --> 00:20:45.880
最後に ナショナルジオグラフィック
について紹介します

00:20:45.880 --> 00:20:50.000
私たちは 政治家たちには
何も達成できないと思っており

00:20:50.000 --> 00:20:51.000
政治論争は —

00:20:51.000 --> 00:20:53.160
（拍手）

00:20:53.160 --> 00:20:55.470
説得力がない —

00:20:55.470 --> 00:20:58.000
世界を変えるのは物語だと
考えており

00:20:58.000 --> 00:21:01.000
当誌こそ 物語を伝える
世界最高の機関だと考えています

00:21:01.000 --> 00:21:04.000
ウェブサイトのヒット件数は
毎月3,500万にものぼります

00:21:04.000 --> 00:21:07.150
156カ国で私たちのテレビチャンネルが
放映されています

00:21:08.000 --> 00:21:10.960
本誌には何百万もの読者がいます

00:21:10.960 --> 00:21:13.240
掲載されているのは
文化圏への旅 —

00:21:13.240 --> 00:21:15.480
読者を案内する先は

00:21:15.480 --> 00:21:17.690
驚異の文化遺産です

00:21:18.000 --> 00:21:20.000
そこで目にするものに
驚嘆せざるをえないために

00:21:20.000 --> 00:21:22.380
人類学の最も重要な啓示を

00:21:22.380 --> 00:21:25.140
願わくば 
徐々に 一人また一人と

00:21:25.140 --> 00:21:27.310
受け入れてほしいと思います

00:21:27.310 --> 00:21:31.000
世界は多様な形で
存在する価値があるということと

00:21:31.000 --> 00:21:35.010
そして 真の多文化・多元的世界において
集合的な幸福のために

00:21:35.010 --> 00:21:37.000
全人類の知恵を役立て
共存する手段を

00:21:37.000 --> 00:21:40.090
我々は見つけ出すことができるのだ
という啓示です

00:21:40.090 --> 00:21:41.200
ありがとうございました

00:21:41.200 --> 00:21:43.000
（拍手）