1 00:00:00,000 --> 00:00:03,000 旅の大きな楽しみの1つであり 2 00:00:03,000 --> 00:00:05,000 また民族誌学の調査をする喜びの1つは 3 00:00:05,000 --> 00:00:07,000 昔ながらの暮らしを忘れていない人々と 4 00:00:07,000 --> 00:00:09,000 共に暮らすことです 5 00:00:09,000 --> 00:00:12,000 彼らは いまも 風の中に 6 00:00:12,000 --> 00:00:15,000 雨に打たれ磨かれた石に そして葉の苦味の中に 7 00:00:15,000 --> 00:00:17,000 過去を感じる人々です 8 00:00:17,000 --> 00:00:21,000 ジャガーシャーマンが いまも天の川を越えて旅をし 9 00:00:21,000 --> 00:00:25,000 イヌイット族の古老の神話が いまも強烈な意味を持ち 10 00:00:25,000 --> 00:00:27,000 ヒマラヤでは 仏教徒が いまも 11 00:00:28,000 --> 00:00:32,000 「法」のしるしを探し求めている — こういった事を知ることこそ 12 00:00:32,000 --> 00:00:35,000 人類学の最も重要な発見を 思い起こすことでもあります 13 00:00:35,000 --> 00:00:37,000 その発見とは 私たちの住む世界が 14 00:00:38,000 --> 00:00:40,000 絶対的なものとして 存在するのではなく 15 00:00:40,000 --> 00:00:41,000 現実の形の1つ— 16 00:00:41,000 --> 00:00:45,000 何世代も前に 我々の祖先が 適応するために選び 17 00:00:45,000 --> 00:00:49,000 うまくいった選択肢の組み合わせの 結果に過ぎないのだという概念です 18 00:00:50,000 --> 00:00:54,000 もちろん 適応は全人類に共通して 不可欠なものです 19 00:00:54,000 --> 00:00:56,000 私たちは皆 誰かから生まれ また子を産みます 20 00:00:56,000 --> 00:00:58,000 皆 通過儀礼を経験します 21 00:00:58,000 --> 00:01:00,000 皆 避けがたい死別を耐えます 22 00:01:00,000 --> 00:01:04,000 ですから どの文化にも 歌があり 踊りがあり 芸術があることは 23 00:01:04,000 --> 00:01:06,000 驚きではありません 24 00:01:06,000 --> 00:01:09,000 でも面白いのは それぞれの文化に固有の 25 00:01:09,000 --> 00:01:11,000 歌や踊りのリズムがあることです 26 00:01:11,000 --> 00:01:14,000 ボルネオ島の森林のペナン族も 27 00:01:14,000 --> 00:01:17,000 ハイチのブードゥー教の信者たちも 28 00:01:18,000 --> 00:01:22,000 ケニア北部にあるカイスット砂漠の戦士たちも 29 00:01:24,000 --> 00:01:26,000 アンデス山脈の呪医 クランデロも 30 00:01:27,000 --> 00:01:32,000 サハラのキャラバンサライの隊商も 皆そうです 31 00:01:32,000 --> 00:01:34,000 これは私が1ヶ月前に砂漠を 32 00:01:34,000 --> 00:01:35,000 一緒に旅した人です 33 00:01:35,000 --> 00:01:38,000 これは世界の地母神であるエベレスト 34 00:01:38,000 --> 00:01:40,000 チョモランマの斜面に住むヤク飼いです 35 00:01:40,000 --> 00:01:43,000 彼らが皆 私たちに教えてくれるのは 世界には 36 00:01:43,000 --> 00:01:44,000 別のあり方 考え方 37 00:01:44,000 --> 00:01:46,000 地球上での居場所の見つけ方が 他にもあるということです 38 00:01:46,000 --> 00:01:48,000 このような考え方は 私たちを 39 00:01:48,000 --> 00:01:50,000 ただ希望で満たしてくれます 40 00:01:50,000 --> 00:01:53,000 世界中の無数の文化が織りなす 41 00:01:53,000 --> 00:01:57,000 精神生活と文化生活は 42 00:01:57,000 --> 00:01:59,000 この星を包み込み 43 00:01:59,000 --> 00:02:01,000 幸福に導く大切な要素です 44 00:02:01,000 --> 00:02:04,000 生物圏 すなわち生物の織りなす世界も やはり同様に大切です 45 00:02:04,000 --> 00:02:07,000 この文化が織りなす世界を 46 00:02:07,000 --> 00:02:08,000 「民族文化圏」と考えてもいいでしょう 47 00:02:08,000 --> 00:02:10,000 民族文化圏とは 48 00:02:10,000 --> 00:02:13,000 人間の意識のあけぼの以来 想像力により生み出された 49 00:02:13,000 --> 00:02:16,000 あらゆる考え、夢や神話 50 00:02:16,000 --> 00:02:20,000 発想、インスピレーションや直観の 総和と定義できるでしょう 51 00:02:20,000 --> 00:02:23,000 民俗文化圏は 人類の素晴らしい遺産です 52 00:02:23,000 --> 00:02:25,000 それは 驚くほど好奇心の強い種である— 53 00:02:25,000 --> 00:02:29,000 人類全体のあり方や可能性を 象徴しています 54 00:02:30,000 --> 00:02:33,000 生物圏が激しく侵されてしまったのと同様に 55 00:02:33,000 --> 00:02:35,000 民族文化圏も— 56 00:02:35,000 --> 00:02:37,000 しかも もっと急速に 侵食されています 57 00:02:37,000 --> 00:02:39,000 全ての種の50%以上が絶滅の危機に 58 00:02:39,000 --> 00:02:42,000 瀕していると言う生物学者はいません 59 00:02:42,000 --> 00:02:44,000 事実ではないからです 60 00:02:44,000 --> 00:02:46,000 それでも 文化的多様性の先行きは 61 00:02:46,000 --> 00:02:49,000 どんなに楽観的に考えたとしても 62 00:02:49,000 --> 00:02:52,000 生物多様性で言う最悪のシナリオが 63 00:02:52,000 --> 00:02:54,000 全く及ばないほど暗いものです 64 00:02:54,000 --> 00:02:57,000 言語の消失をみれば 明らかです 65 