1 00:00:08,159 --> 00:00:13,699 原初の神であるシヴァ神は 悪の破壊者 悪魔の抹殺者 2 00:00:13,699 --> 00:00:17,209 守護者でもあり この世界の全てを見通します 3 00:00:17,209 --> 00:00:19,969 彼は妻の忍耐を試していました 4 00:00:19,969 --> 00:00:25,284 歴史的にみれば シヴァ神と パールバティーの合体は見事なものでした 5 00:00:25,284 --> 00:00:29,004 彼らはこの世の幸福の拠り所となる 思索と行動の均衡を 6 00:00:29,004 --> 00:00:31,865 維持していました 7 00:00:31,865 --> 00:00:37,525 この世界のエネルギー 成長そして 変身を司るパールバティーなしでは 8 00:00:37,525 --> 00:00:42,914 シヴァ神は外からただ見守るばかりで 世界は静止し続けたことでしょう 9 00:00:42,914 --> 00:00:48,092 しかし2人は合体し アルダナーリーシュヴァラという神となって 10 00:00:48,092 --> 00:00:49,842 神聖なる融和を遂げたのです 11 00:00:49,842 --> 00:00:54,121 融和は全ての生き物に 豊沃さと繋がりをもたらしました 12 00:00:54,121 --> 00:00:57,781 これらの理由でパールバティーは 13 00:00:57,781 --> 00:00:59,992 自然界の母として そして ― 14 00:00:59,992 --> 00:01:04,768 物質を創り出す シヴァの力を補う 不可欠な存在として広く崇拝されました 15 00:01:04,768 --> 00:01:07,948 彼女は人間の物質的快適さを監督し 16 00:01:07,948 --> 00:01:12,176 この世に住む人々の 17 00:01:12,176 --> 00:01:15,682 身体的 感情的 精神的なつながりを 確かにしました 18 00:01:15,682 --> 00:01:19,886 それでもこの2つの恐るべき力の間には 亀裂が生じていました 19 00:01:19,886 --> 00:01:24,497 パールバティーが日常生活に注意を払い 管理しているあいだに 20 00:01:24,497 --> 00:01:28,497 シヴァ神は妻のとても大切な作業を 見くびるようになり 21 00:01:28,497 --> 00:01:32,497 強情を張って この世界における 彼らの役割について物言いをつけました 22 00:01:32,497 --> 00:01:35,417 彼は世界の創造者である 梵天(ぼんてん)が 23 00:01:35,417 --> 00:01:40,106 シヴァのためだけに物質的なものを 創造したのだと思っていたのです 24 00:01:40,106 --> 00:01:44,766 よって 全ての物質的なものは マーヤーという 気を散らすものにすぎず 25 00:01:44,766 --> 00:01:47,416 宇宙的な幻影にほかならないのです 26 00:01:47,416 --> 00:01:51,076 パールバティーが育んだものをシヴァ神が 終わらせようとしている数千年の間 27 00:01:51,076 --> 00:01:54,196 彼女は ただ心得顔に微笑んでいました 28 00:01:54,196 --> 00:01:56,186 しかし 最後にシヴァ神の叱責を受けると 29 00:01:56,186 --> 00:02:01,051 すぐさまに彼女は自分の仕事の重要性を きっぱりと示す必要があると感じました 30 00:02:01,051 --> 00:02:03,281 彼女はその世界から逃げ出し 31 00:02:03,281 --> 00:02:07,537 世界を動かし続けていた彼女の 宇宙的なエネルギーを半分に減じました 32 00:02:07,537 --> 00:02:13,177 彼女の失踪により あらゆるものが 突如 恐ろしいまでに欠乏し 33 00:02:13,177 --> 00:02:16,238 世界は不気味な静寂に包まれました 34 00:02:16,238 --> 00:02:19,798 パールバティーがいなくなり 土地は乾燥し 不毛になりました 35 00:02:19,798 --> 00:02:22,720 川の流れは細くなり 田畑では作物がしなびると 36 00:02:22,720 --> 00:02:25,160 人間界に飢餓が押しよせました 37 00:02:25,161 --> 00:02:28,261 親たちは自らお腹をすかせながらも 38 00:02:28,261 --> 