WEBVTT 00:00:07.362 --> 00:00:09.202 これはメイベルです 00:00:09.202 --> 00:00:13.307 メイベルはアブラムシの一種で セミ、カメムシ、トコジラミと 00:00:13.307 --> 00:00:16.567 同じ目に属する小さな昆虫です NOTE Paragraph 00:00:16.567 --> 00:00:20.590 これらの昆虫は獲物に口針を刺して 生命維持に必要な液体を吸います 00:00:20.590 --> 00:00:22.820 アブラムシの獲物は植物です 00:00:22.820 --> 00:00:25.560 アブラムシが狙っているものは 植物の中に隠されており 00:00:25.560 --> 00:00:29.730 端から端まで一本の紐のように伸びた 単細胞の管の中を流れています 00:00:29.730 --> 00:00:33.513 これらは師管と呼ばれ 束になって 植物の最も貴重な資源である ― 00:00:33.513 --> 00:00:37.510 「汁液」の配管システムを作ります NOTE Paragraph 00:00:37.510 --> 00:00:39.820 汁液の成分は主に水と糖です 00:00:39.820 --> 00:00:43.270 1リットルに含まれる糖分の量が ソーダ1缶分の糖分もある植物もあります 00:00:43.270 --> 00:00:46.010 光合成により絶えず糖が作られます 00:00:46.010 --> 00:00:50.240 師菅は 非常に高い圧力で作動する 化学的「ポンプ」のようなもので 00:00:50.240 --> 00:00:54.080 最大でタイヤの圧力の9倍になります NOTE Paragraph 00:00:54.080 --> 00:00:58.355 メイベルは口針という長くて 柔軟性のある針を使って汁液を吸います 00:00:58.355 --> 00:01:02.287 植物の細胞の間の組織に ゆっくりと口針をくねらせながら入れていき 00:01:02.287 --> 00:01:05.455 師管の1本に突き刺します 00:01:05.455 --> 00:01:07.505 汁液の圧力は大変高いので 00:01:07.505 --> 00:01:10.028 メイベルは吸う必要はありません 00:01:10.028 --> 00:01:14.837 頭の弁を開くだけで 圧力により汁液が 00:01:14.837 --> 00:01:16.857 消化器官に入ってきます 00:01:16.857 --> 00:01:20.065 後でお尻から出るものに話を戻します でも 差し当たり知って欲しいことは 00:01:20.065 --> 00:01:22.805 植物にしてみれば 針を刺されて 汁液を吸われたくないので 00:01:22.805 --> 00:01:25.255 防御しようとすることです NOTE Paragraph 00:01:25.255 --> 00:01:27.345 汁液そのものが 防御物なのです 00:01:27.345 --> 00:01:30.035 その仕組みを知るために 他の昆虫の消化管が 00:01:30.035 --> 00:01:34.811 安定して流れる汁液につながったと 仮定してみましょう 00:01:34.811 --> 00:01:38.410 汁液がその昆虫の細胞に触れると 糖分の濃度が高いために 00:01:38.410 --> 00:01:42.110 浸透作用によって 細胞内の水分が出ます 00:01:42.110 --> 00:01:45.700 これはまさにナメクジに塩をかけると 水分が出るのと同じで 00:01:45.700 --> 00:01:49.640 汁液がたくさん入ってくると ナメクジの水分が多く失われるので 00:01:49.640 --> 00:01:52.580 ついには しなびて死んでしまいます NOTE Paragraph 00:01:52.580 --> 00:01:56.350 しかし メイベルの腸は スクラーゼという酵素の宝庫で 00:01:56.350 --> 00:01:59.520 蔗糖(スクロース)の2分子を 00:01:59.520 --> 00:02:03.740 果糖の1分子と三糖類に変換します 00:02:03.740 --> 00:02:08.528 メイベルは 果糖を燃やしてエネルギーを作り 後に三糖類が残ります NOTE Paragraph 00:02:08.528 --> 00:02:10.848 それがどう役に立つのでしょうか? NOTE Paragraph 00:02:10.848 --> 00:02:13.952 汁液に溶解している 糖の分子が多いほど 00:02:13.952 --> 00:02:16.832 