00:02:57,000 --> 00:03:00,000 ここにいる皆さんが生まれた時 66 00:03:00,000 --> 00:03:03,000 地球では6,000の言語が話されていました 67 00:03:03,000 --> 00:03:06,000 言語は 単に単語の集まり または 68 00:03:06,000 --> 00:03:08,000 文法の規則一式ではありません 69 00:03:08,000 --> 00:03:10,000 言語は人間精神の発露であり 70 00:03:10,000 --> 00:03:13,000 それぞれの文化の魂を 物質の世界に送り出す— 71 00:03:13,000 --> 00:03:14,000 手段でもあります 72 00:03:14,000 --> 00:03:17,000 どの言語も 人間の心にとって 太古の森のようなものであり 73 00:03:17,000 --> 00:03:21,000 精神が持つ可能性にとっての 河や、思考や生態系のようなものです 74 00:03:21,000 --> 00:03:25,000 そんな6,000の言語のうち半分が 私たちがこうしてここで座っている間にも 75 00:03:25,000 --> 00:03:29,000 もはや子供たちの耳に 届かなくなってしまっています 76 00:03:29,000 --> 00:03:32,000 その言語を学ぶ赤ん坊はもはやおらず 77 00:03:32,000 --> 00:03:34,000 何かが変わらない限り その言語は事実上 78 00:03:34,000 --> 00:03:35,000 すでに死んでいます 79 00:03:35,000 --> 00:03:39,000 その言葉をしゃべる最後の人間となって 沈黙に包まれ 80 00:03:39,000 --> 00:03:41,000 先祖の知恵を未来に伝える手段もなく 81 00:03:41,000 --> 00:03:44,000 子供に将来を委ねられないほど 82 00:03:44,000 --> 00:03:47,000 寂しいことはありいません 83 00:03:47,000 --> 00:03:50,000 それでも この恐ろしい運命が どこかの誰かに降りかかっています 84 00:03:50,000 --> 00:03:52,000 ほぼ2週間に一度 85 00:03:52,000 --> 00:03:54,000 地球上のどこかで 長老が亡くなり 86 00:03:54,000 --> 00:03:56,000 いにしえの言葉の最後の一言とともに 87 00:03:56,000 --> 00:03:58,000 一緒に葬られているからです 88 00:03:58,000 --> 00:04:00,000 「皆が1つの言語を話す世界の方が 89 00:04:00,000 --> 00:04:01,000 良いのでは?」と 90 00:04:01,000 --> 00:04:04,000 言う人もいるでしょう 91 00:04:04,000 --> 00:04:07,000 それなら ヨルバ語に統一しましょう あるいは広東語に 92 00:04:07,000 --> 00:04:08,000 コギ語でもいい 93 00:04:08,000 --> 00:04:10,000 そう言われて初めて 94 00:04:10,000 --> 00:04:13,000 自分の言語が消えることが どういうことか気付くはずです 95 00:04:13,000 --> 00:04:16,000 私は 今日皆さんを 96 00:04:16,000 --> 00:04:20,000 民族文化圏を巡る旅に ご案内します 97 00:04:20,000 --> 00:04:22,000 その旅を通して 98 00:04:22,000 --> 00:04:26,000 実際に何が失われているかを 感じて欲しいのです 99 00:04:27,000 --> 00:04:34,000 我々の多くは 「人間の異なるあり方」と言う時 100 00:04:34,000 --> 00:04:36,000 本当の意味で「異なる」ということを 101 00:04:36,000 --> 00:04:38,000 忘れがちです 102 00:04:39,000 --> 00:04:44,000 例えば この子はアマゾン北西部 バラサナ族の子ですが 103 00:04:44,000 --> 00:04:45,000 アナコンダの一族で 104 00:04:45,000 --> 00:04:47,000 自分たちは 神聖な蛇の腹の中に守られ 105 00:04:47,000 --> 00:04:50,000 東方から ミルク川を上がってきたという 神話を信じています 106 00:04:50,000 --> 00:04:53,000 この一族の色の認識には 107 00:04:53,000 --> 00:04:55,000 青と緑の区別がありません 108 00:04:55,000 --> 00:04:57,000 彼らにとって 生活を頼っている— 109 00:04:57,000 --> 00:04:58,000 森の樹冠と 110 00:04:58,000 --> 00:05:00,000 空の天蓋は同じものだからです 111 00:05:00,000 --> 00:05:03,000 彼らには一風変わった 言語と結婚の掟があり 112 00:05:03,000 --> 00:05:05,000 言語的な族外婚 すなわち 113 00:05:05,000 --> 00:05:08,000 自分と異なる言語を話す相手と 結婚しなければなりません 114 00:05:08,000 --> 00:05:10,000 昔からの伝説を根源とする風習ですが 115 00:05:10,000 --> 00:05:12,000 面白いのは 彼らが住む長屋では 116 00:05:12,000 --> 00:05:14,000 この結婚制度により 6〜7言語が話されていますが 117 00:05:14,000 --> 00:05:16,000 この結婚制度により 6〜7言語が話されていますが 118 00:05:16,000 --> 00:05:19,000 誰も言語を練習する訳ではないことです 119 00:05:19,000 --> 00:05:22,000 彼らはただ単に聞いて しゃべりだすのです 120 00:05:22,000 --> 00:05:24,000 別の例は 私が共に暮らした 121 00:05:24,000 --> 00:05:28,000 最も興味深い部族の1つ エクアドル北東部のワオラニ族です 122 00:05:28,000 --> 00:05:31,000 1958年に初めて平和的に接触できた 人々です 123 00:05:31,000 --> 00:05:35,000 1957年に5人の伝道者が接触を試みて 124 00:05:35,000 --> 00:05:36,000 重大な過ちを犯しました 125 00:05:36,000 --> 00:05:37,000 空から 大判の 126 00:05:37,000 --> 00:05:39,000 自分たちの映った写真を撒いたのです 127 00:05:39,000 --> 00:05:41,000 友好の印のつもりでしたが 128 00:05:41,000 --> 00:05:43,000 