00:02:30,171 苦労しながら 飢える子どもたちを慰めました 39 00:02:30,171 --> 00:02:34,498 何も食べるものがない中で 人々は器一杯に盛られた白飯を囲むこともなく 40 00:02:34,498 --> 00:02:37,808 世界が暗くなっていく中 引きこもり 身を縮めました 41 00:02:37,808 --> 00:02:39,538 妻の不在がもたらした深い虚しさが 42 00:02:39,538 --> 00:02:44,746 シヴァ神をも襲ったことが 彼にとって衝撃となり 畏れとなりました 43 00:02:44,746 --> 00:02:46,896 神の絶大な力があってもなお 44 00:02:46,896 --> 00:02:51,183 生命維持に絶対必要なものがあると悟り 45 00:02:51,183 --> 00:02:54,924 彼の切望は底知れぬほど 耐え難いものとなったのです 46 00:02:54,924 --> 00:02:57,804 シヴァ神が荒れ果てたこの世界に 絶望を感じるにつれて 47 00:02:57,804 --> 00:03:00,184 彼は物質的な世界を 48 00:03:00,184 --> 00:03:03,294 そうも安易に捨て去ってはならないと 気付きました 49 00:03:03,294 --> 00:03:05,063 彼女の夫が気付いたことで 50 00:03:05,063 --> 00:03:08,262 哀れみ深いパールバティーは 自分に帰依する者たちが 51 00:03:08,262 --> 00:03:11,122 これ以上やせ衰えていくのを 傍観できませんした 52 00:03:11,122 --> 00:03:13,702 歩んで人々の中に入っていき 健康を回復させるために 53 00:03:13,702 --> 00:03:16,432 新たな化身の姿になって 黄金の器に入ったおかゆと 54 00:03:16,432 --> 00:03:22,155 宝石で飾られたひしゃくを運びました 55 00:03:22,155 --> 00:03:24,905 希望を持たせるような彼女の姿が 噂となって広がるにつれて 56 00:03:24,905 --> 00:03:29,189 彼女は食の女神アンナプルナとして 崇拝されました 57 00:03:29,189 --> 00:03:33,610 アンナプルナの現れで 世界は再び栄えました 58 00:03:33,610 --> 00:03:39,000 人々は豊潤さと食物を喜び 感謝の意を表すために集いました 59 00:03:39,000 --> 00:03:43,629 聖なる都市のカーシー すなわち ガンジス川のほとりにある「自由の地」こそ 60 00:03:43,629 --> 00:03:46,729 アンナプルナが初めて出現した場所で 61 00:03:46,729 --> 00:03:50,034 そこで彼女は調理場を開き 人々はお腹がはちきれそうになるまで 62 00:03:50,034 --> 00:03:52,124 お腹を満たしたのだと 信じる人もいます 63 00:03:52,124 --> 00:03:56,124 しかし 彼女のごちそうにあやかったのは 人間だけではありませんでした 64 00:03:56,124 --> 00:04:00,733 この世の楽しみが咲き誇る光景を目にして 謙虚になったシヴァ神は 65 00:04:00,733 --> 00:04:04,733 空の器を持って女神に近づき 66 00:04:04,733 --> 00:04:07,393 食べ物と許しを乞いました 67 00:04:07,393 --> 00:04:12,013 この理由で 最高神シヴァは アンナプルナのなすがままにされる ― 68 00:04:12,013 --> 00:04:14,143 哀れな物乞いとして 描かれることがあります 69 00:04:14,143 --> 00:04:19,406 彼女は 左手に黄金の器を持ち 一方 右手は安全と請負を示す ― 70 00:04:19,406 --> 00:04:22,296 「アバヤ・ムドラー」のしぐさを とっています 71 00:04:22,296 --> 00:04:26,180 巨大な力を持った化身は この象徴的なしぐさにより 72 00:04:26,180 --> 00:04:29,830 物質的な世界は 決して幻想ではないことを 明らかにしています 73 00:04:29,830 --> 00:04:33,010 むしろ 音を立てて腹をすかせ 口を開ける人々に食事を与えることから 74 00:04:33,010 --> 00:04:36,320 この世界の均衡を保つことまでのことが 75 00:04:36,320 --> 00:04:39,520 維持すべき 生命のサイクルなのです