WEBVTT 00:00:05.542 --> 00:00:08.023 「ドラキュラはいかに 世界一有名な吸血鬼になったか?」 00:00:08.023 --> 00:00:12.283 その作者の死後 100年以上経ってなお 00:00:12.283 --> 00:00:17.843 史上最も有名な吸血鬼として ドラキュラは生き続けています 00:00:17.843 --> 00:00:20.174 しかし このトランシルベニアの貴族は 00:00:20.174 --> 00:00:24.524 史上初の吸血鬼でもなければ 当時人気を博したわけでもなく 00:00:24.524 --> 00:00:29.974 運命のいたずらがなければ とうに忘れ去られていたかもしれないのです 00:00:29.974 --> 00:00:35.664 ドラキュラはブラム・ストーカー著の 1897年の同名の小説で初登場しました 00:00:35.664 --> 00:00:39.255 しかし 吸血鬼の言い伝えは そのずっと昔から存在していました 00:00:39.255 --> 00:00:44.254 吸血鬼は少なくとも800年は 伝承で語られていました 00:00:44.254 --> 00:00:47.984 「ヴァンパイア」という言葉は スラブ民話や 00:00:47.984 --> 00:00:50.505 古ロシア語の「upir」に由来します 00:00:50.505 --> 00:00:54.535 初めてその語が書き残されたのは 11世紀のことです 00:00:54.535 --> 00:00:58.075 その地域の吸血鬼の伝承は キリスト教伝来よりも古く 00:00:58.075 --> 00:01:03.014 異教を退ける教会の努力にもかかわらず 生き残りました 00:01:03.014 --> 00:01:07.475 吸血鬼の物語が生まれたのは 病気を誤って解釈したこと― 00:01:07.475 --> 00:01:08.666 狂犬病や 00:01:08.666 --> 00:01:09.916 ペラグラなど― 00:01:09.916 --> 00:01:12.045 そして死体の腐敗に由来しています 00:01:12.045 --> 00:01:16.755 後者の場合では ガスで死体が膨れたり 口から血が流れ出ることにより 00:01:16.755 --> 00:01:21.357 死体が最近まで生きていて 血を吸っていたように見えるのです 00:01:21.357 --> 00:01:25.806 吸血鬼は長い歯や爪を持ち 大きな体をしていると描写されました 00:01:25.806 --> 00:01:30.367 これによって死者の蘇りを 防ぐための儀式が多く生まれました 00:01:30.367 --> 00:01:33.476 死体をニンニクや ポピーシードと一緒に埋めたり 00:01:33.476 --> 00:01:35.325 杭を打ったり 00:01:35.325 --> 00:01:36.227 燃やしたり 00:01:36.227 --> 00:01:37.766 手足を切断したりしたのです 00:01:37.766 --> 00:01:42.086 吸血鬼の伝承は18世紀までは 地域的なものでしたが 00:01:42.086 --> 00:01:45.767 その頃セルビアが二大勢力の間で 板挟みになります 00:01:45.767 --> 00:01:47.257 ハプスブルク家と 00:01:47.257 --> 00:01:49.271 オスマン朝トルコです 00:01:49.607 --> 00:01:53.217 オーストリアの兵士や政府官僚は 00:01:53.217 --> 00:01:55.988 地方の不思議な埋葬の儀式を 調査・報告し 00:01:55.988 --> 00:01:58.776 その報告が広く 知られるところとなりました 00:01:58.776 --> 00:02:04.007 その結果 吸血鬼への恐怖が席巻し 1755年には 00:02:04.007 --> 00:02:07.978 オーストリアの女帝は お抱え医師を派遣せざるを得ませんでした 00:02:07.978 --> 00:02:10.748 彼は調査を行い 噂の根を断ち切って 00:02:10.748 --> 00:02:13.777 綿密な科学的反証を 発表したのです 00:02:13.777 --> 00:02:17.479 パニックは収まりましたが 吸血鬼の存在はすでに 00:02:17.479 --> 00:02:19.768 西欧の想像力に根付き 00:02:19.768 --> 00:02:22.858 