でも 森の人々がそれまで一度も 129 00:05:43,000 --> 00:05:46,000 2次元のものは見たことがないことを 忘れていたのです 130 00:05:46,000 --> 00:05:48,000 人々は地面から写真を拾い 写真の裏側にいる 131 00:05:48,000 --> 00:05:51,000 人物を探しましたが 何も見つからなかったので 132 00:05:51,000 --> 00:05:53,000 悪魔が来た証拠だと考え 133 00:05:53,000 --> 00:05:56,000 5人の伝道者たちを槍で突き殺しました 134 00:05:57,000 --> 00:05:59,000 でもワオラニ族は部外者を刺すだけでなく 135 00:05:59,000 --> 00:06:00,000 お互いも刺し殺します 136 00:06:00,000 --> 00:06:03,000 彼らの死因の54%は 刺し合いでした 137 00:06:03,000 --> 00:06:06,000 家系を8世代さかのぼり調査しましたが 138 00:06:06,000 --> 00:06:08,000 自然死はたった2例でした 139 00:06:08,000 --> 00:06:10,000 そのことについて少し問い詰めたところ 140 00:06:10,000 --> 00:06:12,000 仲間の1人がとても年を取ったため 141 00:06:12,000 --> 00:06:16,000 老齢で死んだが槍で突いておいたと 白状しました(笑) 142 00:06:16,000 --> 00:06:19,000 しかし同時に彼らは驚くほど 洞察力に富んだ森林の 143 00:06:19,000 --> 00:06:20,000 知識を持っていました 144 00:06:20,000 --> 00:06:23,000 狩人は40歩離れた場所から 動物の尿の臭いを嗅ぎ分け 145 00:06:23,000 --> 00:06:26,000 どの種が残したかが分かります 146 00:06:26,000 --> 00:06:28,000 80年代初め ハーバード大学の私の教授から 147 00:06:28,000 --> 00:06:30,000 びっくりするような 研究課題を提示されました 148 00:06:30,000 --> 00:06:32,000 ハイチに行って独裁者ドュバリエの 149 00:06:33,000 --> 00:06:35,000 権力を支え秘密警察の基盤となった― 150 00:06:35,000 --> 00:06:37,000 秘密結社に潜入すること 151 00:06:37,000 --> 00:06:38,000 そしてゾンビを作るのに使われる 152 00:06:38,000 --> 00:06:41,000 毒を入手する仕事に興味はないか というのです 153 00:06:41,000 --> 00:06:44,000 もちろん このセンセーショナルな対象を 理解するため 154 00:06:44,000 --> 00:06:47,000 ブードゥーの驚くべき信仰を 理解する必要がありました 155 00:06:47,000 --> 00:06:50,000 ブードゥー教は 黒魔術のカルト宗教ではありません 156 00:06:50,000 --> 00:06:53,000 それどころか 複雑な 哲学的世界観を持つ— 157 00:06:53,000 --> 00:06:54,000 面白い宗教です 158 00:06:54,000 --> 00:06:55,000 世界の主な宗教は? と聞かれたら 159 00:06:55,000 --> 00:06:56,000 何をあげますか? 160 00:06:56,000 --> 00:06:59,000 キリスト教 イスラム教 仏教 ユダヤ教・・・ 161 00:06:59,000 --> 00:07:01,000 常に言及されない大陸が1つあります 162 00:07:01,000 --> 00:07:03,000 サハラ砂漠以南のアフリカには 宗教が 163 00:07:03,000 --> 00:07:05,000 ないかのように もちろん 間違いです 164 00:07:05,000 --> 00:07:07,000 そしてブードゥー教は まさに奴隷の時代の 165 00:07:08,000 --> 00:07:09,000 悲劇的な離散を通して伝わった 166 00:07:09,000 --> 00:07:12,000 アフリカの大変奥深い宗教的思考の エッセンスです 167 00:07:12,000 --> 00:07:14,000 ブードゥー教の興味深いところは 168 00:07:14,000 --> 00:07:16,000 生者と死者とをつなぐ 169 00:07:16,000 --> 00:07:17,000 生きた関係です 170 00:07:17,000 --> 00:07:18,000 生者は魂を生み出し 171 00:07:18,000 --> 00:07:21,000 魂は 大いなる海の下から呼び覚まされ 172 00:07:21,000 --> 00:07:23,000 ダンスのリズムに呼応して 173 00:07:23,000 --> 00:07:25,000 一時的に生者の魂が身体を離脱し 174 00:07:25,000 --> 00:07:29,000 そのほんの一瞬だけの間 信者に神が降りてくるのです 175 00:07:29,000 --> 00:07:31,000 そのためブードゥー教の信者は 176 00:07:31,000 --> 00:07:34,000 「白人は教会に行き 神について語るが 177 00:07:34,000 --> 00:07:36,000 私たちは寺院で踊って 神になる」と言います 178 00:07:36,000 --> 00:07:39,000 「霊に取り憑かれ 乗り移られているのだから 179 00:07:39,000 --> 00:07:40,000 傷つくはずがない」と 180 00:07:40,000 --> 00:07:43,000 事実 先ほどのような 驚くべき光景が見られます 181 00:07:43,000 --> 00:07:45,000 トランス状態の信者は 182 00:07:45,000 --> 00:07:48,000 残り火に触れても やけどしません 183 00:07:48,000 --> 00:07:51,000 これは 極限の興奮状態となったとき 184 00:07:51,000 --> 00:07:52,000 心が 器である体に 185 00:07:52,000 --> 00:07:55,000 影響を及ぼす力の 驚くべき表れであると言えます 186 00:07:56,000 --> 00:07:58,000 さて これまで私が 共に過ごした中で 187 00:07:58,000 --> 00:08:00,000 最も並外れて凄かったのが 188 00:08:00,000 --> 00:08:03,000 コロンビア北部の シェラネバダ山地のコギ族でした 189 00:08:03,000 --> 00:08:06,000 コロンビアのカリブ海沿岸の平野を 190 00:08:06,000 --> 00:08:09,000 制圧していた古代タイロナ文明の 191 00:08:09,000 --> 00:08:10,000 子孫たちは 侵略を受け 192 00:08:10,000 --> 00:08:13,000 カリブ海沿岸の平野に高くそびえる 193 00:08:13,000 --> 00:08:15,000 隔離された火山群に逃げ込みました 194 00:08:15,000 --> 00:08:17,000 血にまみれた大陸で 195 00:08:17,000 --> 00:08:20,000 唯一スペイン人に 征服されなかった一族です 196 00:08:20,000 --> 00:08:23,000 現在も彼らは儀式を司る神官によって 治められていますが 197 00:08:23,000 --> 00:08:25,000 神官になるためには 並外れた修行が必要です 198 00:08:26,000 --> 00:08:28,000 修行は幼い頃から始まります 199 00:08:28,000 --> 00:08:30,000 3~4才の時に 家族の元から連れ去られ 200 00:08:30,000 --> 00:08:32,000 氷河のふもとにある石室の中 201 00:08:32,000 --> 00:08:36,000 暗闇の世界に 18年間隔離されます 202 00:08:36,000 --> 00:08:37,000 9年間を2度繰り返すのは 203 00:08:37,000 --> 00:08:40,000 母胎の中で過ごした 9ヶ月間の 204 00:08:40,000 --> 00:08:42,000 妊娠期間の象徴です 205 00:08:42,000 --> 00:08:45,000 偉大な母なる大地の 母胎の中に置かれるわけです 206 00:08:45,000 --> 00:08:46,000 その間ずっと 207 00:08:47,000 --> 00:08:50,000 彼らの社会の価値文化を教え込まれます 208 00:08:50,000 --> 00:08:52,000 彼らの祈りだけが 宇宙を維持し 209 00:08:52,000 --> 00:08:55,000 生態学的なバランスを 維持するのだ という 210 00:08:55,000 --> 00:08:57,000 命題を維持する価値を受容します 211 00:08:58,000 --> 00:08:59,000 この驚くべき儀式の終わりに 212 00:08:59,000 --> 00:09:01,000 ある日突然彼らは連れ出され 213 00:09:01,000 --> 00:09:04,000 18才にして初めて 214 00:09:04,000 --> 00:09:08,000 日の出を見るのです 周囲の丘が太陽の光を浴びて 215 00:09:08,000 --> 00:09:11,000 感嘆するほど美しい情景が広がる 216 00:09:11,000 --> 00:09:12,000 その最初の光を見た 澄み切った ひらめきの瞬間 217 00:09:13,000 --> 00:09:15,000 突然 抽象的に学んでいたことを 218 00:09:15,000 --> 00:09:18,000 素晴らしい栄光として理解するのです そこで神官が言います 219 00:09:18,000 --> 00:09:20,000 「ごらん 言ったとおりだろう 220 00:09:20,000 --> 00:09:23,000 こんなにも美しい これをお前が守るんだ」 221 00:09:23,000 --> 00:09:25,000 彼らは 自分たちを「兄」と名乗り 222 00:09:25,000 --> 00:09:28,000 世界を破壊している責任は 223 00:09:28,000 --> 00:09:31,000 「弟」である我々にある と言います 224 00:09:32,000 --> 00:09:34,000 このような直観は とても重要です 225 00:09:34,000 --> 00:09:36,000 先住民の人々と 自然の風景について考える時 226 00:09:36,000 --> 00:09:38,000 我々は ルソーが唱えた 高貴な野蛮人という 227 00:09:38,000 --> 00:09:41,000 単純で人種差別的な 228 00:09:41,000 --> 00:09:43,000 虚構を思い浮かべるか 229 00:09:43,000 --> 00:09:46,000 あるいは ソローを想起して 230 00:09:46,000 --> 00:09:48,000 地球により近い人々 と呼ぶかもしれません 231 00:09:48,000 --> 00:09:50,000 先住民の人々は感傷的でもなければ 232 00:09:50,000 --> 00:09:52,000 郷愁によって衰弱してもいません 233 00:09:52,000 --> 00:09:54,000 マラリアのはびこるアスマットの沼地にも 234 00:09:54,000 --> 00:09:56,000 チベットの凍えるような風にも 235 00:09:56,000 --> 00:09:59,000 そんな余地はありません しかしそれでもなお 彼らは 236 00:09:59,000 --> 00:10:03,000 歴史と儀式を通し 地球の伝統的な神秘を 案出してきました 237 00:10:03,000 --> 00:10:06,000 それは意識的に地球に近づこうと 考えるのではなく 238 00:10:06,000 --> 00:10:08,000 もっと敏感な直感に基づき 239 00:10:08,000 --> 00:10:11,000 地球が存在できるのは 人間の意識によって 240 00:10:12,000 --> 00:10:14,000 息を吹き込まれているからだ と考えるのです 241 00:10:14,000 --> 00:10:16,000 これはどういうことでしょうか? 242 00:10:16,000 --> 00:10:18,000 たとえば アンデスの子供が 243 00:10:18,000 --> 00:10:20,000 山はアプの精霊だと信じて育ち 244 00:10:20,000 --> 00:10:22,000 山が彼の運命を導くと考えるのと 245 00:10:22,000 --> 00:10:25,000 モンタナ州の子供が 山はただの岩の堆積で 246 00:10:25,000 --> 00:10:28,000 鉱業化を待つのみ と思って育ったのとでは 247 00:10:28,000 --> 00:10:30,000 深いところで 異なる人間となり 248 00:10:30,000 --> 00:10:33,000 資源や場所と自分との関係性も 249 00:10:33,000 --> 00:10:34,000 異なるでしょう 250 00:10:34,000 --> 00:10:38,000 山が霊の住む場所なのか 鉱石の山なのかは 重要ではありません 251 00:10:38,000 --> 00:10:41,000 興味深いのは 個人と自然界の関係を 252 00:10:41,000 --> 00:10:43,000 定義する隠喩です 253 00:10:43,000 --> 00:10:45,000 私はブリティッシュコロンビア州の森林で 254 00:10:45,000 --> 00:10:47,000 