0:00:06.370,0:00:10.812 心臓発作のリスクが[br]40%下がる新薬 0:00:10.812,0:00:14.183 サメに襲われる事故が[br]2倍に増加 0:00:14.183,0:00:19.068 毎日1リットルの炭酸飲料を飲むと[br]がんになる確率が2倍に 0:00:19.068,0:00:22.323 これはいずれも[br]相対リスクの例で 0:00:22.323,0:00:26.193 ニュース記事などでリスクを表す[br]一般的な方法です 0:00:26.193,0:00:27.831 リスク評価というのは 0:00:27.831,0:00:32.082 統計的思考と個人的選好が絡み合った[br]複雑なものです 0:00:32.082,0:00:34.001 多くの人が躓くのは 0:00:34.001,0:00:39.797 このような相対リスクと[br]絶対リスクと呼ばれるものの違いです 0:00:39.797,0:00:42.790 リスクとは 何らかの悪い事象の[br]起こりやすさで 0:00:42.790,0:00:45.120 パーセントで表現できます 0:00:45.120,0:00:51.460 たとえば「心臓発作は 60~70代の男性の[br]11%に起きる」というように 0:00:51.460,0:00:55.756 リスクは割合でも表現できます[br]「毎年オーストラリア西海岸で 0:00:55.756,0:01:00.443 ダイバーの2百万人に1人が[br]命にかかわるようなサメの事故に遭う」 0:01:00.443,0:01:02.812 これらの数字は[br]それぞれのグループにおいて 0:01:02.812,0:01:06.500 心臓発作やサメの事故に遭う[br]絶対リスクを表しています 0:01:06.500,0:01:11.593 リスクの変化は 相対的な数値でも[br]絶対的な数値でも表せます 0:01:11.593,0:01:16.318 たとえば 「2009年の調査で[br]マンモグラフィ検査は 0:01:16.318,0:01:22.235 乳がんによる死亡数を1000人中5人から[br]4人に減らすことが分かった」というとき 0:01:22.235,0:01:26.416 絶対リスクの減少は0.1%ですが 0:01:26.416,0:01:32.562 がんによる死亡数が5件から4件になる[br]相対リスクの減少は20%です 0:01:32.562,0:01:34.799 この大きいほうの数字を[br]ニュースで聞いて 0:01:34.799,0:01:38.199 人々は検査の効果を[br]過大評価しました 0:01:38.199,0:01:42.299 2つの表現方法の違いが[br]なぜ重要なのか分かるように 0:01:42.299,0:01:45.942 心臓発作のリスクを[br]40%減らす新薬という 0:01:45.942,0:01:49.059 仮想的な例を[br]考えてみましょう 0:01:49.059,0:01:51.620 この新薬を飲んでいない[br]1000人のグループで 0:01:51.620,0:01:55.219 10人が心臓発作を[br]起こすとします 0:01:55.219,0:01:59.866 絶対リスクは1000人中10人で[br]1%です 0:01:59.866,0:02:03.140 新薬を飲んでいる同様の[br]1000人のグループで 0:02:03.140,0:02:05.929 心臓発作を起こすのは6人です 0:02:05.929,0:02:10.214 新薬は10人中4人の[br]心臓発作を防ぐので 0:02:10.214,0:02:13.365 相対リスク減少は40%です 0:02:13.365,0:02:18.829 絶対リスクは 1%から[br]0.6%に減っただけですが 0:02:18.829,0:02:24.051 40%の相対リスク減というと[br]ずっと大きなものに聞こえます 0:02:24.051,0:02:28.481 心臓発作やその他の好ましくない事象を[br]わずかでも減らせるのなら 0:02:28.481,0:02:30.925 それはやる価値があるのでは? 0:02:30.925,0:02:32.638 そうとも限りません 0:02:32.638,0:02:36.108 問題は あるリスクを[br]減らす選択が 0:02:36.108,0:02:39.222 他のリスクを増やすかも[br]しれないことです 0:02:39.222,0:02:44.744 心臓発作の薬が患者の0.5%に[br]がんを引き起こすとしましょう 0:02:44.744,0:02:47.095 その薬を飲むことで 0:02:47.095,0:02:50.493 1000人中4人の[br]心臓発作が防げますが 0:02:50.493,0:02:54.291 それにより5人が[br]新たにがんにかかります 0:02:54.291,0:02:58.014 心臓発作の相対リスク[br]減少の割合は大きく 0:02:58.014,0:03:00.903 がんになる絶対リスクは[br]小さく見えますが 0:03:00.903,0:03:04.161 同じくらいの数の[br]新たな患者を生むのです 0:03:04.161,0:03:05.201 現実には 0:03:05.201,0:03:07.848 リスクをどう評価するかは 0:03:07.848,0:03:11.021 その人の状況によって変わります 0:03:11.021,0:03:13.715 近親者の病歴に[br]心臓病があれば 0:03:13.715,0:03:17.221 たとえ絶対リスクの[br]低減がわずかであっても 0:03:17.221,0:03:23.757 心臓病リスクを減らす薬を飲む[br]動機は強くなるでしょう 0:03:23.759,0:03:27.609 直接比較できないような[br]リスクのどちらを選ぶか 0:03:27.609,0:03:30.155 決めなければならない[br]こともあります 0:03:30.155,0:03:33.525 たとえば心臓病の薬で[br]リスクの高まるのが 0:03:33.525,0:03:35.928 がんではなく[br]片頭痛のような 0:03:35.928,0:03:39.102 命には関わらない[br]問題だったとしたら 0:03:39.104,0:03:43.530 リスクを取る価値があるかの[br]評価は変わってくるでしょう 0:03:43.530,0:03:47.203 正解が必ずしも[br]存在しない場合もあります 0:03:47.203,0:03:51.780 たとえわずかでもサメに[br]襲われるリスクがあるなら 0:03:51.780,0:03:54.735 わざわざ海で泳ぐことはないと[br]思う人もいるだろうし 0:03:54.735,0:03:57.587 客観的に見て無視できるような[br]リスクのために 0:03:57.587,0:04:01.093 海で泳ぐ楽しみを捨てるなど[br]考えられないという人もいるでしょう 0:04:01.093,0:04:05.142 そういったことから リスク評価というのは[br]そもそも難しいもので 0:04:05.142,0:04:07.837 リスクについての報道は[br]誤解を招きやすく 0:04:07.837,0:04:13.797 絶対的な数値と相対的な数値が[br]混在している場合は特にそうです 0:04:13.797,0:04:15.989 そういう数字の意味を[br]理解していれば 0:04:15.989,0:04:21.002 混乱を避けてより良いリスク評価をする[br]助けになるでしょう