メイベルの細胞から排出され得る 水分も多くなります 00:02:16.832 --> 00:02:19.662 汁液の中の糖の分子の数が減ると 00:02:19.662 --> 00:02:23.241 メイベルから細胞内の水分を 排出する力が弱まります 00:02:23.241 --> 00:02:25.362 植物の汁液が中和されたのです NOTE Paragraph 00:02:25.362 --> 00:02:29.372 つまり メイベルは 生殖に必要な数日分の全エネルギーを 00:02:29.372 --> 00:02:32.044 得ることが出来るのです NOTE Paragraph 00:02:32.044 --> 00:02:34.972 アブラムシの中には 脅威の ライフサイクルを持つ種もいます 00:02:34.972 --> 00:02:37.272 例えば モモアカアブラムシですが 00:02:37.272 --> 00:02:41.312 秋にオスとメスはつがいになり メスは卵を産みます 00:02:41.312 --> 00:02:46.782 春に卵がかえると 幼虫はすべてメスです 00:02:46.782 --> 00:02:50.612 成虫になっても これらのメスは卵を産みません 00:02:50.612 --> 00:02:56.281 その代わり 生きた自分のクローンを産み 00:02:56.281 --> 00:03:00.816 そのクローンも それ自身のクローンをはらんでいます 00:03:00.816 --> 00:03:05.613 つまり アブラムシのメスは 同時に2世代の 00:03:05.613 --> 00:03:08.723 アブラムシのクローンをはらみます 00:03:08.723 --> 00:03:11.929 科学者はこれを「telescopic development」 (入れ子式発育)と呼んでいます NOTE Paragraph 00:03:11.929 --> 00:03:15.039 そのため アブラムシは素早く クローンを複製できます 00:03:15.039 --> 00:03:18.019 1シーズンで20世代が 誕生することもあり得るので 00:03:18.019 --> 00:03:21.179 大量のフンが出ます 00:03:21.179 --> 00:03:24.689 メイベルは2時間ごとに 自分の体重と同じ量のフンをします 00:03:24.689 --> 00:03:27.779 地球上で最もフンをする生物の1種です 00:03:27.779 --> 00:03:32.663 1エーカー(1200坪)あたり 数百キロの フンをする個体群もいます NOTE Paragraph 00:03:32.663 --> 00:03:35.823 ところで アブラムシのフンは 皆さんのウンチとは違います 00:03:35.823 --> 00:03:38.242 化学的に汁液とほぼ同じです 00:03:38.242 --> 00:03:40.912 無色透明の甘いシロップ状の液体で 00:03:40.912 --> 00:03:44.542 そう みなさんが 「蜜」と呼んでいるものです NOTE Paragraph 00:03:44.542 --> 00:03:46.722 蜜を好む種がいます 00:03:46.722 --> 00:03:49.324 蜜が大好きなアリの中には 群れをなし 00:03:49.324 --> 00:03:52.911 アブラムシのコロニーを守る 種類もいます 00:03:52.911 --> 00:03:56.092 見返りとして 安定供給される 甘い蜜をもらいます 00:03:56.092 --> 00:03:59.012 アブラムシのお尻から 直接飲めるんです NOTE Paragraph 00:03:59.012 --> 00:04:00.472 乾杯! NOTE Paragraph 00:04:00.472 --> 00:04:01.992 人間も蜜は大好きです 00:04:01.992 --> 00:04:05.142 ネイティブアメリカンの中には 背の高いアシから蜜を集めて 00:04:05.142 --> 00:04:06.439 ケーキを作る部族もいます 00:04:06.439 --> 00:04:09.130 ハチは蜜から蜂蜜を作り 00:04:09.130 --> 00:04:11.989 人間は蜂蜜を集めて食べます NOTE Paragraph 00:04:11.989 --> 00:04:15.459 つまり 植物が汁液を作り アブラムシが汁液を吸ってフンをし 00:04:15.459 --> 00:04:18.354 ハチが吐き出してできた蜂蜜を 人間が集めて 00:04:18.354 --> 00:04:20.959 一杯のアールグレイ・ティーに 少し入れるのです