森林は伐採されるために 存在すると信じて育ち 255 00:10:47,000 --> 00:10:49,000 クワキウトル族の友人とは 256 00:10:49,000 --> 00:10:51,000 違う人間になりました 257 00:10:51,000 --> 00:10:53,000 友人は こう信じていました 森は「天の曲がったくちばし」やハクウクー 258 00:10:53,000 --> 00:10:54,000 そして 世界の北の果てに住む 259 00:10:54,000 --> 00:10:57,000 人食い鬼のすみかなのだと 260 00:10:57,000 --> 00:11:01,000 鬼はハマツァの通過儀礼で 戦を交えなければならない精霊です 261 00:11:01,000 --> 00:11:03,000 文化ごとに 創り出される現実が 262 00:11:03,000 --> 00:11:05,000 違うという点に目を向ければ 263 00:11:05,000 --> 00:11:06,000 それぞれの文化が 264 00:11:06,000 --> 00:11:11,000 驚くべき発見をしてきたことが理解できます 例えば この植物です 265 00:11:11,000 --> 00:11:13,000 去年の4月にアマゾン北西部で撮った写真です 266 00:11:13,000 --> 00:11:16,000 これは 名前をご存じかもしれません シャーマンが使う 267 00:11:16,000 --> 00:11:19,000 最強の向精神物質 268 00:11:19,000 --> 00:11:21,000 アヤワスカです 269 00:11:21,000 --> 00:11:23,000 アヤワスカが興味深いのは 270 00:11:23,000 --> 00:11:27,000 この製剤の単なる薬理的可能性ではなく 271 00:11:27,000 --> 00:11:31,000 調合の入念さです 2つの異なる原料で作られています 272 00:11:31,000 --> 00:11:33,000 ひとつは リアナの木のツル 273 00:11:33,000 --> 00:11:35,000 β-カルボリン類、ハルミン、ハルマリンなど 274 00:11:35,000 --> 00:11:38,000 軽い幻覚を起こす成分が含まれています 275 00:11:38,000 --> 00:11:40,000 ただツルだけを摂取すると 276 00:11:40,000 --> 00:11:42,000 青くかすんだ 277 00:11:42,000 --> 00:11:44,000 煙のようなものが意識に流れます 278 00:11:44,000 --> 00:11:47,000 でもこれをプシコトリア・ウィリディスという 279 00:11:47,000 --> 00:11:49,000 コーヒー科の木の葉と混ぜ合わせます 280 00:11:49,000 --> 00:11:52,000 この植物には 脳内セロトニン ジメチルトリプタミン 281 00:11:52,000 --> 00:11:56,000 5-メトキシジメチルトリプタミン とよく似た 282 00:11:56,000 --> 00:11:57,000 最強のトリプタミン類が含まれています 283 00:11:57,000 --> 00:11:59,000 ヤノマミ族が それを鼻から 284 00:11:59,000 --> 00:12:01,000 吸っているのを見たことがあるでしょうか 285 00:12:01,000 --> 00:12:04,000 あの材料は異なる種を 組み合わせて作りますが やはり 286 00:12:04,000 --> 00:12:08,000 メトキシジメチルトリプタミンが 含まれています 287 00:12:08,000 --> 00:12:10,000 あの粉を鼻から吸い込むことは 288 00:12:10,000 --> 00:12:14,000 バロック絵画で内張された ライフルの銃身から撃ち出されて 289 00:12:14,000 --> 00:12:21,000 電流の海に落ちるような感覚です (笑) 290 00:12:21,000 --> 00:12:23,000 現実がねじれて見えるのではなく 291 00:12:23,000 --> 00:12:24,000 現実世界が崩壊します 292 00:12:24,000 --> 00:12:27,000 リチャード・E・シュルテス教授と よく議論しました 293 00:12:27,000 --> 00:12:29,000 彼は1930年代にメキシコで 294 00:12:29,000 --> 00:12:31,000 マジックマッシュルームを発見し 295 00:12:31,000 --> 00:12:33,000 サイケデリック時代の 火付け役となった人です 296 00:12:33,000 --> 00:12:35,000 トリプタミン類は 幻覚誘発剤分類すべきでないと 297 00:12:35,000 --> 00:12:38,000 私は主張しました なぜなら効果が現れる頃には 298 00:12:38,000 --> 00:12:42,000 幻覚を体験できる意識自体が とっくにぶっとんでしまっているからです(笑) 299 00:12:42,000 --> 00:12:45,000 ただトリプタミン類は モノアミン酸化酵素という人間の腸に 300 00:12:45,000 --> 00:12:47,000 常在する酵素によって 301 00:12:47,000 --> 00:12:50,000 分解されるため 経口摂取しても効きません 302 00:12:50,000 --> 00:12:53,000 トリプタミン類は モノアミン酸化酵素の阻害剤と 303 00:12:53,000 --> 00:12:56,000 一緒に内服しなくてはいけません 304 00:12:56,000 --> 00:12:57,000 とても面白いのは 305 00:12:57,000 --> 00:13:01,000 先ほどのツル植物に見つかった β-カルボリン類は 306 00:13:01,000 --> 00:13:04,000 トリプタミン類の薬効を高めるのに必要な 307 00:13:05,000 --> 00:13:08,000 モノアミン酵化酵素の阻害剤なのです 考えてみて下さい 308 00:13:08,000 --> 00:13:12,000 どうやって8万種もの維管束植物から 309 00:13:12,000 --> 00:13:16,000 彼らは形態的に無関連の2つの植物を探し 310 00:13:16,000 --> 00:13:17,000 このように組み合わせると 311 00:13:17,000 --> 00:13:19,000 単独の効果を足した以上の効果がある という 312 00:13:19,000 --> 00:13:21,000 生化学的事実を見出したのか? 313 00:13:21,000 --> 00:13:24,000 私たちは ほぼ無意味に近い 大変遠回りな 314 00:13:24,000 --> 00:13:25,000 試行錯誤を行って実証します 315 00:13:26,000 --> 00:13:29,000 でもインディアンに聞くと 「植物が語りかけてくる」と言います 316 00:13:29,000 --> 00:13:30,000 どういうことでしょう? 