ガソリンスタンドがよく 並んで立っているのはなぜだろう? 喫茶店が全然ないなぁ と思っていたら 1箇所に何件も集まっているのは なぜだろう? スーパーやレストランや 自動車修理工場が ばらばらじゃなくて 同じ場所に集まって いるように見えるのはなぜだろう? お店を開く場所を選ぶポイントは いくつもあるけど 同じような店が 1箇所に集まる 理由を説明してくれるのが 「ホテリングの立地競争モデル」だ 例えば君が ビーチでアイスを売るとして ビーチの長さは1000m 競争相手はいないものとしよう たくさん売るには カートを どこに置けばいいだろう? 真ん中だね ビーチの両端からは500m 端っこの人には 少し遠くなるけど 一番お客さんが集まるはずだ ある日 ビーチに行くと いとこのテッド君がいて 君とそっくり同じ アイスを売っている 2人はビーチを半分こ することにして お客さんが あんまり 歩かずにすむように 2人とも それぞれの領分の 真ん中にカートを置くことにした 君は 南半分の真ん中に テッド君は 北半分の真ん中に カートを移動した 君のカートより南の人は 君のカートに来るし テッド君のカートより北の人は テッド君のカートに行く 間にいる人は 近い方に買いに行くから 250m以上歩く人はいないし お客さんを半分ずつに 分け合ったことになる ゲーム理論では こういうのを 「社会的最適解」と呼んでいる 全てのお客さんが アイスを買うために 歩く距離が最小に なっているんだ 次の日 ビーチに 来てみると テッド君が ビーチの真ん中で アイスを売っていた 君は昨日と同じ 南1/4のところに行った 君のところへは 南の25%のお客さんが来る テッド君の方は 北半分の お客さん全部に加えて 2人の間の25%のお客さんの 一部も取ることになった アイス戦争の3日目 先にビーチに着いた君は テッド君の領分の 真ん中にカートを置くことにした これで南の75%の お客さんを独占でき テッド君のお客さんは 北の25%だけになると思った でも後から来たテッド君が 君のすぐ南にカートを置いたので 南のお客さんを全員持って行かれ 残ったのは北の一部だけになった お客を取り返そうと テッド君の10歩南に移動したけど お昼の休憩中に テッド君が 君のさらに10歩南に行ったので また南のお客さんを 取られてしまった こうして2人は 一日中 より多くのお客さんを得ようと 南へ 南へと 移動することになった 最終的には ビーチの真ん中で 背中合わせになって お客さんを半分ずつ 分け合うことになった これがゲーム理論でいう 「ナッシュ均衡」だ お互い作戦をどう変えても 状況を有利にできない状態ということだ 中央から250mにカートを置く 最初のやり方は ナッシュ均衡じゃなかったので 長続きしなかった アイスをもっと売りたければ 相手の方に近づけばいいので 2人ともビーチの 真ん中まで来ることになる 遠くのお客さんの方へ 移動すると お客さんは減ってしまうんだ でもこれは 社会的最適解 ではなく ビーチの端っこの人は アイスを買うために 遠くまで歩かなければならない ショッピングセンターのファストフード店や 洋服屋さん 携帯屋さんを考えてみるといい 地域の中で お店が均等に 散らばっていたら便利だけど 厳しい競争の元では お店にとって 不利になってしまうんだ 現実には お客さんは 色んな方向から来るし 店は 製品を差別化したり 安く売ったり 戦略を変えて 自由に競争できる でも一番大切なのは 競争相手との距離を できるだけ近く することなんだ