1819年の『ヴァンパイア』や 00:02:22.858 --> 00:02:27.961 ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ著の 1872年の『吸血鬼カーミラ』を生みました 00:02:28.473 --> 00:02:34.297 この作品はアイルランドの若き劇評家 ブラム・ストーカーに大きな影響を与えました 00:02:34.297 --> 00:02:37.786 1847年にダブリンに生まれた ストーカーは 00:02:37.786 --> 00:02:43.169 7歳になるまで 原因不明の病で 床に伏していました 00:02:43.169 --> 00:02:46.210 その時に 母親は地方の伝承や 00:02:46.210 --> 00:02:48.208 怖い話などを聞かせました 00:02:48.208 --> 00:02:54.013 その中に母親自身が体験した 1832年のコレラの大流行の話もありました 00:02:54.013 --> 00:02:58.929 コレラの感染者が共同墓地に 生き埋めになった様子を聞かせました 00:02:58.929 --> 00:03:04.179 のちにストーカーはファンタジー小説や ロマンス 冒険小説などを書き 00:03:04.179 --> 00:03:08.219 1897年に『ドラキュラ』を 書きました 00:03:08.471 --> 00:03:10.880 この作品の主人公である悪役の由来は 00:03:10.880 --> 00:03:15.520 歴史上の人物である ヴラド三世ドラキュラ公― 00:03:15.520 --> 00:03:17.480 またの名を「串刺し公」と 00:03:17.480 --> 00:03:20.970 名前が同じであるという連想でした 00:03:20.970 --> 00:03:24.950 他の要素や登場人物は ヴィクトリア朝時代の 00:03:24.950 --> 00:03:27.860 様々な作品に直接的・間接的に 影響されたものです 00:03:27.860 --> 00:03:30.202 例えば『得体の知れぬ人』などです 00:03:30.202 --> 00:03:34.510 この小説の発表当時は そこそこの成功しか収めず 00:03:34.510 --> 00:03:37.672 ストーカーの代表作ですら ありませんでした 00:03:37.672 --> 00:03:42.270 彼の1912年の死亡記事でも ごくわずかにしか触れられていません 00:03:42.270 --> 00:03:46.729 しかし大きな著作権問題によって ドラキュラの運命は大きく変わります 00:03:46.729 --> 00:03:50.291 そしてこの登場人物の名を 文学史に残すこととなったのです 00:03:50.291 --> 00:03:57.221 1922年 ドイツで今や古典映画である 『ノスフェラトゥ』に翻案されましたが 00:03:57.221 --> 00:03:59.191 著作権料が支払われませんでした 00:03:59.191 --> 00:04:02.492 登場人物の名前を変え 多少筋書きに変更はあるものの 00:04:02.492 --> 00:04:07.482 その類似性は明らかで スタジオは訴訟で破産に追い込まれました 00:04:07.482 --> 00:04:09.645 これ以上の剽窃を防ぐため 00:04:09.645 --> 00:04:12.702 ストーカーの妻は 戯曲版『ドラキュラ』に 00:04:12.702 --> 00:04:14.912 著作権を設定することにし 00:04:14.912 --> 00:04:19.260 家族ぐるみの友人ハミルトン・ディーンに 制作許可を出しました 00:04:19.260 --> 00:04:22.753 ディーンの翻案は物語を 大きく省いてはいたものの 00:04:22.753 --> 00:04:24.494 古典的な作品となり 00:04:24.494 --> 00:04:28.743 それは主にブロードウェイでの ベラ・ルゴシの演技のおかげでした 00:04:28.743 --> 00:04:33.743 ルゴシはユニバーサル制作の 1931年の映画版にも主演し 00:04:33.743 --> 00:04:37.282 これがこの登場人物に 特徴を与えました 00:04:37.282 --> 00:04:41.933 それ以来 ドラキュラは 何度も翻案されて蘇り 00:04:41.933 --> 00:04:46.943 書物としてのささやかな存在を超えて 永遠の生命を手にしたのです