317 00:13:30,000 --> 00:13:34,000 このコファンの部族は17種類の アヤワスカを持っていて 318 00:13:34,000 --> 00:13:37,000 彼らは森の中で 遠くから それを見分けますが 319 00:13:38,000 --> 00:13:42,000 私たちの目からは それらは全て1つの種に属します 320 00:13:42,000 --> 00:13:44,000 どうやって分類法を確立したのか と聞くと 321 00:13:44,000 --> 00:13:47,000 彼らは「君は植物に詳しい と思っていたのに何も知らないの?」 322 00:13:47,000 --> 00:13:49,000 といいます私は「知らないんだ」と 323 00:13:49,000 --> 00:13:52,000 彼らは17種類のそれぞれを満月の夜に採ると 324 00:13:52,000 --> 00:13:55,000 それぞれ別の音で歌いかけてくるから分かると言います 325 00:13:55,000 --> 00:13:57,000 それではハーバード大の 博士号は取れませんが 326 00:13:57,000 --> 00:14:01,000 雄しべを数える研究よりは 遥かに興味深いです (笑) 327 00:14:01,000 --> 00:14:02,000 さて 328 00:14:02,000 --> 00:14:05,000 (拍手) 329 00:14:05,000 --> 00:14:07,000 問題は 先住民の状況に 330 00:14:07,000 --> 00:14:09,000 共感する人々ですら 彼らはユニークで 331 00:14:09,000 --> 00:14:10,000 興味深いけれども 歴史の隅に 332 00:14:10,000 --> 00:14:12,000 追いやられた人々に過ぎず その間に現実世界 333 00:14:12,000 --> 00:14:15,000 すなわち 我々の世界は 前進しているのだと 思うことです 334 00:14:15,000 --> 00:14:17,000 真実は 今から300年後に 20世紀が 335 00:14:17,000 --> 00:14:20,000 記憶されるのは 戦争 または 336 00:14:20,000 --> 00:14:21,000 技術革命によってではなく 337 00:14:21,000 --> 00:14:23,000 地球上の 生物と文化の多様性 338 00:14:24,000 --> 00:14:26,000 その両方の大破壊に積極的に荷担した 339 00:14:26,000 --> 00:14:29,000 ないしは 黙って許したことによってだろうと いうことです 340 00:14:29,000 --> 00:14:32,000 問題は変化ではありません 341 00:14:32,000 --> 00:14:34,000 全ての文化が 全ての時代において 342 00:14:34,000 --> 00:14:37,000 常に新しい生活の可能性と共に 343 00:14:37,000 --> 00:14:38,000 戯れてきました 344 00:14:39,000 --> 00:14:41,000 問題は 技術そのものではありません 345 00:14:42,000 --> 00:14:44,000 スー族のインディアンは 弓矢を手放しても 346 00:14:44,000 --> 00:14:45,000 スー族です それは 347 00:14:45,000 --> 00:14:47,000 アメリカ人が馬車に乗らなくなっても 348 00:14:47,000 --> 00:14:49,000 アメリカ人であり続けたのと同じです 349 00:14:49,000 --> 00:14:50,000 民俗文化圏の原理を脅かすのは 350 00:14:50,000 --> 00:14:54,000 変化でも技術でもありませんそれは権力です 351 00:14:54,000 --> 00:14:56,000 支配という生々しい事実です 352 00:14:56,000 --> 00:14:58,000 皆さんが 世界を見渡せば これらが 353 00:14:58,000 --> 00:15:01,000 姿を消すべく運命づけられた 文化などではないと気付きます 354 00:15:01,000 --> 00:15:03,000 力強く生きる人々が 彼らの 355 00:15:03,000 --> 00:15:06,000 適応力を超えた 特定の権力によって 356 00:15:06,000 --> 00:15:08,000 存在できなくされています 357 00:15:08,000 --> 00:15:10,000 東南アジアのサラワク州の 358 00:15:11,000 --> 00:15:13,000 非定住民 ペナン族の母国で 359 00:15:13,000 --> 00:15:16,000 実にひどい森林伐採がありました 360 00:15:16,000 --> 00:15:20,000 一世代前まで 彼らは森林で 自由に暮らしていたのに 361 00:15:20,000 --> 00:15:23,000 いまでは川岸で 奴隷と売春をするに 362 00:15:23,000 --> 00:15:25,000 いたっています 川岸では 363 00:15:25,000 --> 00:15:29,000 川自体が沈泥であふれ ボルネオの半分が 364 00:15:29,000 --> 00:15:31,000 南シナ海に運び出されたように見えます 365 00:15:31,000 --> 00:15:32,000 その海では 366 00:15:32,000 --> 00:15:34,000 日本の貨物船が水平線に光りを灯し 367 00:15:34,000 --> 00:15:38,000 森から切り出された丸太を積み込もうと 手ぐすねを引いています 368 00:15:38,000 --> 00:15:39,000 またはヤノマミ族の場合 369 00:15:39,000 --> 00:15:41,000 金の発見をきっかけに 370 00:15:41,000 --> 00:15:43,000 種々の問題が起こりました 371 00:15:43,000 --> 00:15:45,000 または 私が最近多く調査をしている 372 00:15:45,000 --> 00:15:47,000 チベットの山々に行くと 373 00:15:48,000 --> 00:15:51,000 露骨な占領支配を目にします 374 00:15:51,000 --> 00:15:53,000 民族を集団虐殺し 物理的に死滅させることは 375 00:15:53,000 --> 00:15:55,000 一般にも非難されていますが 376 00:15:56,000 --> 00:15:59,000 文化の破壊は非難されないばかりか 377 00:15:59,000 --> 00:16:02,000 世界各地で開発戦略の一部として 378 00:16:02,000 --> 00:16:04,000 称賛されています 379 00:16:04,000 --> 00:16:07,000 チベットの苦悩は 現地を見て 380 00:16:07,000 --> 00:16:09,000 初めて分かります 381 00:16:09,000 --> 00:16:13,000 中国西部の成都から陸路で 382 00:16:13,000 --> 00:16:16,000 チベット南東を通って若い同僚と共に 383 00:16:16,000 --> 00:16:20,000 4,000キロを旅して ラサへ着いた時にやっと 384 00:16:20,000 --> 00:16:23,000 統計でみた数字が示していた 悲惨な実態が 385 00:16:23,000 --> 00:16:24,000 分かったのです 386 00:16:24,000 --> 00:16:28,000 6,000の僧院が粉々に破壊され 387 00:16:28,000 --> 00:16:31,000 120万人もの人が 文化革命の最中に 388 00:16:31,000 --> 00:16:32,000 紅衛兵に殺されました 389 00:16:33,000 --> 00:16:35,000 この若者の父親は パンチェン・ラマとつながりがあると見なされ 390 00:16:35,000 --> 00:16:37,000 中国の侵略時に 391 00:16:37,000 --> 00:16:39,000 すぐに 殺されました 392 00:16:39,000 --> 00:16:41,000 彼の叔父はダライラマと共に逃げ 393 00:16:41,000 --> 00:16:44,000 ネパールに移住しました 394 00:16:44,000 --> 00:16:46,000 彼の母親は 裕福であるという罪で 395 00:16:46,000 --> 00:16:48,000 投獄されました 396 00:16:49,000 --> 00:16:51,000 母親は 2歳の彼と離れるにしのびなく 397 00:16:51,000 --> 00:16:53,000 息子をスカートの下に隠して 398 00:16:53,000 --> 00:16:55,000 牢獄にこっそりつれていきました 399 00:16:55,000 --> 00:16:57,000 勇敢に抵抗した妹は 教育キャンプに 400 00:16:57,000 --> 00:16:58,000 入れられました 401 00:16:58,000 --> 00:17:00,000 ある日 妹はうっかり毛沢東の 402 00:17:01,000 --> 00:17:03,000 腕章を踏んでしまい その罪で 403 00:17:03,000 --> 00:17:06,000 7年間の重労働が課せられました 404 00:17:06,000 --> 00:17:09,000 チベットの苦痛に耐えるのは不可能ですが 405 00:17:09,000 --> 00:17:12,000 チベットの人々の あがないの精神 見守るべきものです 406 00:17:13,000 --> 00:17:16,000 結局 何を選ぶか なのです 407 00:17:16,000 --> 00:17:19,000 無味乾燥な単色の世界に住みたいか? 408 00:17:19,000 --> 00:17:22,000 または多様性に富んだ 多色の世界を受け入れたいか? 409 00:17:22,000 --> 00:17:25,000 偉大なる人類学者のマーガレット・ミードが 亡くなる前に 410 00:17:25,000 --> 00:17:28,000 「最も恐れるのは私たちがあいまいで個性のない 411 00:17:28,000 --> 00:17:30,000 世界観へと押し流され 412 00:17:30,000 --> 00:17:35,000 人間の想像力の全域が 狭く パターン化した思考に 413 00:17:35,000 --> 00:17:39,000 縮小されることだけでなく 414 00:17:39,000 --> 00:17:40,000 ある日夢から覚め 違った可能性が 415 00:17:40,000 --> 00:17:43,000 あったことすら すっかり忘れていることだ」と言いました 416 00:17:44,000 --> 00:17:47,000 私たち人類の歴史は たかだか15万年だと思えば 417 00:17:47,000 --> 00:17:49,000 謙虚になります 418 00:17:49,000 --> 00:17:52,000 新石器時代 我々が農業を知り 419 00:17:52,000 --> 00:17:54,000 種を崇拝するようになり 420 00:17:54,000 --> 00:17:56,000 シャーマンの詩が 司祭の賛歌に 421 00:17:56,000 --> 00:17:57,000 置き換えられ 422 00:17:57,000 --> 00:18:00,000 余剰生産により階級制度が生まれたのは 423 00:18:00,000 --> 00:18:02,000 つい1万年前のことです 424 00:18:02,000 --> 00:18:04,000 近代産業社会は生まれてから 425 00:18:04,000 --> 00:18:06,000 わずか300年です 426 00:18:06,000 --> 00:18:08,000 その浅い歴史が 示唆するように 427 00:18:08,000 --> 00:18:11,000 私たちは 次の千年間に直面する すべての挑戦への 428 00:18:11,000 --> 00:18:13,000 すべての答えを持っていません 429 00:18:13,000 --> 00:18:15,000 世界の無数の文化に 430 00:18:15,000 --> 00:18:18,000 人間でいる意味を問えば 431 00:18:18,000 --> 00:18:20,000 1万の異なる声で 答えが戻ってくるでしょう 432 00:18:20,000 --> 00:18:26,000 そして そのハーモニーの中から 私たちは 私たちでいられる 可能性を 433 00:18:26,000 --> 00:18:29,000 再発見するのです 全ての人 全ての楽園が 434 00:18:29,000 --> 00:18:32,000 繁栄するための方法を 確実に見つけることの大切さを知っている 435 00:18:32,000 --> 00:18:38,000 意識のひらけた種となる可能性を思うと とても楽観的になれます 436 00:18:38,000 --> 00:18:41,000 この写真はバフィン島の最北端で イヌイット族の人々と 437 00:18:41,000 --> 00:18:43,000 イッカク狩りに行った時に撮ったもので 438 00:18:44,000 --> 00:18:47,000 この男性 オラヤ が 自分の祖父の武勇伝を話してくれました 439 00:18:48,000 --> 00:18:50,000 カナダ政府は イヌイット族に対し 440 00:18:50,000 --> 00:18:52,000 常に好意的であったわけではなく 1950年代に 441 00:18:52,000 --> 00:18:55,000 国の主権を確立するために 強制的に入植地に移住させました 442 00:18:55,000 --> 00:18:59,000 オラヤの年老いた祖父は 行くのを拒みました 443 00:18:59,000 --> 00:19:03,000 家族は彼の命を心配し 彼の持っていた武器や道具を 444 00:19:03,000 --> 00:19:04,000 取り上げました 445 00:19:05,000 --> 00:19:07,000 イヌイット族は 寒さをまったく恐れず 446 00:19:07,000 --> 00:19:08,000 活用して生きてきました 447 00:19:08,000 --> 00:19:11,000 イヌイットのそりの 滑走部は もともと魚を 448 00:19:11,000 --> 00:19:12,000 カリブーの皮で覆ったものでした 449 00:19:12,000 --> 00:19:17,000 なのでオラヤの祖父は 北極の夜にも 夜の猛吹雪にも 450 00:19:17,000 --> 00:19:19,000 脅えることはありませんでした 451 00:19:19,000 --> 00:19:22,000 彼は当たり前のように外へ出て アザラシの毛皮のズボンを下ろし 452 00:19:23,000 --> 00:19:26,000 自分の手に排便しました 排泄物が凍ると 453 00:19:26,000 --> 00:19:29,000 それを刃物の形にしました 454 00:19:29,000 --> 00:19:31,000 大便の刃に唾液を吹きかけ 455 00:19:31,000 --> 00:19:34,000 やっと固体に固まると それで犬を切り裂きました 456 00:19:34,000 --> 00:19:37,000 犬の皮をはいで その場で引き具を作り 457 00:19:37,000 --> 00:19:40,000 同じ犬の胸郭でそりを作り 458 00:19:41,000 --> 00:19:42,000 近くの犬に 引き具を付け 459 00:19:42,000 --> 00:19:46,000 ベルトには大便の刃物を巻いて 浮氷塊の向こうへ姿を消しました 460 00:19:46,000 --> 00:19:50,000 裸一貫から身を起こす とは まさにこういうことを言うんですね(笑) 461 00:19:50,000 --> 00:19:51,000 これが色んな意味で 462 00:19:51,000 --> 00:19:53,000 (拍手) 463 00:19:53,000 --> 00:19:55,000 イヌイット族の人々 そして世界中の全ての 464 00:19:55,000 --> 00:19:58,000 先住民の人々の生命力の象徴です 465 00:19:58,000 --> 00:20:00,000 カナダ政府は1999年4月 466 00:20:00,000 --> 00:20:03,000 イヌイット族に カリフォルニア州とテキサス州の 467 00:20:03,000 --> 00:20:06,000 総面積を上回る大きさの土地を返しました 468 00:20:06,000 --> 00:20:08,000 イヌイットにとっての新しい故郷 ヌナブトです 469 00:20:09,000 --> 00:20:12,000 独立した準州です 住民が全ての鉱物資源を仕切っています 470 00:20:12,000 --> 00:20:14,000 国家が国民への賠償を忘れなかった— 471 00:20:14,000 --> 00:20:18,000 素晴らしい例です 472 00:20:19,000 --> 00:20:22,000 そして最後に 少なくとも 473 00:20:22,000 --> 00:20:23,000 これら遠方の 現代社会から 隔離された土地まで 474 00:20:23,000 --> 00:20:25,000 旅したことのある人には明らかですが 475 00:20:27,000 --> 00:20:28,000 そこは「遠方」ではありません 476 00:20:28,000 --> 00:20:30,000 誰かにとっては故郷なのです 477 00:20:30,000 --> 00:20:32,000 太古の時代にさかのぼる人間の想像力の 478 00:20:32,000 --> 00:20:36,000 枝先を象徴しています 私たち全員にとって 479 00:20:36,000 --> 00:20:39,000 これらの子供の夢は私たちの子供の夢のように 480 00:20:39,000 --> 00:20:42,000 子供達の夢が希望の地形を形作るのです 481 00:20:42,000 --> 00:20:46,000 最後に ナショナルジオグラフィック について紹介します 482 00:20:46,000 --> 00:20:50,000 私たちは 政治家たちには 何も達成できないと思っており 483 00:20:50,000 --> 00:20:51,000 政治論争は — 484 00:20:51,000 --> 00:20:53,000 (拍手) 485 00:20:53,000 --> 00:20:55,000 説得力がない — 486 00:20:55,000 --> 00:20:58,000 世界を変えるのは物語だと 考えており 487 00:20:58,000 --> 00:21:01,000 当誌こそ 物語を伝える 世界最高の機関だと考えています 488 00:21:01,000 --> 00:21:04,000 ウェブサイトのヒット件数は 毎月3,500万にものぼります 489 00:21:04,000 --> 00:21:07,000 156カ国で私たちのテレビチャンネルが 放映されています 490 00:21:08,000 --> 00:21:10,000 本誌には何百万もの読者がいます 491 00:21:10,000 --> 00:21:13,000 掲載されているのは 文化圏への旅 — 492 00:21:13,000 --> 00:21:15,000 読者を案内する先は 493 00:21:15,000 --> 00:21:17,000 驚異の文化遺産です 494 00:21:18,000 --> 00:21:20,000 そこで目にするものに 驚嘆せざるをえないために 495 00:21:20,000 --> 00:21:22,000 人類学の最も重要な啓示を 496 00:21:22,000 --> 00:21:25,000 願わくば 徐々に 一人また一人と 497 00:21:25,000 --> 00:21:27,000 受け入れてほしいと思います 498 00:21:27,000 --> 00:21:31,000 世界は多様な形で 存在する価値があるということと 499 00:21:31,000 --> 00:21:32,000 そして 真の 500 00:21:32,000 --> 00:21:35,000 多文化・多元的世界において 集合的な幸福のために 501 00:21:35,000 --> 00:21:37,000 全人類の知恵を役立て 共存する手段を 502 00:21:37,000 --> 00:21:40,000 我々は見つけ出すことができるのだ という啓示です 503 00:21:40,000 --> 00:21:41,000 ありがとうございました 504 00:21:41,000 --> 00:21:43,000 (拍手)